ハムスターに勃起不全治療薬「バイアグラ」を注射すると、「時差ぼけ」からの回復が早まることが、アルゼンチンの研究チームの実験で明らかになり、21日付の米国科学アカデミー紀要(PNAS)電子版に発表した。研究チームは「頻繁に旅行する人の時差ぼけ解消にも役立つかもしれない」と分析している。
研究チームは、ハムスターに体重1キロあたり3.5ミリグラム、10ミリグラムのバイアグラをそれぞれ注射したうえで、明かりをつける時間を6時間早め、運動を始める時間の変化を調べた。
その結果、バイアグラを注射しないハムスターは、新しい明暗のリズムに適応して運動開始時間が6時間早まるまでに約12日かかったが、3.5ミリグラムを注射したハムスターは約8日、10ミリグラムのハムスターは約6日で、「時差ぼけ」解消に要する時間が短かった。
生物には、睡眠・覚せいや体温変化など生体のリズムをつかさどる体内時計がある。バイアグラを注射したハムスターは、体内時計が早く調節されたとみられる。
バイアグラは勃起にかかわる化学物質の分解を抑制することで作用する。
この化学物質は、体内時計を調節する神経経路にも作用していることが分かっており、研究チームは、分解が抑制されることで時差ぼけ解消が早まると見ている。
一方、明かりをつける時間を遅くした場合は、バイアグラを注射しても体内時計の調節に変化はなかった。時間を早める場合は東への旅行、遅くする場合は西への旅行にあたるという。
研究チームは「成人男性は勃起不全治療の際、1回50ミリグラムのバイアグラを処方される。ハムスターに比べれば少ない量だが、薬を代謝する能力には生物によって差がある。適切な量の服用が、東へよく渡航する人や交代勤務の人の体内時計の調節を促す可能性はある」と話している。(毎日新聞)
バイアグラの副作用について
バイアグラのの作用メカニズムは心臓病の治療に用いるニトログリセリン等の硝酸塩系薬剤と同様のものであるため、副作用として血圧の急激かつ大幅な低下や、心臓への酸素供給に支障をきたす狭心などがあらわれることがあります。(芸人の江頭2:50が飲み屋でバイアグラを一気飲みして、救急車で運ばれたこともありました 笑)
特に同薬服用時に狭心発作に見舞われ、救急病院に搬送された際、服用者が同薬使用を告げずに硝酸塩系薬剤を投与され、症状が悪化・最悪の場合には死亡するケースも見られます。
販売元であるファイザー製薬はこの問題に対して、医師・薬剤師への禁忌情報の提供を行うと共に、錠剤パッケージ裏にニトログリセリン等硝酸塩系薬剤との併用が出来ない旨を記載しています。
また、「滋養強壮」「精力強壮」を謳った健康食品・サプリメントのなかには、バイアグラの成分を含むものもあり、厚労省が注意を喚起しています。
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