肺がんの早期発見が期待されるコンピューター断層撮影法(CT)による定期診断には、肺がんによる死亡率を低下させる効果がなく、不必要で有害な医療行為にもなりかねない―という調査結果を米メイヨー・クリニックなどの研究チームがまとめ、7日、米医師会雑誌に発表した。
研究チームは「より決定的なデータが得られるまで不必要なCTの診断を受けるべきでない」と提言している。
調査は、肺がんのリスクの高い喫煙者と元喫煙者3246人を対象に、4年間、毎年1回CT診断を実施。この間、肺がんで亡くなったり、進行性の肺がんと診断された患者の割合を、過去のデータをもとに算出したCT診断を受けない場合と比較した。
その結果、死亡率、進行がんに発展する率とも、診断を受けた場合と受けない場合に大差がないと判明。小さながん細胞を早期発見し、早く治療することで死亡率を引き下げるという、CT診断に本来期待される効果がほとんど得られないとわかった。
研究チームは「CT診断で肺がんを早期発見することはできるが、治療しないと急速に悪化するがんは見逃している可能性がある」としている。
ただ、米国では、死亡率の集計など、この研究のデータ解釈に疑問を投げかける専門家の声も出ている。肺がんのCT診断の効果とリスクについては、米国立がん研究所などが同国とオランダで疫学調査を実施している。
関連記事:動体追跡照射:動くがんの位置を追跡、放射線をピンポイント照射