エイズワクチン論文を訂正 国立感染研

厚生労働省直轄の国立感染症研究所が10億円以上の国費をかけて開発している国産エイズワクチンで、同研究所チームがサルで有効性を証明したと昨年発表した論文に誤りがあり、訂正されることが分かった。
感染研は「結論に影響はない」とタイでの臨床試験を目指す構えだが、チームは03年に発表した関連論文では、誤りの指摘で論文を撤回もしている。撤回と訂正が続き、日本のエイズワクチン研究は、信用が揺らぎかねない情勢だ。

訂正されるのは、感染研エイズ研究センターの本多三男・第一研究グループ長らのチームが、米国微生物学会の専門誌の昨年10月号に発表した論文。結核予防のBCGと、天然痘ワクチンで遺伝子の一部をそれぞれエイズ用に組み換えた2種類のワクチンをサルに連続して使う実験で、ウイルス感染を抑える効果があったという内容だ。

ところが今年3月、所内の研究者が「本多氏から事前に示された実験結果と、掲載された論文に食い違いがある」と感染研幹部に告発。エイズ研究センターが「論文不正疑惑」に関する内部審議委員会を設けて調べたところ、(1)ワクチン接種スケジュール表の数値に誤りがあり、(2)サルの免疫反応の値のばらつきを実際の5分の1に表示していた、ことが分かった。

委員会報告書では誤りの原因を、「実験データの管理の不備」などとした。データの訂正後も掲載論文の結論に相反するものではなく、「悪意のあるデータ改ざんやデータ捏造(ねつぞう)には当たらない」と結論づけ、論文の訂正を求めた。また、これを教訓にして、独自の研究記録ノートの整備や、実験記録の原則5年間保管などの対策を示した。

本多氏らは求めに応じて図表などの訂正を雑誌編集部に伝え、近く掲載される見込みという。

一方、チームが同じ雑誌の03年12月号に発表した関連論文では、今回内部告発した研究者が「26日観察した後に処分したサルが、12週間観察されたことになっている」と疑問を指摘。本多氏らは昨年3月、この論文を撤回していた。

本多氏は「撤回した論文は、2カ所で行っていた似た実験の混同があった。多くの人が関与して膨大な実験をしており管理にも問題があった。みなさんにご迷惑をかけて申し訳ない。今まで間違いにはきちんと対応してきた」と釈明している。

感染研の宮村達男所長は「研究データの処理には不十分さがあったが、捏造や改ざんといった悪意に基づくものではないと受け止めている。研究所としては論文の結論は正しいと考えており、ワクチンの実現に向け、さらに努力したい。研究データの管理をきちんとし、こうした問題が二度と起きないようにする」と話している。



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