睡眠時間:短くても長くても「鬱(うつ)」のリスク高まる

睡眠時間が短すぎても、長すぎてもうつ状態が高まることが、日本大学医学部の兼板佳孝専任講師らの全国約2万5000人を対象にした大規模疫学調査で明らかになった。
最もうつ状態の割合が低かった睡眠時間は「7〜8時間」で、うつと睡眠障害との関係が疫学調査で検証された。また調査では、睡眠障害のうちうつとの関連が強いとされてきた早朝覚醒より、なかなか寝付けない入眠障害との関連の方が強いことも示された。

調査は、睡眠障害とうつに密接な関連があることから、両者の関係を知り、今後の治療に役立てることを目的に行われた。2000年の旧厚生省保健福祉動向調査に合わせて実施されたもので、うつと不眠の関係を調べた調査としては国内外で最大規模という。うつの判断は、疫学的な観点からうつ状態(臨床診断上のうつではない)を判定する「CES−D」を用いて行った。

その結果、7〜8時間の睡眠をとっている人が最もうつ状態である割合が少なく、23・5%。それより短くとも長くともうつ状態の人の割合は高くなる傾向が見られた。うつ状態の人は5時間未満では47・9%、9時間以上10時間未満では32・1%で、これらは統計的にも有意差が認められている。

また、入眠障害など何らかの睡眠障害を持つ人たちは、うつ状態の人は4割前後おり、持っていない人たちと比べても有意に高い割合だった。

それら睡眠障害の症状とうつ状態との関連性を多変量解析で調べたところ、早朝覚醒より入眠障害の方が強い関連性があることが分かった。より重いうつ状態を抱える人との関連性でも同様の傾向がみられている。
現在の学説でうつとの関連が強いとされている早朝覚醒については、むしろ高齢という年齢との関連が強い結果となった。

そのほか、寝付けないとして「寝酒」をすることは、夜中や早朝に目が覚める中途覚醒を引き起こすことが示唆された。これまで血中のアルコール濃度と脳波の関係など生理学的には示されていた知見だが、疫学的にもそれが追認される形となった。

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第一三共、血圧降下剤の配合剤を承認申請

第一三共は29日、血圧降下剤(降圧剤)「ベニカー」(日本製品名はオルメテック)に別の降圧剤を加えた配合剤「CS―8663」(開発番号)の販売承認を米食品医薬品局(FDA)に申請したと発表した。
承認取得後、2007年度中の発売を見込む。ベニカーだけの単剤と合わせ、10億ドル(約1150億円)以上の売り上げを目指す。

配合剤は「アンジオテンシン2拮抗剤(ARB)」と呼ぶ種類のベニカーに、「カルシウム拮抗剤」という別の種類の降圧剤「ベシル酸アムロジピン」(一般名)を合わせた。アムロジピンは米ファイザーの製品だが、07年9月に独占販売期間が終了する。

配合剤は血圧を下げる効果が一段と高いとしている。米国では配合剤がARBの主流になりつつある。第一三共は重症の患者には配合剤を薦めるなど、単剤と対象をすみ分けて販売していく計画だ。

万有製薬 新製法の肺炎球菌ワクチン「ニューモバックスNP」を発売

米メルク傘下の万有製薬は29日、新製法の肺炎球菌ワクチン「ニューモバックスNP」を発売したと発表した。
万有はニューモバックスを1988年から販売しているが、BSE(牛海綿状脳症)問題に対応し、ウシ由来の原料を使わない製法で改めて「NP」として販売承認を取得した。新製法で量産もしやすくなり、国内の需要増に対応する。

ニューモバックスは肺炎球菌によって引き起こされる肺炎などの感染症を防ぐワクチン。他の病原体に比べ肺炎球菌が原因の肺炎は重症化しやすい特徴があるという。ここ数年でワクチンを公費で助成する自治体が増えており、2005年は20万人弱が接種した。

同ワクチンはメルクが米国で製造し、日本に輸出している。米国や英国などでは既に新製法に切り替えて販売している。

糖尿病:食欲促進ホルモン「グレリン」がインスリン分泌を抑制

食欲促進ホルモンとされる「グレリン」に、インスリン分泌を抑制する作用があることが、自治医大医学部(栃木県)の矢田俊彦生理学教授らの研究で判明した。
マウス実験でグレリンの分泌を減らすとインスリンの分泌が活発化し、血糖値の上昇を平均30%以上抑えられた。28日付の米国の糖尿病学会誌「Diabetes(ダイアビーテス)」で発表した。
矢田教授らはグレリン抑制の薬剤開発を通じ、糖尿病治療の臨床化を目指す。

実験は20匹のマウスを使って実施。グレリンと結合する性質を持つ受容体アンタゴニストでグレリン分泌を「抑制」したグループと、「非抑制」のグループに分け、通常餌と高脂肪餌の2種を与え血糖値を比較した。

その結果、「非抑制」マウスは通常餌で1デシリットル当たり300ミリグラムだった血糖値が、高脂肪餌では400ミリグラムと30%以上も上昇。
一方、「抑制」マウスは200ミリグラムから210ミリグラムと5%弱の上昇だった。「抑制」のインスリン分泌量は「非抑制」の約1.6倍だった。

また、膵臓(すいぞう)周辺の血液を調べ、グレリンは膵臓からも分泌されることが分かった。グレリンの分泌源は99年の発見以来、胃とされていた。

従来の糖尿病治療は、薬物でインスリン分泌を促してきたが、膵臓に負担がかかった。グレリン分泌を直接的に調節できれば、より負担の少ない治療が見込める。また、膵臓機能低下などを原因とする糖尿病治療にも対応できるという。

矢田教授は「マウスの耐糖能力を変えた実験を続け、身体的な負担が少ない治療薬の開発に取り組みたい」と話している。

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牛乳成分ラクトフェリンが放射線障害を予防

牛乳や人間の母乳に含まれる「ラクトフェリン」という成分に、放射線を浴びた際に起きる放射線障害を防ぐ効果があることを、放射線医学総合研究所(放医研、千葉市)や石巻専修大(宮城県石巻市)などの研究チームが、マウスを使った実験で突き止めた。骨髄破壊に代表される放射線障害の予防や治療薬としての利用が期待できるという。

研究チームは、ラクトフェリンの効果を確認するため、50匹のマウスを25匹ずつの2群に分け、一方にだけラクトフェリンを0・1%含む飼料を1か月与えた。
その上で、50匹すべてに半数が死に至る量のX線を照射したところ、ラクトフェリンを与えられなかった群は照射後30日での生存率が62%だったのに対し、与えられた群は85%が生存していた。

さらに、ラクトフェリンを与えなかった別のマウスに同量のX線を浴びせた上で、その直後にラクトフェリン4ミリ・グラムを含む食塩水(0・3ミリ・リットル)を腹部に注射する“緊急治療実験”を行ったところ、30日後の生存率は一気に90%まで伸びることが確認された。
ラクトフェリンには、がんなどの原因となる活性酸素を除去する抗酸化作用があるとされており、研究チームはこれが放射線障害を防ぐ際にも重要な働きをしているとみている。

放医研の西村義一・基盤技術センター長は「ラクトフェリンは安価で、被曝(ひばく)後に投与しても有効なことから、原子力産業の従事者などの危険低減に役立つだろう」と話している。

アルツハイマー病を血液1滴で診断

アルツハイマー病を引き起こすとされるタンパク質を特殊な電極で検出する新しい診断法を、北陸先端科技大学院大の三浦佳子准教授(生体高分子)が二十七日までに開発し、特許を出願した。
患者の血液を一滴垂らすだけで診断できる検査キットの商品化につながる技術という。認知症の予防に不可欠なアルツハイマー病の早期発見に向け、集団検診などでの実用化を目指す。

三浦准教授は一昨年、アルツハイマー病の原因となる「アミロイドβタンパク」が毒性を持つ際に結合する「糖鎖(とうさ)」と呼ばれる物質を発見した。

新しい診断法は、この糖鎖を塗った特殊な電極を作成し、原因タンパクが電極に触れた際に発生する微弱な電気信号を読み取って、原因タンパクが毒性を持つかどうかを瞬時に判断する。

電極は北陸先端大の民谷栄一教授が開発した大きさ約五ミリのバイオチップを応用した。将来的には血液一滴での検出を目指しており、熱や光に強い糖鎖を利用することで誰にでも取り扱いやすい検査キットとして商品化が見込めるという。

アルツハイマー病は原因タンパクの異常から認知症に至るまで約二十年かかるとされるが、現在の医療では認知症の進み具合や脳の委縮で診断するしかない。

三浦准教授は、新しい診断法を集団検診に取り入れることでアルツハイマー病の早期発見が可能とみており、「薬局で売られている糖尿病や妊娠の検査キットのように自宅でも簡単に診断できれば、高齢者の不安解消につながる」と話している。

アルツハイマー病 認知症の一種で、次第に物忘れが激しくなり、時間や場所が分からなくなったり、食事や排泄などの障害に進行していく。脳内で異常にできたアミロイドβ タンパクが互いに長くつながり、糸状に伸びることで神経毒性が発生、脳細胞が死んで認知症を引き起こすという「アミロイド仮説」が有力視されている。

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乳酸菌食品で花粉症緩和「一定の効果」

乳酸菌食品を毎日とれば、スギ花粉症を含むアレルギー性鼻炎の症状を緩和する効果が一定程度あることが、厚生労働省の研究班(主任研究者=岡本美孝・千葉大教授)による調査でわかった。食品メーカーの研究でヨーグルトなどの効果を示した例はあるが、公的研究でも裏付けられた形だ。
岡本さんは「食品だと安価かつ安全に摂取できる利点がある。ただ、薬ではないので、短期間で大きな効果は期待できないようだ」と話している。

昨年11月から今年4月にかけて、花粉症を含むアレルギー性鼻炎の患者89人を無作為に2グループに分け、44人には特定の乳酸菌粉末50ミリグラムが含まれる食品を、45人には入っていない食品を、それぞれ毎日摂取させた。1日あたり、市販のヨーグルトだと100グラム程度にあたる。

摂取した半年間、くしゃみや鼻水、鼻づまりの頻度、日常生活への支障の度合いなどを日記につけてもらい、症状なしから最重症までの5段階で点数化し、血液検査も実施して両者を比べた。

その結果、鼻水と鼻づまりの症状で、乳酸菌を摂取しなかったグループは花粉飛散期に悪化していったが、摂取したグループではあまり変化がなく、最大で1段階ほど症状に差が出た時期があった。ダニによる通年性アレルギー性鼻炎も、摂取グループの方が医師の診断で改善傾向があった。

研究に用いたのは死んだ乳酸菌。前年の研究では生きた乳酸菌を使ったが効果は表れなかったという。その差がなぜ出たのか、仕組みは不明だ。

花粉症は、人の免疫系が花粉たんぱく質に反応して起きるが、今回の研究では、乳酸菌摂取で、血中のアレルギーにかかわるリンパ球や抗体の量で明確な差は出なかった。
岡本さんは「来季も調査し、長期間摂取することで体質に何らかの変化が生じるか、その作用を検証したい」と話している。

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伸び悩む「新生児治療ガイドライン」普及率

重い病気をもつ新生児の治療方針を家族と医療関係者が話し合うためのガイドライン(指針)について、「現在使っている」とする新生児医療機関の医師は、3割にしか達していないことが全国調査でわかった。
指針は、医療が進歩する中、重症新生児の延命治療をどう考えるかという「終末期医療」の道筋などを示したものだが、多忙などを理由に普及が進んでいない実態が明らかになった。

広島大の横尾京子教授(周産期看護開発学)らが27日、さいたま市で開かれた学会シンポジウムで発表した。調査は今年2〜3月に実施。全国の主要な新生児医療機関262カ所を対象に、医師と看護師の責任者に質問紙を送り、回答を得た。回収率は53%だった。

指針を「現在使用していて、今後も使用する」と答えたのは医師の29%、看護師の12%。「現在使用していないが、今後は使用する」は、医師の50%、看護師の58%だった。

また、指針が「役立つ」と答えたのは医師で86%、看護師で90%。役立つし、使いたいが、使えていない現実が明らかになった。

指針は、田村正徳・埼玉医大教授(小児科)を主任研究者とする厚生労働省研究班が、04年にまとめた。最新の医学的情報に基づいて判断することなどを定め、特に、生命維持治療を控えたり中止したりする場合は、医師だけでなく看護師や心理士など他の医療スタッフも同席し、父母と十分に話すことを求めている。
対象の病気を明示していないが、心臓などに重い障害を起こすことが多い「18トリソミー」などで話し合いがもたれている。

この結果について、田村教授は「米国の施設に比べ、日本は医師や看護師が少なく忙しい。父母の心を支える心理士らも少ない。ゆっくり話し合う部屋がない場合もある。指針が実行できる社会的支援策が必要だ」と語る。

がん細胞の転移メカニズム解明…東京女子医大チーム

がん細胞が、正常な細胞の防御システムに“便乗”して転移することを、東京女子医大の丸義朗教授(薬理学)らの研究チームが突き止めた。
がんの転移を予防する薬の開発につながる研究成果として、注目される。27日付の英医学誌電子版に発表する。

丸教授らは、肺に転移しやすいマウスのがん細胞を皮下に移植し、肺の正常細胞で何が起きているか詳細に調べた。すると、肺の血管内皮細胞が、外敵を退治する免疫細胞を呼び寄せる、2種類のたんぱく質を作り始めた。

血管内に漂うがん細胞を増やすため、新たにがん細胞を注射すると、肺には免疫細胞だけでなく、がん細胞までもが血流に乗って引き寄せられ、わずか5時間で肺細胞に定着。転移したことを確認した。

一方で、このたんぱく質の働きを抑える物質をマウスに注射すると、転移するがんの大きさが10分の1に小さくなった。

がん細胞は、栄養を運ぶ新たな血管を成長させる物質などを出す。このたんぱく質が血流に乗って、離れた肺の血管細胞を刺激し、免疫細胞とがん細胞を呼び寄せたと見られる。

丸教授は「転移はがん細胞と転移する先の正常細胞が協調して起こるようだ。この協調する回路を止めてしまえば、転移を抑える治療が可能になるかもしれない」と話している。

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カビから脊髄再生物質…慶応大学研究チーム

損傷した脊髄(せきずい)に、カビの一種から抽出した物質を投与して、神経の再生を促し、運動機能の一部を回復させることに、慶応大の岡野栄之教授(生理学)らの研究チームが動物実験で成功したと発表した。研究成果は医学誌ネイチャー・メディシン電子版に掲載された。

交通事故などによる脊髄損傷患者の治療薬の開発につながる成果として注目される。

複数の神経が束になっている脊髄は、切断から時間がたつと再生を阻むたんぱく質が増え、伸びて再生しなくなる。研究チームは、再生阻害たんぱく質のうち、「セマフォリン3A」に注目。この働きを邪魔する物質を探し出した。

脊髄損傷で後ろ足が麻痺(まひ)したラットに、この物質を1か月間投与したところ、3か月後には神経組織が再生して部分的につながり、後ろ足の関節を自力で動かせるまで回復した。投与しなかったラットの足は動かない状態のままだった。

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多発性骨髄腫治療薬、ヤンセンファーマが販売

米系ヤンセンファーマ(東京、関口康社長)は12月1日にもがんの一種「多発性骨髄腫」の治療薬「ベルケイド」(製品名、一般名はボルテゾミブ)を発売する。薬価の保険収載が同日の見込みで、収載され次第販売する予定。
ベルケイドは細胞増殖にかかわる酵素の働きを抑える新しい種類の薬剤で、患者会が厚生労働省に早期承認を要望していた。

ベルケイドは「プロテアソーム」と呼ぶ酵素の働きを抑制してがん細胞を殺す世界初の薬剤。ほかの薬剤が効かない患者にも効果を発揮する可能性がある。ただ、急性肺障害の副作用の恐れがあるため、販売後は全症例の治療状況を調査する。

厚生労働省:糖尿病の治療中断者400万人を半減へ

厚生労働省は、予備軍も含めた人数が約1600万人と推定され、「21世紀の国民病」と呼ばれている糖尿病について、患者が自己判断で治療を中断するのをかかりつけ医や医療相談員(カウンセラー)の協力で防ぎ、症状の悪化や合併症を予防する事業に乗り出すことを決めた。

国内だけで400万人近いとされる治療中断者の半減を目指す。

厚労省の計画によると、民間委託の医療カウンセラーを患者と医師の橋渡し役として活用。根気の要る食事療法などの支援を行う。また、患者を継続的に見守り、症状に応じてほかの専門医を紹介する米国のホームドクター(家庭医)制度を参考に、かかりつけ医と糖尿病や眼科、腎臓病の専門医の連携を強化する。

カウンセラーは、受け持つ患者に対して、電話やメールなどでかかりつけ医の指示に基づく食事や運動などの指導を行い、適宜、受診を促して中断を防ぐ。治療に向けての目標を設定し、その達成度をかかりつけ医に伝える役目も果たす。

9月から東京都と千葉県内で約1200人の患者を対象とした試験的な事業がスタート。2008年度中に全国約30地区に拡大する。02年の調査では、糖尿病患者は約740万人で、将来、糖尿病になる可能性が高い予備軍も880万人と推測された。

「がん」タウンミーティング 年内にも開催

国民のがん医療に対する不安や地域格差を是正するため、国立がんセンター(垣添忠生総長)は、国民と意見交換するがん医療のタウンミーティング(対話集会)を初めて開催する方針を決めた。早ければ年内に第1回を実施する。

がん医療には地域格差があるとされ、本やインターネットで民間療法を含めた不確実ながん情報もあふれている。受けているがん治療が適切かどうか、患者や家族が判断するのは難しく、がん医療への不安の一因となっている。同センターは「がん対策情報センター」を設置、インターネットを通じた国民向けのがん情報の発信も始めた。しかし、国民のがん医療への不安を解消するには、がんセンターと情報センターの幹部が出向き、直接意見交換することが重要と判断した。

構想中のタウンミーティングは、地域のがん医療の中核として厚生労働省が指定する「都道府県がん診療連携拠点病院」の担当者らが同席する。

生体肝提供者向け健康管理手帳を作成、配布へ

生体肝移植の臓器提供者(ドナー)が自分の健康を管理するための「ドナー健康管理手帳」を、厚生労働省研究班(班長=里見進・東北大病院長)が作成し、全国約50の移植実施病院に配布する。
来月から提供者に手渡される見通し。

生体肝移植は提供者の肝臓の一部を摘出し、患者に移植する。患者の親、子ども、きょうだいが肝臓を提供することが多い。国内で毎年約500件、これまでに計3800件以上行われた。
だが、日本肝移植研究会の報告書によると、39%の提供者が将来の健康に不安を感じている一方、26%が定期的な診察を受けていなかった。

提供者が受診しやすいよう作成された手帳は、文庫本ほどの大きさのB6判約40ページ。手術経過、術後の受診予定、肝機能など検査結果の記入欄がある。移植手術を実施した病院以外でも提供者を診察する医療機関の名前と連絡先も掲載され、移植病院が手術後に提供者に手渡す。約2000部作成された。

手帳の作成にあたった首都大学東京看護学科の清水準一・准教授は「日常生活の注意点なども盛り込んだ。提供者の不安を解消するために活用してほしい」と話している。

厚労省:アマンタジンで注意喚起 透析患者は使用禁忌に

厚生労働省は21日に公表した医薬品医療機器安全性情報・第230号で、抗パーキンソン病薬の塩酸アマンタジン(販売名「シンメトレル細粒」=ノバルティスファーマほか)について、透析患者への使用を禁忌とすると共に、全身けいれんを起こすミオクロヌスの副作用が、直近3年間に9例報告されていることから、重大な副作用に追記したことを報告し、医療関係者に注意を促した。

同剤は1975年に発売された医薬品。年間の推定使用患者は約40万人、出荷額は推計で約55億円である。

また、セフェム系抗生物質であるセフトリアキソンナトリウム(販売名「ロセフィン静注用」=中外製薬ほか)の副作用と見られる劇症肝炎の死亡例が、直近の3年間に3例報告されたため、重大な副作用に追記したことも掲載した。同剤は86年に発売。年間の推定使用患者数は104万人、出荷額は約54億円。

実験マウス専用CTを開発

マウスをはじめ小型実験動物の体内を外側から詳細に観察できるコンピューター断層撮影装置(CT)を、放射線医学総合研究所などの研究グループが開発した。

がんなどの新薬開発や放射線治療の研究は、小さな命の犠牲の上に成り立っているが、この装置を使えばその多くを解剖せずに生きたまま継続観察することが可能で、実験の効率化にもつながるという。

体長が数〜十数センチ程度のマウスやラットの場合、早期がんの病巣の直径は1ミリ以下と微小で、従来のCTでは把握がそもそも困難だった。このため、抗がん剤の効果を調べる際などには、がんを発症させたマウスを用意したうえで病理解剖を続け、薬の効き具合を追跡していくという手法が一般的だ。

同研究所の宮原信幸主任研究員らのグループが計測機器メーカー「リガク」(本社・東京)などと共同で開発した装置は、照射するエックス線強度をこれまで以上に微調整することが可能で、投与する造影剤を工夫することで、軟らかい内臓組織や、直径0・2ミリの細い血管など細かい組織まで鮮明に撮影することが出来る。

これまで行った撮影では、解剖でも見逃す恐れがある直径0・9ミリ程度の初期の肺がんや肝臓がんと、がんを取り巻く血管などとの違いを判別できたという。

研究グループは、解剖数をこれまでの10分の1程度に抑えられるとしている。

ヒトゲノム、遺伝子重複の個人差は1447カ所

父母から一つずつ受け継いで通常は各細胞に二つずつある遺伝子が三つ以上あったり、一つしかなかったりする領域が、ヒトゲノム(遺伝情報全体)の中にざっと1500カ所あることが世界で初めてわかった。
遺伝子の重複数の違いは病気のなりやすさなど個人差を生む一因として注目されており、将来、個人に合わせた医療に結びつくという。

東京大先端科学技術研究センター(RCAST)の油谷浩幸教授、石川俊平助手ら日米英などの研究グループが、23日付の英科学誌ネイチャーに発表する。

日本、中国、米国、アフリカの計270人のゲノムを比較、計1447カ所の領域で遺伝子の重複数に個人差がみられた。この領域の長さを合計すると、ヒトゲノムの12%にもなる。

ふつうは各細胞に二つずつ含まれる遺伝子が、少なかったり、多すぎたりすると、遺伝子から作られるたんぱく質の量が変わり、病気のなりやすさや薬の効き目に影響すると考えられる。

最近、アルツハイマー病や腎炎のなりやすさや、エイズウイルス(HIV)の感染しやすさが遺伝子の重複数で左右されることが判明している。今回見つかった重複領域には、病気に関連すると指摘された遺伝子が285個あり、今後の研究でがんや免疫疾患などとの関係も明らかになるとみられている。

遺伝的な個人差と病気の関連では、染色体の数の違いや、DNAを構成する1個の部品の違い(一塩基多型)の研究が進んできた。遺伝子重複数の違いがわかってきたことで病気の解明がさらに進むと考えられる。

毛細血管、指先で血流観察可能に・タウザー研究所

医療機器開発会社のタウザー研究所(福島県郡山市、尾股光貴社長)は、毛細血管に血が流れている状態を簡単に観察できる装置を開発した。
指先を装置に挿入するだけで済み、採血などの医療行為が不要だ。血管や血液の異変などを手軽に察知でき、医療診断などの補助に役立つという。医療機関や健康機器会社など向けに販売していく。

装置は顕微鏡と42万画素のCCD(電荷結合素子)カメラを接続したもの。指先のツメの付け根部分を撮影し、画像処理して、血液が流れているままの状態の毛細血管をモニター画面で目視することができる。価格はモニターを除き100万円。

ツメの下には、くしの歯状の毛細血管が約1ミリ間隔で8―12本あり、日々の体調などにより変形する。映し出された毛細血管の太さと形が均等なら正常な状態。変形していたり、太さが均質でなかったりする場合は代謝異常などが疑われ、医師の診断が必要と判断できるという。医薬品や医療装置の効果を簡易に測る利用法などを見込む。

長期休業の6割は精神疾患が原因・ARM調べ

2005年1年間で30日以上会社を休業した長期休業者のうち、62%がうつ病を中心とする精神疾患が原因となっていたことが、保険代理店大手のアドバンテッジリスクマネジメント(東京・目黒、ARM)が提供する企業向け長期保険の契約者を対象に実施した調査でわかった。
2000年に行った同様の調査では、精神疾患は36%。5年間で約1.7倍の水準に増えた。

調査はARMの団体長期障害所得補償保険の加入者で、30日以上休業した事例から600を無作為抽出した。国内の同保険の被保険者数は約15万人。

2000―05年の総計では、休業原因の47%が精神疾患と、がん(12%)、事故・外傷(9%)を大きく上回った。休業開始時の年代別に見ると、25―29歳が27%と最多を占めた。次いで30―34歳(23%)、35―39歳(15%)と続き、30歳前後での若年層を中心に精神疾患が深刻化している。

「メタボリック・シンドローム」商機…保険会社が続々参入

大手保険会社が企業の健康保険組合にメタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)の「撃退プログラム」の売り込みを本格化させている。

内臓脂肪が多すぎる中高年社員への健康指導が2008年度から各健保に義務づけられ、指導対象は中高年社員の25%に達すると推定されている。医療機関にとどまらず、幅広い企業が参入すれば、サービスの多様化が期待できそうだ。

メタボリック・シンドロームは、おなかの周りの肥満に高血圧や高血糖値などが加わった状態。心臓病や脳卒中、糖尿病などの生活習慣病を引き起こすと言われている。

今回の制度改正は、健康保険法の改正などによって40歳以上でメタボリック・シンドロームの危険性が高い健保加入者への健康指導を義務づける。厚生労働省は健康指導を徹底することで国民医療費の約3割を占める生活習慣病の抑制につなげたい狙いがある。

保険各社は、新制度をにらんで健保が来年度予算を組み始める今冬が勝負と見て営業に力を入れ始めた。

損害保険ジャパンの関連会社ヘルスケア・フロンティア・ジャパンは、医師や管理栄養士との面談で食事や運動などの生活習慣改善計画を作成し、その後も定期的に電話や電子メールでアドバイスを続けている。

例えば、会社生活の中で実行できるよう「早歩きをして階段を使う」「宴会は社交に専念」「酒は高級なものにして量は減らす」といったきめ細かなアドバイスを駆使し、生活習慣の改善を目指す内容だ。

明治安田生命系のヘルスケアトータルサポートは、電話相談に応じるスタッフが全員、看護師や栄養士などの資格を持ち、専門的な指導を行う。最先端の行動心理学を応用して、利用者が健康相談を受けやすい気分かどうかなどを割り出し、効果的な食生活や運動などの指導を行うことも特徴だ。

日本生命保険・三井住友海上火災保険連合、東京海上日動火災保険なども関連会社を設立。面談と電話指導を中心に期間は3〜9か月、費用は1人あたり2〜6万円程度だ。すでに日本IBM、ヤマト運輸、富士写真フイルムなど大手企業健保が契約を結んだ。

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