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世界初となる吸入型インスリン「エクスベラ(EXUBERA)」を使用する糖尿病患者を対象にした長期臨床試験の3年目となる中間解析結果が、アメリカ糖尿病学会(ADA)の学術会議で発表された。 エクスベラを2年間使った糖尿病患者は肺機能が少し低下したものの、使用中断後1カ月で回復、安全性が確認された。 長期臨床試験は、1型と2型の糖尿病患者を対象に、それぞれ実施されている。 このうちU型糖尿病患者を対象にした試験は、潜在的な肺疾患がない患者でエクスベラの中止時と再開時の肺の安全性評価が、主要評価項目になった。 |
インスリン注射療法を既に試みていた成人のU型糖尿病患者627人を、エクスベラ投与群かインスリン注射療法継続群に無作為に割り付けた。
2年間の試験の後、エクスベラ投与を6カ月間中止し、その間はインスリン注射に切り替えた。その後、最初に無作為に割り付けされた療法を再び6カ月間続けた。
その結果、息を深く吸い込んだ後、思い切り吐き出した時の最初の1秒間で吐き出す息の量(1秒量)と、息を深く吸い込み10秒間止めて、息を吐き出した肺一酸化炭素(CO)拡散能を尺度に測った肺機能の平均低下は、対照群と比較して小さかった。肺機能はエクスベラ吸入後の早期に低下し進行せずに、使用中止後1カ月で回復した。
血糖値の長期管理の指標になるHgA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)は、エクスベラ群も対照群も、試験開始時は平均7.7%。3年後は双方とも約7.4%に低下、改善された。ただイクスベラ群の方が、試験期間中を通して対照群よりも空腹時血糖値が低かった。
エクスベラ(EXUBERA)について
エクスベラは、ファイザー社とネクター・セラピューティクス社が共同で開発した注射針を必要としない超速効型インスリンです。食前に携帯型の専用吸入器を使って口から吸い込みます。
この吸入器は、霧状のインスリン粉末を維持することができる噴霧器であり、インスリンを急速に血流に送り込んで体内の血糖値を調整します。
アメリカにおいては、エクスベラは1型か2型の糖尿病成人患者が血糖値をコントロールするための処方薬として承認されています。1型糖尿病の患者はエクスベラに加えて注射によるインスリン投与を必要とすることになります。
2型糖尿病の患者の中にもエクスベラに加えて注射によるインスリン投与を必要とする場合があります。
EU諸国においては、エクスベラは、インスリン療法を必要としており経口抗糖尿病薬では血糖値が適切にコントロールできない2型糖尿病の成人患者の治療用に承認されています。
ただし、症状が不安定な喘息患者や慢性閉塞肺疾患(COPD)患者、喫煙者、禁煙後半年以内の患者なども使用禁止となっています。なお日本国内では、第3相試験を実施中です。