経口鉄キレート剤「エックスジェード」を承認申請へ:ノバルティス

ノバルティスファーマは、経口鉄キレート剤「エックスジェード」(一般名:デフェラシロクス)を、輸血による慢性鉄過剰症の治療薬として申請した。承認されれば、日本で初めてかつ唯一の経口鉄キレート剤となる。

輸血は、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、βサラセミア及び鎌状赤血球貧血などの難治性貧血の患者にとって、QOL及び予後の改善に必要不可欠な支持療法となっている。
通常、人の体内では食物から摂取した鉄と代謝される鉄がほぼ同量で、体内の鉄量は一定に維持されている。
しかし、輸血などにより多量に鉄を摂取した場合などに対し、積極的に鉄を排泄する機能が備わっていないため、輸血が繰り返し行われると過剰に鉄が蓄積され、鉄過剰状態となる。
輸血回数が増加すると、肝の線維化、心筋線維の変性、心肥大など時として生命を脅かす危険性が増大し、心不全など患者の予後を左右する場合もある。

現在、慢性鉄過剰症の治療法は、「デスフェラール」(一般名:メシル酸デフェロキサミン)による除鉄治療のみで、頻回の輸血により体内に取り込んだ鉄を適切に除去するためには、連日の注射が必要となっている。

「エックスジェード」については、国内外で実施された試験結果から、βサラセミアや鎌状赤血球貧血、骨髄異形成症候群やその他の稀な貧血の治療として輸血を受けている患者の鉄量を、維持もしくは減少させたことが明らかとなり、概ね良好な忍容性も示されたことにより、このたびの申請にいたった。

エックスジェード
慢性鉄過剰症治療薬では世界初の経口タイプで、経口鉄キレート剤と呼ばれる。1日1回の投与で効果が望め、患者の「生活の質(QOL)」が大幅に改善するとみられる。

鉄過剰症は、遺伝に起因するとされる慢性不良性貧血や鎌状赤血球症、サラセミア、骨髄異形成症候群といった疾患を治療する際、大量の輸血をすることで発症。放置すると、体内に過剰な鉄が蓄積され、肝臓や心臓、内分泌せんを損傷する。

現在の標準的な治療は、患者が輸血中または体内に過剰な鉄分が蓄積中にデスフェラール(一般名デフェロキサミン)を1日1回8時間―12時間点滴で投与。これを1週間のうち5日―6日繰り返すという。1日2回に分けて筋肉注射で投与する場合もある。

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