タミフル問題でリレンザ(ザナミビル水和物)が品薄状態

インフルエンザ治療薬「タミフル」の使用後に異常行動を起こした事例が新たに見つかり、厚生労働省は、10代への使用中止を求める緊急安全性情報を出すよう、輸入・販売元の「中外製薬」に指示したと発表した。

しかし、もう一つの抗インフルエンザウイルス薬「リレンザ」(一般名ザナミビル水和物)を服用した子供が、同様な行動などを起こした事例は今のところ報告されておらず、インフルエンザのオフシーズン近くになって品薄状態になっているという。

インフルエンザウイルスは、性質からA型、B型、C型に分類される。A型とB型は、ヒトや家禽(かきん)類に最も強い病原性と感染力を持つ。C型は、子供が感染した場合はA型のように呼吸器症状が現れるが、大人が感染してもほとんど症状は現れない。

かつて世界中にスペイン風邪やアジア風邪といったパンデミック(大流行)を引き起こしたウイルスはすべてA型だ。A型ウイルスは円形または紐(ひも)状。表面に二種類の糖タンパク質が突き出ている。一つはヘマグルチニン(HA)、残る一つはノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれる。これらの糖タンパク質もウイルスのタイプで異なり、それによってさらに亜型に分類される。

例えば、高病原性鳥インフルエンザH5N1亜型。A型のインフルエンザでヘマグルチニン(HA)が5、ノイラミニダーゼ(NA)が1を表している。HAは1から16、NAは1から9の亜型が存在する。HAは、ウイルスが気道の粘膜から細胞内に侵入する際の先導役になり、NAは増殖したウイルスを細胞外に放出する。

タミフルとリレンザは、このNA(ノイラミニダーゼ)の働きを選択的に阻害し症状の悪化を改善する。ただし発症後48時間以内に服用しないといけない。類似の機序だが、異常言動との関連性を指摘されているのはタミフルばかり。
製薬業界関係者によると、要因は2つあるという。一つは、処方量の違い。タミフルとリレンザの比率は9対1か、それ以上、タミフルが処方されており、異常言動との関連性が疑われやすい。

もう一つは剤形。タミフルはカプセルなので容易に服用できるが、成分が血中に入り全身を回る。一方、リレンザはドライパウダー。専用吸入器で吸引し上気道に高濃度の薬剤が届き作用する。パウダー(粉末)を生理食塩水などで溶かして液化させ、電動ネブライザー(吸入器)を使って直接上気道に届ける方法もある。

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