厚生労働省の「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」(座長=高久史麿・自治医科大学学長)は29日、重い病気で他に治療法がない場合、国内では未承認の薬も使用できる制度を導入すべきだとの見解で一致した。7月下旬にも報告書として取りまとめる。
厚労省は今後、導入に向けた検討を始めるが、医療保険上の取り扱いや副作用被害が出た場合の救済制度の仕組みなど、検討が必要な課題が多数残っており、導入までには曲折も予想される。
報告書の骨子案によると、対象となるのは欧米で承認済みの医薬品のほか、国内や欧米で臨床試験を実施中か、臨床試験は終わったものの承認がまだ得られていない医薬品。
制度が示す条件に合えば、こうした未承認薬についても製薬メーカーが製造・輸入・販売できるほか、医師も単独で輸入することもできるとした。
現在は個人輸入されている未承認薬については、薬事法で規制できることになり、国は使用中止などの勧告をできるようになる。
欧米では同様の制度がすでに導入されているが、国内では未承認薬を使わざるを得ない場合でも、販売目的で製造、輸入をすることは禁止されている。
このため、海外ですでに承認されている抗がん剤や難病の治療薬などを使えないケースが多数起き、個人が自己責任で輸入するケースが相次いでいる。
たとえば、重い副作用が確認され、1962年に販売が停止されたサリドマイドは、多発性骨髄腫への治療効果が注目され、2000年ごろから個人輸入が急増。05年には約54万4000錠が輸入された。(YOMIURI ONLINE)
コンパッショネートユース(CU)制度について
重篤な疾病で代替治療法がない場合に限り人道的見地から未承認薬の製造、輸入、販売を許可する制度です。現在、厚生労働省は、海外で既に承認されている国内未承認薬の治験を推進するための取り組みや、治験のプロトコルに合わないために治験に参加できない患者さんのために、治験終了後から承認までの間でも、未承認薬(治験薬)を提供できる体制も整えています。
一方、こうした取り組みだけでは十分ではなく、医師や患者さんの中には、未承認薬を個人輸入して使用しているケースもありますが、個人輸入では品質確保などが難しいなどの課題も指摘されていました。
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