リハビリ治療、症状の改善無くても保険適用:制限緩和へ方針転換

公的医療保険で受けられるリハビリ治療に最高180日の日数制限が導入された問題で、厚生労働省は12日、筋委縮性側索硬化症(ALS)のような神経難病などは症状の改善が見込まれなくても、継続して保険治療を認めるなど、制限を緩和する方針を固めた。これまでは改善が見込まれないと治療を続けられなかったが、患者団体などからの「患者切り捨て」といった批判を受け、方針を転換した。

また、現在は上限日数を過ぎると介護保険でリハビリを受けることになるが、40歳未満は介護保険が使えないことから、医療保険を継続利用できるようにする。このほか一定の基準で医師の裁量権拡大を検討。早ければ4月から改正する。

リハビリに関する同省の調査で、心筋こうそくなどの心疾患や関節炎などの患者の1割近くが「改善の見込みがある」との医師の判断にもかかわらず打ち切られていたこが判明。早急に救済する必要があると判断した。

筋委縮性側索硬化症(ALS)
運動神経が侵され、全身の筋肉が次第にやせて力が入らなくなる厚生労働省指定の難病。感覚や知能ははっきりしたまま、筋肉の委縮が全身に広がり、進行すると食事や呼吸もできなくなる。
有効な治療法は見つかっていないが、人工呼吸器を付ければ延命は可能。患者は全国で約7000人。英国の著名な宇宙物理学者ホーキング博士もALS患者。

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難病対策で色素性乾皮症、進行性骨化性線維異形成症を新指定

厚労省の懇談会(委員長、金沢一郎国立精神・神経センター総長)が12日開かれ、原因不明で治療法が確立されていない病気の原因究明や治療法研究を行う「難治性疾患克服研究事業」の対象に、新たに色素性乾皮症進行性骨化性線維異形成症を加えることを決めた。2007年度から対象となる。新規疾患の追加は03年3月以来。

同事業は、(1)患者数がおおむね5万人未満(2)原因不明(3)効果的な治療法が未確立(4)生活への長期にわたる支障−の4要件を満たす疾患の中から選定し、治療法などのほか患者の実態や診断基準などを研究。現在は121疾患が対象となっている。
これらのうち特に治療が困難で医療費の高額な45疾患は「特定疾患」として医療費が補助されているが、今回の2疾患は医療費補助の対象にはならない。

懇談会は、患者団体などから要望があった24疾患から、4要件に加え若年での発症や、病気の経過の悪さなどを考慮して選んだ。

色素性乾皮症
紫外線により皮膚の障害を引き起こす遺伝性の疾患。
症状としては、皮膚症状、眼の羞明感(まぶしがること)、神経症状、発育障害などがみられます。皮膚は、出生時は正常です。生後6カ月〜3歳ころに、日光曝露後、露出部に異常に強い紅斑、水疱が発生します。
雀卵斑様小色素斑(じゃくらんはんようしょうしきそはん)、乾燥粗造化、色素の沈着と脱失を生じます。高率に皮膚の悪性腫瘍を生じます。

進行性骨化性線維異形成症
「進行性化骨筋炎」とも呼ばれ、身体の筋肉等が骨に変化し、その骨が身体の関節を固め、あらゆる部分の動きの自由が奪われるほか、身体の変化に伴い、呼吸器官や内臓への影響を及ぼす病気である。
この病気は、約200万人に1人の割合で発病しているが、未だ原因が解明されておらず、難病に指定されていないため、治療方法も確立されていないのが現状であるうえ、医療費支援等を受けられず、患者や家族にとっては、精神的、経済的に大きな負担となっている。

武田薬品が英パラダイム・セラピューティック社を買収へ

武田薬品工業は12日、英バイオベンチャーのパラダイム・セラピューティック社を買収することで合意したと発表した。買収は数週間以内に完了する見込みで、買収価格などの条件は公表していない。

武田薬はパラダイム社が持つ技術が、ゲノム研究由来の創薬ターゲット候補の選択や、ヒトの病態を反映したモデル動物の確立など、研究プロセスの加速化につながると判断、買収を決めた。

パラダイム社は1999年にケンブリッジ大学の研究者が設立。遺伝子組み換え技術を基盤として、疼痛や中枢神経系疾患、ホルモン依存性疾患、代謝性疾患などを重点領域と位置づけ、研究開発に取り組んでいる。

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塩野義製薬が抗インフルエンザ薬「ぺラミビル」を国内販売へ

塩野義製薬は、米製薬会社のバイオクリスト(アラバマ州)から、抗インフルエンザウイルス注射剤「ペラミビル」の国内での独占的開発販売権を取得したと発表した。A、B型のほか、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)のウイルスにも効果があるという。早期に第1相の臨床試験を開始する。

中外製薬が販売する「タミフル」と同じノイラミニダーゼ阻害剤と呼ばれ、細胞内で増殖したウイルスが外に出るのを防いで感染を抑制する。バイオクリストは同剤を米国などで開発中で、米国保健社会福祉省が1億260万ドルの助成を決定している。

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赤ちゃんへの授乳が生殖機能を抑制:名古屋大生命農学研究科

乳児が母親の乳首を吸うことが刺激となって母親の脳に作用し、生殖機能を抑制するというメカニズムを、名古屋大生命農学研究科の束村博子助教授(47)と山田俊児大学院生(28) らのグループが解明した。米国・内分泌学会誌「エンドクリノロジー」(電子版)に論文が掲載された。

束村助教授らは、子育て中の母親ラットについて、授乳をさせたものと、赤ちゃんラットと引き離したものとで、脳内を比較検討。その結果、授乳しているラットの方が「メタスチン」と呼ばれる神経伝達物質の量が少なく、乳首を吸われるという刺激によって「メタスチン」の合成が抑えられることが分かった。

メタスチンは、2001年に日本の研究者の手によって、がん転移を抑える物質として発見された。その後の束村助教授らの研究や欧米の研究で、メタスチンが少ないと排卵しにくいことなどが分かり、哺乳(ほにゅう)類の生殖を制御する最も重要な神経伝達物質と考えられるようになっている。

今回の研究結果は、不妊治療や家畜の繁殖力を増やす薬への応用が期待されるという。束村助教授は「授乳中の母親の生殖機能が抑制されるのは、次の子供を妊娠しないための摂理と思われるが、その脳内メカニズムは不明な点が多かった。今回の研究で、その中核部分を解明できた」と話す。

ALS患者への人工呼吸器の装着割合、病院間で大きな差

全身の筋肉が動かなくなる進行性の難病、筋委縮性側索硬化症(ALS)の患者が呼吸困難になり、延命のために気管切開をして人工呼吸器を装着した割合は、ほぼ100%から10%未満まで病院間で大きな差があることが10日、共同通信が実施した全国調査で分かった。
余命を大きく左右する呼吸器装着の割合が、ケア体制の地域差や医師の説明方法に影響されている実態が浮かんだ。

一方、一度つけた呼吸器を患者が自らの意思で外す権利を容認する意見が約半数を占め、患者から取り外しを依頼された経験のある病院も19%あった。患者団体には「容認すれば、周囲の都合で死に追い込まれる恐れがある」と慎重論も強く、議論を呼びそうだ。

調査は今年1−2月、神経内科がある大学病院本院と国立病院機構など計183病院を対象に実施。78病院(43%)から有効回答を得た。

呼吸器をつければ数年以上の延命が可能だが、たん吸引などで24時間介護が必要になる。家族の負担が大きく、装着をためらう患者も多い。

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納入済みの輸血用血液に不良の疑い:白血球除去処理に不備

日本赤十字社が今年1月、輸血による副作用を減らすために導入した白血球除去の処理に不備があり、基準値以上の白血球が残った可能性がある血液製剤1万910本(約4.3トン)が作られていたことがわかった。
医療機器メーカー「テルモ」(本社・東京)がつくったフィルターに小さな穴があいていたため。病院などに出荷されたのは3194本。出荷を見合わせた7716本のうち、846本は廃棄された。

献血した人の白血球が輸血用血液に含まれていると、発熱などの副作用が起きることがある。輸血のたびにフィルターをつけて白血球を除去することが推奨されていた。日赤は今年1月中旬、白血球除去フィルターを組み込んだ採血バッグを使い、すべての血液の濾過を始めた。

この新たな対策を始めた1月16日から1週間の間に16のバッグのフィルター内の壁に小さな穴があいていることがわかり、同様に作られた製剤の出荷を見合わせた。
病院などに納入された製剤について日赤は、注意を呼びかけた。発熱などの副作用報告は5件あったが、因果関係は不明という。

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細胞のDNA修復を助ける酵素「UBC13」

細胞内のDNAが傷つけられた場合、UBC13という酵素が真っ先に働いて修復を助け、細胞死を防いでいることを武田俊一・京都大医学研究科教授(放射線遺伝学)らのグループが突き止めた。

がん細胞でこの酵素の働きを抑えられれば、効果的に退治できる可能性があるという。10日の米科学誌「モレキュラー・セル」電子版に発表した。

細胞は、紫外線や放射線によってDNAが傷つくと死ぬ恐れがあるため、常に修復活動を行っている。DNAは、細胞1個当たり、1日に数万〜数十万回も切断されたり傷つけられているが、わずか1分後には修復が始まる。

武田教授らは、DNAの損傷個所に最初に取り付き、修復開始の目印になるUBC13に注目。ニワトリのリンパ球細胞からUBC13を取り除くと、細胞の修復速度が半減することを確認した。細胞に放射線を当てると通常の約10倍死にやすくなっていた。人間の細胞を使った実験でも、修復能力が7割程度に低下していたという。

武田教授は「UBC13の働きを抑える薬剤があれば、放射線照射や抗がん剤との組み合わせで効果的ながん治療ができる」と話している。

医師不足解消へ向け「医師確保等支援チーム」を発足

医師不足が各地で深刻化する中、厚労省は9日、都道府県の支援に乗り出すため「医師確保等支援チーム」を発足させた。全国を5ブロックに分けて担当者を任命、問題点の把握や助言を行う。とりわけ産科医不足が問題化していることから、地域ごとの出産施設数などを調べるためのアンケートを今月中にも実施する。

同省などが昨年8月にまとめた「新医師確保総合対策」では、都道府県ごとに自治体担当者や医療関係者らで「地域医療対策会議」を構成し、病院の集約化などを協議することになっている。しかし会議の開催回数にはばらつきがあり、地域によっては必ずしもスムーズに進んでいないのが実情だ。

発足したチームは北海道・東北、関東信越、東海北陸、近畿、中国四国・九州の5ブロックを企画官、課長補佐ら4人ずつで担当。出産のために数時間もかけて通院しなければならなかったり、医師が集団で退職し診療科の閉鎖に追い込まれたりしたケースなど、個別の事案について相談に乗るほか、都道府県の会議に担当者がオブザーバー参加することも検討している。

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がん細胞を自滅に導く酵素「DYRK2」を発見

がん細胞を自滅に導く酵素を、吉田清嗣・東京医科歯科大助教授(分子腫瘍学)らの研究チームが発見し、9日付の米科学誌「モレキュラーセル」に発表した。酵素の働きを高められれば、抗がん剤の投与量を減らして副作用を軽減する効果が期待できるという。

遺伝子の本体であるDNAが紫外線や放射線などの影響で変異することで、細胞はがん化する。変異が大きいと、細胞中のp53遺伝子が働き、細胞はアポトーシスと呼ばれる自滅現象を起こす。

p53は酵素の働きで活性化すると考えられていたが、その酵素が何かは特定されていなかった。
研究チームは、ヒトのがん細胞を使い、p53が活性化する時にDYRK2という酵素が働いていることを突き止めた。

さらに、薬剤で細胞のDNAを傷つけると、この酵素が細胞質から核の中に移動してアポトーシスが始まることを確認。酵素が働かないようにすると、アポトーシスが起きなくなることから、p53にスイッチを入れる働きを持つと断定した。

吉田助教授は「抗がん剤や放射線治療は正常な細胞にもダメージを与える。DYRK2が必要な時に必要な細胞で働くよう工夫できれば、患者の負担を小さくする治療につながる」と話す。

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肺がんのCT(コンピューター断層撮影法)検査は不必要で有害?

肺がんの早期発見が期待されるコンピューター断層撮影法(CT)による定期診断には、肺がんによる死亡率を低下させる効果がなく、不必要で有害な医療行為にもなりかねない―という調査結果を米メイヨー・クリニックなどの研究チームがまとめ、7日、米医師会雑誌に発表した。

研究チームは「より決定的なデータが得られるまで不必要なCTの診断を受けるべきでない」と提言している。

調査は、肺がんのリスクの高い喫煙者と元喫煙者3246人を対象に、4年間、毎年1回CT診断を実施。この間、肺がんで亡くなったり、進行性の肺がんと診断された患者の割合を、過去のデータをもとに算出したCT診断を受けない場合と比較した。

その結果、死亡率、進行がんに発展する率とも、診断を受けた場合と受けない場合に大差がないと判明。小さながん細胞を早期発見し、早く治療することで死亡率を引き下げるという、CT診断に本来期待される効果がほとんど得られないとわかった。

研究チームは「CT診断で肺がんを早期発見することはできるが、治療しないと急速に悪化するがんは見逃している可能性がある」としている。

ただ、米国では、死亡率の集計など、この研究のデータ解釈に疑問を投げかける専門家の声も出ている。肺がんのCT診断の効果とリスクについては、米国立がん研究所などが同国とオランダで疫学調査を実施している。

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官民共同で「安全性データベース」開発へ:新薬開発を加速化

医薬品になる可能性のある化合物について、遺伝子レベルで調べた毒性データなどを集めた「安全性データベース」を、国立医薬品食品衛生研究所医薬基盤研究所、15社の製薬企業が共同で開発した。4月から運用を始める。

同様のデータベースは米国のベンチャー企業が運営するが、官民共同開発による約7億3000万件の登録データの規模は世界で例がないという。事前調査でチェックすれば副作用などによる臨床試験の中止を極力回避でき、メーカーの新薬開発を加速化させる効果が期待できる。

過去に人の肝臓、腎臓で副作用が起きた150の化合物について、人の研究用肝細胞やラットなどに投与した場合、遺伝子がどう働くかを開発チームが解析した。これに、ラットの体重や臓器重量の変化、病理画像など毒性関連データと合わせて、約7億3000万件のデータを安全性データベースに登録する。

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先端巨大症治療薬「ソマバート皮下注射用」を了承:中医協

中医協は7日の総会で、ファイザーの先端巨大症治療薬「ソマバート皮下注用」を、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加することを了承した。

プレスリリース
ソマバートは、これまでにない全く新しい作用機序を有する先端巨大症治療薬です。先端巨大症は、成長ホルモン(GH)が過剰に分泌し、それにより更にIGF-I(ソマトメジン‐C)をはじめとするホルモン分泌や糖、脂質、タンパク質代謝に異常をきたす疾患で、主な症状としては顔貌の変化や発汗、関節痛、頭痛、視野障害などがあげられます。
糖尿病、高血圧、心血管疾患、睡眠中無呼吸などを合併することも多く、一般集団に比べこれらの疾患での死亡率は一般集団に比べ2〜3倍高くなっています。

既存の薬剤がGH産生を抑制するのに対し、ソマバートの作用機序は、GHの作用部位であるGH受容体に直接作用し、過剰に分泌されているGHの作用を拮抗することで、IGF-I分泌のシグナル伝達を抑制します。
したがって、先端巨大症の診断や治療効果の指標として簡便に測定のできる血中IGF-I濃度を検査することで、ソマバートによる治療の効果が判定できます。

内外の長期投与臨床試験の結果、80%を越える先端巨大症患者の血中IGF-I濃度を正常範囲に低減させただけでなく、患者さんの多くに見られた関節の肥大も、ソマバート(R)の治療によって指輪のサイズが有意に小さくなるなど、臨床症状の改善も認められました。
ソマバートの投与で、これまで外科的処置や経口薬による治療でコントロールが不良であった先端巨大症に苦しむ患者さんのIGF-I を正常化し、生命予後の改善に寄与することが期待されます。

ソマバートは海外においては、Somavert(R)の製品名で先端巨大症治療薬として2003年に米国で承認を受けて以来、現在欧米27ヵ国において承認され使用されています。

新型インフルエンザ対策:新たにワクチン1000万人分

厚労省は6日、新型インフルエンザ対策強化のため、新たに1000万人分のワクチン製造に必要な体制の整備や、発生初期に患者周辺の住民に予防的に投与する目的で抗インフルエンザ薬タミフル300万人分を備蓄することを明らかにした。06年度一般会計予備費約73億円で対応する。

国は現在、高病原性鳥インフルエンザH5N1型のウイルスを基に、ワクチン1000万人分を目標に備蓄を進めている。今回、さらに1000万人分を製造するために必要な鶏卵の確保の費用として3億円を盛り込んだ。

タミフルについては治療用として07年度までに国、都道府県など合わせて2500万人分の備蓄を進めているが、今回は予防投与分として68億円をかけ、さらに300万人分を確保する。このほか検疫体制強化のため、防護服や検査機器などを1億5000万円かけて整備する。

タミフルについて、柳沢厚労相は「科学的な知見で安全性に問題がないという見解で、備蓄を進めている」と述べた。

高脂血症治療薬クレストールの成分発明対価は?

製薬大手、塩野義製薬の元社員渡辺正道さん(59)が6日、「高脂血症治療薬クレストールの主成分発明に見合う対価が支払われていない」として、同社を相手に約8億7000万円を求める訴えを大阪地裁に起こした。

訴状などによると、渡辺さんは1966年から2003年まで同社に研究員などとして勤務。91年、他の従業員3人と共同でクレストールの主成分「ロスバスタチンカルシウム」を発明した。

塩野義は同成分を含む物質に関する特許を申請し、97年に取得。塩野義から特許の独占的実施権の許諾を得た英アストラゼネカ社が製品開発を進め、日本と欧米でクレストールを発売した。塩野義は04年から06年前半までに計約203億円に上る特許権使用料収入を得たという。

塩野義は発明者4人に対し特許申請時に計6000円、取得時に計9000円の報奨金を出した。06年8月には退社後の渡辺さんに対し、05年に改定した社内規定に基づき約1450万円を支給すると提示したが、渡辺さんは「クレストールにより得られる収入に対し著しく不合理」と受け取らなかったという。

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ラビットアイブルーベリーの葉が肝炎抑制効果

ブルーベリーの一種「ラビットアイブルーベリー」の葉に、C型肝炎ウイルスや脂肪肝などに対する抑制効果があることがわかったと、宮崎大の河南洋医学部長ら産官学連携の研究チームが発表した。すでに6件の特許を申請。効率的な栽培方法もほぼ確立し、商品化や医薬品開発に向けた研究を進めている。

チームによると、試験管内の実験で、ラビットアイブルーベリーの葉の抽出物にC型肝炎ウイルスの増殖を抑える効果を確認した。抽出物の成分は分析中だが、濃度が1ミリリットル当たり1マイクログラム(マイクロは100万分の1)程度なら、健康な細胞に悪影響を及ぼさないこともわかった。

脂肪肝のラット(ネズミ)に葉を食べさせたところ、肝臓中の中性脂肪やコレステロールが低下し、血圧の降下作用や肝がんの発症を抑える効果もあった。

通常は3メートル間隔で植えるラビットアイブルーベリーの苗木を20〜30センチ間隔に密集させるなど、効率的に大量栽培する方法を確立。茶などの製品化に向けた加工技術も開発した。

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新薬の承認審査:人員を倍増、迅速化へ

厚生労働省は5日までに、新薬の承認審査を担当する独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」で新薬審査と臨床試験相談に当たる人員を、2009年度までの3年間に230−240人程度増やし、現在の約200人から倍増させることを決めた。

新薬の承認審査にかかる手数料の単価を引き上げ、増員の費用に充てる。審査体制を強化し、承認審査の迅速化を図る考えだ。

厚労省によると、国内では新薬が承認されるまでの時間が欧米より長く、例えば米国の平均1年に対し、日本は倍の約2年。このため欧米で承認済みの薬が国内ではなかなか使用できないのが現状で、医薬産業政策研究所の調査では、世界の売り上げ上位医薬品の約3割が日本では未承認だという。

薬の承認審査に当たる人員は、米国の2200人、フランスの942人、英国の693人に対し、日本は197人(いずれも05年)と欧米に比べ大幅に少なく、これが審査に時間がかかる要因の一つとなっている

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「ホモシステイン酸」がアルツハイマー発症メカニズムに関与

佐賀女子短大の長谷川亨教授=公衆衛生学=が4日、アルツハイマー病が高齢者に多く発症するメカニズムの一つを解明したと明らかにした。老化によって神経細胞の働きが抑制されると、同病を引き起こす物質「ホモシステイン酸」が脳の神経細胞死を招く働きをすることを実験で示した。
発症の仕組みが明確になっていない同病の治療に役立てたい考えで、研究成果は、6月に米国で開かれる認知症予防の国際会議で発表する。

長谷川教授は05年にホモシステイン酸の有害な働きを初めて特定。今回の実験では老化との関係を分析した。老化が進み、神経細胞の働きが弱くなると、ホモシステイン酸が細胞内に有害物質を蓄積させ、別の原因物質と組み合わされることで細胞死することが分かった。若い世代では、ホモシステイン酸があっても、有害物質が蓄積されていないので、神経細胞死までは起きないという。

長谷川教授によると、喪失体験やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの強いストレスがアルツハイマー病の危険因子とされており、ホモシステイン酸はそのようなストレスが持続的に続いた際に増える。

関連記事:アルツハイマー病の治療用ワクチンを開発:埼玉医大チーム

がん抑制遺伝子「p53」が心不全の発症に関与:千葉大

がんを抑制する働きを持つ遺伝子「p53」が、高血圧や動脈硬化などさまざまな原因で起こる心不全の発症に深くかかわっていることを、千葉大の小室一成教授(循環病態医科学)らがマウスの実験で突き止め、英科学誌ネイチャー電子版に4日発表した。

多くの心不全では心臓が肥大し、最後は心臓を動かす筋肉(心筋)が働かなくなる。p53は、心筋の周囲に新たな血管ができるのを抑え、心筋の酸欠状態を引き起こすらしい。遺伝子レベルで発症の仕組みが分かったのは初めて。

小室教授は「心不全の予防には食事や生活習慣の改善が一番だが、心臓弁膜症などが原因となっている場合にはそれだけでは回復が望めない。p53の働きを心臓だけで弱めることができれば、新たな治療法につながる」としている。

小室教授らは、マウスの動脈を糸で縛って高血圧に似た状態を作り、心臓が肥大して心不全を発症する過程を再現。さまざまな遺伝子の働きを解析した。

磁気共鳴画像装置(MRI)を使い三次元映像で手術:滋賀医大

滋賀医科大は27日、磁気共鳴画像装置(MRI)を使って、三次元画像で体内の様子を見ながら手術ができる世界初のシステムを開発したと発表した。患部だけでなく、メスなどの手術器具の位置や動きまでも分かるシステムはこれまでになく、同大学は「手術がしやすくなり、患者の負担軽減につながる」としている。

システムは、MRI装置と併用できる直径1センチの特殊な内視鏡と、電波の一種「マイクロ波」で細胞組織を固定して血を出さずに患部を切除できる切開装置、それらの器具が体内のどの位置でどんな動きをしているかを立体的に表す画像ソフトで構成されている。
MRIとあわせてこれらの器具やソフトを使うと、体内の臓器だけでなく、切開装置などの器具で確実に患部を切除したりガン細胞を死滅させる様子を、一つのモニター画面で三次元画像と内視鏡で見ることができる。

同大学は、MRIは強い磁場が発生するため一般的な電気メスや超音波メスが使えないが、マイクロ波は周波数が違うため併用できることに注目。2004年度から文部科学省の科学技術振興調整費に採択され、医療機器メーカーなどと3年間かけて器具や画像ソフトを開発した。