体外受精児の健康状態を追跡調査へ:厚生労働省

厚生労働省は、体外受精による不妊治療で生まれた子どもの健康状態を把握するため、誕生から小学6年生までを長期的に追跡する調査を新年度から始める。
約2000人が対象で、治療技術の標準化や安全性の確保に役立てる。また、母親を対象に、妊娠した人の数、採卵回数あたりの妊娠率と出産率なども全国的に調べる。

調査対象となるのは、厚生労働省が不妊治療に対して補助をする「特定不妊治療費助成事業」の適用を受けた母親とその子ども。この事業は、04年度に始まり、05年度までに受給した約4万3600人のなかから抽出する。

子どもへの調査は、発育状況などに注目する。体外受精は、出産率を上げるため、複数の受精卵を子宮に戻すケースが多く、双子や三つ子などの多胎妊娠になりやすい。
子ども1人の単胎妊娠と比べて、早産や死産の発生率が高く、未熟児が多いとも指摘されている。だが、こうした問題は、不妊治療と出産を扱う医療機関が異なることが多く、これまで調べられてこなかった。

厚労省は、調査チームを公募して、体外受精で生まれた子どもの成育状況や精神面への影響を調べる。

母親については、これまで、受給者数と受給額のデータしかないため、妊娠者数、妊娠率、低出生体重児の数など約10項目を調べ、実績や成果を把握することにした。

また、これまでは、都道府県が日本産科婦人科学会の登録医療機関のなかからこの助成事業の指定機関を決めていたが、不妊治療の水準にはばらつきがあった。厚労省は今後、一定の水準を確保するため、独自の指定要件を定め、これに満たない場合は指定機関として認めないことにした。

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月経血から筋肉細胞を作成:筋ジストロフィー治療へ光

女性の月経血に含まれる細胞をマウスに注射し、不足すると筋ジストロフィーを引き起こすたんぱく質を作ることに、国立成育医療センター研究所のグループが成功した。
根本的な治療のない筋ジストロフィーの治療につながる成果として注目を集めそうだ。

筋ジストロフィーは、筋肉を動かすジストロフィンと呼ばれるたんぱく質の不足や異常が原因で発病する難病。同研究所生殖医療研究部の梅沢明弘部長らは、女性の月経血に含まれる細胞に着目、ボランティアの女性から提供を受けた月経血を、試験管の中で約3週間培養したところ、筋肉細胞を作ることに成功した。

続いて梅沢部長らは「月経血に含まれる細胞を注射すれば、体内で筋肉細胞に変化するのでは」と考え、ジストロフィンを先天的に作ることのできないマウスの足に、この細胞を注射した。その結果、約3週間後にマウスの筋肉細胞と注射で移植した細胞が融合し、ジストロフィンを分泌していた。
梅沢部長は「月経血に含まれる細胞は子宮内膜細胞と思われ、筋肉細胞に非常になりやすい性質を持っている。できるだけ早く筋ジストロフィーの治療に利用できるように研究を進めたい」と話している。

大学病院を中心に「がんワクチン」の臨床研究ネットワーク

全国13の大学病院やがん専門病院などが、がんを攻撃する免疫細胞を活性化させる「がんワクチン」の臨床研究ネットワークを作った。一部で患者への接種も始まった。対象とするがんは膵臓(すいぞう)や食道、肝臓、胃、肺、膀胱(ぼうこう)など多岐にわたる。
安全性を確かめた後、手術後の再発を予防する目的で接種。数年後の実用化をめざす。がんワクチンはこれまでいくつかの大学病院で個別に臨床研究されてきたが、これほど規模が大きく、組織だった研究は初めて。

参加するのは岩手医大(研究対象は膀胱がん)、神奈川県立がんセンター(肺、胃がん)、近畿大(大腸、食道、腎臓がん)、九州大(大腸がんなど)など。

東大医科学研究所ヒトゲノム解析センター(中村祐輔センター長)が開発した約10種のワクチンを使う。同センターは、人の遺伝情報をつぶさに調べ、正常細胞のもとではほとんど働かないのに、がん細胞の中だと活発に働く遺伝子を特定。それらを基にワクチンを作り、がんに対する免疫細胞を活性化させるかどうかを実験で検証した。

臨床研究は、まず人での安全性を調べる第1段階から始める。標準的治療が効かず、ほかに有効な治療法がないと判断された患者に参加への協力を求める。

山梨大の河野浩二・助教授(第1外科)は、食道がんを対象に3種類のワクチンを同時に用いる。第1段階は5人の患者に使う予定で、すでに2人に接種した。
以前、別のワクチンを試みたが、免疫反応を思うように高めることができなかったという河野さんは「免疫反応の活性化を図るワクチンは本来、術後の再発予防などに向いている。今回は期待したい」と話す。

和歌山県立医大の山上裕機教授(第2外科)は、膵臓がんと食道がんを対象にワクチンの段階的な増量などを計画。膵臓がん2人、食道がん3人に接種した。「たとえがんが縮小しなくても、大きくなるのを抑えて生活の質が向上し、生存期間が延びれば」と言う。

がんワクチンの臨床研究はこれまで末期患者が対象で、免疫細胞を活性化させるのが難しい場合が少なくなかった。今回は手術後の再発予防が最終目的で、患者は手術を受けたとはいえ比較的体力のある人が対象。免疫反応を導きやすいという。

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琉球大学がIT医療で人材育成:離島での専門医不足に対応

琉球大学医学部が、離島・へき地医療への支援体制を強化することを目指し、新たな人材育成プログラム「ITによる遠隔医療と航空医療搬送の高度化(仮称)」の導入を検討している。離島で不足する専門医への相談体制などを全県的に構築するため、医療分野でIT技術を構築・駆使できる人材育成などを行う予定だ。2007年度の文部科学省科学技術振興調整費の採択を目指し、2月下旬にも申請する。

第2回県地域医療対策協議会(委員長・喜友名朝春県福祉保健部長)が5日夜、那覇市の沖縄レインボーホテルで開かれ、離島・へき地の医師確保や人材育成などについて協議、同プログラムなどが報告された。

琉球大学と県立病院、民間病院群(群星)の3機関が行っている専門医を養成する「後期臨床研修」について、3機関の連携体制構築を確認した。これにより、魅力ある専門医養成プログラムを整備し、全国的に評価が高く、人材が集まっている初期臨床研修を終えた人材定着を図り、離島などへの安定的医師派遣体制につなげたい考えだ。

琉大の人材育成プログラムの申請については、共同提案となる県が現在、調整を進めている。同大の坂梨又郎医学部長は「離島の問題は県全体の問題。専門医との連携やヘリ搬送を支援するためにも、遠隔医療にIT技術を活用し構築することが必要だ」と強調した。

産科医療の無過失補償制度:被害者からは危惧の声

脳性まひの重い後遺症を抱えて生まれた新生児を巡り、医師らの過失がなくても補償対象とする産科医療の「無過失補償制度」について、医療関係者らによる準備委員会が今月中に設置され、具体的な制度設計の検討が始まる見通しになった。
準備委では、補償の対象や金額、審査方法などを話し合うが、医療事故の被害者からは「過失のあるものまで無過失と扱われかねず、事故の原因をあいまいにする」と危惧する声が上がっている。

同制度は、通常の出産で新生児が脳性まひになった場合、医師の過失が立証されなくても金銭を補償するもので、自民党が昨年11月、制度の枠組みをまとめた。厚生労働省は07年度中に導入する方針で、新生児1人当たり2000万〜3000万円の補償が考えられている。準備委は、制度を運用する財団法人「日本医療機能評価機構」に設置される。

出産にかかわる医療事故は、過失の有無の判断が難しいとされ、裁判で争われるケースが少なくない。自民党や日本医師会は、制度で患者や家族の救済を図る一方、医療裁判を減らし、紛争の多さによる医師の産科離れも防ぎたい考えだ。

しかし、「事故から学んでほしい」と訴えてきた被害者たちは、過失の有無があいまいになり、事故の反省も生かされず、ミスを繰り返す「リピーター」など悪質な医師が放置されることを心配する。医療裁判が多いのも、医療側の不誠実な対応に原因があると批判。障害の重さに比べ想定されている補償費が低すぎるとの声も出ている。

産科の事故で長女を亡くした経験を持ち、中央社会保険医療協議会(中医協)の委員を務める京都府の高校教師、勝村久司さん(45)は「被害者は産科医らの不誠実さを見兼ね、『今後のために放っておけない』という思いで裁判に向かっている」と指摘する。そして「無過失補償制度を導入する前に、まず過去の被害をきちんと分析し、再発防止策を提言するのが先だ」と訴える。

厚労省医政局は「準備委では過失の有無などを明らかにするため、事故原因の分析のあり方も検討したい」と説明している。

子宮内膜症をマウスで発症:治療薬開発の第一歩に

人間のほか一部の霊長類でしか発症しないため、実験動物を使った治療薬開発などが困難だった「子宮内膜症」を、マウスで発症させることに、慶応大医学部の岡野栄之、吉村泰典両教授と実験動物中央研究所(川崎市)の研究チームが成功した。

子宮内膜症は、不妊症の原因にもなっているだけに、発症メカニズムの解明や治療薬の開発につながる研究成果として注目される。

同研究所が開発した、人間の細胞を移植しても拒絶反応を起こさないマウスを使った上で、異物に対して拒絶反応を起こしにくい腎臓の表面に、人間の子宮内膜細胞を移植した。10週間後には、移植したすべてのマウスの腎臓の表面に子宮内膜組織が出来上がった。

これらのマウスでは、月経周期にあわせた組織増殖や、出血なども確認されたという。

また、今回の研究では、移植した子宮内膜細胞に、ホタルのように発光する遺伝子を組み込むという工夫もなされた。

このため、体の外側から発光強度を測定することにより、マウスを解剖せずに体内の子宮内膜組織の増殖状況などを把握することも可能で、効率よく研究を進めることが出来るという。

子宮内膜症
子宮の内側を覆う子宮内膜に似た組織が、子宮以外の卵巣や骨盤内などにでき、月経の周期に合わせて増殖、出血を繰り返す原因不明の病気。強い痛みを伴うという。国内には、100万〜300万人の患者がいると推定されている。

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コレステロール判断基準変更へ:日本動脈硬化学会

日本動脈硬化学会は、心筋梗塞など動脈硬化性疾患の予防や治療の指標から従来の「総コレステロール」をはずし、代わりに「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールなどを判断基準とする新しい診療ガイドラインを策定した。
ガイドラインに拘束力はないが、多くの医療現場は対応が迫られそうだ。3日、福岡市で開かれた同学会理事会で承認された。

狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気を招く「高脂血症」の診断基準には、一般的に総コレステロールが使われている。同学会が02年に策定したガイドラインでも、血液1デシリットルあたり220ミリグラム以上を「高コレステロール血症」とし、心筋梗塞などを防ぐには220ミリグラム未満に抑えるよう求めてきた。

しかし、「高コレステロール」の中でも、「善玉」のHDLコレステロールが多い場合にはLDLコレステロールは通常より低く、動脈硬化につながりにくい。日本人はこうしたケースが多く、総コレステロールを基準にすると、必要量以上の投薬が行われるなどの問題が分かってきた。このため、5年ぶりの改定では「誤解の元」となる総コレステロールを基準から外し、高コレステロール血症は「LDLコレステロール140ミリグラム以上」とした。

これまでも、総コレステロール値は心筋梗塞を発症する危険性とは無関係▽総コレステロール値が高めの方が長生きする――など、従来の基準に疑問を唱える意見があった。一方で、便利な指標として総コレステロール値を基準に診療する医師は少なくなく、生活習慣病予防では重要な指標となってきた。

策定の中心となった同学会動脈硬化診療・疫学委員長の寺本民生・帝京大教授(代謝学)は「日本人のデータに基づき、科学的見地から見直しを行った。総コレステロールを基準としてきた他の学会にも呼びかけ、基準の統一を図っていきたい」と話している。

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社名は「田辺三菱製薬」:10月に国内6位の製薬会社へ

三菱ケミカルホールディングス(HD)傘下で国内製薬9位の三菱ウェルファーマと同11位の田辺製薬は2日、今年10月に合併することで基本合意したと正式発表した。

合併後の売上高は4077億円(2006年3月期)となり、国内の製薬会社では6位に浮上する。合併により研究開発体制を強化して新薬開発を進め、海外市場に早期に投入して生き残りを図る考えだ。

東証1部上場の田辺製薬が存続会社となり、三菱ケミカルHDの完全子会社の三菱ウェルを吸収合併する。三菱ウェル株1株に対し、田辺製薬株0・69株を割り当てる。合併後は三菱ケミカルHDが存続会社株式の約56%を保有し、子会社とする。

社名は「田辺三菱製薬」となる見通し。上場は維持する。社長には田辺製薬の葉山夏樹社長が、副社長には三菱ウェルの小峰健嗣社長が就任する。

三菱ウェルと田辺がそれぞれ6月に開く株主総会で合併を決議する予定だ。葉山社長は2日の記者会見で「新薬を作りながら海外に出ていかなければ生き残っていけない」と述べ、海外市場の開拓が合併の狙いであることを強調した。

製薬業界では、武田薬品工業やエーザイなど、海外売上高比率が4〜6割近い企業が利益を拡大させる構図が定着している。三菱ウェル、田辺ともに新薬不足から海外売上高比率は1割に満たない。

合併により、両社が得意とする高血圧や糖尿病などの循環器・代謝系疾患では、研究開発段階にある新薬候補の数は倍増する。
研究開発費も年間784億円と、ほぼ倍になり、得意分野に集中投下することで早期に新薬を生み出せるとしている。

関連記事:田辺製薬がジェネリック医薬品に参入

妊婦の無料健診、現行の2回から5回へ:厚労省

厚労省は2日までに、胎児や母親の健康状態を診断する妊婦健診をめぐり、市町村ごとに実施している無料健診の回数を、現在の2回程度から、5回程度に増やすことが望ましいと都道府県や政令市に提案した。

国の少子化対策の一環として、07年度予算で自治体に配分される地方交付税のうち、少子化対策に充てる事業費が06年度予算の約2倍の約700億円に増額される方針であることを受けた措置。事業費が増加した分の一部を妊婦健診の費用負担に回し、無料回数を増やして出産世帯の負担軽減を図ることが狙い。

厚労省によると、無料健診は04年度の実績では全国平均で約2回。一方、出産までに受診することが望ましいとされる健診回数は、通常の場合で14回程度。実際に何回、健診を受けているかのデータは取っていないが、無料となる2回分を除いた自己負担の総額は平均で約12万円に上っている。

膀胱がんのワクチン療法を開発:東大医科研、岩手医科大

岩手医科大の藤岡知昭教授と東京大医科学研究所ヒトゲノム解析センターの中村祐輔教授らの研究グループは1日、遺伝子を使った膀胱(ぼうこう)がんのワクチン療法を世界で初めて開発したと発表した。

岩手医大の倫理委員会の承認を得ており、今月中にも臨床研究を開始。2年以内に治療法の確立を目指す。

藤岡教授らは、膀胱がんの細胞に高い割合で現れる二つの遺伝子を発見。遺伝子をHLA(ヒト白血球抗原)と結びつけてワクチンを開発した。ワクチンを膀胱に注入すると、患者のリンパ球が異物侵入と認識して活性化し、同じ目印を持つがん細胞を攻撃するという。血液を使った実験で成果と安全性が確認されたとして、臨床研究に踏み切ることを決めた。

対象となるのは、この遺伝子を持ち、HLAの型も一致する膀胱がん患者。国内では患者の半数が該当する。膀胱がんは再発や転移が起きやすく、膀胱を摘出するケースも少なくない。

藤岡教授は「早期にワクチン治療を始めれば、摘出するケースが減り、患者のQOL(生活の質)を高めることができる。副作用がなく、臨床現場にすぐ導入できる」と説明している。

関連記事:子宮頸がん予防ワクチン「ガーダシル」、米が認可

免疫抑制剤が認知症に有効:放射線医学総合研究所

認知症の初期に脳内で免疫機能を担う細胞が活性化し、免疫抑制剤でこれを抑えると神経細胞の死滅が防げることを、放射線医学総合研究所(千葉市)などの研究グループがマウスの実験で確認、1日付の米科学誌「ニューロン」に発表した。

アルツハイマー病などの認知症は脳の神経細胞が死滅して起こるとされており、今回の成果は現在対症療法しかない認知症の根本治療につながる可能性があるという。

グループは、認知症にみられる神経細胞の死滅などを起こすマウスをつくり、特殊な放射性薬剤とPET(陽電子放射断層撮影)を使ってマウスの脳で免疫機能を担う「ミクログリア」という細胞を観察したところ、生後3カ月のマウスでこの細胞が既に活性化していることが分かった。

フィリピン政府が腎臓売買を公認:新制度導入へ

フィリピン政府は、腎臓移植を希望する外国人患者に対し、一定の条件を満たせば腎臓提供を認める新制度を導入する方針を固めた。

闇で横行する臓器の国際取引を事実上公認するもので、10日に保健省が公聴会を開いて各界の意見をくみ上げた上で、今年中の制度実施を目指す。外国人を対象とする政府公認の臓器売買は世界に類例がなく、実際に制度運用が始まれば移植待機者が1万人を超す日本から患者が殺到することも予想される。

新しい生体腎移植制度案は、外国人患者に〈1〉腎臓提供者(ドナー)への生活支援費〈2〉別のフィリピン人患者1人分の移植手術代――を支払わせるのが骨子。ドナー生活支援費などが1万2000ドル(約144万円)、フィリピン人患者の移植代が円換算で96万〜120万円相当とされ、外国人患者の手術・入院代とあわせ、外国人患者は総額5万ドル(約600万円)を支払うことになる。仕組み全体は政府が管理し、ドナーは民間のドナー支援団体「腎臓財団」を通じて生活支援を受ける。

7対1基準を満たす医療機関への一律収入増を撤回へ

厚生労働省は31日、06年7月から「患者7人に看護師1人」の手厚い看護配置基準(7対1)を満たす医療機関に対し、収入を一律増としている現行策を撤回する方針を固めた。入院患者の「看護必要度」を点数化し、総点数が一定以上の医療機関のみ収入が増えるようにする。今年度中に評価基準を作り、08年度の診療報酬改定に反映させる。

06年度の診療報酬改定で、7対1の医療機関は患者1人の1日の入院基本料が最低でも2860円増額された。集中ケアによる入院日数短縮を意図したものだ。ところが、収入増を狙う国立大学病院などが看護師の大量確保に乗り出し、一部の地方や中小の病院が看護師不足に陥った。

また、故意にベッド数を減らして7対1を達成し、軽症患者に過剰看護する例も報告されている。このため、中央社会保険医療協議会は31日、収入増となる7対1基準の適用は、手厚い看護が必要な患者の多い病院に限るよう求めた建議書を柳沢伯夫厚労相に提出した。中医協の建議書は、95年以来12年ぶり。

建議を受け厚労省は、介護保険の要介護度に準じ、入院患者向けの要看護度を策定することにした。現在も集中治療室(ICU)の入院患者などには看護必要度が定められているが、一般病棟の入院患者にも新基準を設定する。

具体的には、「血圧測定回数」「点滴の数」「自分で食事をできるか」など、最大で90項目程度の評価基準を設け、それぞれ度合いに応じた点数を設定。総点数が一定以上の病院にのみ7対1基準を認め、軽症患者が多く点数の低い医療機関は対象外とする。

7対1の病院は、昨年5月には280病院(4万4831床)だったが、10月には544病院(10万3836床)へと倍増した。

無資格助産:「堀病院」を起訴猶予へ 産科医療の影響を考慮

横浜市瀬谷区の産婦人科病院「堀病院」の無資格助産事件で、横浜地検は週内にも、保健師助産師看護師法違反容疑で書類送検された堀健一院長(79)を起訴猶予処分にする方針を固めた模様だ。同様に書類送検された看護師ら10人も起訴猶予または不起訴にする方針。
産科医・助産師不足を背景にした無資格助産が各地で行われており、起訴すれば産科医療に深刻な影響を与えることや、神奈川県警による家宅捜索や報道で既に社会的制裁を受けていることなどを総合的に考慮したとみられる。

堀院長と看護部長は03年12月〜昨年5月、計17人が出産した際、助産師資格のない看護師や准看護師計9人にお産の進み具合をみるため産道に指を入れる内診をさせた疑いで昨年11月、書類送検された。看護師ら9人は内診をした疑い。

これまでの調べで、無資格内診は03年11月以降、約3万9000件に上ることが判明。さらに、分娩(ぶんべん)を誘発するために妊婦の卵膜を破り破水させる人工破膜を看護師にさせていたことも分かった。地検は悪質な無資格助産を裏付ける事実とみて捜査を進めてきた。

しかし、地検は(1)堀院長は「厚生労働省が04年に出した『医師の指示下でも看護師内診は認められない』との通知は見解に過ぎないと思っていた」と主張している(2)日本産婦人科医会は「看護師による内診そのものは母体に健康被害を及ぼさない」との見解を示している(3)同医会は1960年代から、助産師不足に対応するため産科看護師を独自に養成し、各地で看護師による内診が行われてきた−−などの点を考慮。無資格助産の危険性の十分な立証は難しいうえ、起訴すれば産科医療に及ぼす影響が大きいと判断した模様だ。

厚生労働省が新型インフルエンザ対策について意見募集

鳥インフルエンザからの変異が懸念される新型インフルエンザ対策で、厚生労働省は31日、人から人への感染が発生、大流行するケースまでを想定した対策のガイドライン原案について、国民に意見を募る「パブリックコメント」を始めた。
数量が限られるワクチンをだれに優先的に接種するかなど、行政や専門家の判断で決められない「人の生命に直接かかわる問題」で国民の生の声を聞きたい、としている。

今月19日に厚労省専門家会議が示した原案は、感染拡大を防ぐ早期対応や交通制限などによる「地域封じ込め」など13分野に及ぶ。

ワクチンについては、医師や看護師ら医療従事者に加えて、社会生活に最低限必要な「社会機能維持者」に優先接種するとした。一方で職種については「電気・ガス・水道・食料供給・通信・交通・警察等」と7分野を示すにとどめた。パブリックコメントでは、社会機能を維持する職業とは何か、また、死者を最小限に抑える目的で医学的にリスクの高い人に優先接種するか、国の将来を重視して子どもに優先接種するか、などについて尋ねている。

厚労省は国民の意見を参考に、今年度内に専門家会議で正式なガイドラインをまとめる方針だ。
原案は、電子政府の総合窓口から閲覧できる。意見は3月1日までに電子メールかFAX、郵送で厚生労働省結核感染症課へ。問い合わせは同課(03・5253・1111)へ。

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