ビタミンDの摂取量を高めるとがんリスクが軽減:米大学グループ

クレイトン大学(ネブラスカ州)の研究者らは、ビタミンDの摂取量を高めることにより、乳がんをはじめとするがんのリスクが劇的に軽減されるとする研究内容を発表した。
同大医学看護学部のコーン・ラッペ教授らは、研究開始前10年間にがんに罹患していない閉経後の女性1,179人を対象に、カルシウム(サプリメント)1日1,400〜1,500mg摂取群、カルシウム+ビタミンD 1日1,100IU(国際単位)併用摂取群、プラセボ摂取群の3群に割り付け、4年間追跡調査を行った。

4年後、カルシウム+ビタミンD 併用群はプラセボ群に比べがんの発症リスクが60%低く、カルシウム単独群では47%低かった。また、研究開始時に未診断の癌患者が含まれていたことを考慮して初年のデータを削除し、3年間での結果をみると、併用群の罹患リスクはプラセボ群に比べ77%低くなり、カルシウム単独群では変化はなかった。試験期間中に50人が皮膚以外のがんに罹患、乳がんが最も多く、肺がんや大腸がんもみられた。

他の研究でも、高用量ビタミンDとカルシウムの併用により閉経前女性の3分の1で乳がんリスクが低減することが示されている。研究グループは、ビタミンDの高用量摂取が1型糖尿病や高血圧症などと同様に、多くの種類のがんリスクを軽減することが明らかにされていることから、現状のビタミンDの1日推奨摂取量(51-70歳成人では400IU)を改め、閉経後女性では1日1,100IUまで高めることを進言している。

これに対し、米国癌協会(ACS)は「研究結果は興味深いが、被験者数が少なく、確実な結論を下す前に再現性の確認が必要であり、がんリスクの軽減目的でビタミン摂取を勧めるには時期尚早」と述べている。研究報告は、米医学誌「American Journal of Clinical Nutrition」6月号に掲載された。(HealthDay News)

ビタミンDについて
食べ物からとったビタミンDは、肝臓と腎臓の酵素によって活性化ビタミンDに変換されます。
活性化ビタミンDは小腸でカルシウムとりんの吸収を促すため、血液中のカルシウム濃度が高まり、骨の形成が促進されます。

血液中のカルシウムは神経伝達や筋肉の収縮という重要な働きに関わるため、常に一定濃度に保つ必要があります。そのコントロールを行なうのも活性型ビタミンDの役目です。
血液中のカルシウム濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンなどと協力して小腸粘膜に作用し、腸管からカルシウム吸収を促進したり、骨からカルシウムをと貸し出したりしています。

ビタミンDが欠乏すると、成人、特に妊婦や授乳婦では骨軟化症になります。
子供では成長障害が起こり、背骨や足の骨が曲ったり、O脚、くる病になります。高齢者や閉経後の女性の骨粗しょう症の原因にもなります。