卵巣を凍結、がん治療後に再び体内へ:臨床研究を承認

慶応大医学部の倫理委員会が、がん治療による副作用で不妊になるのを防ぐため、事前に卵巣組織の一部を凍結保存し、治療後、体内に戻す臨床研究を承認したことが30日わかった。白血病や乳がんなど幅広いがんを対象にしたもので、日本産科婦人科学会の倫理委員会で承認が得られ次第、治療をスタートさせる。

がん治療で使う抗がん剤や放射線は、卵巣や精巣機能にダメージを与える。不妊を防ぐため、事前に精子や卵子、受精卵を凍結保存する治療は、これまでも国内で実施されてきた。ただ、卵子の場合、採卵に時間がかかり、がん治療を始めるのが遅くなるうえ、一度に採れる卵子の数も限られる。卵巣組織の凍結はすぐ行え、数千個分の卵子を保存できるという長所がある。

慶応大の倫理委員会が研究を承認したのは昨年7月。申請した産婦人科の久慈直昭講師によると、対象となるのは、卵巣の手術が、がん治療に影響を与えないと主治医が判断した患者で、未婚女性も対象となる。自費診療扱いで、患者の負担は30万〜50万円ほどになる。

卵巣は親指の先ほどの大きさで、左右に二つある。体への負担が少ない腹腔(ふくくう)鏡手術などで表面を切り取り、零下196度の液体窒素で凍結する。がん治療の後、患者が妊娠を希望した時点で、体内に残る卵巣や腹部の周辺に再び戻す。うまく元の卵巣にくっつけば、自然排卵での妊娠も可能という。

ただ、治療法は確立しているとは言えず、卵巣を凍結保存しておいた女性から子どもが生まれた例は、04年に世界で初めてベルギーで報告されて以降、数例しかない。しかも、生まれた子どもが凍結保存していた卵子によるのか、残っていた卵巣の卵子によるのか、分かっていない。凍結卵巣組織にがん細胞が残っていた場合、がんを再移植してしまう可能性もある。

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抗インフルエンザウイルス薬「リレンザ」を感染予防で使用へ

英系製薬グラクソ・スミスクライン(GSK、東京・渋谷、マーク・デュノワイエ社長)は、抗インフルエンザウイルス薬「リレンザ」を感染予防で使用する販売承認を取得したと発表した。
これまでインフルエンザ治療薬として販売してきたが、予防の目的では使用できなかった。インフルエンザに感染している患者と同居する高齢者や心臓病の患者などが使用する。

インフルエンザの予防では、流行する季節の1―2カ月前にワクチン注射を受ける。インフルエンザの感染者と同居の場合、ワクチンに加えリレンザも使うことで感染リスクを減らせるという。

パウダー状の薬を1日1回10ミリグラムずつ専用の吸入器で吸入し、10日間続けることで予防する。10日間分の薬価は3416円だが、予防目的で使用した場合は保険給付の対象にならない。

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筋委縮性側索硬化症(ALS)のワクチン:マウスで延命を確認

運動神経が死んで全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、筋委縮性側索硬化症(ALS)のうち、遺伝性へのワクチンを日本とカナダのグループが開発、マウスで延命効果があったとの実験結果を米科学アカデミー紀要電子版に30日、発表した。

グループの漆谷真滋賀医大分子神経科学研究センター助手によると、ALSに有効なワクチンは世界初で「ヒトへの応用が可能で、早期治療が期待できる」としている。

ALSの1割は遺伝性で、研究グループは遺伝性の原因遺伝子の1つとされ、有害な活性酸素を無害化する「スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)」という酵素の突然変異に着目。

そこで、大腸菌を利用した遺伝子組み換え操作で酵素機能がない変異型SOD1を作り、ワクチンとしてマウスに投与すると、主に変異型と反応して働かなくする抗体ができた。

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「女性医師バンク」創設:医師不足解消なるか?

結婚や出産で医療現場を離れた女性医師の復職を支援し、深刻化する医師不足の解消につなげようと、日本医師会は「女性医師バンク」を創設、30日から登録を受け付ける。「長時間勤務は困難」「託児所が必要」といった希望に合う病院を紹介、専任コーディネーターが個別の相談にも応じる。

国内の医師免許を持つ女性は約4万5000人(2004年末現在)。このうち休職中の人がどの程度いるかは不明だが、バンク創設を委託した厚生労働省は「環境が整えば、若い人を中心に復職しやすくなるのではないか」と期待を寄せている。

バンクは東日本センター(東京)と西日本センター(福岡)の2カ所に事務局を置き、全国の病院や診療所から届いた求人情報をデータベースで共有。再就職を希望する人に診療科名、勤務時間、給与、保育施設を利用するかなどの項目を登録してもらい、希望に合った病院を紹介する。

問い合わせは東日本センターが電話03(3942)6512、西日本が092(431)5020。

米タバコ会社がニコチン濃度を増大:HSPH研究グループ

米国のたばこ会社が、1998年から2005年の間に、たばこに含まれる依存性物質であるニコチンの濃度をさまざまな方法を用いて11%増大させていたことが判明した。たばこ会社は、ニコチン濃度を高めただけでなく、1本あたりの吸入回数が多くなるようたばこの設計を変更していたという。

米ハーバード大学公衆衛生学部(HSPH)の研究グループが、マサチューセッツ州で販売された大手ブランドのたばこを分析した結果、この7年間で、1本あたりの煙中ニコチン量が毎年平均1.6%増大していることがわかった。この増量は大手メーカー4社のいずれにも認められ、ライト、ウルトラライトなどの全種類にわたっていた。

研究チームリーダーの1人でHSPH副学部長のHoward Koh氏は「紙巻たばこは、たばこ蔓(まん)延を永続させるように精密に調整された薬物送達装置」と呼ぶ。各製品に関する正確な情報は謎に包まれており、一般には知らされていない。今、たばこ業界に対してニコチンや製品設計に関する情報の開示を求める政策的措置を取ることにより、次の世代を依存症から守ることができるかもしれないとKoh氏は述べる。

今回の知見から、たばこ業界が1998年に州検事総長との和解契約を結んだ後、喫煙者を依存症に陥らせようとする姿勢に変化はあったのかどうか、という重大な疑問が浮かび上がると、同じく研究チームリーダーの1人であるGregory Connolly氏は述べている。
「われわれの分析によれば、和解成立後、各社は消費者に警告することなくたばこに含まれるニコチンを何年にもわたり少しずつ増やしてきたことになる。検事総長による綿密な調査が急がれる」とConnolly氏は指摘する。

Connolly氏によると、マサチューセッツ州選出のエドワード・ケネディ上院議員(民主党)は、この不正行為に対処し、たばこ業界に対して他の薬物製造業と同じ規則を課す連邦法案を提出しているという。

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急性心筋梗塞の患者に衝撃波:東北大病院が臨床試験へ

東北大病院(仙台市)は25日、急性心筋梗塞の患者に体外から衝撃波を当て、心臓に新たな血管をつくり慢性心不全への悪化を防ぐ治療の臨床試験を2月から始めると発表した。

急性心筋梗塞は、心筋に栄養を送る血管が急に詰まって一部の心筋が傷む疾患。詰まった血管を広げるカテーテル治療などで救命しても、やがて傷みが広がり慢性心不全になる。悪化を抑えるには飲み薬しかない。

循環器内科の下川宏明教授らは、尿路結石破砕用の約10分の1の出力の衝撃波が、血管内皮を刺激して新たな血管づくりを促すことを確認。この治療は既に重症狭心症患者に対する臨床試験が順調に進んでおり、急性心筋梗塞患者にも適用する。成功すれば痛みや副作用がない治療が可能になる。

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アステラス製薬が完全ヒトモノクローナル抗体を取得

アステラス製薬は24日、キリンビールが創製した完全ヒトモノクローナル抗体について、全世界を対象とするライセンスと共同研究開発などの基本契約を締結したと発表した。

プレスリリース
今回ライセンス契約を締結した「CD40 アンタゴニスト抗体」は、種々の前臨床薬理試験において強力な免疫抑制効果が確認されており、免疫において中心的な役割を担うT 細胞と抗原提示細胞の情報伝達を阻害するという新しいメカニズムを有する免疫抑制剤となるものと考えています。今後、両社は本抗体を臓器移植時の拒絶反応抑制を目標適応症として研究開発を進めていく予定ですが、移植用途以外にも、自己免疫疾患での用途拡大が期待できます。

このたびの契約締結に伴い、キリンビールは、アステラスより契約一時金ならびにマイルストーンを受け取ることになります。研究開発については両社均等の費用負担のもと全世界での共同開発を実施していく予定です。
また販売においては、アステラスが同製品を全世界で販売することになりますが、キリンビールも全世界における共同販促権を有し、両社で均等に利益を配分します。キリンビールは日本において並売オプションを有しており、その際には両社の売上から、別途定めたとおりのロイヤルティを互いに支払います。

キリンビールは医薬事業の将来を担う重要な柱として自社の完全ヒト抗体技術を用いた抗体医薬品の開発を進めています。将来のフロンティア領域と位置付けている免疫領域においても「CD40 アンタゴニスト抗体」を皮切りとして、抗体医薬品のラインアップを拡大していきます。キリングループの医薬事業は、腎臓、がん(血液分野を含む)、免疫・感染症を重点領域として展開しており、今後も新たな医療価値を創造することにより、最先端の医療に貢献していきます。

一方、アステラス製薬は、同社が創製・開発した免疫抑制剤「プログラフ」を世界70 カ国以上で発売しており、既に移植領域においてグローバルに強固な基盤を有しています。
アステラスは今後も移植領域を最重点領域として取り組んでおり、今回のライセンス契約締結により、同領域におけるさらなる基盤強化をはかるとともに、移植医療への一層の貢献を目指していきます。

「チクングニヤ熱」を国内で初確認:スリランカから帰国女性

厚生労働省は24日、スリランカから一時帰国していた30代の日本人女性が「チクングニヤ熱」と診断されたと発表した。国内での患者確認は初めて。女性は回復し、既にスリランカに戻った。

この病気は主にアジア熱帯地域で流行。蚊がウイルスを媒介するが、人から人には感染しない。発熱や関節炎、発疹が主症状で、死亡率は極めて低いとされる。

厚労省によると、女性は昨年11月17日にスリランカで発病し、医療機関でデング熱かチクングニヤ熱と診断された。症状が軽くなったため12月11日に帰国したが、関節痛が続いたため都内の医療機関で受診。国立感染症研究所で調べた結果、チクングニヤ熱と診断された。

この病気は一昨年からインド洋諸島で流行が続き、昨春からはインド西部やスリランカで流行しており、厚労省は蚊に刺されないよう渡航者に注意を呼び掛けている。

不妊症に悩む夫婦へ卵子を販売する「卵子バンク」

不妊に悩む夫婦らに、第三者の日本人女性の卵子を販売する「卵子バンク」を、東京などを拠点に精子バンクを運営する業者が始めた。日本の業者による、日本人女性の卵子バンクは初めて。提供者(ドナー)の卵子を韓国で採り出し、夫の精子と体外受精させて妻の子宮に移す。
ドナーには報酬が支払われる。業者によると、20〜33歳の8人の女性が登録しているという。これまでに数件の問い合わせはあったが、契約したケースはないとしている。

日本には、生殖医療に関する法律はない。しかし、第三者への卵子提供について、日本産科婦人科学会は指針で認めておらず、厚生労働省審議会も03年にまとめた生殖医療に関する報告書で、営利目的の精子や卵子提供を禁止している。事実上、国内で医師の協力は見込めない。

03年に韓国の業者が卵子バンクの営業所を日本に開いたことがある。しかし、韓国で精子、卵子の売買を禁止する生命倫理法が施行された05年1月の直前に撤退した。
このほか、連邦法に取り決めがなく、カリフォルニア州など生殖医療ビジネスが盛んな米国の業者へ仲介する日本の業者もある。

卵子バンク事業を始めたのは「エクセレンス」。もともと輸入代行業をしていた佐々木祐司代表(下の写真参考 ニュースZEROのキャプ画像をお借りしました)が個人で運営し、96年から有償で精子のあっせんもしている。

エクセレンス 佐々木代表

ドナーはホームページで募集。ドナーと、卵子購入を希望する夫婦が面会した後、一緒に韓国へ行き、ソウル近辺の病院で採卵する。夫の精子と体外受精し、妻の子宮に移植する。帰国後、妊娠してもしなくても報酬100万円を払う。韓国では、両国で生殖ビジネスの経験がある女性が、病院紹介や通訳を務めるという。

ドナーは、身長や体重、学歴などを申告し、写真を提出。要望があれば、体のスリーサイズも教える。ドナーと、生まれた子どもの間には、一切の権利義務関係はないことを、双方の契約書で確認する。夫婦側の負担は、ドナーへの報酬のほか、契約金180万円、病院での費用約30万円などを含め、400万円近くになる。米国の場合、500万〜600万円という。

生命倫理法について、佐々木代表は「契約や金銭のやりとりは日本で行われるので、法律上、問題ない。日本人の卵子がいいという顧客の要望にも応えられる」と主張している。

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アルツハイマー病の治療用ワクチンを開発:埼玉医大チーム

埼玉医科大学の森隆・助教授らの国際チームは、アルツハイマー病の治療用ワクチンを開発した。皮膚に塗ったり、パッチにして張り付けたりして成分を吸収させる。マウスの実験で脳にたまり病気の引き金になるとされるたんぱく質が半減し、副作用もなかった。

森助教授や米南フロリダ大学などは、脳にたまってアルツハイマー病を起こすとされるアミロイドベータたんぱく質と、免疫反応を促進するコレラ毒を混ぜたワクチンを作った。
アルツハイマー病を起こすマウスにワクチンを4カ月間塗り続けると、体内でアミロイドベータたんぱく質にくっつく抗体ができる。脳内でこのたんぱく質の量は、塗らなかったマウスに比べ約半分になった。

逆に血液中では増えた。ワクチンの効果でたんぱく質を取り除こうとする免疫反応が起き、脳から血液に排出されたとみている。成果を米科学アカデミー紀要(電子版)に発表する。

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タクロリムス徐放製剤、心臓は承認不可:アステラス製薬

アステラス製薬は23日、米国子会社が承認申請中の免疫抑制剤「FK506徐放性製剤」(一般名=タクロリムス)について、FDA(米食品医薬品局)から審査状況を示す通知(アクションレター)を受け取ったと発表した。

プレスリリースより
アステラス製薬株式会社(TSE:4503、本社:東京、社長:野木森 雅郁、以下「アステラス製薬」)は、当社の米国子会社アステラス ファーマUS, Inc.(本社:米国イリノイ州ディアフィールド)が、承認申請中の徐放性免疫抑制剤「FK506 徐放性製剤」(一般名:タクロリムス)について、1 月19 日(現地時間)米国食品医薬品局(FDA)より審査状況の通知(アクションレター)を受領しましたので、お知らせします。

米国での「FK506 徐放性製剤」の申請適応症は「腎臓、肝臓、心臓移植における拒絶反応の抑制」ですが、アクションレターの内容は以下の通りです。

  • 腎臓移植における拒絶反応の抑制: 承認可能 (approvable)
  • 肝臓移植における拒絶反応の抑制: 承認可能 (approvable)
  • 心臓移植における拒絶反応の抑制: 現時点では承認不可 (not approvable)

3つの申請適応症のいずれについてもFDA が最終的な判断を下すためFDA より追加の指摘と質問を受けておりますが、詳細は現在社内でレビュー中です。当社は、本剤の承認取得をめざしFDAと協議を進めてまいります。

タクロリムスはアステラス製薬が創製した免疫抑制剤であり、「プログラフ®」の製品名のもとに、臓器移植における拒絶反応抑制剤として現在世界約70 ヶ国で発売されています。このたびアクションレターを受領した「FK506 徐放性製剤」は、タクロリムスの1 日1 回投与の徐放性製剤です。

なお、「FK506 徐放性製剤」につきましては、米国において2005 年12 月に申請しております。また、国内、欧州でもそれぞれ承認申請中です。

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抗てんかん剤「イノベロン」の販売承認を取得:エーザイ

22日、エーザイのイギリス子会社エーザイ・リミテッドは、今月16日、抗てんかん剤「イノベロン」(一般名:ルフィナマイド)について、レノックス・ガストー症候群の併用療法としての販売承認を欧州委員会より取得したと発表した。

同剤については、2005年3月、エーザイ・リミテッドから欧州医薬品審査庁(EMEA)に対し、中央審査方式による販売承認申請を行い、2006年11月、EMEAの医薬品の科学的評価を担当する医薬品委員会(CHMP)から販売承認勧告の通知を受けており、今回、欧州委員会の正式承認を取得するに至ったという。

「イノベロン」は、幅広い抗けいれん作用を有する新規構造のトリアゾール誘導体で、小児の早期から発症する重篤なてんかんであるLGSの併用療法についての有効性・安全性に関する臨床試験において、LGSに関連した発作の発生頻度を、ラセボと比較して統計的に有意に低下させることが確認されており、今回の販売承認は、この結果を中心に評価されたという。

同社は、今回の販売承認により、欧州において、現在発売中のアルツハイマー型痴呆(認知症)治療剤「アリセプト」、抗てんかん剤「ゾネグラン」とともに、神経領域の製品ラインの充実を図り、より一層、患者の多様なニーズの充足とベネフィット向上に貢献していく方針。

レノックス・ガストー症候群とは
全般てんかんの重篤な状態で、脳出血、脳炎、脳の発育不全、脳の代謝異常など種々の脳障害により、小児の早期から発症します。発育遅延、行動障害、および持続して筋肉が収縮する強直(きょうちょく)発作を主体とする一方、複数の発作型を示すのもレノックス・ガストー症候群の特徴です。
例えば、一部の筋肉が短時間不随意に収縮するミオクロニー発作や、短時間意識が消失する欠神発作などがあります。薬物療法でコントロールが難しい場合は、まれに外科手術が行なわれることがあります。

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大脳皮質の形成メカニズムを解明:宮田卓樹 名大大学院教授

知覚、思考、記憶など、脳の高次機能を担う大脳皮質が、胎児の段階で形成されるメカニズムを、名古屋大大学院医学系研究科の宮田卓樹教授が突き止めた。世界初といい、今後、脳疾患の原因解明につながるのではと期待されている。論文は23日付の米科学誌「カレント・バイオグラフィー」に掲載される。

大脳皮質はカイワレダイコンの束のようになった、ひも状の母細胞が密集した板状の固まりを土台に成長。そのカイワレの葉の部分に神経細胞が積み重なるようにして、大脳皮質が形成される。しかし、脳の中心方向で分裂して発生した神経細胞が、どのようなメカニズムで表面方向に運ばれていくのかが解明されていなかった。

宮田教授は、マウスの胎児の脳をスライスし、大脳皮質の形成過程を観察。その結果、母細胞のひも状の突起は地面から空に伸びていく植物のツルのようにねじれ、脳の表面部と結びついていることが分かった。
さらに、地面となる脳の土台で、ひも状の母細胞の根元を切り離す実験をしたところ、バネの一方を手放したように、母細胞の中心部が急速に表面方向に引っ張り上げられることも判明。こうした観察結もなどから、細胞突起がバネのような働きをし、脳の底部から脳表面に次々と引き上げられていると結論付けた。

脳疾患の一部の原因は、大脳皮質の形成過程で、神経細胞が適切に表面部に集まっていかないことがあげられている。宮田教授は「一部の脳疾患の原因を解明できる可能性がある」と話した。

未婚女性の卵子保存を容認へ:日本産科婦人科学会

白血病など血液のがんの治療により不妊になる恐れがある未婚女性の卵子を将来の体外受精に備えて凍結保存するという臨床研究の実施を、日本産科婦人科学会は22日開いた小委員会で認めた。

ただ、同学会倫理委員長の吉村泰典・慶応大教授は「卵子を採取するため、がん治療の開始が遅れて患者に不利益が生じないようにしてほしい」と注文をつけた。

計画を申請していたのは、国内約130の不妊治療施設でつくる「A―PART日本支部」。研究の対象は、血液がんと診断され、放射線などのがん治療を受ける可能性がある15歳以上の未婚女性。
放射線治療前に卵子を採取して凍結保存し、結婚して妊娠・出産を望んだ時点で、凍結卵子を解凍して体外受精を行うことになる。北海道や東京都、大分県などの9施設で実施される予定。

同学会の会告(指針)では、卵子の凍結保存は既婚女性について認めているものの、未婚女性については明確な規定がなかった。

精子や受精卵に比べて、未受精の卵子の凍結保存は難しいとされてきたが、技術改良が進み、国内でも凍結卵子を使った妊娠・出産例が報告されるようになってきている。

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大豆イソフラボンが胃潰瘍に効果:マウスで確認

名古屋市立大学の岡嶋研二教授らは、大豆に含まれるイソフラボンに胃潰瘍(かいよう)を抑える効果があることを突き止めた。女性ホルモンのエストロゲンにこの効果があり、化学構造の似たイソフラボンも同じ作用があるとみている。

イソフラボンの効果を調べるため、ラットを水に漬けてストレスを与える実験を行った。健康なラットでもこのストレスで胃潰瘍ができる。卵巣を取り除いたラットの場合、潰瘍はよりひどくなった。ただし大豆のイソフラボンを実験前に1カ月間与えておくと、症状が軽かったという。

雌のラットから卵巣を取ると、胃潰瘍になりやすいことが知られている。胃の粘膜を守る生理活性物質を増やすペプチド「CGRP」の分泌を促すエストロゲンを、作り出せなくなるためと考えられている。イソフラボンを摂取すれば、エストロゲンに代わって作用すると推測している。ただ、人でこの効果はまだ確認されていない。

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臨床研修制度の義務化:修了医師の2割が未登録

医師の臨床研修制度が義務化され、06年3月末に初の修了者が生まれたが、修了の登録手続きをしていない新人医師が同年12月末現在、全体の約2割にも上ることが、厚生労働省の調べで分かった。
登録自体は義務ではないが、未登録医は病院と診療所の管理者になることができず、医療機関を開設するにも都道府県知事らの許可が必要になる。厚生労働省は都道府県を通じ、速やかに登録するよう促している。

新研修制度は04年4月からスタート。期間は2年間。従来は研修を受けるのは努力義務で、専門医療を中心に学んでいた。それを医師法改正で義務化。患者との信頼関係を結べ、幅広く基礎的な診療能力を身に着けさせる内容に大幅に改めた。初の修了者は医療機関側の報告から約7200人とみられるが、昨年末までの登録は約5800人にとどまっている。

医師国家試験の合格者は、医師免許所持者の名簿にあたる医籍に登録される。研修修了はこれまで登録対象ではなかったが、新制度から研修を受けた医療機関の証明書をつけ厚労省に申請すれば登録。厚労省から「臨床研修修了登録証」が交付されるようになった。

厚労省医事課は「ただちに登録手続きが済まされると考えていた。9カ月もたって2割も登録していないのは想定外。認識不足もあるのではないか。登録証は患者に研修修了を証明する、唯一の公的な証拠。患者からの信頼を損ねないためにも、早く登録してほしい」と話している。

犬の被毛から健康状態がわかる「愛犬ミネラル検査」

ら・べるびぃ予防医学研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:徳田竜一)は、人の毛髪中ミネラル分析技術を用いワンちゃん向け総合ミネラル検診(愛犬ミネラル検査)を開始した。(ら・べるびぃ予防医学研究所では6年前に日本で初めて毛髪ミネラル検査を開始し既に5万人以上の検査実績がある。)

「愛犬ミネラル検査」は、わずか0.2グラムの被毛から、血液では検出しにくい微量元素のうち水銀等5種の有害ミネラルの蓄積と、カルシウム・マグネシウム・亜鉛等必須ミネラル14種の不足について分析するサービス。 人の分野では高齢化社会を背景にアンチエイジング医療(抗加齢医療)が注目され、その手段としてデトックス(有害ミネラル排出)が重要視されている。

ワンちゃんの高齢化は人と同様に進んでおり、飼い主の健康意識の高まりと相俟ってアンチエイジング医療はペットマーケットでも注目されるところ。愛犬ミネラル検査も、今後ニーズが高まることが予想される。特に手作り食、処方食、サプリメント処方のための体内栄養分析としての使用が想定される。

検査方法は提携の動物病院で、ひとつまみの被毛を採取してもらうだけ、検査結果及び結果に基づくアドバイスを獣医師から説明を受ける形態。検査料金は1回10,500円。

<有害ミネラルとは>
水銀・鉛・アルミニウム・カドミウム・砒素等。人の場合、食事・環境の影響から有害ミネラルが体内に慢性的に蓄積され、代謝障害による不定愁訴・生活習慣病をはじめ、情緒不安定、集中力の低下といった精神的諸問題とも関連性がありうることが米国などの分子矯正医学界・栄養学会で示唆されている。犬も人と同様な生活環境から、過剰蓄積による問題が増大しつつあることが危惧される。

<必須ミネラルとは>
カルシウム・マグネシウム・亜鉛・銅・鉄等です。人の場合、3000以上の補酵素の核となり代謝機能を司る、必須な栄養素。不足しがちな栄養素であり、犬も人と同様な生活環境から、代謝異常や生活習慣病が増大しつつあることが危惧される。

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両生類のツボカビ症、新たに2例:麻布大チーム

世界各地でカエルなどの両生類に壊滅的被害を与えているツボカビ症が国内で初めて確認された問題で、麻布大の研究チームは20日、埼玉県内のペットショップ2店のカエルが感染していたことを新たに確認したと発表した。
国内の感染確認例は3例になった。世界自然保護基金(WWF)ジャパンや関係学会の専門家は同日、東京都内で会合を開き、2月上旬から獣医師を通じてカエルの感染確認検査を受け付けることや国に対して対策を求めることを決めた。

宇根有美・麻布大助教授(獣医病理学)によると、1例目は輸入したカエルだったが、新たに感染を確認したカエルはいずれも国内で繁殖したカエルだった。宇根助教授は熱帯魚の餌として輸入されているウキガエルからもツボカビを検出しており、感染は全国に広がる様相を見せている。

ツボカビに感染したカエルは、触ってもほとんど動かなくなったり、ひっくり返しても元に戻らなくなる。致死率は90%以上で、サンショウウオなどへの感染例もある。

国内では野生のカエルで感染例はないが、死んだカエルや飼育していた水を野外に捨てると感染する恐れがある。

検査の申し込み方法などは近くWWFジャパン麻布大のホームページに掲載する。

悪性胸膜中皮腫治療薬「アリムタ」発売:日本イーライリリー

米系製薬の日本イーライリリー(神戸市)は19日、アスベスト(石綿)が原因で引き起こされるがんの一種「悪性胸膜中皮腫」の治療薬「ペメトレキセド」(製品名アリムタ)を22日に発売すると発表した。安全性を確保するため、まずはがんの化学療法を得意とする病院に納入。対象となるのは全国の約400病院とみられる。売上高はピーク時で年間約16億2000万円を見込む。

薬価(薬の公定価格)は1瓶(500ミリグラム)24万649円。労災や石綿救済新法の対象になれば、医療費の自己負担分が支給される。

製品に関する問い合わせは医療関係者は電話0120・360・605、一般は電話0120・245・970で受け付ける。

アムリタ発売のプレスリリース 日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、社長:ニュートン F.クレンショー)は、2007年1月4日に悪性胸膜中皮腫治療薬「アリムタ®注射用500mg」(一般名:ペメトレキセド、以下アリムタ)の製造販売承認を取得しました。
1月19日の薬価基準収載を受け、1月22日より、悪性胸膜中皮腫治療薬「アリムタ®注射用500mg」(以下、アリムタ)の受注および出荷を開始いたします。「アリムタ」は、抗悪性腫瘍薬であるシスプラチンとの併用療法により、この適応の承認を受けています。

アリムタ・シスプラチン併用療法は、海外におけるシスプラチン単剤との比較試験において、その効果が証明されました。この比較試験には、20カ国から448名の患者さんが参加しました。

<<海外での臨床試験結果抜粋>>
  • 生存期間中央値:併用療法群(12.1カ月)、シスプラチン単剤群(9.3カ月)
  • 奏効率:併用療法群(41.3%)、シスプラチン単剤群(16.7%)
  • 1年生存率:併用療法群(50.3%)、シスプラチン単剤群(38.0%)

国内での併用療法での第I/II相臨床試験では、アリムタ500mg/m2・シスプラチン75mg/m2の投与を受けた19名中、7名に腫瘍縮小効果が見られました。(奏効率:36.8%)
腫瘍の縮小の判定方法:測定できる腫瘍の大きさの積が50%以上の減少または、腫瘍の長さまたは胸膜病変の厚みが30%以上減少。

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パートの厚生年金拡大案:医療、介護保険も同時加入

厚生年金へのパート労働者の加入拡大について、厚生労働省は17日、対象者は健康保険組合や政府管掌健康保険(政管健保)など会社員向けの医療保険にも同時に加入し、年金とともに医療や介護の保険料も負担してもらう方針を固めた。
非正社員向けのセーフティーネットを整備するという「再チャレンジ支援」の趣旨に沿ったものだが、現在は会社員や自営業者の扶養家族として医療保険に加入している人や、企業にとってはさらなる負担増となり、反発も予想される。

パートの加入条件について議論する18日の社会保障審議会年金部会で、同省が方針を説明する。

健保組合の保険料率は組合によって異なるが、中小企業向けの政管健保の保険料率は現在税込み収入の8.2%。40歳以上の人には介護保険の保険料率1.2%も上乗せされる。厚生年金の保険料率14.6%と合わせると保険料率は計約24%に達し、本人と企業が折半で負担することになる。

厚労省は当初、パート本人と企業の急激な負担増を避けるため、当面は厚生年金と医療・介護保険の加入を分けることも検討。しかし会社員向けの福利厚生として、厚生年金と健保組合、政管健保は一体的に運用されており、パートだけを特別扱いすると保険料の徴収などで混乱を招く可能性がある。今の制度ですでに厚生年金に入っている「正社員の4分の3、週30時間以上」働くパートも医療・介護保険料を負担している。

また、再チャレンジ政策が対象とする低収入のパートにとっては、保険料が労使折半で本人負担が軽い健保組合などに入る方が、全額本人負担の国民健康保険に加入し続けるより有利になるケースが多いことから、同時に加入させるのが適当と判断した。

一方で専業主婦や若年層のパートの中には、会社員や自営業者の扶養家族として医療・介護保険に加入し、現在は保険料を直接負担していない人も多く、同時加入への抵抗感は強いとみられる。

パートの厚生年金加入については、パートに頼る外食・流通産業が保険料負担で経営が圧迫されるとして反対している。さらに医療、介護の保険料負担が加わることで反発が強まるのは必至。参院選を控え、与党内から慎重論が出る可能性もある。

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