ネクサバール(ソラフェニブ):肝細胞がんへの適応拡大を申請へ

独バイエルヘルスケアグループのバイエル・ファーマシューティカル社と米オニキス・ファーマシューティカル社は、進行性肝細胞がん患者を対象に、経口抗がん剤「ネクサバール」(一般名ソラフェニブ)と偽薬を比較した第V相臨床試験で得られた中間データの解析を、第三者機関の効果安全性委員会が終了したと発表した。

両社によると、効果安全性委員会はネクサバール投与群が偽薬投与群よりも全生存期間を有意に延長するという第一次エンドポイント(主要評価項目)を満たしたとしている。

安全面でも重篤な副作用の発現率は偽薬群と有意差がなかったという。これらの臨床試験の詳しい結果は6月1日から5日間開かれる米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表される。

この臨床試験はSHARP(シャープ)と呼ばれ、南北米大陸、欧州、オーストラリア、ニュージーランドの肝細胞がん患者602人が参加。第一次エンドポイントは全生存期間と無増悪期間の比較。

ネクサバールは、がん細胞の増殖と、がん細胞に栄養を運ぶ新生血管の双方に関係するキナーゼを阻害する働きがある。現在、米国や欧州など約50カ国で腎細胞がんの治療薬として承認されている。両社は、今回の臨床試験の結果を基に肝細胞がんへの適応拡大を申請するとしている。

ネクサバール
腫瘍細胞と腫瘍血管の両方を標的とする経口マルチキナーゼ阻害剤です。前臨床試験の段階で、腫瘍組織が成長するために重要な、がん細胞の増殖と血管新生の両方に関係する二つのクラスのキナーゼ(RAFキナーゼ、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、PDGFR-β、KIT、FLT-3、RETなど)をネクサバールが阻害していることがわかりました。

現時点で、ネクサバールは、米国、欧州諸国を初めとする 50ヶ国近くで、腎細胞癌の治療目的に承認されています。さらに、国家レベル、あるいは国際レベルの研究機関、政府機関、個々の治験医師により、様々ながん治療(腎細胞癌のアジュバント治療、進行性肝細胞癌、進行性悪性黒色腫、非小細胞肺癌、乳癌などの治療)を目的とした、ネクサバールの単体使用または併用療法が研究されています。

関連記事:岡山大、遺伝子など使ったがんの先端治療技術開発・実用化へ

マルチスライスCTを搭載した高性能PET/CTを開発:島津製作所

島津製作所は、がんの発見に役立つ自社製の陽電子放射断層撮影装置(PET)に、東芝メディカルシステムズ製のマルチスライスCT(コンピュータ断層撮影装置)を組み合わせたPET/CT装置を開発した。

この装置は,がんの発見だけでなく、がんの正確な位置、性質、周辺臓器との位置関係などを一度に診断できる。この度、同製品を島津製作所が国内販売することに関し,両社が合意した。
今後、島津製作所は、2007年4月に開かれる国内最大の展示会「国際医用画像総合展」への出展と、同年春の市場投入を目指す。

このPET/CTは,低被ばくでの検査を目指して開発を進めてきたもの。高分解能と、短時間収集機能の搭載による高い検査効率を生かして、高速で広い全身視野での撮像ができる。がんの転移や再発の検索などの幅広い検査に使え、臨床現場からの要望に応えられるものである。

補助人工心臓「デュラハート」が欧州で販売承認

テルモグループの開発した補助人工心臓「デュラハート(DuraHeart)」が26日付で、欧州での販売承認を得たことが分かった。製造と臨床試験を担当してきた米子会社テルモハート(ミシガン州)が27日、明らかにした。国産技術だが、承認に時間がかかる日本に先駆け、海外で使われるようになる。
承認されたテルモの補助人工心臓(腹部に見える円形の装置)。弱った心臓の血液を、遠心ポンプで全身に送り出す。腰の前面に制御装置、両側に電池を装着する。

患者の腹腔内に埋め込むデュラハート(DuraHeart)の本体は、赤松映明・京都大名誉教授らが考案した「磁気浮上型遠心ポンプ」で、磁石の間に浮かせた羽根車を回して血液を押し出す。体外の電池で動き、弱った心臓の働きを補う。
軸受けも人工弁もないため、血液が固まりにくく、耐久性に優れており、心臓移植までの「つなぎ」ではない、長期使用できる新しい人工心臓としても期待されている。

テルモは実用化を急ぐため、承認の遅い日本を避け、欧州からのスタートを選んだ。04年1月からドイツ、オーストリア、フランスの計4病院で臨床試験を始め、33人に埋め込んだ。
6カ月以上装着した患者は12人で、うち4人は1年を超えた。13人は心臓移植を受けたが、移植を断ってそのまま装着を続ける患者もいる。人工心臓そのものが原因で亡くなった患者はいなかった。

ドイツで承認を得たことでEU(欧州連合)各国で販売できる。米国、日本でも申請準備を進める。

関連記事:国産初の補助人工心臓 実用化へ

マイクロソフト、医療検索サイト「Medstory」を買収

米Microsoftは2月26日(現地時間)、医療・ヘルス向けの検索技術を開発している米Medstoryの買収を発表した。買収金額などの詳細は明らかにしていない。

Medstoryは、専門的で難解な情報があふれる医療・ヘルス分野の検索で、ユーザーが求める情報を的確に探し出せるようにする技術を手がける。
現在、Medstoryのサイトで公開されている検索機能のベータサービスでは、検索キーワードを入力すると、関連するカテゴリーのリストが先頭に表示され、その後にウエブ検索結果のリストが続く。
たとえば「depression(うつ)」と入れると、医薬品、コンディション、治療プロセス、ピープルなどの各カテゴリーの下に、関連度を現すバーと共に関連キーワードが表示される。

心理療法を調べている場合、Web検索の結果の羅列にあたるよりも、まず「治療プロセス」というカテゴリーの中から「Psychotherapy」を選択して結果を絞り込んだ方が効率的に情報を探し出せる。
最初から「depression and psychotherapy」と検索しても同じ結果を得られるが、検索の方法に詳しくない人でも対話するような感じでカテゴリーを絞り込める使い勝手の良さがMedstoryを使うメリットだ。
「コンピュータ検索のやり方をユーザーに強いるのではなく、人々が考えるようにコンピュータがふる舞えるようにしている」とMedstoryのCEOであるAlain Rappaport氏は述べる。

続きを読む

白内障予防にビタミンC摂取が有効:厚生労働省研究班

日ごろの食事でビタミンCを多くとっていると白内障になる率が低いとの結果が、厚生労働省研究班(担当研究者=吉田正雄・杏林大医学部助手)の3万5000人規模の調査で出た。海外では同様のデータが出ていたが、国内で確認されたのは初めて。
白内障は目の中の水晶体が酸化されて濁ることで発症するが、ビタミンCには酸化を抑える作用があり、濁りを防ぐとみられるという。

研究班は95年、岩手、秋田、長野、沖縄の各県に住む男性約1万6000人と女性約1万9000人を対象に調査した。食事の内容を詳しく聞いて個人ごとに1日のビタミンC摂取量を算出後、00年まで追跡すると、男216人、女551人が白内障と診断された。

摂取量で5グループに分けて比べると、男性で最多のグループ(1日のビタミンCが約210ミリグラム前後)は、最少のグループ(同約50ミリグラム前後)に比べ、白内障にかかる率が約35%低かった。女性でも最多のグループ(同約260ミリグラム前後)の発症率は、最少のグループ(同約80ミリグラム前後)より約41%低かった。

吉田助手によると、ビタミンCは、温州みかん1個に約35ミリグラム、レモン1個に約20ミリグラム含まれる。野菜ではホウレンソウやブロッコリーに多い。
吉田助手は「1種類でなく、さまざまな食べ物からビタミンCをとってほしい。たばこを1本吸うと約25ミリグラムのビタミンCが破壊されるため、白内障予防には禁煙が望ましい」と話している。

サリドマイドの個人輸入に監視システム(SMUD)運用へ

血液のがんの一種、多発性骨髄腫などの治療薬として海外から大量に個人輸入されている催眠鎮静剤「サリドマイド」について、厚生労働省は個人輸入をする医師に、インターネットを使って薬の使用・管理状況、治療経過などを登録してもらい、安全に使われているか監視するシステム(SMUD)の運用を来月中旬にも始める。

サリドマイドを個人輸入するために必要な「薬監証明」という許可を厚生労働省から受けるために、SMUDへの登録が必要になる。薬の使用状況を一元的に把握でき、薬害の防止に役立ちそうだ。

SMUDは、厚労省の研究班(主任研究者=久保田潔・東京大助教授)が作り、東大病院にある「大学病院医療情報ネットワーク研究センター」が管理・運営を担当する。サリドマイドを処方する医師や薬剤師がSMUDに患者のイニシャル、生年月日、診断名、投与開始日のほか、副作用などについて入力する。

後発医薬品(ジェネリック)のシェア低迷:進まぬ処方せん改革

06年度の診療報酬改定で、医療費抑制策の目玉として、医師が新薬をより安価な後発医薬品(ジェネリック)に切り替えやすくするよう処方せん様式を変更したが、実際の処方で後発薬に変更されたのは6%弱(昨年10月分)にとどまることが、厚生労働省の調べで分かった。
同省は低迷している後発薬のシェアを高め、医療費の伸びを抑えたい考えだが、処方せん改革の出足を見る限り成果は上がっていない。

後発薬は新薬の特許が切れた後、新薬と同等の成分や効能を持つ薬として発売される。価格が新薬の2〜7割と安いため、普及すれば年間約6兆円の薬剤費を大幅に抑制できるとしている。
そこで厚労省は06年4月から、医師が書く処方せんに「後発医薬品への変更可」と記したチェック欄を設け、チェックがあれば薬剤師が後発薬を処方できるようにした。

しかし、厚労省が昨年11月、全国の保険薬局1000カ所を対象に10月に扱った処方せんを調べたところ、回答した635薬局の計96万9365枚のうち、「変更可」にチェックがあったのは17.1%の16万5402枚にとどまった。
さらに実際に後発薬に変更されたのは、5.7%の9452枚しかなかった。保険の利く後発薬が開発されておらず、変更できなかったケースも1万4278枚(8.6%)あり、医師の薬品に対する認識不足もうかがえた。

後発薬は、患者にとっても自己負担額が減るメリットがあるが、現時点のシェアは17%程度にとどまっている。普及しない背景には、信頼が十分確立されていないことや、「公定価格の高い新薬の方が薬価差益を稼げる」と考える医師の存在があるとされる。

関連記事:後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及へPR強化

体外受精や代理出産の是非:国民、産婦人科医へ意識調査

体外受精や代理出産に関する意識を探るため、厚生労働省は国民や産婦人科医ら計8400人を対象にした調査を実施する。タレントの向井亜紀さんの米国での代理出産をめぐる裁判などをきっかけに生殖補助医療への関心が高まっていることから、今後の議論に役立てるのが狙いだ。
体外受精などで生まれた子どもの心身の健康調査に関する研究と合わせ、不妊治療の実態や意識の把握に本格的に乗り出す。

意識調査は、無作為に抽出した一般の国民5000人、不妊治療を受けている患者2000人、産婦人科と小児科の医師1400人が対象。3月末までに結果をまとめる。

国民と患者には、体外受精や代理出産など不妊治療の技術に関する知識や、子どもを望んでいるのに恵まれない場合、自らこうした技術を利用するか、社会的に認めるべきかどうかといった意識を聞く。昨秋、長野県の50代後半の女性が「孫」を代理出産していたことが明らかになったケースも踏まえ、代理出産を認めるなら、姉妹か、母か、第三者も含めてよいのかなども尋ねる。

医師に対しては、どんな不妊治療をしているのかなど、現状と意識を調べる。米国やフランスなど海外の法整備や判例も現地調査する。

一方、生殖補助医療で生まれた子どもの心身への影響については、国内に十分なデータがない。このため新年度から、公募に応じた研究チームが、誕生から小学6年生まで2000人以上を追跡する調査研究を行う。
この研究では、対象者の選定や保護者からの同意取り付けの方法、調査項目、データの管理・分析方法などを検討する。

関連記事:不妊治療助成を20万円に倍増、来年度から

出産医療事故の「無過失補償制度」:07年中に制度化目標

出産に伴う医療事故の被害者を救済する「無過失補償制度」の創設をめざす準備委員会(委員長・近藤純五郎弁護士)の初会合が23日、東京都内で開かれた。医療関係者や法律家ら約20人が参加。今後、補償対象の範囲や再発防止につなげる仕組みづくりなどについて議論を進め、07年度中の制度創設をめざすことを確認した。

同制度は、出産時の医療事故で産科医の過失が認められなくても、脳性まひの障害を負った被害者に補償金が支払われる「保険」。制度化をめざす自民党の検討会が昨年11月、医療機関が負担する保険料を財源とするなどの制度の枠組み案を提示。
これに基づき、日本医療機能評価機構(東京)に設置された準備委員会で、制度を運営する組織の体制などを決めることになった。

初会合では、今後、補償対象となる脳性まひ児の発生率調査を実施するほか、運営組織に再発防止策を検討する「事故分析委員会(仮称)」を設置することなどが提案された。
4月以降、委員会の下にワーキングチームを設け、患者や産科医にも意見を聞きながら、制度の詳細を議論していくという。

出生前親子鑑定に待った:日本産科婦人科学会

日本産科婦人科学会(理事長・武谷雄二東京大教授)は23日までに、赤ちゃんが生まれる前に父親を特定する「出生前親子鑑定」に必要な羊水採取について、裁判所の命令がある場合などを除き実施しないよう、会員の医師に求めることを決めた。

営利目的の親子鑑定への関与を禁じるのが目的で、近く学会の倫理規定(会告)に盛り込む。
同学会などによると昨年、複数の企業が有料での鑑定実施をインターネット上で宣伝していることが確認された。

出生前の親子鑑定は、胎児の細胞を含む羊水を妊婦の子宮内から採取し、DNAを調べて父親を特定する。実施には、羊水採取の経験を持つ産婦人科医の協力が必要になる。

がん告知、患者の精神的負担を考えて:医師対象の講習会

患者の精神的ダメージを最小限にとどめる「がん告知」を目指し、07年度から医師を対象にした講習会が全国規模で開かれることになった。
がん患者の精神的ケアをする医師らでつくる「日本サイコオンコロジー学会」(代表世話人・内富庸介国立がんセンター東病院精神腫瘍(しゅよう)学開発部長)が準備を進めてきた。厚生労働省も07年度予算案に約2500万円を計上し、バックアップする。

がん告知は、患者や家族にとって精神的な負担が極めて大きい。しかし、大学の医学教育などには、患者の感情や生活の質(QOL)を重視する十分なカリキュラムが組まれていない。このため、医師の心ない発言で患者が傷つくケースが相次いでいる。例えば「まだ、生きられると思っていたんですか」(暴言型)「抗がん剤でも民間療法でも、あなたの好きな方でいいですよ」(責任放棄型)などだ。

国立がんセンター東病院精神腫瘍学開発部は昨年9月、患者の意向調査の結果を踏まえ、告知の技術習得のためのテキストを作成した。「相手の目を見て話をする」などの基本的動作から、告知を伝える環境設定、「悪い情報」の伝え方、患者の情緒的支援の方法まで網羅されている。すでに講師を務める医師、臨床心理士8人を確保した。

講習会はこの8人が中心となり、07年度は東京、大阪、福岡など7カ所で開く。内富氏は「告知の成否はその後の治療にも大きく影響する。患者の意向に沿った医療の実現に全国講習会は役立つ」と話している。

「統合失調症」発症の鍵は遺伝子「カルシニューリン」

「統合失調症」の発症にかかわる遺伝子を、理化学研究所、米マサチューセッツ工科大などのチームが新たに確認した。

神経伝達物質のドーパミンなどが発症にかかわっているとされている統合失調症。
同工科大の利根川進教授らは、これらの物質の作用を調整するカルシニューリンというたんぱく質が働かないと、統合失調症に似た症状がみられることをマウスの実験で明らかにしており、研究チームは、このカルシニューリンに関連する遺伝子が人の統合失調症の発症に関連しているかどうかを検証した。

研究チームは、カルシニューリンを作ったり、関連があったりする14種類の遺伝子が患者とその家族、患者同士で配列がどう異なるかを調べた。
統合失調症の子供がいる日本人の124家族を対象に調査を試みた結果、14遺伝子のうち4遺伝子については、血縁者であっても、統合失調症ではない親と失調症の子供ではその配列が異なるケースが多いことを突き止め、これらの遺伝子が統合失調症の発症にかかわっていることがわかった。

ただ、患者同士でも配列の一部は異なっており、発症が遺伝要因だけではなく、環境など他の要因も関与していることをうかがわせているという。

4遺伝子のうちの1個は利根川教授らがすでに確認しているが、残りの3遺伝子はまったく新しく、統合失調症患者の前頭前野では、その働きが落ちていることも確認された。

手術室やICUを備えた「模擬病院」:テルモが開設へ

テルモは、医師や看護師らが医療機器の使い方を実習できる国内初の「模擬病院」などを備えた新施設を、4月に開設すると発表した。
手術室や病棟などがあり、医療現場と同じ環境で機器を扱うことができる。医師らに自社製品に慣れてもらうことで販促につなげる狙い。医師らから使い勝手など改善点の意見を吸い上げ、新製品開発にも役立てる。

テルモの研究開発拠点である湘南センター(神奈川県中井町)内に建設した。2002年6月に開設した医師向け研修施設に隣接しており、地上2階地下1階で延べ床面積は7000平方メートル。総投資額は約19億円。

手術室や集中治療室(ICU)を備えた模擬病院のほか、腹膜透析器など在宅医療で使う機器の性能検証などができる「模擬住宅」と、脳動脈瘤(りゅう)など難しい手術手技を独自開発の訓練機器を使って学べる実習室の3区画で構成する。

医療機関などと契約、機器に不慣れな医師が医療事故を起こすのを防ぐ医療安全教育の場として活用してもらう。社員の研修にも活用し、営業力の強化にもつなげる。

初潮が早く、閉経が遅い女性は乳がんリスク増:厚労省研究班

初潮が早い、閉経が遅いなどの女性は乳がんになるリスクが高いことが、厚労省研究班(主任研究者・津金国立がんセンター予防研究部長)が5万人以上の中高年女性を対象に実施した疫学調査で21日、分かった。

生殖機能にかかわる女性ホルモンには乳がんの増殖を促す作用があり、分泌期間が長いと発症しやすくなるらしい。出産経験がない女性や、閉経後の肥満も高リスクと判明。いずれも欧米の調査と似た結果だった。

研究班は今後、これらの要因から乳がん発症リスクを算出するシステムの開発を目指す。班員の岩崎基・国立がんセンター室長は「乳がんは女性に最も身近ながん。リスク要因を持つ人は検診を受け、早期発見につなげてほしい」としている。

研究班は1990年から2002年にかけ、全国9府県で40−69歳の女性約5万5000人を対象に、生理や出産の経験、体格などと乳がんの関係を調べた。

非受精卵からES細胞を作成:理研チームがマウスで成功

体外受精で受精せず、ふつうは捨ててしまう卵子(非受精卵)を再利用し、クローン胚性幹細胞(ES細胞)をつくることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)のチームがマウスで成功した。
移植用の臓器などになりうるヒトES細胞をつくるためには女性から卵子の提供を受けなければならないが、入手が難しい。この方法がヒトに応用できれば、再生医療研究のすそ野が広がる。19日付の米科学誌カレント・バイオロジーに発表した。

ES細胞は、人体のさまざまな組織になりうる「万能細胞」。患者本人の体細胞の核を抜き取って、卵子に移植し、クローンES細胞をつくることができれば、移植しても拒絶反応が起きない臓器や組織ができる可能性がある。

理研の若山照彦チームリーダーらは、マウスの卵子で体外受精を試み、受精しなかった432個に、別のマウスの体細胞の核を移植した。特殊な薬剤を使って約1カ月培養したところ、27株のクローンES細胞ができた。
新鮮な卵子を使った場合とほぼ同等の成功率で、できたES細胞の分化能力は同じだった。
このクローン胚をマウスの卵管内に移植したが、クローンマウスまではできなかった。

チームの若山清香研究員は「卵子を捨てるのはもったいないという発想がきっかけ。使えないと思われていた卵子を基礎研究に利用できれば、再生医学応用への可能性が高まる」と話す。

中辻憲夫・京都大教授は「女性からの提供を比較的受けやすく、利用の可能性を示した点で意義がある。ただ、英の研究でヒトでうまくいかなかったという報告もあり、今後の積み重ねが必要になる」と話している。

関連記事:ES細胞:研究資金の支出拡大 米大統領が初の拒否権

大腸がん予防に運動が有効:厚生労働省研究班

男性で運動や肉体労働などで体をよく動かす人は、ほとんど体を動かさない人に比べ、大腸がんになるリスクが3割も低いことが、厚生労働省研究班の大規模な疫学調査でわかった。結果は20日公表された。

研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)は、1995年と98年の2回、全国の45〜74歳の中高年男女約6万5000人を対象にアンケート調査を実施した。
それぞれが一日に運動する時間と運動の強さを調べ、活動量を計算。活動量の差で4集団に分け、2002年まで追跡調査し、大腸がんを発症する危険度を比較した。

その結果、男性では活動量が多い集団ほど大腸がんになるリスクが下がる傾向があり、激しい運動などで最も体を動かす集団は、最も体を動かさなかった集団に比べ、31%も低かった。結腸がんのリスクの差は42%もあった。

体を動かすと、がんの危険因子である肥満や糖尿病の予防につながるほか、腸の発がんにかかわる生理活性物質を少なくする効果があると考えられる。

ただ、女性にはほとんど差がみられなかった。アンケートに家事に関する設問がなく、家事の活動量の差が反映されていない可能性があるという。

病院の勤務医、5割が「辞めたい」:過酷な勤務と人手不足

病院の勤務医の9割が医師不足を感じ、5割が職場を辞めたいと考えている―。日本医療労働組合連合会(医労連)が19日発表した約1000人の勤務医を対象にした調査で、過酷な勤務と人手不足で疲弊する勤務医の実態が改めて浮き彫りになった。

昨年11月から今年1月、医労連加盟の医療機関や自治体病院など全国150施設の勤務医1036人から、前月の労働状況などを聞いた。

1人あたりの労働時間は1日平均10.5時間で4割以上が12時間以上。宿直勤務は平均2.9回だったが、4回以上がほぼ4分の1に上り、大半は宿直前後も通常勤務に就く32時間労働だった。

休んだ日数の平均は3.3日で、1日も休めない医師は4分の1を超えた。連続で勤務した日数は最長で平均19.5日間だった。健康状態に「不安」「病気がち」と感じているのは半数近く。翌日や休日後も疲れが抜けない「慢性疲労」を訴えたのはほぼ6割だった。

過酷な勤務状況から、「職場を辞めたい」と考えた勤務医は、「まれに」(20.8%)を除いても52.9%に達し、働き盛りの30〜40代では約6割に上った。「医師不足」を感じている勤務医は全体の90.0%だった。

対策として、「賃金・労働条件の改善」が最も多く、「診療科の体制充実」「看護師などの充実で医療体制のレベルアップ」「医療事故防止対策の充実」などが続いた。

関連記事:医師不足対策、深刻な都道府県…政府原案判明

血液一滴、30分で遺伝子診断:理化学研究所

一滴の血液があれば、薬の効きやすさや、酒にどれだけ強いかといったさまざまな体質を、30分以内に遺伝子の型から診断する手法を、理化学研究所(野依良治理事長)などの研究グループが開発した。

従来法に比べて極めて簡便で、特殊な解析装置を持たない小規模な医療施設でも診断できる。成果は18日付の米科学誌ネイチャー・メソッズ電子版に掲載された。

遺伝子診断は、血液などから遺伝子を取り出して人工的に増やし、様々な試薬を用いて行う。これまでは、1時間半〜数日程度かかるのが普通だった。

研究グループは、遺伝子を高速で増やす特殊な酵素を細菌から発見。さらに、目標以外の遺伝子の増加を抑える別の酵素も見つけた。この両者を組み合わせ、極めて精度の高い遺伝子診断を、30分以内に完了する手法を確立した。

肺がん患者45人を調べたところ、抗がん剤の「ゲフィチニブ」(商品名イレッサ)が効く遺伝子型を持つ患者と、効果が期待できず、副作用が懸念される遺伝子型の患者を正確に判別できた。

また、がん細胞特有の遺伝子を調べる組織検査を行ったところ、がん細胞がわずか1%しか混じっていない組織も見分けることができたという。

高速通信で退院患者を遠隔テレビ診察:旭川医科大学

旭川医科大学は、退院した患者の自宅と同医大病院をブロードバンド(高速大容量)通信で結び、テレビ電話が付いた端末を活用して目や健康状態をチェックする眼科の遠隔診療を3月から始めることを明らかにした。

計画した同医大眼科学講座の吉田晃敏教授によると、退院した患者宅と病院を結ぶ遠隔診療は全国的にも珍しいという。今回の取り組みが軌道に乗れば、専門医が不足している過疎地の医療に応用できそうだ。

端末は映像技術に強いKDDI研究所(埼玉県ふじみ野市)と共同で開発。同病院では、ナースステーションと病棟に端末を置いて入院中に患者に操作に慣れてもらい、退院後も通院が必要な患者宅に同じ端末を置き、医師が週2回程度診察する。2月上旬から一部の患者と実験を始めた。

歯胚から歯を完全再生 マウス実験:インプラント代替に期待

歯のもとになる組織(歯胚)から、神経や血管を含め歯をまるごと再生させることに、東京理科大大阪大のチームが世界で初めて成功した。マウス実験での成功率は80%と高く、将来的に入れ歯やインプラント(人工歯根)に代わる方法として期待される。
さらに、開発した技術は他の臓器や器官の再生医療にも応用できるという。18日付の米科学誌「ネイチャーメソッズ」(電子版)に発表した。

臓器や器官の再生では、胚性幹細胞などを目的の細胞に分化させる課題と、分化した細胞を臓器に形作る課題がある。研究チームはすべての臓器や器官は、上皮細胞と間葉細胞と呼ばれる2種類の細胞が反応しあって形成される点に注目。歯をモデルに両細胞を使って、器官の基になる「器官原基」を生体外で組み上げる技術開発を進めた。

胎児マウスの歯胚から両細胞を採取。それぞれの細胞に分離したうえ、寒天状のコラーゲンの中に重ねるように入れ培養したところ、高さ0.25ミリの「歯の種」ができた。
これを拒絶反応を起こさない種類の大人のマウスの抜歯部に移植すると、約2カ月後には長さ4.4ミリに成長。歯の内部には血管と神経があることを確認した。抜歯部に移植を試みた22回中17回で歯が再生した。
一方、マウスの毛でも同様の方法で培養し、毛の再生にも成功した。

人での実施には、胎児からの歯胚入手という倫理上の課題や、別人からの移植に伴う拒絶反応の問題もある。研究チームは、患者自身の口内や頭皮から、基になる細胞を探していくという。
辻孝・東京理科大助教授(再生医工学)は「臓器や器官が作られる仕組みを忠実に再現したことでうまくいったと思う。肝臓や腎臓などの再生も試みたい」と話す。

関連記事:抜いた歯をティースバンク(歯の銀行)で冷凍保存

×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。