心臓移植患者向け免疫抑制剤「サーティカン錠」が発売へ

スイス系ノバルティスファーマは16日、心臓移植を受けた患者向けの免疫抑制剤「サーティカン錠」を発売したと発表した。これまでの薬剤とは異なる仕組みで効き目を発揮するため、既存薬では効果が十分でない患者らの需要が見込めるという。

サーティカン錠は免疫にかかわる細胞を増殖する「インターロイキン2(IL―2)」と呼ぶ生理活性物質の働きを抑えて、移植による拒絶反応を抑制する。薬価は0.25ミリグラムで690.5円、0.5ミリグラムは1214.8円など。

プレスリリースより
ノバルティスファーマ株式会社は、3月16日より、心移植における拒絶反応の抑制に対して新規の作用機序を有する免疫抑制剤「サーティカン錠0.25mg、0.5mg、0.75mg(一般名:エベロリムス)」を発売いたします。

「サーティカン(エベロリムス)」は、FKBP-12(FK-506 binding protein-12)と複合体を形成し、細胞内情報伝達分子であるmTORに結合して細胞増殖シグナルを阻害することにより細胞増殖抑制作用を示すと考えられており、インターロイキン-2によるT細胞の増殖を抑制することで免疫抑制作用を示す薬剤です。本剤は、シクロフィリンに結合するシクロスポリンやタクロリムスなどのカルシニューリン阻害剤とは異なる新たな作用機序を有します。

近年、種々の免疫抑制剤の開発により移植臓器の生着率は徐々に上昇していますが、一方で既存薬剤では効果不十分または既存薬剤の副作用により投与を継続できない患者さんもおり、新たな免疫抑制剤の開発が望まれてきました。
また、「サーティカン」が既に発売されている国で心移植を受け、本剤による免疫抑制治療が行われた渡航患者さんが帰国する可能性もあり、国内の移植医など医療関係者からも、厚生労働省に対して早期承認の要望書が提出されるなど、本剤の一日も早い上市が切望されていました。

「サーティカン」は2003年にスウェーデンで承認されて以来、現在までにドイツ、フランスなど60カ国以上で承認されており、心移植における拒絶反応に対する免疫抑制剤として心移植患者さんの長期生命予後の改善に貢献しています。



24時間往診可能な在宅療養支援診療所:WAM NETが情報提供

24時間体制で往診可能な在宅療養支援診療所について、独立行政法人福祉医療機構のインターネットサイト「WAM NET(ワムネット)」が、全国9346か所の診療所情報の提供を開始した。

患者・家族の診療所探しを支援するのが目的。都道府県別では、トップの大阪が1233か所を数えたのに対し、最も少ない高知はわずか26か所で、地域差も目立った。

在宅療養支援診療所は、在宅医療の拠点として、厚生労働省が昨年4月に新設した。社会保険事務局に届け出ると、診療報酬が手厚くなるが、患者や家族との連絡体制整備などが求められるため、一般の診療所の1割にとどまっている。同機構は、昨年10月1日現在の届け出リストをもとに、住所、電話番号、診療科目などの情報提供を始めた。

大腸がんの進行に骨髄の特定酵素が関与:腸の粘膜を溶解

大腸がんが悪化する際には、骨髄の特定の細胞がつくる酵素が腸の粘膜を溶かし、がんの浸潤を助けているとの研究結果を武藤誠・京都大教授らがまとめ、米科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」に19日、発表した。

この酵素の働きを止める薬を開発すれば、大腸がんの進行を抑制できる可能性があるという。

武藤教授によると、がん細胞から出るホルモンに「未分化骨髄球」という骨髄の細胞が引き寄せられ、結合すると「細胞外基質分解酵素」が放出され、粘膜を溶かすことを突き止めた。この酵素は、従来は免疫などに重要な役割を果たすとみられていた。

大腸がんのモデルマウスの実験で、ホルモンと結合しないよう骨髄の細胞にある受容体を欠損させると、酵素は放出されず、がんの進行は抑えられた。ヒトの大腸がんの細胞でもこのホルモンと酵素が存在しており、同様の仕組みがあると推定した。

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ハンチントン病などの神経難病:原因たんぱく質構造を発見

ハンチントン病(舞踏病)や脊髄小脳変性症などの神経難病の原因となる異常なたんぱく質の構造を、大阪大学大学院医学系研究科の永井義隆助手(神経病学)と戸田達史教授(遺伝医学)らが発見した。
異常なたんぱく質が病気を引き起こす構造へと変化するのを防ぐ治療薬の開発につながる成果といい、米科学誌「ネイチャー・ストラクチュアル・アンド・モレキュラー・バイオロジー」(電子版)に19日、掲載される。

ハンチントン病など神経難病の患者は国内に数万人いるとみられるが、有効な治療法はない。アミノ酸の一種のグルタミンの数が大変多い異常なたんぱく質が、その構造を変化させた後、脳内の細胞に蓄積して発症すると考えられているが、詳細は分からなかった。

永井助手らは、グルタミンの数が多い異常なたんぱく質を溶液中で構造解析。異常たんぱく質が蛇腹のような「βシート」構造に変化し、異常たんぱく質を数多く結合させ固まりを作ることを突き止めた。βシート構造の異常たんぱく質が細胞に毒性を持つことも判明。「QBP1」と呼ばれる分子がβシート構造への変化を阻害することも確認した。

永井助手らは「QBP1を応用すれば治療薬の開発が期待できる。アルツハイマー病やパーキンソン病などでも同様の構造変化が発症の原因と考えられ、新薬開発につながる可能性がある」と話している。

ハンチントン病とは
舞踏運動、精神症状、行動異常、痴呆などを臨床像の特徴とする常染色体優性遺伝型式をとる神経変性疾患です。これらの症状はいつのまにか始まり、緩徐ながら進行します。

その原因は、脳の特定の部分(大脳基底核や前頭葉)が萎縮してしまうためです。大脳基底核の特に尾状核が萎縮するために舞踏運動が現れます。前頭葉の萎縮によっては、痴呆症状、てんかんなどを引き起こします。

このような変化はCTやMRI等の画像検査をすることで明らかにすることができます。これらの脳の局部的な萎縮は神経細胞の変性脱落が原因です。最近、ある遺伝子に異常が起こることが発症に関係することが突き止められています。

大豆イソフラボンに局部性前立腺がんの抑制効果:厚生労働省

みそ汁や豆腐などの大豆製品から「大豆イソフラボン」をよく摂取する人は、ほかの臓器に広がらない限局性の前立腺がんにかかるリスクが低くなるとの調査結果を、厚生労働省の研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)がまとめた。

秋田、長野、大阪、高知、沖縄など全国10地域に住む45〜74歳の男性約4万3000人に95、98年時点で食習慣を聞き、04年まで追跡調査した。

対象者を、みそ汁や大豆製品、イソフラボンの摂取量に応じて、それぞれ4グループに分け、前立腺がんにかかるリスクを比較した。サプリメントによる大豆イソフラボンの摂取は考慮していない。

その結果、61歳以上で限局がんにかかるリスクは、豆腐やみそ汁などの大豆製品の摂取量が最も多いグループ(1日107グラム以上)が、最も少ないグループ(1日47グラム以下)の半分だった。みそ汁単独でも、最も多いグループ(1日2杯以上)は、最も少ないグループ(1日1杯未満)に比べて35%低かった。

進行性の前立腺がんや、前立腺がん全体でみた場合の予防効果は確認できなかった。

関連記事:大豆イソフラボンが胃潰瘍に効果:マウスで確認

睡眠薬「アンビエン」(日本名マイスリー)で睡眠時遊行症

米国の薬局で処方されている睡眠薬「アンビエン」(日本名マイスリー)を服用すると、睡眠中に車を運転しようとしたり、食事をするなどの行動をひき起こす危険性があることが、米食品医薬品局(FDA)の報告で分かった。
米国では不眠症に悩む人が増加し、睡眠薬はテレビ広告で積極的に宣伝されているが、FDAはアンビエンを含む13種類の睡眠薬について、危険な症例を患者に周知させるよう製薬会社に求めた。

FDAによると、異常行動は、睡眠時遊行症(夢遊病)の一種とみられ、非常にまれだが、睡眠中に起きあがって車を運転する▽夜中に過食する▽電話をかける▽インターネットで買い物する−などの内容の報告があった。いずれも本人には全く記憶がなかった。

FDAに報告されたこうした異常行動の多くが、「アンビエン」の服用と関連していることも分かった。この薬は、仏サノフィ・アベンティス社が開発、世界約100カ国で販売され、日本でもアステラス製薬が商品名「マイスリー」で販売している。

FDAは今回、同様の異常を懸念し、アンビエンに限定せず、「ルネスタ」(米セプラコール社)など計13種の睡眠薬について、表示や医師による説明を求めた。

米国では、昨年の睡眠薬の売り上げが2000年に比べ60%も増加。テレビでの処方薬の広告が影響しているとの見方も出ている。医薬品業界は昨年、睡眠薬の宣伝費で6億ドルも投じており、ミネソタ大学のマーク・マホワルド博士は「広告の規模は常軌を逸している」と批判している。

FDAの報告に対し、仏サノフィ社は、夢遊病の症例は確率が1000人に1人以下のまれな副作用で、表示もしているという声明を発表している。

体外受精 移植受精卵の数を制限:多胎妊娠防止へ学会指針

不妊治療専門医の団体である日本生殖医学会(岡村均理事長)は16日、母子への危険が大きい多胎妊娠を減らすため、体外受精の際に子宮へ移植する受精卵の数を、35歳未満の患者に対する初回の移植では1個に制限することなどを内容とする指針を決定した。

これを受けて、日本産科婦人科学会も4月から、従来の指針の見直しに着手する。

産科婦人科学会は1996年に、体外受精の際に移植する受精卵は3個以内とする指針を決めた。生殖医学会の指針では、それに加えて、多胎妊娠の危険性が高い40歳未満は2個以下に、とくに35歳未満の初回患者は1個に制限するとした。

移植する受精卵を減らすのは世界的な流れ。この指針に強制力はないが、生殖医学会のホームページに掲載して、医師や患者などに周知を図る。産科婦人科学会も、今回の指針を参考にしながら、96年に定めた指針の見直しを進める。

生殖医学会倫理委員会委員長の石原理・埼玉医科大教授は、「医療現場では、妊娠の可能性を高めたい患者側が、移植する受精卵を増やすように要望する例が多い。医師だけでなく患者にも、多胎妊娠の危険性についてよく考えてほしい」と話している。

関連記事:体外受精や代理出産の是非を意識調査へ

マウスに移植した人口リンパ節、血中の抗体量が20倍に

人工的に作成したリンパ節を免疫力の低下したマウスに移植し、免疫機能を正常マウスの約20倍に高めることに理化学研究所が成功した。高い免疫力は1カ月以上持続した。免疫力の強化は、エイズなどの重症感染症やがんなどの治療に有効だという。15日付の米基礎医学専門誌(電子版)に掲載される。

リンパ節はわきの下や頚部などにあり、ヒトの体に入ったウイルスなどの異物(抗原)が運ばれてくる組織だ。リンパ節中の免疫細胞が異物と結合すると免疫反応が始まり、異物を排除する抗体を作り出す。

研究チームは、たんぱく質の一種のコラーゲンを3ミリ角のスポンジ状にし、免疫反応に重要な2種類の細胞を染み込ませた。これを正常なマウスの体内に移植すると、リンパ節に類似の組織ができた。複数の免疫細胞が本物と同じ比率で存在し、血管も形成された。

この人工リンパ節を、免疫不全症を起こしているマウスに移植したところ、異物に対する血中の抗体量が正常マウスの約20倍にも高まり、1カ月以上持続した。

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線維筋痛症:医療機関によるネットワーク設立で診療体制強化へ

先月亡くなった日本テレビの女性アナウンサー、大杉君枝さんが「線維筋痛症」で悩んでいたと報道されて関心が高まる中、厚生労働省研究班(班長=西岡久寿樹・聖マリアンナ医大難病治療研究センター長)は、全国約160の医療機関が参加するネットワークを作り、診療体制の充実に取り組んでいる。

線維筋痛症の症状は、全身の痛み。原因ははっきりしないが、痛みをコントロールする脳の機能に異常があるらしいことが最近わかってきた。患者数は日本人の1・7%で、女性が男性に比べて約5倍多い。

診断や治療法が確立しておらず、保険適用もまだで、医師の間でも認知度が低い。病名が分からないまま、医療機関を転々とする患者も多い。

ネットワークは、リウマチの専門医がいる医療機関にアンケートを行い、線維筋痛症の診療に積極的な医療機関で結成した。 参加する医療機関の名前や連絡先は、研究班のホームページで見ることができる。

線維筋痛症とは?
線維筋痛症は、全身に痛みが生じる病気である。原因は不明であり、通常の医者が行なう血液検査では異常が現れない。また、治療法も確立されていない。

症状
全身に激しい痛みが生じる。痛みの種類は普通の人が日常経験する痛みと異なり、「電気が走るような痛み」や「ガラスの破片が流れるような痛み」などという表現で患者に形容される。
症状には個人差があり、軽度なら仕事を続けられる場合もあるが、重度の場合は日常生活に支障をきたし自力で生活できない場合がある。

若手医師の僻地勤務の義務化を提案:医師確保対策の一環

日本医師会(日医)の諮問委員会は15日、医師確保の対応策として、臨床研修を終えた若い医師にへき地などでの勤務の義務化を提案する中間報告書をまとめた。今後、役員会などで合意すれば具体案をまとめ、日医が厚生労働省に提言する。

報告書には、研修終了後の一定期間内に、へき地や医師不足地域での勤務の義務化を考慮すると盛り込まれている。産科・小児科など、医師が不足する診療科への勤務も想定されているという。

厚労省は昨年度、医師確保対策として、へき地などへの勤務を開業の条件にする案を審議会にはかったが、日医などから「やる気がない人が行っても根本的な解決にはならない」「強権的」などの反対が出て実現しなかった。

だが今回、諮問委員会は、義務化まで踏み込まなければ医師偏在は解決しないとの危機感の高まりを受け、報告書をまとめたという。

関連記事:病院の勤務医、5割が「辞めたい」:過酷な勤務と人手不足

睡眠時無呼吸症候群ドライバーの4割が居眠り運転を経験

睡眠中に呼吸が断続的に停止し、眠りが浅くなる睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されたドライバーの約40%が居眠り運転を経験していたことが十五日、警察庁が実施したアンケートで分かった。
SASではないかと疑いながら運転を続けている運転者が多いことも判明。同庁は今後、SASの検査方法や治療法の推移を見ながら、安全対策などに関する啓発活動を行う方針。

同庁がSASの運転に与える影響について調査したのは今回が初めて。有識者による欧米などの文献研究を実施する一方、昨年九月下旬、東京都の警視庁府中運転免許試験場で免許の更新をした五千二百三十五人に対してアンケートを行った。回収は三千二百三十五人(61・8%)だった。

その結果、回答した運転者のうち二百二十一人(6・8%)が「自分がSASではないかと思うことがある」と回答。「検診も含めて医療機関でSASと診断されたことがある」と回答したのは三十四人(1・1%)だった。

居眠り運転について、全体では六百五十八人(20・3%)が経験。これに対し「SASだと思うことがある」とする者のうちでは八十六人(38・9%)、「SASと診断されたことがある」とする者のうちでは十四人(41・2%)が経験したと回答した。

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リピトール:心疾患患者を対象に新たに5つの適応症をFDAが承認

ファイザー社は、米国食品医薬品局(FDA)がリピトール(アトルバスタチンカルシウム水和物)に対し、心疾患患者における非致死性心臓発作、致死性・非致死性脳卒中、血行再建術、心不全による入院および狭心症のリスクを低下させる薬剤であることを承認したと発表した。
これによりリピトールは、心不全による入院のリスクを低下させるコレステロール低下剤として初めてFDAに承認された薬剤となった。

これまでリピトールは、心疾患のない患者において心血管イベントリスクを低下させる薬剤として承認されていたが、今回の新たな承認により、心臓発作の既往歴、心臓手術の既往歴または狭心症など心疾患を有する患者において、リピトールの適応症が拡大された。このような患者は心血管イベント発症のリスクが高いことが分かっている。

アトルバスタチン(リピトール)について
リピトールは2000年5月に日本での販売が開始されました。アステラス製薬株式会社が製造・販売し、ファイザー株式会社がコ・プロモーションをしています。
本剤の作用機序は、生体内コレステロールの合成を持続的に抑え、血液中からのLDLコレステロールの取り込みを促進することです。
これにより、コレステロール低下作用を発揮し、1日1回10mg投与で平均41%のLDLコレステロール低下、30%の総コレステロール低下を達成できます。

国内の高コレステロール血症患者数が2000万人以上といわれる中で、リピトールは、高コレステロール血症治療に貢献すると期待されています。

関連記事:リピトールで肝炎の疑い 安全性情報で注意を喚起

抗生物質が効かない多剤耐性緑膿菌:9割の病院で検出

複数の抗生物質が効かない多剤耐性緑膿菌について、厚生労働省の研究班がアンケート調査を行ったところ、約86%の病院で菌が検出されたことが15日、分かった。
高齢者など体力が低下している患者が感染すると死亡することもあり、研究班は病院に院内感染対策を取るよう呼び掛けている。

研究班が2003年から06年6月までの間、全国の約540病院にアンケート調査を行い、約340病院から回答を得た。その結果、約290の病院で菌が検出されたという。

菌が検出された患者の数は、大半の病院は年間1000床あたり数人だったが、100人以上だった病院もあった。特に検出数の多かった病院や地域には研究班の専門家が直接、対応を促したという。

埼玉医大病院で昨年、100人以上が多剤耐性緑膿菌に感染していたことが発覚するなど、最近になってこの菌による院内感染が問題化していた。研究班は「多剤耐性緑膿菌が国内の病院で目立ち始めている。各病院は感染対策のプログラムを組んだり、職員教育を徹底するなどの対策が必要」と訴えている。

関連記事:多剤耐性緑膿菌とは?

大腸がんの便潜血検査:定期的な受診で死亡率低下

大腸がんの便潜血検査をこまめに受診する人は、受診しない人に比べ大腸がんで死亡する危険が低いとする疫学調査結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)が14日、発表した。

便潜血検査は腫瘍などから出た血液の便への付着を調べる。早期発見による治療が効果的な大腸がんでは、この検査が有効とされるが、実際に死亡率が下がるかどうかは国内では未確認だった。津金部長は「検診の有効性を裏付ける結果。積極的に受診してほしい」としている。

研究班は岩手、秋田、長野、沖縄県で40−59歳の男女約4万人を1990年から13年間追跡。受診経験と大腸がんとの関係を調べた。

その結果、検査受診者はがんが進行してから見つかる危険性が未受診者に比べて半減。大腸がんによる死亡率も未受診者の4分の1程度と大幅に低下していた。

便潜血検査とは?
便のなかに微量の血液が含まれていないかを検査することです。病変を便がこするとわずかに出血し便に血液が混じります。この肉眼では見えない微量の血液を検出する検査です。
自覚症状がない早期にがんを発見できる検査法として、健康診断などで広く行われています。

関連記事:大腸がん予防に運動が有効:厚生労働省研究班

リハビリ治療の日数制限:心臓病、ALSなどが制限対象外へ

2006年の診療報酬改定で公的医療保険で受けられるリハビリ治療に日数制限を設けた問題で、中央社会保険医療協議会(中医協)は14日、心臓病などを新たに制限の対象外とする一方、機能維持のためのリハビリも医療保険で継続可能とするとした柳沢伯夫厚生労働相の諮問を了承、同相に答申した。

これを受け厚労省は4月から改善措置を取る方針だが、原則2年に1度の診療報酬改定の途中での異例の見直し。「患者切り捨て」として白紙撤回を求める患者団体などの反発を受けて、制度の不備を認めざるを得なくなった格好だ。

答申は制限対象から外すケースに新たに(1)急性心筋梗塞や狭心症、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫など)で改善が見込まれる患者(2)制限対象外のケースに準じて必要と認められる場合で改善が見込まれる患者(3)先天性や進行性の神経・筋疾患(筋委縮性側索硬化症=ALSなど)で治療が有効な患者−を追加。

また制限日数後でも機能維持のためのリハビリに医療保険を利用できるように改めた。

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フェアビアンカ種のバラにメラニン色素の生成阻害(美白)成分

フェアビアンカという白いバラの品種の香りに、肌の黒ずみの原因となるメラニン色素の生成を妨げる成分が含まれていることを、カネボウ化粧品が見つけた。香り成分が「美白作用」を併せ持つ意外な結果。
国立科学博物館(東京)で24日から始まる「特別展 花」に香り成分を展示、28日から富山市で開かれる日本薬学会で発表する。

同社は、咲いたままの花の香りの成分を直接集める手法で、数百種のバラの花の香りを分析。フェアビアンカ種で、これまで知られていなかった特有の成分を見つけた。
この成分にメラニン色素のもとを持つ皮膚の培養細胞をさらすと、メラニン色素の生成が抑えられた。色素の生成過程にかかわるチロシナーゼという酵素の働きを妨げているらしい。

「美白」をめぐっては、チロシナーゼなど様々なメラニンの生成過程を標的に研究が進められている。同社製品開発研究所の駒木亮一主席研究員は「このバラが真っ白になるメカニズムと関係している可能性がある」といい、詳しい分析を進めている。

関連記事:メラニン色素の輸送妨げる酵素発見 美白肌、白髪防止に朗報か

「セフジニル」の後発医薬品、製造販売中止へ:大洋薬品工業

医療用医薬品「セフジニル」をめぐり、後発品の製造承認を国から受けた大洋薬品工業が、開発したアステラス製薬の特許権を侵害しているかどうかが争われた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。

高部真規子裁判長は、アステラスが保有する成分結晶の形についての特許を大洋が侵害していると認定。製造販売の中止と製品の廃棄を命じた。大洋は控訴する方針。

セフジニルは炎症を引き起こす細菌の働きを抑える。アステラスが「セフゾンカプセル」の名称で91年から販売し、年間売上高180億円。成分の特許が03年に切れ、大洋が05年に後発品「セフロジールカプセル」を売り出した。アステラスがもつ成分結晶の形の特許は08年8月まで権利が存続している。

セフジニル
セフェム系といわれる抗生物質で、広範囲の細菌を直接殺す作用があります。とくにブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌などのグラム陽性菌に強い作用を示します。
またリン菌、大腸菌、インフルエンザ菌などによる感染症に効用を示すので、呼吸器系、皮膚、泌尿器、眼、耳鼻科領域などの感染症に広く用いられます。

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幹細胞から角膜や結膜を再生:東大・山上聡研究グループ

大人の組織から採取したわずか1個の幹細胞を使って角膜や結膜の組織を再生させることに、東京大の角膜組織再生医療寄付講座の山上聡・客員助教授らが成功した。これまで角膜上皮のような組織で幹細胞を1個だけ取り出す手法は確立していなかった。今後、安全性の確認などをして臨床応用を目指す。

山上氏らは、幹細胞があるとみられる角膜輪部(黒目の縁)から採取した組織を、酵素で細胞1個単位にばらばらにして培養した。すると、幹細胞だけが培養皿の底に付着し、1週間後には細胞の集合体を形成。3週間後には直径2センチほどの角膜上皮に育てることができた。

培養には、ウシ血清やマウス繊維芽細胞などを使う一般的な手法は使わず、人工的な化合物を使う手法を用いた。このため動物に由来する感染症のリスクも抑えられた。

山上氏らは白目の部分にある結膜も、同じ手法で再生に成功した。また、食道上皮や口腔(こうくう)粘膜の再生にも同じ手法が使えることを確認。幅広い組織の再生に役立てられる可能性があるという。

角膜上皮が傷害をうける原因には、薬品による化学熱傷や、口や目の中に水疱(すいほう)ができて命にかかわるスティーブンス・ジョンソン症候群などがある。今回開発した技術の臨床応用が実現すれば、数千人の患者が対象になると考えられる。

山上 聡(やまがみ さとる)客員助教授
所属名:大学院医学系研究科・医学部、角膜組織再生医療講座
研究テーマ:角膜の再生、角膜の免疫学、角膜内皮遺伝子解析
研究キーワード:角膜 再生 免疫学 移植 遺伝子 内皮細胞 ケモカイン

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クレモリス菌がアトピー性皮膚炎を抑制:マウス実験で確認

食品メーカーのフジッコは13日、カスピ海ヨーグルトに含まれる特定の乳酸菌に、アトピー性皮膚炎の悪化を抑える作用があることがマウスによる実験で分かった、と発表した。28日から始まる日本薬学会の大会で発表する。

背中に薬を塗ってアトピー性皮膚炎を起こしたマウスで実験。カスピ海ヨーグルトに含まれる乳酸菌「クレモリスFC株」を食べさせなかったマウスは、炎症部分の皮膚の厚みが正常のマウスの約1・8倍になった。一方、クレモリスFC株を餌に混ぜて与えたマウスは1・5倍以下に抑えられたという。

フジッコは「今後、人体での反応も調べたい」と説明している。カスピ海ヨーグルトは独特の粘りで知られ、カスピ海と黒海に挟まれたカフカス地方の伝統的な食品。

プレスリリース

中外製薬が厚労省タミフル研究班教授に寄付

インフルエンザ治療薬「タミフル」を服用した後に異常行動死が相次いでいる問題で、因果関係を調べている厚生労働省研究班主任研究者の教授が主宰する大学の講座(研究部門)が、タミフルの輸入販売元「中外製薬」から、4年間に約800万円の寄付金を受けていたことがわかった。

厚労省ではこの教授から聞き取りを始めており、「さらに事実関係を確認した上で、適切に対応したい」としている。

寄付を受けていたのは、横浜市立大教授がトップを務める同大の小児医療関係の講座。同大や中外製薬によると、2001〜04年に計850万円が使途を限定されない「奨学寄付金」として、同大を通じてこの講座あてに寄付され、事務経費を除いた約800万円が実際に講座に交付された。

この教授は05年度から、研究班の主任研究者としてタミフルと異常行動の因果関係などを調査。昨年10月には、タミフル使用者と未使用者の間で、異常行動を起こす割合に違いがみられないとする報告書をまとめた。
厚労省では、この研究などを基に現段階では因果関係を否定している。研究は今年度も調査対象を増やして続けられている。

中外製薬は、「優れた業績のある講座で、医療の発展のため寄付した」と説明。横浜市立大総務経営課では「教授は『寄付が研究結果に影響することはない』と話している。複数の分担研究者がおり、手心を加えることは不可能。正式な手続きを経た寄付で、問題はない」としている。

タミフル
中外製薬から発売されたインフルエンザの薬(製造元はスイスの製薬会社「ロシュ」)。体内でインフルエンザウイルス(A型、B型)を増やさないようする薬です。
効果として、インフルエンザの症状がさらにひどくなるのを抑え、症状が出ている期間を短縮します。ただ、インフルエンザのウイルスが増えていく時期に飲まないと期待するほどの効果はみられず、飲んだからといってすぐに症状が軽減されるわけでもありません。
また、インフルエンザA型・B型に効果がありますが、C型や細菌性の風邪などには、効果がありません。そのため、病院でインフルエンザの型を判定する検査をした後、医師が必要に応じて処方します。

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