生きた細胞を可視化できることで、がん治療への活用などが期待され、研究が進むブドウ糖「2NBDG」について、その標準的な製造と使用法について弘前大学医学部生理学第一講座の山田勝也助教授(51)らがまとめた論文が、世界的な学術雑誌ネイチャーの一つネイチャープロトコル誌に掲載された。世界的に関連研究が進む中、今後の研究発展の一助になるものと期待されている。論文は、インターネット上で29日から公開されている。
論文名は「生きた単一細胞へのブドウ糖取り込みの可視化の方法」。2NBDGは1996年、東京農工大学の松岡英明教授が人工的にブドウ糖に蛍光物質を結合させて開発した。
それまでは、細胞がブドウ糖を取り込む性質を踏まえ、がん細胞の状態などを調べるに際しては放射性標識ブドウ糖が主流として使われてきた。定量が数値化でき信頼性も高かったが、単一細胞までは見分けられないなどの弱点もあり研究がなされていた。
松岡教授の2NBDG開発により、単一細胞が見分けられるようになったが、2NBDGが細胞に取り込まれたかなどが実証されていなかったため普及に至らずにいた。これを受け、当時秋田大学にいた山田助教授らが98年から2000年まで共同研究を行い、その効用を実証。その結果、世界中の研究者が同様の開発に取り組むなどして研究が盛んになった。
この結果、ネイチャープロトコル誌から標準的な使用方法を示す目的で執筆依頼がなされた。約5カ月かけて完成させた論文について、同助教授は「同誌は教科書的な役割を持っており、日の浅い学者でも取り組めるように合成法をオープンにし、標準的な使い方を明らかにした」と話す。
2NBDGは、がん細胞や心筋細胞、血管、脳細胞の検査など医療分野のほか、生きた細胞を検出できるため水質検査や食品検査などへの応用も期待できる。