IgA腎症 扁桃摘出+薬の波状投与:早期なら高い完治率

宮城県のA子さん(34)は、16歳の時に血尿が出て、腎臓の機能が低下する「IgA腎症」と診断された。血液が固まるのを防ぐ薬などによる治療を受けたが、21歳の時に腎機能が悪化し、「将来、結婚しても妊娠は難しい」と言われた。
その年、仙台社会保険病院で、扁桃(へんとう)の摘出手術とステロイド剤を投与する「併用療法」を受けた。1年後、尿の異常は消え、28歳で結婚。翌年に女の子、その後は男の子にも恵まれ、子育てに忙しい毎日を送っている。

腎臓は、血液中の老廃物や水分を濾過(ろか)し、尿を作り、体液の組成を一定に保つ働きがある。血液を濾過するのは、腎臓の表面近くにある糸球体と呼ばれる毛細血管のかたまった組織だ。

IgA腎症は、体内の免疫細胞が作る特殊なたんぱく質(免疫グロブリン)の一種、IgAが、この糸球体に沈着し、組織を破壊する病気。IgAは本来、病原体など外敵を退治するが、これが腎臓に過剰に集まり、自らの組織を攻撃する自己免疫疾患だ。原因は不明で、10―20歳代に最も多く発症する。

大半の患者は自覚症状がなく、約7割が検診で血尿が見つかり診断がつく。発症から約30年たつと、半数が腎不全に陥り、人工透析が必要になる。透析の原因としては、糖尿病性腎症に次いで多い。

治療は従来、降圧剤などの薬物療法や食事療法が行われてきたが、病気の進行を遅らせることはできても、完治は無理だった。

仙台社会保険病院腎臓疾患臨床研究センター主任部長の堀田修さんは、IgA腎症患者では、のどにある扁桃に病原体が常に感染し、糸球体に沈着しやすい異常なIgAが大量に作られていることに着目。扁桃摘出とステロイド薬を組み合わせた治療法を考案した。1980年代後半から800人を治療、その6割でたんぱく尿と血尿が出なくなった。

「腎臓病の治療で、なぜ扁桃の切除を?」。初めはいぶかったA子さんも、この説明を聞いて納得し、治療を受けることになった。

治療は、入院して扁桃を摘出した後、強いステロイド剤(メチルプレドニゾロン)を3日間点滴して、4日間休むことを3回繰り返す。退院後は、弱いステロイド(プレドニゾロン)を飲み、2か月おきに量を減らし、1年後には服用をやめる。副作用は少ない。

「扁桃の切除で、異常なIgAの供給源を断つ。次にステロイドの波状攻撃で、糸球体を攻撃する免疫細胞を抑える治療戦略」と堀田さんは説明する。扁桃を切除しても体調に問題はないという。

治療から10年以上たった患者のデータでは、血尿が出てから3年以内に治療を始めれば8割以上が治る。一方、5年以上たって治療を始めた場合、完治率は4割以下に落ちる。早期に治療すればするほど再発の確率は低くなる。

堀田さんによると、腎臓細胞を採取し調べる腎生検の結果、糸球体の破壊が30%程度以内までの患者が併用療法の対象になる。

ここ数年、併用療法は急速に広がってきた。保険も適用できる。虎の門病院分院腎センター(川崎市)内科医長の乳原善文さんは「この2年間で約40人を治療したが、腎機能は劇的に改善した。診断から時間がたった患者では治りにくい反面、悪化もしていない」と評価している。

関連記事:腎機能検査薬「イヌリード」、富士薬品が開発