欧米に比べて遅れているとされる痛みの緩和ケアに薬剤師も積極的にかかわろうと、「日本緩和医療薬学会」が結成されることになった。モルヒネなど医療用麻薬の効果的な使い方の普及に、「薬の専門家」として一役買いたい考えだ。将来的には専門薬剤師の認定制度をつくることも検討している。
緩和ケアは、患者の生活の質(QOL)を高める手段として積極的に導入する医療機関が増えており、02年度の診療報酬改定では、専門の医師や看護師らによる「緩和ケアチーム」に報酬が加算された。このチームに薬剤師を加える医療機関も増えてきている。
さらに厚生労働省は今後、在宅医療を広げていく方針で、自宅で療養するがん患者らの間でも緩和ケアのニーズは高まると予想される。このため保険薬局の薬剤師も、緩和ケアについて理解を深め、往診する医師や看護師らと連携する必要性が高まっている。
がんを専門とする薬剤師としては、日本病院薬剤師会が今年度から認定試験を始めた「がん専門薬剤師」制度がある。しかし、抗がん剤を専門とする薬剤師の育成が大きな目的のため、新たに発足する緩和医療薬学会は、モルヒネなどによる緩和ケアに特化した専門薬剤師の育成を目指す。
世話人代表を務める鈴木勉・星薬科大学教授(薬品毒性学)は「病院と保険薬局の薬剤師、薬学研究者の連携強化を図り、緩和医療における薬物療法の推進と充実を図りたい」と話している。
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