厚労省、痛み軽視見直し…「初期がん」から緩和ケア

厚生労働省は、末期のがん患者の痛みや心労を取り除く「緩和ケア」を、初期がんを含むがん治療の全段階に導入するため、新しい医療体制を整備することを決めた。
全国135か所の拠点病院に、2年以内に緩和ケア対応医療チームを設置するよう求めると共に、モデル地区から選んだがん患者5000人に対し、緩和ケアを組み込んだ試験的な医療を開始する。
緩和ケアの普及を目的とした基本計画を5年以内に策定することを目指す。

国内でのがん発症者は、年間約60万人。がんと診断された患者は、早い段階から、死への不安を抱えたり、がんや治療による苦痛を感じたりしている。だが、国内の医療現場は、手術でがんを取りきるなど根治を重視しているため、終末期を迎えるまで、ほとんど緩和ケアは行われていない。

今月成立したがん対策基本法には、緩和ケアについて「早期から適切に行われるようにする」と明記されている。緩和ケアの普及は、患者に優しいがん医療体制づくりの第一歩となる。

現在、地域のがん診療の中核となる拠点病院が、全国で135施設選ばれている。厚労省は、拠点病院に対し、緩和ケアを医師、看護師、医療心理の専門家によるチーム医療とすることを義務づけ、ホスピスだけでなく、一般病棟や外来のがん患者にも、継続して施療できる院内体制の整備を求める。
拠点病院への新規指定を希望する医療機関に対しても、緩和ケアの充実を指定条件にする。さらに、緩和ケアを全国に普及させる具体策を研究するため、年内に経験豊富な研究者を公募し、選抜する。
選ばれた研究者は、拠点病院を中心にモデルとなる地区を選定、5000人の患者を対象に研究を進める。

具体的には、ケアに必要な知識や技術を各医療機関に広める教育プログラムを作り、地域内の患者が必要とするときにすぐ緩和ケアを受けることが可能な医療体制のあり方を探る。
在宅での緩和ケアプログラムも作成し、末期がん患者の自宅療養を増やす。

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