終末期医療:患者本人より、家族の意思を尊重

がんの治療方針や急変時の延命処置などを決定する際、患者本人が意思表示できる場合でも、まず家族の意向を優先している病院が約半数の46.6%に上ることが、厚生労働省研究班(主任研究者、松島英介・東京医科歯科大助教授)の調査で分かった。
家族の意向を優先する理由として半数以上の54.6%は「家族とのトラブルを避けるため」と回答しており、患者の意思が十分尊重されていない実態が浮かんだ。

がん患者やその家族は、手術や抗がん剤など治療方法の選択、急変時には人工呼吸器や心臓マッサージなどの延命処置をするかどうかなどの決定を迫られる。
調査は、余命6カ月以内と診断された終末期のがん患者が入院している可能性の高い全国4911の一般病院(産科、リハビリ専門などを除く)を対象に昨年11〜12月に実施し、1499施設から回答を得た。

患者が意思決定できる場合に限定し、治療方針などを決める際に誰の意思を確認するか尋ねたところ、「(患者本人に意向を尋ねるかどうかも含めて)先に家族の意向を確認」と回答したのが46.6%(有効回答中の割合、674施設)。
最多は「患者、家族双方に確認」(同48.7%、704施設)で、「患者本人だけで十分」としたのは0.8%(11施設)にとどまった。

家族の意向を尊重する理由(複数回答)は、「本人の意思決定だけで判断すると家族から不満を言われる」(70.6%)、「家族とのトラブルを避けるため」(54.6%)など。65.9%の病院は患者本人に病名を伝えており、告知の有無にかかわらず、家族との摩擦を恐れる傾向がうかがわれた。「患者の意思を直接聞くことは終末期という状況になじまない」(24.8%)という回答もあった。

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アトピー性皮膚炎の新治療薬「NF−κBデコイオリゴ軟こう」

弘前大学医学部皮膚科などが開発を手掛け、副作用の少ないアトピー性皮膚炎の治療薬として期待される人工DNAの核酸医薬「NF−κB(エヌ・エフ・カッパ・ビー)デコイオリゴ軟こう」が、実用化に向けて、患者への薬の治療効果を検定する新たな治験段階「第II相臨床試験」を迎えた。
弘大皮膚科の中野創・助教授は「弘大が開発段階から主導的にかかわっていた臨床研究が、治験段階に進み、意義深いことだと思う」と話している。

NF−κBデコイオリゴのデコイとは「おとり」を指す。免疫の異常を引き起こすタンパク質(NF−κB)に結合し、炎症関連遺伝子の働きを防ぐという。

全国の研究機関で臨床試験に入っており、弘大病院でもスタートした。弘大は、大阪大学との共同で、マウスによる動物実験を行い、二〇〇二年までにアトピー性皮膚炎の改善を確認。その後、中野助教授らの研究でも、重症患者の症状が改善することが分かった。

現在、大阪大学の研究成果を基に発足したベンチャー企業「アンジェスMG」が実用化を目指しており、全国の医療施設の協力を得て、治験を行っているという。
治験のうち、「第I相臨床試験」で既に、健康な人への安全性が確かめられており、今回の「第II相臨床試験」は少人数の患者への副作用や使用法などを調べる。顔面のアトピー性皮膚炎が、中程度以上の患者が対象となっている。

延命治療の中止手順:日本救急医学会がガイドライン案

救急医療の現場で延命治療を中止する手順についてのガイドライン案を、日本救急医学会の「救急医療における終末期医療のあり方に関する特別委員会」(委員長・有賀徹昭和大教授)がまとめた。
患者の人工呼吸器を取り外す手続きなどを示すもので、これまで個別の病院や医師の判断で治療を中止し、刑事責任を問われることもあった医療現場にとって、初の指針となる。
家族が治療中止を判断できない場合は医療チームが判断できる」とするなど踏み込んだ内容なだけに、論議も呼びそうだ。

同学会には、全国の救命救急センターや集中治療室などで働く救急医ら約1万人が加入。ガイドライン案は、19日に東京都内で開かれる学会社員総会にかけ、ほぼ提案通り可決される見通しだ。

終末期医療をめぐっては、日本医師会が昨年2月にまとめた報告書で、積極的な延命治療を中止する「尊厳死」を容認。しかし判断基準などは示されず、秋田赤十字病院(秋田市)など個々の病院の独自の指針があるだけだった。
救急医学会は、不意の事故や急病の場合は患者・家族の意思が確認できないケースが多いことから、救急現場で使える全国的な指針が必要だと判断した。

ガイドライン案は、終末期を「妥当な医療の継続にもかかわらず、死が間近に迫っている状態」と定義。妥当な基準で脳死と診断された場合や、積極的に救命をしても数日以内での死亡が予測される場合、などをあげた。主治医を含む複数の医師、看護師らによるチームで判断する。

そのうえで、家族に救命の見込みがないことを説明。リビングウイル(生前に意思表示した書面)などで患者本人の意思を確認できるか、家族が本人の意思を代弁できる場合は、その意向に従う。引き続き積極的な対応を希望していれば治療を維持するが、それ以外なら治療中止を認める。

また、「家族の意思が明らかでない場合や家族が判断できない場合」として、家族の納得を前提に、医療チームが治療中止を決めることができるとした。チームで判断できない場合は、医療機関の倫理委員会で検討することを求めている。

治療中止の方法は、人工呼吸器など生命維持装置の取り外し、薬剤投与の中止など。「積極的安楽死」とみられる薬物の過量投与や筋弛緩(しかん)剤の投与の行為はしない。また、チームの方針決定や治療過程などの経緯を可能な限り詳細に記録に残すことを求めている。

関連記事:終末期医療の指針原案:「呼吸器外し」も選択可

パーキンソン病:原因物質を抑制するたんぱく質を解明

手足のふるえなど体の動きが不自由になる難病、パーキンソン病の原因物質が脳内にたまるのを抑えるたんぱく質を、京都大先端領域融合医学研究機構の木下専助教授、猪原匡史特別研究員らのグループが明らかにした。15日付の米専門誌「ニューロン」電子版に発表する。根本的な治療薬開発につながる成果と注目される。

パーキンソン病は全国に10万人以上の患者がいるとされる難病。中脳の黒質と呼ばれる部分にある神経細胞に悪玉たんぱく質がたまり、その毒性が細胞を殺し、神経伝達物質ドーパミンの分泌が減って起こる。

木下助教授らはこれまでに神経細胞内では悪玉たんぱく質とともにSept4というたんぱく質も凝集することを確認、このたんぱく質の役割を調べていた。

その結果、米国でつくられたパーキンソン病症状を起こすネズミで、Sept4をつくれないように遺伝子操作すると、症状は3カ月ほど速く悪化することが判明。Sept4が、悪玉たんぱく質の蓄積のブレーキ役になっていることがわかった。Sept4は、ドーパミンをつくるシステムを安定化させる役割もあり、善玉たんぱく質ともいえる。

木下さんは「パーキンソン病では、Sept4が欠乏している例も見られ、悪化に拍車をかけているらしい。研究を進めて治療に結びつけたい」と話している。

関連記事:てんかん治療薬「ゾニサミド」がパーキンソン病に効果

ファブリー病治療薬「リプレガル点滴静注用3.5mg」発売へ

大日本住友製薬は14日、ファブリー病治療薬「リプレガル点滴静注用3・5mg」(一般名・遺伝子組み換えアガルシダーゼ アルファ)を発売すると発表した。
米社からの導入品で、遺伝子活性化技術を用いてヒト培養細胞から産生したアルファ−ガラクトシダーゼ酵素製剤。発売にあたって全例調査を実施する。

売上高は初年度5000万円、5年後に約20億円を見込む。ファブリー病は細胞内ライソゾーム中の酵素であるアルファ−ガラクトシダーゼAの活性が先天的に欠損や低下している希少疾患。国内患者数は270人。薬価は35万7307円。

プレスリリースより
大日本住友製薬株式会社は、ファブリー病治療剤「リプレガル点滴静注用3.5mg」〔一般名:アガルシダーゼアルファ(以下リプレガル)を2月15日付で新発売いたしますので、お知らせします。

ファブリー病は、細胞内ライソゾーム中の加水分解酵素であるα−ガラクトシダーゼAの活性が先天的に欠損あるいは低下している代謝異常症です。本疾患において、本来分解されるべきスフィンゴ糖脂質〔主としてセラミドトリヘキソシド(CTH)〕が様々な細胞や組織内に蓄積することにより、脳、心臓、腎臓をはじめとした組織や臓器が障害を受け、機能低下する疾患です。

リプレガルは、このファブリー病の酵素補充療法に用いるα−ガラクトシダーゼ酵素製剤で、米国のShire Human Genetic Therapies社からの導入品です。2001年8月にEUで初めて承認を取得し、日本での承認が40ヵ国目となります。

リプレガルは、次のような特性を有しています。

  1. 遺伝子活性化技術を用いて、ヒト培養細胞から産生されたα−ガラクトシダーゼ酵素製剤です。
  2. 2週間に1回、40分間以上かけた点滴静注により、ファブリー病の原因物質であるCTHの蓄積を軽減します。
  3. 患者さんのQOLを大きく損なう疼痛を軽減し、腎障害および心障害に対する進展抑制・改善効果が期待できます。

認知症支援へモデル地域を指定:厚生労働省

厚生労働省は14日までに、認知症患者が在宅でも安心して暮らせるよう地域ぐるみで支援してもらうため、都道府県ごとにモデル地域を1−2カ所ずつつくる事業を2007年度から行うことを決めた。
はいかいして迷子になった患者の捜索や家族からの相談などを想定、事業を統括する専門員を置く。

モデル地域での認知症への取り組みを通じ、全国的な認知症対策を底上げする狙い。将来250万人に達すると見込まれる患者を、認知症グループホームや特別養護老人ホームなどで受け入れるには限界があり、自宅での介護に頼らざるを得ない事情も背景にあるとみられる。

事業には07年度予算案で、各都道府県への補助金として約5億4000万円を計上した。

モデル地域は都道府県が指定し、全体的な調整を担当する専門のコーディネーターを選任。何人でもいいが、患者のケアに従事した経験があることが条件で、介護福祉士や看護師、医師などが想定されるという。

取り組み内容は基本的に地域に任されるが、厚労省は、住民や介護サービス事業者、消防などが連携して、はいかい患者を捜す模擬訓練の実施や、認知症についての相談にコーディネーターが助言を行ってくれるよう促す考え。

診療報酬明細書(レセプト)、健康診断の結果を電子化へ

厚生労働省は医療・介護の効率化に向けたITの活用計画をまとめた。診察内容と医療費を記した診療報酬明細書(レセプト)や、健康診断の結果といった情報を電子データで管理し、患者や医療機関などが活用できるようにする。
患者や病院が入手する情報を透明にして、同じ検査を何度も実施するといった無駄を排除するのが狙いだ。

厚労省がまとめたのは医療費などを効率化する総合計画(グランドデザイン)の原案。医療・介護・福祉分野のIT活用の将来構想と、その実現に向けた2010年度までの5年間の行動計画を盛り込んだ。

健診情報の電子化は08年度から着手、国民の健康管理の向上に役立てる旨をうたった。政府の「IT新改革戦略」の社会保障分野の具体策として3月中に正式決定する。

北米産以外の輸入牛肉もBSE危険性評価へ

食品安全委員会プリオン専門調査会は14日、メキシコ産や中国産など日本が輸入する北米産以外の牛肉について、同委員会が独自に牛海綿状脳症(BSE)の危険性評価を実施することが妥当とする見解を大筋でまとめた。今後、一般に意見を聞くなどの手続きを経て、同委員会が実施を決定する。

専門調査会によると、既にリスク評価を行った米国・カナダ以外に13カ国から牛肉が輸入されている。各国に対しBSE対策についてアンケートなどを実施して情報を収集、評価する考えだ。

日本が05年度に輸入した牛肉は、欧州食品安全庁の評価で「BSEの可能性がほとんどない」とされるオーストラリアやニュージーランドからがほとんどを占めた。

一方、米国産の輸入停止中に急増したメキシコやチリ産などはリスクが明確になっておらず、専門調査会は「国民に不安があり、可能な限りリスクを明らかにする必要がある」と判断した。

菅谷クリニック、指定取り消し処分へ:診療報酬の不正請求

美容外科などの医療行為で横浜市泉区の「菅谷クリニック」が診療報酬の不正請求をしていた問題で、神奈川、東京の両社会保険事務局は13日、同クリニックの保険医療機関指定と、同クリニックを開設する医療法人社団「天道会」の菅谷良男理事長(56)ら医師2人の保険医登録を取り消す処分を決めた。

菅谷理事長については、組織的な不正請求を主導していたとして、神奈川社保事務局が近く、詐欺容疑で神奈川県警に刑事告発する。同県警では既に捜査を進めており、立件に向けて実態解明を進める方針だ。

同クリニックを巡っては、女性患者2人が2005年5月、自費と保険の二重請求があったとして、同県警に詐欺容疑で刑事告発していた。

菅谷理事長のほかに保険医登録の取り消しが決まったのは、同クリニックの元勤務医、村上博喜医師(54)。

厚生労働省と両社保事務局によると、確認された不正請求は、患者37人分について106件約408万円。不正請求の情報が得られたケースについて調べたもので、実際の不正請求額はさらに膨らむとみられる。天道会が東京都と神奈川県で開設する他の5クリニックについても、順次、監査を行う方針。

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介護保険を利用した「個別・短時間型」リハビリテーション

診療報酬改定で医療機関でのリハビリテーションが原則として最長180日に制限され、リハビリを受けられない人が出ている問題で、厚生労働省はその受け皿として、介護保険を使ってリハビリだけを集中して行う新たな「個別・短時間型」サービスを始める方針を固めた。
制限後、厚労省は受け皿に想定していた介護保険との連携がうまくいっていないと認めていたが、実際に介護保険制度を見直すのは初めて。3月中にモデル事業をつくり、09年度の介護報酬改定で導入を目指す。

脳卒中などの病気や事故からの回復には、医療保険と介護保険のリハビリがある。同省は医療費抑制のため昨年、医療保険のリハビリを、発病直後は手厚くする一方で、期間を原則最長180日に制限。それ以降は介護保険による「通所リハビリ」の利用を求めていた。

しかし、医療のリハビリが専門家によって個々人の体調にあわせて実施されるのに対して、現行の通所リハビリは、一時預かりの役割が大きい。ほとんどが半日コース。集団体操やレクリエーションをリハビリの代わりにする施設も少なくない。そのため、医療保険の上限後もリハビリを必要とする人の受け皿にならない問題点が指摘されていた。

厚労省が新たなモデルとして想定しているのは、この通所リハビリの個別・短時間型。

現在の通所リハビリの設置基準が、「利用者20人に対し専従2人」「サービス時間のうち理学療法士や作業療法士など専門職がつく必要があるのは5分の1以上」と緩いのを、個別対応のリハビリもできるように、全サービス時間を通して専門職をつける。

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果実「ボイセンベリー」の中皮腫抑制効果を確認

米国原産の果実「ボイセンベリー」を餌として与えたラットは、アスベスト(石綿)の引き起こすがん「中皮腫」の発症例が少ないことが安達修一・相模女子大助教授(公衆衛生学)の研究グループの実験でわかった。

安達助教授らは、ボイセンベリーに含まれるポリフェノールに発症抑制効果があるのではないかとみて、確認実験を進めている。

実験では、アスベスト10ミリ・グラムを腹部に注入したラット40匹のうち20匹にボイセンベリーの粉末を2%混ぜた餌を、残りのラットに通常の餌を与え、1年間観察した。
その結果、通常の餌を与えたラットの14匹が中皮腫を発症したのに対し、ボイセンベリーのグループでは7匹にとどまった。1匹目の発症時期も、ボイセンベリーを与えた方が2か月ほど遅かった。

ボイセンベリーは米国やニュージーランドで生産され、そのまま食べたり、ジャムに加工されたりしている。中皮腫の発症には活性酸素が関係するとみられており、安達助教授によると、ポリフェノールの抗酸化作用が発症を抑止している可能性がある。
ブルーベリーやラズベリーなどにも抗酸化成分が含まれているが、ボイセンベリーは特に多く含むとされている。

関連記事:悪性胸膜中皮腫治療薬「アリムタ」発売:イーライリリー

病院や福祉施設への公的融資を2割削減へ:福祉医療機構

病院や福祉施設に公的な融資を行っている独立行政法人「福祉医療機構」は、現在約4000億円の年間融資額を2008年度から段階的に減らし、12年度までに2割削減する方針を固めた。機構は医療・福祉分野の融資では国内最大手だが、政府が掲げる「官から民へ」の路線に沿って業務を縮小する。
今後、病院への融資は、救急医療など公共性の高い医療を担う病院に限られることになり、多くの病院の資金調達計画に影響が出る可能性がある。

機構は07年度中につくる中期計画(08〜12年度)に2割削減の数値目標を盛り込む。

計画では、500床以上の大病院について08年度以降、救急医療や小児・産科、がん治療などの分野で、病院が、地域の医療ネットワークに組み込まれている場合などに融資を限定する。都道府県が策定する医療計画に基づいて判断し、一般の病棟建て替えや医療機器の購入には融資しない。

また、中小病院や福祉施設に対しても公共性が認められる融資を優先し、民間金融機関と共同で融資している場合は機構の融資比率を引き下げる。また、機構が行っていた開業医の後継者探しの支援事業を07年度末で廃止するなど、業務のスリム化も進める。

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サプリメント(栄養補助食品)の安全性検討へ有識者会議

健康ブームを背景に多種多様な商品が出ているサプリメント(栄養補助食品)などの健康食品に関し、厚生労働省は、安全性をどう確保するかについて検討する有識者会議を4月に設置することを決めた。

同省では食品衛生法の改正も視野に入れており、食品に含まれる成分の届け出の義務化の是非などについて有識者会議で協議する。

検討対象となるのは、国の審査を経て効能表示を認めた「特定保健用食品」や国の基準に合えば栄養分の機能が表示できる「栄養機能食品」に含まれない、法令上、一般食品と同じ扱いを受けている健康食品。
これらの食品の国内の市場規模は健康ブームとともに拡大、2000年には1・3兆円(推計)あり、10年には3・2兆円に達すると見込まれている。

健康食品の安全性について厚労省は2005年2月、「安全性に関する自主点検ガイドライン」を作成、原材料の安全性について文献などの情報収集や試験を行うよう促していたが、審査の対象などとはなってこなかった。

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国立大病院の院長選挙:看護師や職員も参加へ

医局の教授が人事などで絶大な権限を持ち、山崎豊子の小説「白い巨塔」の舞台になった国立大学病院。そのトップを決める院長選挙に、教授、助教授らの教員だけでなく、看護師や技師、事務職員も参加できるように投票資格を拡大する動きが広がっている。
国立大の法人化で大学経営の透明性が求められるなか、教員だけによる選挙は「派閥争いの温床」「閉鎖的で現場軽視」との批判が強いためだ。投票権の「門戸開放」で、国立大病院の体質は変わるのか?

大阪大医学部付属病院(大阪府吹田市)は1月初め、院長選の予備選挙にあたる「1次選挙」を実施した。従来、講師以上の約550人だけが投票できたが、今回初めて、課長級以上の事務職員、看護師長、技師長ら約60人が加わった。

1次選挙は教授の名前を自由に書いて投票する。このうち上位3人が教授会での「2次選挙」に進む。開票の結果、大学院医学系研究科の林紀夫教授(59)が院長に選ばれた。選挙に初めて参加した事務職員は「1次選挙だけとはいえ、教員だけで決められていた院長選びに、私たち現場の職員が関与できるようになった意味は大きい」と話す。

04年の国立大学法人化で、学長を選ぶ「学長選考会議」に外部の人間を参画させることが定められたことなどを契機に、同病院でも従来の院長選のあり方を再検討。「閉鎖的」との批判が根強かった選挙制度を改めることにした。

ある教員は「院長選のたびに、教員同士の多数派争いが起きるなどの弊害があった。体質を根本的に変えるためにも、一般の事務職員にもさらに投票資格を広げてほしい」と話す。

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フィリピン保健省 生体腎移植の臓器売買公認へ公聴会

生体腎移植の事実上の臓器売買を公認する新制度導入を目指すフィリピン保健省は10日、マニラ首都圏で公聴会を開催し、関係者の意見を聴取した。

会議では渡航移植する外国人患者の受け入れについて、具体案は協議されなかったものの、腎提供者に一定の報奨を認める方向で最終調整に入ることが確認された。同保健省は、今後、公聴会を踏まえ、新制度の裏付けとなる法律の制定を検討する。

新制度の骨子は、外国人患者に〈1〉腎臓提供者(ドナー)への生活支援費〈2〉別のフィリピン人患者の移植手術代――を支払わせるというもの。公聴会には医療関係者ら約200人が出席し、非血縁者間の生体腎移植について、倫理・法学的な観点から意見が交わされた。
臓器売買を巡っては、「法に反しない限り、臓器売買は患者・ドナー双方に有益」(英国の生命倫理学者)という売買容認派の発言が目立ったのに対し、一部の出席者から「神から与えられた身体の一部を売買する行為は許し難い」(フィリピンのカトリック神父)と強い反発も出た。

公聴会はこの日で終了。最後に、政府方針を示す声明案が提示され、「国及び社会は、フィリピン国民に対し、臓器の提供及び『報奨』『感謝の贈り物』を社会から受けとることを容認する」との文言が盛り込まれた。同保健省は、3月に声明案を採択し、新制度導入に向け動き出したい考えだ。

介護の必要度を判定する「要介護認定」 全面的見直しへ

厚生労働省は9日までに、介護保険で介護の必要度を判定する要介護認定を全面的に見直す方針を固めた。心身の状態をきめ細かく把握するため、判定に必要な認定調査票に洗濯を1人でできるかといった日常活動や損得の判断力といった認識機能などを問う項目を追加。そのための調査票を試作した。手続きも簡素化する方針だ。

現在の判定では基礎データが古く、市町村間のばらつきも指摘されており、抜本的な見直しが必要と判断。現在40歳以上が支払っている保険料負担年齢を引き下げ、原則65歳以上となっている介護保険のサービスを65歳未満の障害者へ拡大することも視野に、早ければ新認定制度を2009年度から導入したい考えだ。
ただ、障害者への介護保険サービス拡大には反対する意見もあり、結論が出るまでには曲折がありそうだ。

現在の要介護認定は、市町村の認定調査員による調査結果をコンピューター処理する1次判定と、それを原案として複数の専門家による市町村の介護認定審査会が行う2次判定の2段階。

調査員は、介護が必要な高齢者宅を訪問して、視力や聴力、手足の運動能力、身体のまひといった82項目からなる調査票を基に、聞き取りを実施している。

開業助産所の3割が存亡の危機:改正医療法の施行で

年間約1万人、全国のお産の1%を担う開業助産所が存亡の危機に立っている。4月施行の改正医療法で、産婦人科の嘱託医を持つことが義務づけられたのに、日本産婦人科医会が産科医不足などを理由に、厳しい条件の契約書モデル案を示したためだ。NPO法人の緊急アンケートでは、嘱託医確保が「困難・不可能」が3割にのぼる。

嘱託医確保の猶予期間は施行から1年。来年4月までに嘱託医が決まらない助産所は、廃業せざるを得ない。

9日、助産師や産婦たちでつくるNPO法人「お産サポートJAPAN」が、厚生労働省で会見を開いた。同時に発表した全国の分娩(ぶんべん)を扱う開業助産所330全施設対象のアンケート結果によると、「嘱託医が確保できる」は38%。「不確実だが見込みがある」30%、「困難」21%、「不可能」が7%だった。

出産時の異常で、助産所から病院・診療所に搬送されるのは約1割。同NPO代表で助産師の矢島床子さんは「安全性確保には医療のバックアップは必要。でも、助産師が自力で嘱託医を探すのは難しい」と話す。

一方、日本産婦人科医会は、助産師は独立開業より院内助産所の形を取るべきだとする。昨年末には「嘱託医契約書モデル案」を発表した。「助産所は嘱託医に委嘱料を支払う」「妊婦を転送したケースについては、助産所が訴訟費用などを補償する」「助産所は十分な資力を確保しなければならない」など、厳しい内容だ。産科医不足の上、転送を受けた病院が訴訟の対象となる例が相次いでいる事情がある。

神谷直樹常務理事は「助産所の分娩は安心かもしれないが、安全面で問題がある。一歩進んだ分娩環境の提供を目指すため、あえて厳しいモデルを示した」と話す。
日本助産師会は「モデル案は助産師の開業権を事実上、侵害する」として、厚労省に「嘱託医と、救急搬送先となる連携医療機関を同じ病院(医師)が兼務できるようにしてほしい」と要望した。
同省看護課も「後方支援機関として嘱託医を残すべきだと主張し、確保に協力すると言ったのは産科医会だ。安全なお産のために積極的に嘱託医を引き受けてほしい」と話している。

早期発見の子宮内膜がん、卵巣温存手術が可能

子宮内膜がん(子宮体部がん)は卵巣摘出が不可避とされてきたが、45歳以前に早期発見した場合卵巣転移率は非常に低く、卵巣を切除せずに手術を行ってもがんの再発はないとの臨床結果が出た。ソウル大学病院産婦人科の金載元(キム・ジェウォン)教授チームが8日に明らかにした。

子宮内膜がんは妊娠、出産の経験がない女性のほか、肥満、糖尿病、女性ホルモン分泌異常の女性に発生しやすく、糖尿病・高血圧とも関連があるとされる。国内女性がん患者の1%〜2%、婦人がん患者の16%を占めている。主に50代初めの患者が多いが、40代未満で発症するケースも10%に達する。これまでは卵巣を通じたがん細胞の転移を防ぐため、年齢に関係なく子宮、卵巣、卵管を切除する手術が行われてきた。

金教授チームは1992年から2004年までに子宮内膜がんで手術を受けた患者260人のうち卵巣温存術を適用した35人を平均76か月間にわたり調査したが、がんが転移したり卵巣に悪性腫瘍(しゅよう)が発見された患者は1人もいなかったという。

この研究結果をまとめた論文は、婦人科腫瘍学分野の国際学術誌最新号に掲載された。

関連記事:子宮頸がん予防ワクチン「ガーダシル」、米が認可

アディポネクチン受容体がメタボリック症候群治療の鍵

メタボリック症候群を抑える働きがあるホルモン「アディポネクチン」と結合するタンパク質(受容体)を遺伝子操作によりマウスの肝臓で増加させ、糖尿病の症状を改善することに門脇孝東京大教授(糖尿病代謝学)らの研究チームが8日までに成功した。

この受容体の働きを高める物質を見つければ、糖尿病や肥満、メタボリック症候群の治療薬や予防薬になる可能性があるという。成果は米医学誌ネイチャーメディシン3月1日号に掲載される。

アディポネクチンは脂肪を蓄積する細胞から分泌され、筋肉や肝臓の細胞が脂肪を燃焼するのを助ける「善玉ホルモン」として働くことが分かっていた。

研究チームは、肥満で糖尿病のマウスの肝臓を調べ、アディポネクチンの受容体の数が正常なマウスの6割程度に減少していることを発見。受容体を作る遺伝子の働きを高めて数を増やしたところ、血糖値が半分程度にまで下がり正常値に近くなった。

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人類のピロリ菌感染は5万8000年前:日米欧合同研究

胃かいようなどの原因とされるピロリ菌に人類が感染したのは、人類がアフリカにいた約5万8000年前とする研究成果を、日米欧などの合同チームがまとめた。また、地域や民族によってピロリ菌の遺伝子が違うことから、日本人の起源の解明など、人類の足跡を知る「証拠」にもなりうるという。7日付の英科学誌「ネイチャー」で発表した。

チームは6年がかりで世界51民族、769人の胃からピロリ菌を集め、菌の遺伝子の違いを分析した。その結果、遺伝子は民族ごとに異なり、アフリカや欧州、アジアなど地域ごとに6種類に大別されるほか、人類が最初に誕生したとされる東アフリカを起源に変化してきたと考えるのが最も合理的との結論を得た。
人類がアフリカから各地に移住し始めたのは約5万年前とされているが、遺伝子の変化を逆算し、最初の感染時期はさらに約8000年さかのぼるとみられる。

ピロリ菌の遺伝子を比べると、例えば北米の先住民と日本人が似ているほか、在米アジア人は2世までアジア人タイプのピロリ菌を持っており、ヒトの遺伝子を使った解析よりも詳しい移住の歴史が解き明かされる可能性もあるという。

チームの山岡吉生・ベイラー医科大准教授(分子病原学)は「ピロリ菌は、人類史初期のアフリカ時代から人類を胃炎で悩まし、まるで遺伝のように受け継がれているらしいことが分かった。菌の感染経路や、国や地域によって胃がんの発生率が違う原因の解明などにもつながるはず」と話している。

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