人の皮膚から、さまざまな細胞に成長できる万能性をもつ「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を世界で初めてつくった京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授(幹細胞生物学)らの研究グループが、作製法を改良し、より安全なiPS細胞を得ることに成功したと発表した。1日発行の英国科学誌「ネイチャーバイオテクノロジー」(電子版)に掲載される。
これまでは、がん遺伝子を含む4遺伝子を皮膚細胞に導入していた。山中教授らによると、今回は、36歳の女性の皮膚細胞に胚性幹細胞(ES細胞)で重要な働きを持ち万能性に関係ある3個の遺伝子だけを組み込み培養。ES細胞と同じ働きをするiPS細胞をつくることに成功した。
4遺伝子を使った方法では安全性の問題が指摘されていたが、今回の研究では、がんを引き起こす働きがある遺伝子「Myc」を使わなくてもiPS細胞が誕生。iPS細胞を使って生まれたマウスでは、生後100日目までに腫瘍は確認されなかった。
しかし、遺伝子を組み込む際に使うウイルスが、がんを起こす可能性があり、将来、このiPS細胞を使って臓器などをつくった場合、がんが発生する可能性が完全に否定されたわけではないという。
山中教授は「臨床応用に向けて一歩前進だが、安全性を向上させ、臓器などをつくるための分化誘導技術を確立するためにはさらに研究を続けなければならない」としている。(産経新聞)
iPS細胞について
iPS細胞はES細胞に類似した形態、増殖能、および遺伝子発現を示します。
またマウス皮下に移植すると様々な分化細胞や組織から形成される奇形腫が形成されること、および、マウス初期胚に移植するとその後の胎児発生に寄与することから、iPS細胞は万能性を有していることがわかっています。
脊髄損傷や心不全などの患者体細胞から、iPS 細胞を誘導し、さらに神経細胞や心筋細胞を分化させることにより、倫理的問題や拒絶反応のない細胞移植療法の実現が期待されています。

