終末期医療:患者本人より、家族の意思を尊重

がんの治療方針や急変時の延命処置などを決定する際、患者本人が意思表示できる場合でも、まず家族の意向を優先している病院が約半数の46.6%に上ることが、厚生労働省研究班(主任研究者、松島英介・東京医科歯科大助教授)の調査で分かった。
家族の意向を優先する理由として半数以上の54.6%は「家族とのトラブルを避けるため」と回答しており、患者の意思が十分尊重されていない実態が浮かんだ。

がん患者やその家族は、手術や抗がん剤など治療方法の選択、急変時には人工呼吸器や心臓マッサージなどの延命処置をするかどうかなどの決定を迫られる。
調査は、余命6カ月以内と診断された終末期のがん患者が入院している可能性の高い全国4911の一般病院(産科、リハビリ専門などを除く)を対象に昨年11〜12月に実施し、1499施設から回答を得た。

患者が意思決定できる場合に限定し、治療方針などを決める際に誰の意思を確認するか尋ねたところ、「(患者本人に意向を尋ねるかどうかも含めて)先に家族の意向を確認」と回答したのが46.6%(有効回答中の割合、674施設)。
最多は「患者、家族双方に確認」(同48.7%、704施設)で、「患者本人だけで十分」としたのは0.8%(11施設)にとどまった。

家族の意向を尊重する理由(複数回答)は、「本人の意思決定だけで判断すると家族から不満を言われる」(70.6%)、「家族とのトラブルを避けるため」(54.6%)など。65.9%の病院は患者本人に病名を伝えており、告知の有無にかかわらず、家族との摩擦を恐れる傾向がうかがわれた。「患者の意思を直接聞くことは終末期という状況になじまない」(24.8%)という回答もあった。

厚労省が昨年9月に公表した終末期医療の指針案では患者の意思(推定を含む)に基づいて方針を決定するとしているが、松島助教授は「日本の場合、まだ患者の意思は二の次になることが多いという現状を踏まえた議論が必要ではないか。患者本人の意思を尊重するには、精神的サポートのできる人材の育成が欠かせない」と話している。

調査ではこのほか、ベッド数が少ない病院や入院患者に占める終末期患者の割合が多い病院ほど、家族の意向を優先する傾向が強いことも分かった。
松島助教授は「中小規模の病院ではスタッフも少なく、意思確認のために患者本人の精神状態に普段以上に配慮したり、患者と家族の希望が異なった場合に対処する余裕がないのではないか」と分析している。

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