がん治療薬「CBP501」で共同事業:武田薬品、キャンバス

武田薬品工業は、キャンバス(静岡県沼津市)と、キャンバスが創製、開発中のがん治療薬CBP501に関する共同事業化契約を締結したと発表した。
CBP501はがん細胞死を促進する作用をもっており、キャンバスは米国で第1相臨床試験を実施している。
今回の契約により、武田は全世界を対象とする独占的な開発・製造・販売権を取得する。ただ、米国では両社が共同で開発する。

また、武田は米3Mから、子宮頚がんの発症リスクに関連が高いとされている子宮頚異形成を伴うヒトパピローマウィルス(HPV)感染症の治療薬であるR-851に関するすべての権利を譲り受けると発表した。

プレスリリース
CBP501は、癌細胞において細胞分裂の過程でDNAの損傷をチェック、修復を行うG2期チェックポイントを阻害することにより、癌細胞死を促進する作用を持っています。
同チェックポイントを選択的に阻害する本剤は正常細胞に与える影響の少ない抗癌剤として、化学療法剤との併用により、癌細胞のDNA障害を促進させる効果が期待されています。現在、キャンバス社は、米国で本剤の第1相臨床試験を実施しています。

G2期チェックポイント阻害剤について
細胞周期とは、1つの細胞が2つに分裂する過程をいい、その1周期はG1期→S期(複製期)→G2期→M期(分裂期)で構成されています。G1期とG2期の終わりには、それぞれ「チェックポイント」が存在し、DNAに入った損傷を修復し、修復できない損傷がある場合には細胞を自死させています。

正常細胞では、DNAの正確な複製によって細胞の分裂が正常に行なわれるように、複製をおこなうS期の前に位置するG1期のチェックポイントが主力として活用されており、G2期チェックポイントは、正常細胞ではあまり使用されていません。

多くの癌細胞では、G1期チェックポイントが機能不全となっています。しかし癌細胞といえどもDNAにあまり多数の損傷が入ると生存できなくなることから、正常細胞ではあまり使用されないG2期チェックポイントが活性化され、細胞周期をコントロールしています。

DNAに損傷が加わった場合、正常細胞は主としてG1期チェックポイントが活性化し、癌細胞はG2期チェックポイントが活性化して、それぞれ一旦細胞周期を停止し、修復を試みます。
そのとき、G2期チェックポイントが阻害されていると、癌細胞ではチェックポイントが存在しない状態になります。その結果、DNAに加わった損傷を修復することが出来ず、癌細胞は細胞死を来たします。反面、正常細胞はメインのG1期チェックポイントがアクティブなため、影響が少ないと考えられます。

したがって、G2期チェックポイントの選択的阻害は、正常細胞に影響の少ない抗癌剤の創薬ターゲットとしてきわめて適切なものと考えられています。

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