胃腸炎を引き起こすノロウイルスが師走の列島で、過去最悪の流行となっている。事態は、検査器具メーカーや、日用衛生品業界など産業界にも影響を及ぼし始めた。養殖のカキを扱う業者からは、深刻な風評被害に苦しむ声も上がり始めた。
ノロウイルス検出試薬を扱う臨床検査薬メーカーの栄研化学(東京都文京区)では12月に入り、昨年の倍の注文が殺到している。
食品の安全を確認したい食品メーカーや、胃腸炎の患者の原因特定をする必要がある検査機関などからの注文が大半だ。
すでに在庫が底をつき、21日まで出荷できない状況になっている。広報部は「予想以上の受注に生産が追いつかない状態。今月の様子をみて、来月は確実に増産して品切れを起こさないようにする」と話す。
ライオン(東京都墨田区)では、予防効果があるとされる次亜塩素酸系のハンドソープや除菌剤を販売していることから、市民からの問い合わせなどが殺到している。
「売り上げ全体への数字の影響はまだわからないが、お客様相談室への問い合わせが相次ぎ、関心の高さを感じる」(広報部)。花王(東京都中央区)は、子供を持つ母親らの関心が高いせいか、「ビオレu 泡で出てくるハンドソープ
」は12月に入り前年比で1・3倍の売れ行きとなっている。
宿泊客の集団食中毒が17日に発生した群馬県草津町では、1年でもっとも忙しい年末年始を前に、旅館やホテルがぴりぴりムード。草津温泉旅館協同組合は「ウイルスは外から持ち込まるのだが、世間一般のマイナスイメージは発生場所にかかるので気が抜けない。安全には十分に気を配っている。効能の高い温泉で抵抗力つけるつもりで、ぜひいらしてください」と呼びかける。
一般的にノロウイルスの原因食品となることもあるカキ。業界では冬の旬の時期に起きた騒動に、販売量が激減し、悲鳴を上げている。
宮城県石巻市のカキ加工販売「丸ほ保原商店」の保原敬明社長(48)は「売り上げは去年から3割減」と頭を悩ます。保原社長は「カキからノロウイルスが検出されることはあるが、加熱すれば問題ないし、今回の食中毒では1件も原因にはなっていない。むしろ風評被害が深刻だ」と話す。
生産量が全国ナンバーワンの広島県の販売業者「山岡水産」(江田島市)も「うちは昔なじみのお客さんが多くて助かっているが、ネットの注文などでキャンセルが続き、去年の3分の1程度になるのではという声もある」と困り顔だ。
厚労省の試験研究機関である国立感染症研究所によると、11月27日から12月3日までの1週間に、全国約3000カ所の医療機関から報告されたノロウイルスを主原因にする感染性胃腸炎の患者数は6万5638人。1981年の調査開始以来最悪となっている。
1つの医療機関に週20人を超える患者報告があったのは全国26都府県になっている。当初、西日本を中心に流行していたが、中部、関東、東北へと流行が北上していったという。
ノロウイルスは例年冬に流行し、12月中旬以降がピーク。高齢者が死亡する例も目立ち、厚労省は「今年は立ち上がりが早い」と警戒する。「GII」と呼ばれる感染力が強いウイルスが猛威を振るっているという。
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