赤ちゃんのへその緒や胎盤にある臍帯血(さいたいけつ)から、様々な細胞に育つ可能性がある幹細胞を高い確率で取り出し、軟骨や骨を作ることに、東大医科学研究所細胞プロセッシング研究部門(高橋恒夫客員教授)が成功した。
5月に米ロサンゼルスで開かれる国際臍帯血移植シンポジウムで発表する。
高齢化とともに、寝たきりの原因になる骨折や、ひざが痛む変形性ひざ関節症などの患者が増えており、骨や関節を再生する治療につながると期待される。
同研究部門の張暁紅助手らは、出産から5時間以内に採取した臍帯血から、25例中20例の高率で幹細胞を取り出すことに成功。薬剤とともに3週間培養したところ、コラーゲンなどを含む直径約3ミリの軟骨ができた。
臍帯血から幹細胞を取り出したとの報告はこれまでにもあるが、実際に採取するのは極めて困難だった。軟骨細胞は骨髄や脂肪組織の幹細胞からも作れるが、臍帯血の幹細胞は、直径で骨髄の2倍近く、脂肪細胞の10倍以上大きく成長した。張助手らは「臍帯血の幹細胞は、軟骨や骨の細胞になりやすいことを確認した」としている。
幹細胞などから、失われた組織や臓器を作る再生医療の研究が進んでいる。幹細胞を骨髄から採取するのは、体に大きな負担がかかるのに対し、臍帯血は、これまで廃棄してきたものを活用する利点がある。また、受精卵から作られる万能細胞のES細胞と異なり、倫理的な問題も生じない。