UD Agentによる医療データ解析プロジェクトを修了へ

インターネットに接続されたパソコンの余剰能力を集結し、白血病やがんの治療薬研究のためにデータ解析を行うプロジェクト“Grid.org”は25日、米国中部標準時の27日正午(日本時間では28日午前3時)に活動終了することを公式フォーラムで発表した。すでにクライアントソフト「UD Agent」はダウンロードできなくなっており、27日にはフォーラムも閉鎖するという。

「UD Agent」は、大規模なデータ処理を、ネットワークに接続されたパソコン同士で少しずつ分担して行う“分散コンピューティング”の老舗。2000年の活動開始以降、日本からも多くのユーザーが参加していた。

発表によると終了の理由は、分散コンピューティングの有益性と実現可能性を実証するという使命を果たしたためとのこと。しかし同時に、実施予定だった2つの解析プロジェクトが、諸事情により実現できなかったことも明かしている。

27日以降、「UD Agent」は解析を行わなくなるため、ソフトをアンインストールするよう勧められている。また、各ユーザーが自分の解析実績などを確認するために、活動終了後も1週間はサーバーを稼働し続けるという。(impress Watch)

メモ
知る人ぞ知る「UD Agent」ですが、この世界的なプロジェクトにおける解析数貢献度は日本の2ちゃんねらー有志による"Team 2ch"が常時トップでした。
何かと影の部分ばかりが注目されがちな同掲示板ですが、中越地震のカイロプロジェクト(読んで字のごとく、寄付を募って、厳寒の新潟にほかほかカイロを大量に届ける)など、光の部分にももう少しスポットライトを当ててもいいんじゃないかと思います。



たんぱく質「PDLIM2」がアレルギー疾患につながる炎症を制御

花粉症やリウマチなどアレルギー疾患につながる炎症反応の暴走に対し、体内の特殊なたんぱく質が“ブレーキ”の役割を担うことを、理化学研究所のチームが突き止めた。
アレルギーの仕組みの解明や新薬開発につながる可能性がある。成果は30日付の米科学誌「ネイチャー・イムノロジー」電子版に掲載される。

炎症反応は、ウイルスや細菌など体内に侵入した異物を排除する免疫の働き。だが、炎症反応がうまく制御されないと、アレルギー疾患につながる。

研究チームは、異物を認識して他の細胞に情報を伝える「樹状細胞」という免疫細胞で、炎症反応に必要な遺伝子のスイッチを入れる分子に着目。炎症反応が終わる際には、この分子が細胞核の中の「分解工場」のような領域で処理されていることを発見した。さらに、この分子を分解工場に運ぶ役割を果たしているのが、「PDLIM2」と呼ばれるたんぱく質であることを、初めて突き止めた。

PDLIM2が働かないマウスで炎症反応を起こしたところ、死亡率は正常なマウスに比べて約2倍に高まり、過剰な炎症反応が起きていることを確認した。

チームの田中貴志研究員は「薬剤などでPDLIM2を活性化する方法がわかれば、アレルギー疾患の新しい治療法につながる可能性がある」と話している。(Yahoo!ニュース)

アレルギー疾患
アレルギ−体質の人の体内では、異物が皮膚や口・鼻・胃腸粘膜を介して侵入してきた場合、「からだに不利益に働く」アレルギー抗体が作られます。
次に、その抗原が再度侵入すると、抗体が反応して、肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が分泌されて、咳、じんま疹、嘔吐、下痢、鼻水、くしゃみ、呼吸困難などの異常な反応が出現してきます。このように、本来はからだを守る免疫反応が、「体に不利益な反応」となって現れる症状をアレルギー疾患と呼びます。

関連記事:全国の公立児童、9%がアレルギー疾患:文部科学省

クロストリジウム・ディフィシル(強毒腸炎細菌)を国内で検出

北米地域で集団感染が相次いでいる死亡率の高い強毒型の腸炎細菌を、国立感染症研究所が国内の患者2人から検出していたことがわかった。

厚生労働省は、国内の医療機関での流行を防ぐため、各医療機関に院内感染防止の徹底を指示、今後、同研究所を通じて、国内の発生状況の予備調査を行う方針だ。

この細菌はクロストリジウム・ディフィシル。これまで、国内では下痢や大腸炎を引き起こす細菌として知られているが、高齢者や全身状態が悪い場合を除き、患者が亡くなることはまれだった。
ところが、カナダなどで2003年ごろから、毒素をたくさん作る強毒型が流行するようになり、ケベック州の12病院では、1703人のうち、約7%にあたる117人が亡くなった。
この死亡率は、病原性大腸菌O-157に感染した患者が重い合併症を起こした際の死亡率1〜5%よりも高い。(Yahoo!ニュース)

クロストリジウム・ディフィシルとは?
大腸に常在している菌(常在菌)の一種で、通常は毒素を産生しません。この菌は多く種類の抗生物質が効かない菌であるため、抗生物質の投与によって他の菌が死滅するとこの菌だけが生き残り異常増殖をし、毒素を産生するようになります。
この産生する毒素(エンテロトキシン、サイトトキシン)が腸管粘膜に障害を起こし、軽症では軟便、重症では激しい下痢、腹痛、高熱を伴う、円形に隆起した偽膜ができる偽膜性大腸炎を発症します。

関連記事:アミノ配糖体が効かない薬剤耐性菌、国内で拡大へ

パーキンソン病の遺伝子治療:国内初、自治医科大付属病院で

自治医科大学附属病院(栃木県)は、運動障害を伴う難病パーキンソン病に対する国内初の遺伝子治療を、5月7日に実施すると発表した。

パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質ドーパミンが不足して起こるとされている。脳内でドーパミンに変換する薬を飲む治療が有効だが、進行期は変換する酵素が減り、効果が薄まる。

新たな治療法は、酵素を作る遺伝子を特殊なウイルスに組み込み、これを脳内に注射することで、ドーパミンの合成を回復させる効果が期待できるという。

同病院は昨年2月、厚生労働省に臨床研究を申請し、同省の厚生科学審議会科学技術部会が10月に承認。患者の選考や検査を行っていた。(YOMIURI ONLINE)

パーキンソン病とは?
中脳黒質のドパミン神経細胞が変性・脱落する進行性の脳の変性疾患です。発病原因は不明ですが、脳内でのドパミンの不足が様々な運動障害を引き起こすと考えられています。
パーキンソン病は、神経変性疾患においてはアルツハイマー病についで患者数が多く、振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害の4大症状が特徴です。

日本における患者数は、平成17年度厚生労働省患者調査より約14万5000人と推計されていますが、50〜60歳代で発症することが多く、高齢化に伴って患者数は増加しています。

関連記事:パーキンソン病治療薬「コムタン」:ノバルティス・ファーマが発売

高脂血症治療薬「フィブレート」に"体内時計"調整作用

高脂血症の治療薬「フィブレート製剤」に、睡眠のリズムなどを刻む「体内時計」を調節する働きがあることを、産業技術総合研究所生物時計研究グループなどの研究チームが突き止めた。

睡眠障害を持つマウスにこの薬を飲ませたところ、いつもより早起きし、正常マウスと同じように活動することがわかった。研究チームは今後、この治療薬を飲んでいる患者に早起きの傾向があるか調べ、睡眠障害の治療薬の開発につなげていきたいとしている。

研究チームは、薬を飲む時間帯と効き方との関係をマウスを使って調べた際、薬を飲むマウスが早起きになっていることに気付いた。薬を含むエサを食べたマウスは3時間ほど活動する時間帯が早くなり、起きる時間が遅くなる「睡眠相後退症候群」の症状を持つマウスに与えたところ、症状が改善したという。
薬が体内時計を調節する仕組みは不明だが、同研究グループの大石勝隆・主任研究員は「時差ぼけの改善にも効果が期待できる」としている。(YOMIURI ONLINE)

フィブレートについて
フィブレート系薬剤は、高脂血症治療薬として長い歴史をもち、日本では、第二世代のフィブレート系薬剤であるベザフィブレートやフェノフィブレートが臨床に用いられている。
概ね血清中性脂肪を2割から5割減少させ、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールも2割程度減少させる。

睡眠相後退症候群(DSPS)とは?
概日リズム睡眠障害と呼ばれるリズム障害の一種。睡眠時間帯が、望ましい時間帯から遅れた状態が慢性的に続き、睡眠時間帯を早めることが困難とされる。
本症候群は、思春期に発症することが多く、受験勉強などによる夜更かしが発症契機となる場合もある。体温リズムやメラトニンの分泌リズムなどから、何らかの体内時計機構の障害が原因と考えられている。

関連記事:“腹時計の位置”突き止める:科学技術振興機構

がん転移に関するたんぱく質を発見:島津製作所

島津製作所は、超免疫不全マウスを使った実験動物中央研究所との共同研究で、大腸がんとすい臓がんの転移に関するタンパク質9個を発見した、と発表した。今後、タンパク質の遺伝子解析が進めば、ガン転移の構造解明や診断・治療水準の向上、新薬開発につながる。

同研究所が開発した免疫反応ゼロの特殊マウスと、島津製作所の独自技術であるNBS試薬と質量分析装置を組み合わせ、3年前から共同研究してきた。
ガン転移に関するタンパク質は、過去にも複数の候補が見つかっているが、今回の9個は機能が未解明の新しい種類ばかりだったという。

実験は、同マウスに移植した人のガン細胞で実施した。大腸ガンとすい臓ガンのそれぞれの細胞と高転移後の細胞で量的変化が大きいタンパク質を比べた結果、9個が両ガンに共通して著しく増減していた。

島津製は今後、これら9個のタンパク質の設計図に当たるそれぞれの遺伝子を詳しく解析する。ガンの転移メカニズム解明はガン治療最大の課題であるため、数年以内に血液検査で転移可能性などを調べるガン診断事業への本格参入を目指す。(京都新聞)

NBS試薬とは?
質量の異なる2種類の安定同位体試薬により、タンパク質に含まれるアミノ酸の一種トリプトファンを選択的に標識する試薬キット。
あるがん細胞と高転移能を獲得したがん細胞から抽出したタンパク質を、異なる質量の試薬でそれぞれ標識した後に質量分析装置で測定することにより、がん細胞とその高転移能獲得がん細胞に含まれるタンパク質の種類や量の違いが解析できる。

がん診療連携拠点病院:専門医不足が3割超

1日に施行されたがん対策基本法が目指す、がん医療の地域格差解消を担う「がん診療連携拠点病院」で、抗がん剤や放射線治療の専門医がいない病院がそれぞれ3割を超すことが、読売新聞社の全国調査で明らかになった。

地方で人材確保が難しいことが背景にあり、患者の求めるがん医療ができない恐れもある。全国どこでも均一ながん医療の提供をうたう同法の目標が、一朝一夕では実現しない実態が浮き彫りになった。

調査は、今年3〜4月、全国286か所のがん診療連携拠点病院と47都道府県を対象に、がんの診療実績、地域の医療体制などに関するアンケートを送付。有効回答を寄せた164病院(57%)と全自治体について分析した。(読売新聞)

がん診療連携拠点病院とは?
都道府県が推薦し、国が指定する。代表的ながんの標準的な治療、チームによる緩和医療の提供、相談体制、院内がん登録の実施などが指定要件。
がん患者の入院に保険点数が加算されるほか、院内がん登録の実施などに国の補助金が出る。地域の中枢を担う「都道府県拠点病院」と「地域拠点病院」の2種類がある。

メモ
がん対策基本法が施行されましたが、「がん登録制度(=患者のデータベース化)」についての内容が盛り込まれておらず、付帯決議扱いになっているのが理解できないですね。
がん患者が自分にあった医療機関を探すために、県外の病院を訪れることなんて、ざらにあるわけです。何らかの理由で病院を変えてしまった場合、今までのがん検診や治療などの有効性を検証するのが難しくなりますし、患者の負担も増えてしまいます。また県レベルで行なわれている登録制度の意義、精度自体が問われることになりかねません。

関連記事:がん治療専門の人材育成「がんプロフェッショナル養成プラン」

パーキンソン病治療薬「コムタン」:ノバルティス・ファーマが発売

ノバルティス・ファーマは、パーキンソン病のウェアリング・オフ現象の改善に適応する治療薬「コムタン錠」を発売した。ウェアリング・オフ現象の改善に適応する薬剤が国内で売り出されるのは初めて。

パーキンソン病は、中脳黒質のドパミン神経細胞が変性、脱落する進行性の脳変性疾患。脳内でのドパミンという神経伝達物質が不足し、いろんな運動障害を引き起こすとみられている。
このため治療は、ドパミンの前駆物質であるレボドパの経口服用が最も有効とされている。

ただレボドパの代謝は速く、パーキンソン病の進行に伴い脳内のドパミン保持能力が低下すると、薬が効いている時間が短縮。その結果、ウェアリング・オフ現象というレボドパの効果が衰退する状態になり、手の震えや緩慢な動作、歩きにくいといったパーキンソン病特有の症状が現れる。

コムタンは、既存のパーキンソン病治療薬のレボドパ・カルビドパやレボドパ・塩酸ベンセラシドと併用することで、レボドパを代謝するカテコール-O-メチル基転移酵素の働きを阻害。レボドパの血中濃度の半減期を延長し、レボドパの効果を持続させてウェアリング・オフ現象を改善する。

同社によると、国内のウェアリング・オフ現象のあるパーキンソン病患者を対象にした臨床試験では、コムタンは偽薬よりレボドパの血中濃度半減期を1.3倍に延ばした。
またレボドパ/DCI配合剤に偽薬またはコムタンを8週間併用投与した結果、コムタンはレボドパの効果が現れているオン時間を1日平均1.4時間延長、偽薬が同0.5時間延ばしたのに対し、有意な延長効果が確認された。(熊本日日新聞)

パーキンソン病とは?
中脳黒質のドパミン神経細胞が変性・脱落する進行性の脳の変性疾患です。発病原因は不明ですが、脳内でのドパミンの不足が様々な運動障害を引き起こすと考えられています。
パーキンソン病は、神経変性疾患においてはアルツハイマー病についで患者数が多く、振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害の4大症状が特徴です。

日本における患者数は、平成17年度厚生労働省患者調査より約14万5000人と推計されていますが、50〜60歳代で発症することが多く、高齢化に伴って患者数は増加しています。

関連記事:パーキンソン病:原因物質を抑制するたんぱく質を解明

海外新薬の承認期間を1年半に:ドラッグラグ解消へ一歩

厚生労働省は患者の要望が強い新薬などを使いやすくする仕組みを整える。使用の承認に必要な治験(臨床試験)を製薬会社が素早くできるよう、複数の国で同時に効能を検証する「国際共同治験」を推進。
海外で開発された薬などの承認までの期間を現在の約4年から1年半程度に短縮する。患者の選択肢を増やし、国内医薬品の質の向上につなげる。

厚労省は月内に詳細を詰め、医薬品の質の向上に関する5カ年計画をまとめる方針だ。日本は新薬承認に時間がかかり、欧米で一般に使える薬が国内では使えない「ドラッグラグ」と呼ばれる問題が深刻化している。(日本経済新聞)

ドラッグラグとは?
海外で標準的に使用されている医薬品が国内では使用できない(未承認の)状態。 海外先行で治験が行われ日本での新薬発売が海外よりも遅れる、日本の新薬承認の審査に時間がかかることなどが要因とされる。
がんや関節リウマチなどの難治性の疾病患者(または家族など)が、国内未承認の最新の治療薬の使用を望み、高額な薬剤費を支払って個人輸入するケースもある。その改善策のひとつとして、厚生労働省は、2005年に「未承認薬使用問題検討会議」を設置した。

その目的を、1)欧米諸国での承認状況及び学会、患者要望を定期的に把握し、臨床上の必要性と使用の妥当性を科学的に検証し、2)当該未承認薬を確実な治験実施につなげて、その使用機会の提供と安全確保を図ること、として抗がん剤など緊急性や要望の高い薬剤の早期承認を行っている。
また、2006年には、「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」が設置されるなど、国としての対策が模索されている。

関連記事:新薬の承認審査:人員を倍増、迅速化へ

SARS(重症急性呼吸器症候群)の治療向け抗体の開発に成功

国立国際医療センター研究所国立感染症研究所などは、重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)のウイルスを免疫反応で攻撃する抗体を作ることに成功した。まだ開発されていない治療薬につながる可能性がある。
中国医学院と協力して動物実験も進めており、来年度には1000人分の薬を作る計画としている。

研究チームはほかにキリンビール、東京医科歯科大学、久留米大学など。本来、抗体は病原体に感染すると体内で自然にできるが、SARSのようにウイルスの勢いが強いと抑え切れず、重症になる。あらかじめ抗体を大量に作っておいて患者に投与すれば、治療に役立つとみられる。(NIKKEI)

SARS(重症急性呼吸器症候群)とは?
SARS患者と接した医療関係者や同居の家族など、患者のせきを浴びたり、痰や体液等に直接触れる等の濃厚な接触をした場合に感染し、2日〜7日、最大10日間程度の潜伏期間を経て発症します。潜伏期あるいは無症状期における他への感染力はない、あったとしても極めて弱いと考えられています。
また、SARSコロナウイルスは、エタノール(アルコール)や漂白剤等の消毒で死滅します。現在のところ患者が触れた物品を通じてSARSが人へ感染する危険は小さいと考えられています。

SARSが疑われるのは、

  1. 10日以内にSARSの流行地域から帰国するか、又は10日以内にSARS患者の痰や体液に触れる等の濃厚な接触があった方で、
  2. 38℃以上の発熱、
  3. せきまたは息切れ等の呼吸器症状がある方です。

子宮内避妊システム「ミレーナ」:5年間継続使用で妊娠率0.14%

日本シエーリング社(大阪市)は、子宮と卵管の精子通過を妨げる子宮内避妊システム「ミレーナ」を発売した。ミレーナを子宮内に装着し、黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を持続的に放出し、5年間にわたり避妊効果を発揮するという。

ミレーナについて

同社によると、ミレーナは、黄体ホルモンを子宮内に局所放出して子宮内膜に作用し、子宮頸管粘液の粘性を高めて精子の通過を阻止、妊娠を阻害する。
経口避妊薬と同様、ホルモンによる高い避妊効果と、子宮内避妊用具(IUD)の特長である長期避妊効果の双方を併せ持つ。

海外での臨床試験では、装着5年目までの「パール指数」(女性100人が1年間、その避妊法を使用した場合の妊娠率)は0.14と報告されている。

子宮内避妊用具(IUD)との違いは、IUDは医療機器、ミレーナは医薬品。月経過多の女性には推奨できないIUDに対し、ミレーナは月経時の出血量が軽減される。(くまにち)

ミレーナは、レボノルゲストレル放出子宮内避妊システムという新しいタイプの避妊法であり、レボノルゲストレルを子宮内に局所放出することにより、子宮内膜に作用し、かつ子宮頸管粘液の粘性を高めて精子の通過を阻止することにより、妊娠の成立を阻害します。 海外における臨床試験結果での5年目までのパール指数* は、0.14と報告されており、5年間にわたり高い避妊効果を発揮します。

ミレーナは、経口避妊薬と同様、ホルモンによる高い避妊効果と、子宮内避妊用具の特長である長期の避妊という、ふたつの長所を併せ持つ製剤であり、5年までの装着期間が承認されています。
海外では、すでに111カ国で避妊を適応に承認されており、世界中で最も信頼されている避妊法のひとつです。

ミレーナは出産経験があり、これ以上妊娠を希望しない女性、次の出産まで期間をあけたい女性、長期にわたり避妊を望む女性に非常に適した避妊法であり、装着・除去は、産婦人科医によって行われます。ミレーナを除去することにより、装着前の状態になります。

関連記事:低用量経口避妊薬・ピルの使用率=1.8%:副作用を心配

メタボリック症候群と過度のダイエットに警鐘:健康戦略会議

政府の新健康フロンティア戦略賢人会議は、国民の健康づくりの支援策などを定めた「新健康フロンティア戦略」をまとめた。女性の「やせすぎ」や男性のメタボリック症候群に警鐘を鳴らし、子どもの健康管理にも重点を置いた。ただ、これまで政府の戦略に盛り込まれていた数値目標は「根拠が薄い」として見送られた。

メタボリック症候群については、脳卒中や心筋梗塞の患者数が50代から増加していることに着目、とくに中高年男性に焦点を当てる。内臓脂肪量や運動量のチェック、飲食店・社員食堂で栄養表示を普及させることなどを例示。働き盛りのころから食習慣を見直し、適度な運動を促している。

また、女性の健康を社会全体で支える姿勢を鮮明にしているのも特徴だ。特にやせている10代後半の女性のうち4割がダイエットをしていることを踏まえ、過度なダイエットの危険性を啓発することに力を入れる。

「新戦略」の実施期間は16年度までの10年間で、今後は具体的な実施計画の策定を提言。「1歳6カ月児健診の受診率」や「乳がん検診の受診率」などの現状の数値を100として今後の推移をフォローする。(asahi.com)

メタボリック症候群とは?
生活習慣病の代表格に肥満症、高血圧、糖尿病、高脂血症がある。これらの疾患は肥満、特に内臓に脂肪が蓄積した肥満が原因であるとされ、内臓脂肪によりさまざまな病気が引きおこされる状態をメタボリックシンドロームという。

高血圧、高脂血症、糖尿病などひとつひとつの症状は軽くても、複合すると心筋梗塞や脳梗塞のリスクが急激に増大することから注目されている。
診断基準の必須項目としてウエスト径があり、男性85センチ以上、女性90センチ以上がメタボリックシンドローム診断のカギとなる。

関連記事:メタボリック症候群、血圧正常なら動脈硬化のリスク同じ

赤ワイン含有の「レスベラトロール」が眼病予防に効果

赤ワインなどに含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールに、目の血管を拡張させる機能があることを、旭川医科大学などの研究チームが突き止め、大阪市で開催中の日本眼科学会で20日発表した。

成人の失明原因でトップを占める糖尿病網膜症をはじめ、血流障害による病気の予防効果が期待される。

研究チームは、がんの抑制効果が報告されているレスベラトロールに着目。人が赤ワイン3〜4杯を飲んだ場合の血中濃度に相当するレスベラトロール溶液を作り、ブタの網膜血管を5分間浸して血管の直径を測定したところ、通常の状態から約1・6倍にまで拡張した。
同様の効果は、血中のコレステロールを低下させる「スタチン」にもあるが、スタチンが血管内皮に作用するのに対し、レスベラトロールは、血管内皮とその外側にある平滑筋(へいかつきん)の両方に作用し血管を広げていた。

研究チームの長岡泰司・同大講師(眼生理学)は「人間で同様の効果が得られるかどうか確かめ、目の病気を予防する薬の開発につなげたい」と話している。(YOMIURI ONLINE)

糖尿病網膜症とは?
糖尿病網膜症は、糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、我が国では成人の失明原因の第一位となっています。
網膜は眼底にある薄い神経の膜で、ものを見るために重要な役割をしています。網膜には光や色を感じる神経細胞が敷きつめられ、無数の細かい血管が張り巡らされています。

糖尿病網膜症

血糖が高い状態が長く続くと、網膜の細い血管は少しずつ損傷を受け、変形したりつまったりします。
血管がつまると網膜のすみずみまで酸素が行き渡らなくなり、網膜が酸欠状態に陥り、その結果として新しい血管(新生血管)を生やして酸素不足を補おうとします。

新生血管はもろいために容易に出血を起こします。また、出血すると網膜にかさぶたのような膜(増殖組織)が張ってきて、これが原因で網膜剥離を起こすことがあります。糖尿病網膜症は、糖尿病になってから数年から10年以上経過して発症するといわれていますが、かなり進行するまで自覚症状がない場合もあり、まだ見えるから大丈夫という自己判断は危険です。

関連記事:赤ワインの成分で肥満マウスが長生き

喘息治療配合剤「アドエア」の輸入承認へ

グラクソ・スミスクライン(GSK)は、グループの世界の主力製品である喘息治療配合剤「アドエア100ディスカス」「アドエア250ディスカス」「アドエア500ディスカス」の輸入承認を、成人の気管支喘息を適応として取得した。

「アドエア」は、気管支拡張作用を持つ長時間作用性吸入β2刺激薬(サルメテロールキシナホ酸塩)と抗炎症作用を持つ吸入ステロイド薬(フルチカゾンプロピオン酸エステル)をひとつの吸入器具におさめた配合剤で、気管支喘息の病態である慢性的な気道の“炎症”と“狭窄”の両方に1剤で優れた効果を示すとされている。
2つの有効成分を同時に、しかも簡単な吸入によって気道に直接届けることができるため、確実な臨床効果が期待でき、よりシンプルに喘息をコントロールすることが可能となる。

「アドエア」は、海外では1998年に欧州で承認されて以来、「Seretide」や「Advair」の製品名で、喘息およびCOPDの治療薬として既に120カ国以上で使用されており、海外44カ国で約3500人の喘息患者を対象に実施された大規模臨床試験では、本剤による継続的な治療によって75%の患者が「良好な喘息コントロール」を達成したとしている。

国内における喘息管理のガイドラインでは、軽症持続型以上の喘息に、第一選択薬である吸入ステロイド薬に併用する薬剤のひとつとして長時間作用性吸入β2刺激薬が推奨されている。

関連記事:喘息治療配合剤「アドエア」が発売:グラクソ・スミスクライン

抗血栓症薬「アリクストラ」の承認取得:グラクソ・スミスクライン

グラクソ・スミスクラインは、抗血栓症薬「アリクストラ皮下注1.5mg」、「アリクストラ皮下注 2.5mg」(一般名:フォンダパリヌクスナトリウム)について、「静脈血栓塞栓症の発現リスクの高い、下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」を効能・効果として、製造販売承認を厚生労働省より取得した。

「アリクストラ」は、血液凝固過程において中心的な働きをする活性化第X因子(Xa因子)を選択的に阻害する初めての化学合成の薬剤。現在EU主要国および米国を含む65カ国以上で承認されており、発売以来これまでに60万人以上の患者に使用されている。

日本においては、2005年11月に申請し、2006年2月には優先審査品目に指定されていた。また、静脈血栓塞栓症の予防薬については、国内10の医学会・研究会から、2004年に厚生労働省に対し、速やかな審査・承認に関する要望書が提出されていた。

静脈血栓塞栓症とは
静脈血栓塞栓症は、深部静脈血栓症(主に下肢の深部静脈に血栓ができる病態)と肺血栓塞栓症(深部静脈に形成された血栓が肺動脈に飛んで肺動脈が塞がれ、重篤な場合死に至る疾患)といった一連の病態の総称です。
近年、飛行機などによる長時間の移動中に発症したというニュースでも話題となっているエコノミークラス症候群は静脈血栓塞栓症の一病態です。

しかしながら、静脈血栓塞栓症は、実態としては病院において手術に伴って発症するケースが多くを占めます。
特に股関節置換術・膝関節置換術等の下肢の手術後は、深部静脈血栓症の発症率が34〜65%1)と高く、ひとたび急性肺血栓塞栓症を発症すると、死亡率は約30%とされ、死亡例の40%以上が発症1時間以内に死にいたる深刻な疾患2)です。発症してからでは救命が困難なため、その予防の重要性が指摘されています。

母親の喫煙が子供のADHD発症に関係か?

落ち着きがないなどの症状が表れるADHD(注意欠陥・多動性障害)の子どもの場合、母親の喫煙率が同年代の女性の2倍程度高いことが、大阪府の小児科医の調査でわかった。
母親の喫煙とADHD発症との関係を示す研究は、これまで海外ではあるが、日本では初めてという。

ADHDは、生まれつきの脳の機能異常による発達障害とされ、集中力がない、衝動的な行動をするなどが特徴。治療経験の豊富な大阪府寝屋川市の小児科医院の安原昭博院長が、小児患者の母親167人に喫煙歴などをアンケートした。

その結果、喫煙経験は47%にあり、妊娠時にも35%が喫煙していた。特に出産時の年齢が20〜24歳の母親では、喫煙率が88%にのぼった。

一般の出生児を対象にした厚生労働省調査では、母親の喫煙率は17%、うち20〜24歳は35%で、ADHD児の母親は2倍程度高い。
安原院長は「ADHDには遺伝的要因もあるが、母親の喫煙も関係があると考えられる。妊娠が分かってから禁煙したのでは遅い可能性がある」と話す。京都市で21日開かれる子どもの防煙研究会で発表する。(読売新聞)

ADHDとは
Attention-Deficit Hyperactivity Disorder の略で、「注意欠陥/多動性障害」のことを言います。アメリカ精神医学会のDSM-W(精神疾患の診断・統計マニュアル)によれば下記の1〜3を特徴とする症候群です。
なお,世界保健機構(WHO)の作成した診断体系では,多動性障害(Hyperkinitic Disorder)という診断カテゴリーが概ね同義で用いられています。

  1. 不注意…注意の集中が困難、気が散りやすい、必要なものをよくなくす、毎日の活動を忘れてしまう等
  2. 多動性…何となくそわそわ、席を離れてしまう、しゃべりすぎる、高い所に登る等
  3. 順番を待つことが苦手、考えないで行動する、他人にちょっかいを出す等

ADHDは,症状を基礎にした診断なので、原因などについては、脳の機能障害が推定される段階であって、現在のところ詳しく分かっていません。
またこうした行動については、学校場面で日常的に見られるものですが、他の診断項目もあり、診断は専門家によってなされる必要があります。安易な判断は禁物です。

関連記事:女性の喫煙:心筋梗塞になる危険性が8倍に

高脂血症治療薬「ゼチーア錠」を販売承認へ

シェリング・プラウは18日、小腸でのコレステロール吸収を阻害する新しいタイプの高脂血症治療薬「ゼチーア錠」(一般名エゼチミブ)の販売承認を取得した。

生体内のコレステロールは、肝臓で合成されるか、小腸で吸収されるかに大別される。このうち小腸で吸収されるコレステロールは、肝臓から小腸に排せつされる胆汁性コレステロールと、食事に含まれる食事性コレステロールがある。

ゼチーアは、小腸での胆汁性と食事性のコレステロール吸収を選択的に阻害し、血中のコレステロールを低下させるという点において、既存の高脂血症治療剤(スタチン系、フィブラート系など)とは全く異なる新しい作用メカニズムを有している。

ゼチーアは、効率的にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させ、ファーストラインとして単独投与、ならびに各種スタチンで十分な効果が得られない患者に対しては、スタチンとの併用投与することにより、LDLコレステロールをさらに低下させる効果が期待されている。

総コレステロール値
日本人の総コレステロール値は、食生活の欧米化などにより上昇傾向にあります。高コレステロール血症は自覚症状がないのでサイレントキラーとも言われ、放置すると動脈硬化を招き、知らない間に脳卒中や心臓病など、脳・心血管系疾患の発症につながります。
潜在患者も含めた日本の高コレステロール血症患者数は約3000万人とも推定され、そのうち約8割の患者さんが未治療と考えられています。

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抗がん剤「アバスチン」(ベバシズマブ)を販売承認へ

厚生労働省は、血管新生を妨げる抗がん剤「アバスチン」(一般名ベバシズマブ)を、切除不能な進行性・再発性の結腸・直腸がんを適応症として販売承認した。
結腸・直腸がんは、最も患者数の多いがんの一つであり、日本では、2005年の年間新規結腸・直腸がん罹患患者数として115000人が推計されている。

2005年の厚労省の第5回未承認薬使用問題検討会議の要請に基づき、製造販売する中外製薬が国内の第T相臨床試験と海外の第U相と第V相の臨床試験のデータを添えて06年4月に製造販売の承認を申請していた。

承認条件として、「国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること」が付与されている。

アバスチンは、がん組織に栄養と酸素を供給する血管網の新生を阻害する。血管新生の際の重要な因子であるVEGF(血管内皮増殖因子)と呼ばれる生体内のタンパク質を標的にして、がんの増殖と全身への転移に不可欠な血液の供給を遮断する。

販売開始後、中外製薬は18カ月間の予定で患者2500人の集積を目標に全例調査を実施するが、国内における安全性が確認されるまでは継続実施する予定としている。

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ナルコレプシー(居眠り病)治療薬「モディオダール」が発売

アルフレッサファーマ社と田辺製薬は、ナルコレプシー(居眠り病)治療薬「モディオダール錠」(一般名モダフィニル)を発売した。

ナルコレプシーは、昼間に耐えられない眠気に襲われて時間や場所に関係なく、突然眠ってしまう。このため予期しない事故に遭ったり、生活の質を著しく低下させたりする。

「モディオダール」は既に欧米など世界30カ国以上で承認され、ナルコレプシー治療のファーストラインになっている。アルフレッサと田辺は、睡眠時無呼吸症候群の患者に残存する眠気の治療薬にも適応拡大を目指している。

ナルコレプシーとは?
過眠症の一つであり、日中に耐えがたい睡魔に襲われ、時間や場所を問わず突然入眠してしまうため、予期せぬ事故に遭遇したり生活に支障をきたすことがある疾患。(確か、元阪神の亀山選手も一時期、この病気だったはず。)
専門医などから正しく診断され実際に治療を受けている患者は約2000人程度と推定されている。
専門医が少ないうえ、単なる睡眠不足が疑われる症状との見極めなど、一般に診断をつけるのは難しいといわれている。

診断とその検査
「睡眠ポリグラフ検査」と「睡眠潜時反復テスト」を実施する。前者では、夜間に頭や耳に電極を張り付け、脳波などを記録。夜の睡眠の特徴を検査し、ナルコレプシーと合併することがある睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害の有無を調べる。
後者は昼間に同様の検査を、数時間おきに20〜30分ずつ繰り返して行い、眠気の程度を測る。

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後発医薬品の公的医療保険適用を年2回へ

厚生労働省は18日、先発医薬品と主成分が同じでより安価な後発医薬品の公的医療保険適用の決定を、本年度から年2回に増やすことを中央社会保険医療協議会に示し、了承された。
これまでは7月の年1回だけだったが、今年は11月にも実施する。新しい後発品を早く医療現場に出すことで使用促進を図り、医療費削減につなげる狙い。

この日の中医協では、保険料を支払う側の委員が、保険適用の決定が年4回ある先発品と比べて、年2回でも少ないとの指摘があり、来年の診療報酬改定でさらに年4回に増やす方向で検討することも確認された。

日本の後発品の使用は約17%(数量ベース)にとどまっており、半分以上を占める米国などより低い。このため、昨年4月の診療報酬改定で医師が交付する処方せんに「後発品への変更可」との欄が新設された。
しかし、安定供給への不安などを理由に導入に慎重な医師が多い上、医師が後発品に変更可と指示した場合でも実際に薬局で変更されたのは5・7%にとどまるなど、普及は進んでいない。(共同)

後発医薬品
医療用医薬品には同じ成分、同じ効き目でも値段の高い薬(先発医薬品)と安い薬(後発医薬品)があります。後発品は、欧米では一般名(generic name成分名のこと)で処方されることが多いため、ジェネリック医薬品とも呼ばれています。

どのような画期的な発明の医薬品でも、その発売からおよそ6年後、または特定年月で特許が切れると、その有効成分や製法等は共有の財産になり、医薬品製造業者は自由に医薬品を製造できるようになるため、同じ成分の医薬品より安く国民に提供できるようになります。

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