受動喫煙が注意欠陥・多動性障害(ADHD)の一因の可能性

受動喫煙した子ラットは多動になるなど、脳神経の発達に影響することが、幸生リハビリテーション病院(兵庫県)の鬼頭昭三医師らの研究でわかった。受動喫煙が発達障害の一つである注意欠陥・多動性障害(ADHD)のリスクの一因になる可能性を示唆するもので、16日から名古屋市で始まる第48回日本神経学会で発表される。

実験では、妊娠直後から出産前日までの母ラットに約3週間、出生直後の子ラットに4週間、それぞれ毎日2時間、たばこの副流煙を吸入させ、受動喫煙させた。

母の胎内で受動喫煙した子ラットも、出生直後の子ラットも、受動喫煙していない子ラットに比べ、行動時間や行動距離が約1.5倍と多動になった。エサの場所の認知度を測るテストでは、吸っていないラットに比べ失敗が約1.5倍多かった。

脳の生化学実験では、脳内物質ドーパミンの受容体が増えるなど神経発達に偏りがみられた。ADHDの一因としてドーパミンの不具合が指摘されている。鬼頭医師は「人間と同一視できるかは検証が必要だが、受動喫煙が環境要因の一つになりうる」としている。

欧米では、妊婦が直接喫煙した場合に、ADHDの子が生まれる確率が高いことを示唆する疫学調査がある。北海道大院の田中康雄教授は「ADHDの行動が起きる過程は複雑でリスクも一つではないが、実験は、妊婦が直接喫煙するだけでなく受動喫煙した場合も、子にとって危険因子になる恐れを指摘している」と話している。(asahi.com)

注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは
Attention-Deficit Hyperactivity Disorder の略で、「注意欠陥/多動性障害」のことを言います。アメリカ精神医学会のDSM-W(精神疾患の診断・統計マニュアル)によれば下記の1〜3を特徴とする症候群です。
なお,世界保健機構(WHO)の作成した診断体系では,多動性障害(Hyperkinitic Disorder)という診断カテゴリーが概ね同義で用いられています。

  1. 不注意…注意の集中が困難、気が散りやすい、必要なものをよくなくす、毎日の活動を忘れてしまう等
  2. 多動性…何となくそわそわ、席を離れてしまう、しゃべりすぎる、高い所に登る等
  3. 順番を待つことが苦手、考えないで行動する、他人にちょっかいを出す等

ADHDは,症状を基礎にした診断なので、原因などについては、脳の機能障害が推定される段階であって、現在のところ詳しく分かっていません。
またこうした行動については、学校場面で日常的に見られるものですが、他の診断項目もあり、診断は専門家によってなされる必要があります。

関連記事:女性の喫煙:心筋梗塞になる危険性が8倍に