がんなどの病気で一時金が支払われる医療保険の「3大疾病保障特約」をめぐり、第一生命保険に加入者の未請求を理由とした不払いがあった問題で、同じ不払いが他の大手生保3社にもあることが分かった。過去5年間で計数千件にのぼる模様で、金融庁も実態調査に乗り出す考えだ。
がん告知との関係で請求を促すのが難しいことに加え、「請求しないのは加入者の責任」とばかり考えがちな業界の「甘え」がこうした不払いを招いたと言えそうだ。
日本、住友、明治安田の大手生保3社は、いずれも昨年からこの問題の調査を開始。がん、脳卒中、心筋梗塞(こうそく)の3大疾病の可能性が高いのに特約の一時金を請求していない加入者が各社で見つかった。がんのケースが大半とみられる。各社は加入者への問い合わせや、追加支払いを進めているが「調査が終わっていないため詳細は公表できない」としている。
第一を含めた大手4社が未請求を放置した理由にあげているのは、「加入者に請求するよう具体的に頼むのは難しい」(大手幹部)ことだ。加入者が告知を受けていないために請求していない場合は、生保会社からの請求の案内が事実上の「がん告知」になってしまうからだ。
一方で、生保には「がんだとして申請したのに一時金が支払われない」といった苦情も寄せられていた。特約が増えて商品が複雑になっているのに、その分、加入者に漏れなく請求してもらう仕組みや説明が不足していた。
3大疾病保障では、加入者本人が病名告知を受けていない場合に備え、あらかじめ家族などを保険金請求の代理人に指定する制度も用意されている。実際に、生保各社の自主調査の中では、代理人に請求するよう求めて支払ったケースもあったという。しかし、生保関係者には「請求してもらうよう督促するのはあくまでサービス。義務ではない」といった意見も少なくない。
がん告知をめぐる不払いでは05年10月、明治安田が、がんの場合の特約給付金を独自の判断で支払っていないケースが発覚。金融庁による業務停止処分の一因となった。それから1年以上たって改めて同様の問題が浮上したことは、生保各社の調査や対応がまだ不十分なことを示す。
生保では、これとは別に手術や入院の給付金の不払い調査を進めている。すでに加入者からの請求書に添付された診断書の判読ミスなどで、1件数千円〜数十万円の不払いが見つかっている。
各社とも3月末をめどに調査結果をまとめる方針だが、未請求を原因とした不払いについても、契約者への詳しい説明が求められている。
一方、金融庁も第一生命から詳しい事情を聴くとともに、他生保の状況も調べる方針だ。今回不払いが発覚した特約では保険会社からの支払いが病名告知につながりかねないという事情もあり、現状では「内容と件数にもよるが、損保で見つかった不払いとは明らかに違い、どこまで悪質かは調査しないとわからない」(幹部)と言う。
ただ、3月末までの生保各社の自主調査結果を精査し、不払いが重大な法令違反に当たり、経営管理態勢にも欠陥があると判断すれば、行政処分も検討することになるとみられる。