特定健康診査(特定健診)の最終案: 三段階で生活習慣病予防へ

40歳から74歳の全国民を対象に、08年4月から実施される特定健康診査(特定健診)に関する厚生労働省の最終案がわかった。健診結果によってメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)など生活習慣病のリスクが高いグループとその予備群を抽出。リスクの程度に応じ3段階に分けて保健師や管理栄養士が指導し、脳卒中や糖尿病の予防を目指す。

26日の特定健診に関する検討会で公表する。特定健診は生活習慣病予防と医療費抑制をめざし、06年の医療制度改革に盛り込まれた。健康保険組合や国民健康保険などすべての保険者に健診実施を義務づけ、健診から漏れがちだった自営業者や専業主婦も対象とする。

健診では、男性で腹囲85センチ以上、女性で90センチ以上の人をメタボリック症候群の候補とする。さらに血糖値、血中脂質、血圧などのうち(1)二つ以上で問題ありとされた人はメタボリック症候群=「積極的支援レベル」(2)一つで問題ありの人は予備群=「動機づけ支援レベル」(3)問題なしの人は「情報提供レベル」に分類する。腹囲が基準未満でも、体重を身長(メートル)の2乗で割ったBMI(体格指数)が25以上なら生活習慣病のハイリスク群とされ、(1)〜(3)に振り分けられる。

(1)の人には、保健師や管理栄養士が食事のとり方や運動などの計画を作成。3カ月間は面接や電話、メールで実行状況を確認し、励ます。半年後に身体や生活習慣が改善されたかどうかを確認する。(2)の人には計画作成と半年後の評価のみとし、(3)は文書で注意を促すにとどめる。

特定健診と指導の費用は原則として保険者が負担するが、保険者が本人に請求することもできる。厚労省は40〜74歳で約2000万人とされるメタボリック症候群と予備群を、12年度末までに10%、15年度末までに25%減らす目標を立てている。

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変形性関節症の発症に遺伝子「GDF5」が関係:理化学研究所

軟骨の摩耗などで関節の痛みや変形、歩行障害が起きる変形性関節症の発症に「GDF5」という遺伝子が関係していることを理化学研究所と中国・南京大などの研究チームが突き止め、米科学誌ネイチャージェネティクス電子版に25日発表した。

同研究所の池川志郎チームリーダーによると、この病気の患者は日本で約1000万人にも上る。遺伝と環境要因の相互作用で発症するとされ、これまでも関係する遺伝子が見つかっているが、発症の詳しい仕組みは未解明。今回の成果は、将来の発症のしやすさの予測や、新たな治療薬開発につながるという。

研究チームは、関節の形成や軟骨細胞の分化に関係するGDF5に着目し、日本人と中国人を対象に、その塩基配列を解析した。

この遺伝子の働きを調整する特定部分に「チミン」という塩基を持つ日本人は、そうでない人と比べて股関節の変形性関節症に約1・8倍かかりやすいことが判明。ひざでも同様で、日本人で1・3倍、中国人で1・5倍なりやすく、関節の部位や人種にかかわらず、この遺伝子が発症に関係している可能性が高いことが分かった。

変形性関節症
変形性関節症は関節の軟部骨組織と周囲の組織に変性が起こり、疼痛、関節のこわばり、機能障害を生じる慢性疾患です。

典型的な症状は、長距離歩行時の痛みから始まり、正座ができなくなり、立ち上がりやしゃがみ込み、階段昇降がつらくなり、次いで歩行もしづらくなってくるといったものです。
一方で、安静時の痛みは少ないのが普通です。進行してくるとO脚状の変形が強くなり、膝は慢性的にはれて大きく見え、曲げ伸ばしの角度が徐々に悪くなってきます。

「准介護福祉士」資格を新設:国家試験の合否を問わず

厚生労働省は24日までに、大学や専門学校などで介護福祉士の養成コースを修了した卒業生を対象に、国家試験に合格しなくても取得できる「准介護福祉士」の資格を新たに設けることを決めた。昨年、フィリピンとの間で結ばれた経済連携協定に基づく介護士受け入れを進めるため、試験に不合格となっても働ける新資格が必要と判断した。

今国会に提出された「社会福祉士・介護福祉士法改正法案」に、介護福祉士の資格を取得するには国家試験合格を要件とする一方、「准」資格の創設を盛り込んだ。2012年度から実施を目指す。

介護福祉士は現在、3年以上の実務経験を積んだ後に国家試験に合格するか、専門学校で1650時間の養成課程を終えるなどの方法で資格が取得できる。しかし、厚労省は認知症ケアや高齢者の権利擁護など、より専門性の高い人材を確保する必要があるとして、国家試験合格を要件とする法改正を決めた。

准資格は、不合格者の救済措置的な位置付けだが、昨年12月に厚労省福祉部会がまとめた意見書には盛り込まれておらず、法案提出に向けて急きょ付け加えられた。厚労省は当面の経過措置としている。

ただ、将来的に介護職を国家資格の介護福祉士に統一するとした、当初の同省の方針から外れた措置となる。

関連記事:介護福祉士:資格取得方法を厳格化 厚労省方針

後発医薬品の監視体制を強化:信頼性向上へ、厚生労働省

厚生労働省は特許が切れた医薬品と同じ成分の薬を他の製薬会社がつくる「後発医薬品」の信頼性を高めるため、2007年度から後発品の監視強化に乗り出す。後発品は価格が割安だが、品質や供給体制を不安視する医師が多く、普及の足かせになっている。このため相談窓口を設置し情報を収集。問題があるメーカーには職員を派遣して改善を指導する。

厚労省は割安な後発医薬品の普及促進が医療費抑制に効果的と判断。医療用医薬品に占める数量シェアを2004年度の16%から30%程度まで早期に引き上げたい考えだ。
政府の経済財政諮問会議の民間議員の試算では、シェアがドイツ並みの4割まで上がると8800億円の医療費抑制効果があるという。

ただ薬を処方する医師には「成分は同じでも安定供給に不安があったり、錠剤が壊れやすいなど品質面で劣る」として、後発薬の処方に慎重な意見が根強い。このため品質などに関する相談窓口を設置し情報を収集。供給体制や規格の取りそろえに問題があるメーカーには職員を派遣する。

後発医薬品
製造方法などに関する特許権の期限が切れた先発医薬品について、特許権者でない医薬品製造企業がその特許内容を利用して製造した、同じ主成分を含んだ医薬品を指す。 先発医薬品の特許が切れるとゾロゾロたくさん出てくるのでゾロ等と呼ばれていたが、商品名でなく有効成分名を指す一般名(generic name)で処方されることが多い欧米にならって、近年、「ジェネリック医薬品」と呼ばれるようになった。

新薬(先発医薬品)の開発には巨額の費用と膨大な時間を必要とするため、開発企業(先発企業)は新薬の構造やその製造方法、構造などについて特許を取得して、自社が新規に開発した医薬品の製造販売を独占し、価格を高く設定して投下した資本の回収を図る。
しかし、特許権の存続期間が満了、または再審査期間が終了すると、他の企業(後発企業)も特許使用料を支払うことなく先発医薬品と同じ主成分を有する医薬品(=後発医薬品)を製造販売ができるようになる。

関連記事:「セフジニル」の後発医薬品、製造販売中止へ:大洋薬品工業

日本イーライリリー、過去最高の売上高:2006年度決算

日本イーライリリー社(神戸市)が発表した2006年度決算によると、売上高は前年度比7%増の821億1800万円。決算発表を始めた04年度期以降では最高だった。

統合失調症治療薬「ジプレキサ」340億円(対前年度比11%増)、抗がん剤「ジェムザール」129億円(18%増)、インスリン製剤141億円(5%増)が伸びを支えた。

半面、成長ホルモン剤「ヒューマトロープ」とパーキンソン病治療薬「ベルマックス」は、薬価引き下げで、それぞれ対前年度比4%減の112億円、15%減の84億円だった。

親会社の米イーライリリー社が開発し、国内では中外製薬(東京都中央区)と共同販売している閉経後骨粗しょう症治療薬「エビスタ」の売り上げは、両社合わせて前年度比約50%増の180億円超。発売2年目で経口の骨粗しょう症治療薬ではトップブランドになった。

同社は、男性の勃起不全(ED)治療薬「シアリス」の国内での発売開始もにらみ、医療情報提供者(MR)を現行の800人から900人に増員、ED治療を手掛ける開業医にも進出したいとしている。シアリスは年内の販売承認を目指している。

シアリスに関しては、希少疾病の「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」の治療薬としての適応を得るため、2006年に国際共同治験に参加した。この治験はPAH患者400人が参加する世界最大規模の治験という。

関連記事:ED新薬「タダラフィル(シアリス)」で開業医市場へ:日本イーライリリー

抗うつ薬「シンバルタ」を全般性不安障害の治療にも承認

米国食品医薬品局(FDA)は、米イーライリリー社のSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害剤)と呼ばれる新タイプの抗うつ薬「シンバルタ」(一般名デュロキセチン)を、全般性不安障害(GAD)の治療薬としても承認した。日本では、うつ病と糖尿病に起因する神経因性の疼痛に対する治療薬として開発が進んでいる。

全般性不安障害は、仕事や勉強などいろいろな日常活動で過剰な不安や心配に悩まされる。米国精神神医学会の診断基準(DSM-W)によると、少なくとも6カ月間にわたり、その過半数の日々で過剰な不安や心配のほか、筋肉の緊張や凝り、疲労、悪心といった身体症状も現れる。

この病気は慢性化して悪化と回復を繰り返すのが特徴で、患者は集中力が低下したり、優柔不断になったりする。

今回の承認審査に使われた3つの臨床試験のデータによると、シンバルタ投与群では全般性不安障害患者の平均46%で不安症状が改善、偽薬投与群の平均32%の改善率を有意に上回った。また社会生活や家庭生活上の障害も、偽薬群の改善率が平均26%だったのに対し、シンバルタ投与群は平均46%だった。副作用は悪心、疲労、口渇、めまい、便秘、不眠などが報告されている。

国内では、日本イーライリリー(神戸市)と塩野義製薬(大阪市)が共同開発、共同販売の協定を結んでおり、抗うつ病治療薬としては第V相の臨床試験を、神経因性の疼痛治療薬としては第U相の臨床試験を進めている。
このうち抗うつ薬としては、塩野義製薬が07年中に厚生労働省に販売承認を申請するという。

全般性不安障害とは?

不眠症治療薬「ロゼレム」の販売許可を欧州で申請:武田薬品

武田薬品工業は、欧州医薬品審査庁(EMEA)に不眠症治療薬「ロゼレム」の販売許可を申請したと発表した。販売許可が下りれば欧州では2000年の糖尿病薬「アクトス」以来の自社開発の新薬発売となる。米国では05年に発売済みで、06年度の売上高は100億円の見込み。

「ロゼレム」は脳内で睡眠と目覚めのサイクルをつかさどる体内器官に働き、自然な睡眠をもたらす作用があるという。中枢神経の働きを抑制する一般の不眠症治療薬と異なる。

ロゼレム
ロゼレムは、脳内で睡眠・覚醒のサイクルを司り「体内時計」とも言われる視交叉上核に存在するMT1/MT2受容体に特異的に作用し、自然に近い生理的睡眠を誘導するという、既存の不眠症治療薬とは異なる新しい作用機序を持つ薬剤です。

高齢者を含めた幅広い不眠症患者を対象にした臨床試験より、ロゼレムに薬物依存性が認められないというデータが示され、米国司法省麻薬取締局(DEA)による規制を受けない初めての不眠症治療薬として、2005年、米国食品医薬品局(FDA)より承認されました。

関連記事:睡眠薬服用者の36.7%にうつ症状

脳梗塞の外来患者を疫学調査:再発率と予防薬の関連性を探る

脳梗塞の再発と予防薬の使用状況との関連を、外来患者5000人を対象に調べる疫学研究を製薬会社「サノフィ・アベンティス」が始めた。
入院患者を対象にした調査はあったが、外来患者の薬使用の実態と再発頻度との関連を探る研究は国内で初めてという。

国内では2分20秒に1人が脳梗塞を発症し、寝たきりの原因の第1位。一度発症すると、そうでない人に比べ再発する可能性は9倍も高い。再発予防が極めて重要で、血管が詰まるのを防ぐ抗血栓薬を使う。

調査は、全国の神経内科や脳神経外科などを持つ医療機関400か所で、発症から2週間から6か月以内の外来患者を対象に1年間追跡する。

患者がどの程度、医師の指示通りに再発予防薬を服用したか、生活習慣のほか、メタボリックシンドローム、糖尿病など他の合併症などと、再発しやすさとの関連を調べる。2009年ごろに結果をまとめ、脳梗塞患者の再発予防のあり方を探る。

関連記事:脳梗塞の後遺症レベル、病院間で大きな差

精神的ストレスはシミとシワを増やす:カネボウ製薬

カネボウ製薬(東京都港区)は22日、精神的ストレスが強いとシミやシワが多くなるなど、ストレスと肌の状態の因果関係を究明したと発表した。ストレスの度合いを「低い」「中程度」「高い」の3段階に分類し、「高い」の方が、「低い」よりも、シミの面積が約3倍広くなっていたとの研究結果を得た。また、ストレスを原因とするシミは額に現れやすいこともわかった。

研究は、肌の状態、精神的ストレス、栄養の3つの要素の相互関係を分析したもの。20〜60歳の女性135人を対象にストレス診断、血中ビタミン測定、肌状態の評価を実施した。

それによると、ストレスが強いほど、シミの面積は広がり、この関係は20歳代で最も顕著だった。一方、ストレスが強いほどシワも増えることが確認できたが、シワの場合は、50歳代でその関係が最も強くなった。

このほか、血中のビタミン濃度との関係を分析したところ、レバーや魚介類などに多く含まれるビタミンB群(B2、B6、ナイアシン)が血中に多いと、ストレスが強くてもシミが出にくくなることがわかった。

また、果物類などに多いビタミンCや、豆類などに多いビタミンEの血中濃度が高いと、ストレスが強くてもシワの発生を抑えられることも明らかになった。

カネボウ製薬では、今回の研究成果を、同社のビタミン系サプリメントなどの販売促進に活用する考えだ。

タミフル問題でリレンザ(ザナミビル水和物)が品薄状態

インフルエンザ治療薬「タミフル」の使用後に異常行動を起こした事例が新たに見つかり、厚生労働省は、10代への使用中止を求める緊急安全性情報を出すよう、輸入・販売元の「中外製薬」に指示したと発表した。

しかし、もう一つの抗インフルエンザウイルス薬「リレンザ」(一般名ザナミビル水和物)を服用した子供が、同様な行動などを起こした事例は今のところ報告されておらず、インフルエンザのオフシーズン近くになって品薄状態になっているという。

インフルエンザウイルスは、性質からA型、B型、C型に分類される。A型とB型は、ヒトや家禽(かきん)類に最も強い病原性と感染力を持つ。C型は、子供が感染した場合はA型のように呼吸器症状が現れるが、大人が感染してもほとんど症状は現れない。

かつて世界中にスペイン風邪やアジア風邪といったパンデミック(大流行)を引き起こしたウイルスはすべてA型だ。A型ウイルスは円形または紐(ひも)状。表面に二種類の糖タンパク質が突き出ている。一つはヘマグルチニン(HA)、残る一つはノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれる。これらの糖タンパク質もウイルスのタイプで異なり、それによってさらに亜型に分類される。

例えば、高病原性鳥インフルエンザH5N1亜型。A型のインフルエンザでヘマグルチニン(HA)が5、ノイラミニダーゼ(NA)が1を表している。HAは1から16、NAは1から9の亜型が存在する。HAは、ウイルスが気道の粘膜から細胞内に侵入する際の先導役になり、NAは増殖したウイルスを細胞外に放出する。

タミフルとリレンザは、このNA(ノイラミニダーゼ)の働きを選択的に阻害し症状の悪化を改善する。ただし発症後48時間以内に服用しないといけない。類似の機序だが、異常言動との関連性を指摘されているのはタミフルばかり。
製薬業界関係者によると、要因は2つあるという。一つは、処方量の違い。タミフルとリレンザの比率は9対1か、それ以上、タミフルが処方されており、異常言動との関連性が疑われやすい。

もう一つは剤形。タミフルはカプセルなので容易に服用できるが、成分が血中に入り全身を回る。一方、リレンザはドライパウダー。専用吸入器で吸引し上気道に高濃度の薬剤が届き作用する。パウダー(粉末)を生理食塩水などで溶かして液化させ、電動ネブライザー(吸入器)を使って直接上気道に届ける方法もある。

関連記事:リレンザ(ザナミビル水和物)とは?

自閉症の疾患に遺伝子「CADPS2」が関与:理化学研究所

脳の障害で生じる精神疾患の「自閉症」に関係するとみられる新しい遺伝子を理化学研究所などのチームが発見、22日、米医学誌に発表した。自閉症になる仕組みの解明や、早期診断などにつながる成果という。

研究チームは、脳の神経細胞で働く遺伝子「CADPS2」に着目。マウスでこの遺伝子を壊したところ、新しい環境に適応させるテストや、別のマウスとの接触回数を調べるテストなどで自閉症に似た行動を取ったほか、小脳に自閉症患者にみられるような形態の異常が出た。

一方、都立梅ケ丘病院と共同で自閉症患者16人を検査したところ、4人でこの遺伝子から正常なタンパク質が作られないことが判明。CADPS2が疾患に関連していると判断した。

研究チームによると、自閉症の関連遺伝子はこれまで3種類が報告されているが、それらに比べ患者に異常が見られる割合がはるかに高率だったという。

エーザイがモルフォテック社を買収:抗体医薬市場に参入へ

エーザイは22日、人間の免疫機能を応用した「抗体医薬」に強い米バイオベンチャーのモルフォテック(ペンシルバニア州)を3億2500万ドル(約380億円)で買収すると発表した。エーザイは主力のアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」が10―12年に米日欧で相次ぎ特許切れを迎える。モルフォテック社の新薬候補品と技術を取り込んで抗体医薬市場へ本格参入、将来の新薬を確保する。

エーザイはモルフォテックの全株式を現金で取得、6月までに買収手続きを完了する。買収で生み出す第1号新薬の発売は2012年度以降となる見通しだ。

モルフォテック社は2000年の設立。抗体医薬を効率よく作製する技術を持ち、特に副作用を起こしにくくする「ヒト化」と呼ぶ技術で業界から注目されている。

同社はこの技術を応用し、これまでに7つの抗体医薬の候補品を開発。卵巣がん向けと膵臓・肺がん向けの2品目の臨床試験を実施しており、残り5つも関節リウマチや感染症向けなどに動物実験などを進めている。

エーザイは「アリセプト」の特許切れをにらんだ重点分野としてがんと神経疾患を重点分野に設定。抗体医薬の研究も独自に進めていたが、買収で開発を加速する。

製薬大手は新薬不足解消のため、バイオベンチャーのもつ創薬関連技術の囲い込みを急いでいる。特に注目を集めているのが抗体医薬で、国内最大手の武田薬品工業も昨年、カナダと米国の2社と提携した。

アリセプトとは

脳梗塞の後遺症レベル:専門医勤務病院で程度が軽く

脳梗塞で入院した患者の後遺症の程度は、病院によって大きく異なり、同じ病状の患者が、ある病院では自力で歩いて退院できるのに、別の病院では歩けなくなるなどの差が出ていることが、厚生労働省研究班(班長=岡山明・国立循環器病センター予防検診部長)の調査で分かった。
脳卒中専門の内科医が多く勤務する病院ほど後遺症が軽く、専門でない内科医が治療にあたる病院で重かった。

研究班は、国立病院機構に所属する病院のうち、脳梗塞の治療に熱心な26病院を対象に、05年から06年にかけて入院した脳梗塞患者合計1775人について、入院時の病状や、退院時の後遺症の程度を調べた。後遺症は、国際的な尺度に従い、全く症状がない「0」から、死亡の「6」まで7段階で点数化した。

最初の病状を考慮して回復の度合いを比較すると、50人以上の患者を治療した病院に限っても、最も軽い病院の患者は、最も重い病院の患者より約1.2点分、退院時の後遺症が軽かった。患者数の少ない病院も加えると、差は2・3とさらに広がった。

分析すると、治療チームに脳卒中専門医が9人以上いる病院は、5人以下の病院と比べ約0.4点、後遺症が軽かった。大規模な病院でも、専門医が少なければ治療成績は上がらなかった。
一方、チーム内に脳卒中が専門でない一般内科医が1人でもいると、全員が専門医である病院に比べ約0・2点分重くなった。
岡山部長は「治療成績を集め、影響する要因を分析して向上する仕組みを確立すべきだ」と話している。

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「日本のお産を守る会」が設立:看護師の内診容認を求める

お産の際に子宮口の開き具合を測る内診について、医師と助産師にしか認めないとする厚生労働省の通知に対し、看護師にも認めるよう求める動きが広がっている。嵯峨嵐山・田中クリニックの田中啓一院長らが「助産師不足の現状で、通知を守ろうとすれば日本の産科が崩壊する」と訴えて、「日本のお産を守る会」を設立。賛同者は1カ月余りで全国の産婦人科医(約1万人)の2割近い約1700人に達した。

同会などによると、看護師による内診は、以前は広く行われていたという。しかし02年と04年、鹿児島県と愛媛県からの照会に答え、厚労省看護課長が違法とする通知を出した。日本産婦人科医会は通知を守るよう会員に求めた。

昨年11月には、看護師が内診をしていたとして、神奈川県警が横浜市の病院院長や看護師ら11人を保健師助産師看護師法違反容疑で書類送検。横浜地検は今年2月、違法と判断したものの、「産科医療の構造的問題」などとして全員を起訴猶予処分とした。

守る会によると、04〜06年に千葉県で11診療所・8病院、神奈川県で14診療所が産科を閉鎖し、静岡県では、96年に114あった分娩(ぶんべん)施設が昨年は60施設に半減したという。日本産婦人科医会の昨年の調査では、助産師不足の病院が66・9%、診療所が81%に上り、全国で6700人の助産師が足りないと結論づけている。守る会は「助産師を常時確保できない病院・診療所が多く、通知や事件の影響で閉鎖した産科が多い」とみている。

厚労省看護課は「内診は医療行為であり、看護師には認められない。助産師の養成や再就職の促進で対応するしかない」としている。

喫煙者の5割、肺がんの可能性を自覚も禁煙までは至らず

喫煙者の半数は肺がんになるかもしれないとの危機感を抱きながら、大きな病気にかからなければ、たばこはやめられないなど、禁煙には消極的な人が多いことが医療用品大手のジョンソン・エンド・ジョンソンのインターネット調査で分かった。

調査によると、喫煙者251人のうち、肺がんについて「怖い病気で、自分もいつかなるかもしれないと思う」と答えた人は46・2%、「怖い病気とは思わないが、自分もいつかなるかもしれないと思う」との回答は4・8%で、合わせて半数を超える人が危機感を抱いている。

ただ、どうすればたばこをやめられるかとの質問には「大きな病気にかかったら」が54・2%を占め、「何があってもやめられない」も11・2%と、喫煙が肺がんにつながる恐れがあることを理解しながら禁煙できない人が多い現状が浮き彫りになった。

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お産の診療ガイドライン作成へ:日本産科婦人科学会

日本産科婦人科学会は、「お産」に関する診療のガイドラインを08年までに作ることを決めた。標準的な治療法の普及が目的だが、お産をめぐる医療事故が相次ぐ中で「訴訟対策」もにらんだ内容とする。開業医が中心の日本産婦人科医会と共同で、現場の意見も聞きながら約1年かけてまとめる。

21日に開かれる同学会の医療提供体制検討委員会で発表する。原案は同学会と産婦人科医会の会員計24人からなる委員会が作成中。「妊娠初期に必要な検査」「帝王切開経験者の2度目の出産法」など、選択肢が複数あるような64項目について、Q&A方式で解説しつつ推奨度を示す。

作成の目的の一つは訴訟対策。最高裁のまとめでは、04年度の産婦人科医1千人あたりの医療事故訴訟件数は11.8件。外科の9.8件、内科の3.7件などと比べ圧倒的に多く、これが産婦人科医不足に拍車をかけていると指摘されている。

学会によると、産婦人科で医療事故が起きると、警察からガイドラインの有無についての問い合わせを受けることが多かったという。昨年2月に福島県立大野病院の帝王切開手術ミスで医師が逮捕されて以降は、会員の間でもガイドラインを求める声が高まっていた。

学会は「裁判に使われる場合を想定し、ガイドラインの文言は一語一句吟味する。ガイドライン通りの治療を行っていれば、訴えられる医師も減るはずだ」としている。

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乳成分「ラクトフェリン」に内臓脂肪抑制効果

ライオンなどは、母乳や未殺菌の牛乳に含まれる微量たんぱく質「ラクトフェリン」の内臓脂肪低減効果が、人間にもみられることを確認したと発表した。これまで動物実験で確認していた。早ければ9月末までに栄養補助食品として商品化したい考え。

京都府立医科大学国立がんセンター研究所との共同研究成果。研究グループは、男性8人と女性4人に対し、ラクトフェリンを1日当たり300ミリグラム、2カ月間経口摂取させた。その結果、腹部断層撮影で見た内臓脂肪面積が平均22%、ウエストサイズが平均4%減少した。内臓脂肪面積が40%減った事例もあった。

ラクトフェリン
タンパク質の一種で、ほ乳類の唾液や涙などの分泌液に含まれているが、中でも母乳に特に多く含まれている。ラクトフェリンには、強い抗菌作用があり、大腸菌やO-157、ガンジダ菌などを殺菌する働きがある。
また、C型肝炎にも効果があるとされており、全体として抵抗力を高める効果をもたらすとされている。また、ラクトフェリンは鉄分の吸収を促進するため、貧血にも効果があるとされる。
ラクトフェリンは熱に弱いため、加熱された乳製品にはほとんど含まれていない。

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タミフル、10代患者への使用中止へ:厚生労働省

インフルエンザ治療薬「タミフル」の使用後に異常行動を起こした事例が新たに2例あったことが判明し、厚生労働省は20日、10代への使用中止を求める緊急安全性情報を出すよう、輸入・販売元の中外製薬に指示した。

厚労省ではこれまで、タミフルについて「安全性に問題はない」としていたが、対応が必要と判断した。ただ、10歳未満については中止は求めず、これまで通り保護者に注意を呼びかけるとしている。

厚労省によると、先月7日、昼と夜にタミフルを服用した10代の男児が、翌日午前2時ごろ、素足で外に走り出すなどした後、自宅2階から飛び降り、右ひざを骨折。また、今月19日にも、昼と夜にタミフルを服用した別の10代男児が、深夜に自宅2階のベランダから飛び降り、右足のかかとを骨折する事故が起きていたことが、20日、同省に報告された。

今年2月には、中学生2人がタミフル服用後に自宅マンションから転落する事故もあったことから、厚労省では、タミフルと異常行動の因果関係については「否定的」との見解を変えないまま、“警告”が必要と判断した。

これまでの事例から、異常行動を起こした場合、親などが制止しにくい年代の10代に対象を絞り、「原則として使用を差し控える」ことを求めている。10歳未満については、インフルエンザ自体による死亡事例も他の年齢層と比べ多く、タミフル服用の必要もあるとして、使用中止は求めず、これまで通り、インフルエンザと診断されてから2日間、目を離さないよう保護者に呼びかける。

厚労省によると、昨年10月末現在で、16歳未満でタミフル服用後に死亡した事例は16例。また、17歳の事例1件も含め、異常行動後に転落死するなどした事例はこれまでに5件が確認されている。しかし、専門家が症例を検討し、因果関係に否定的な見解を示したことなどから、「現段階でタミフルの安全性に重大な懸念があるとは考えない」としてきた。

タミフル
カプセルやシロップの抗ウイルス剤で、A型およびB型のインフルエンザの治療や予防に効果がある経口薬として、国内では2001年2月から販売。05年度には約860万人分が供給された。インフルエンザが大流行した02年冬には、供給不足が問題化した。

タミフル関連記事:中外製薬が厚労省タミフル研究班教授に寄付

ED新薬「タダラフィル(シアリス)」で開業医市場へ:日本イーライリリー

日本イーライリリーは19日、年内に予定する勃起不全(ED)治療新薬「タダラフィル(海外名:シアリス)」の承認に合わせ、開業医市場に進出する方針を明らかにした。日本以外ではすでに認可されている同新薬は、効果が36時間持続するほか、脂っこい食事との食べ合わせによる効果低減の心配もないという。

シアリスについて

同社は専門医向け営業を展開してきたが、新薬の処方拡大を狙い、泌尿器専門医から開業医へ営業活動を広げる。営業を行う医薬情報担当者(MR)も900人に増員するという。

タダラフィル(海外名:シアリス)
タダラフィルは、男性の性的不能を治療するために使用される、PDE5阻害剤として知られる薬物のカテゴリーに属する薬です。

用量
臨床試験では、殆どの男性が1日に10mg1錠、もしくは20mg1錠を与えられています。

副作用
タダラフィルで報告されている最も一般的な副作用は、頭痛、筋肉痛、消化不良、背痛です。これら副作用の程度は、服用量を減らすことによって最小限に抑えることが出来ます。
4時間以上も勃起が持続する場合は、直ちに医療機関に連絡する必要があります。過度のアルコールとの併用は避けてください。

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産婦人科の女性医師、出産・育児で現場離れ:環境整備が急務

産婦人科を志望して10年目前後の女性医師の約半数が、出産の現場から離れているという実態が19日、日本産科婦人科学会が全国の大学病院産婦人科教室を対象に行った調査で明らかになった。

女性医師本人の出産・育児などを機に、厳しい産科の現場から離れる場合が多いと見られ、調査した東京都立府中病院産婦人科の桑江千鶴子部長は「産科の充実のためには、増え続ける女性医師が継続的に就労できるよう、院内保育所を作るといった環境整備が急務だ」と訴えている。

調査は、産婦人科を志望して2〜16年目を迎えた医師の就労状況を把握するため、昨年12月から今年2月にかけて、全国105の大学病院産婦人科教室を対象に行われた。

その結果、産婦人科を志望した女性医師のうち、2年目の医師の92・2%が出産を扱っていた。しかし、その後は出産を扱う割合が徐々に低下し、9〜13年目にかけては50%前後にまで下がっていた。最低は11年目の45・6%だった。一方、男性医師は4〜16年目まで、ほぼ8割が出産を扱っていた。

また自分に子供がいない女性医師は75・3%が出産を扱っていたのに対し、子供が1人いる場合には49・3%、2人では41・4%、3人以上では34・6%と、子供が増えるに連れ、出産現場で活躍する女性医師の割合が低下していた。