ES細胞並の人工幹細胞能力(iPS細胞):京大再生医科学研究所

京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授らは、さまざまな臓器になり得る胚性幹細胞(ES細胞)と同程度の万能性を持つ幹細胞を作り出すことに、マウスを使って成功した。
これまでの人工万能幹細胞は分化能力が低かった。受精卵を使わずに万能細胞を手に入れる技術の実現に向け、また一歩前進した。7日の英科学誌ネイチャー電子版に発表する。

山中教授らは昨年、大人のマウスのしっぽの皮膚細胞に、万能性に関係していると思われる四つの遺伝子を組み込んで、万能細胞を作る方法を世界で初めて開発した。この細胞を「人工万能幹細胞(iPS細胞)」と名付けたが、ES細胞に比べ臓器に分化する能力が十分でなく不安定だと指摘されていた。

今回は、胎児の皮膚の下にある細胞を利用。細胞を取り出す時期と、できあがった人工細胞の中から質の良い細胞を選び出す方法を改良した。

この結果、選び出した細胞は、遺伝子の働きはES細胞とほとんど同じで、全身のさまざまな細胞に分化することが確認できた。また、生殖細胞に分化する能力があることも確認、全身がこの万能細胞からできたマウスも誕生した。

ただ、生まれたマウスを1年近く観察したところ、2割で遺伝子組み換えの際に使うウイルスや遺伝子が原因と思われる甲状腺腫瘍ができていた。山中教授は「ヒトへの応用には、まだ解決すべき課題は多いが、将来的には脊髄損傷や心不全の治療につながる可能性がある」としている。

米マサチューセッツ工科大も同じ方法で万能細胞の作製に成功、同日付のネイチャー電子版に発表するほか、別の科学誌に米ハーバード大が近く発表する予定。万能細胞獲得をめぐり、国際競争が激化している。(asahi.com)

iPS細胞について
iPS細胞はES細胞に類似した形態、増殖能、および遺伝子発現を示します。
またマウス皮下に移植すると様々な分化細胞や組織から形成される奇形腫が形成されること、および、マウス初期胚に移植するとその後の胎児発生に寄与することから、iPS細胞は万能性を有していることがわかっています。

脊髄損傷や心不全などの患者体細胞から、iPS 細胞を誘導し、さらに神経細胞や心筋細胞を分化させることにより、倫理的問題や拒絶反応のない細胞移植療法の実現が期待されています。

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臓器提供意思のネット登録が伸び悩み:日本臓器移植ネットワーク

日本臓器移植ネットワークが今年3月に始めた臓器提供意思のインターネット登録が、伸び悩んでいる。
今月4日までの3か月間で6753件。移植ネットが目標に掲げた初年度10万件を大幅に割り込むのは必至で、関係者は頭を悩ませている。

ネット登録は、臓器提供意思表示カードの所持率が8%(昨年の内閣府調査)にとどまる現状を打破するために始まった制度。パソコンや携帯電話で、〈1〉脳死または心停止後に臓器を提供するか〈2〉提供したい臓器の種類〈3〉氏名、生年月日、性別――などを専用ホームページに入力すると、意思表示カードが自宅に届く仕組みで、インターネット利用率が高い若者世代を中心に普及を狙っていた。

移植ネットによると、滑り出しの3月5日は約2000件の登録があったが、その後は1日当たり10件に満たないことも多かった。パソコン普及率やカード所持率から試算した目標値を大幅に下回りそうだという。移植ネットでは、スタート時の報道発表以外に広報活動をしていなかったことが原因と分析している。(YOMIURI ONLINE)

メモ
登録制度としては『骨髄バンクドナー登録』の方が、雑誌媒体やCM等での露出が大きく知名度も高いですね。サッカー元日本代表の井原正巳氏が出演したCM『メンバーが足りません』は飲み会の誘い文句の定番として今でも愛用させていただいております!
しかし、骨髄バンクドナー登録は登録者数が増えても、実際に提供する段階になると、入院と全身麻酔による「骨髄採取」が必要なため、二の足を踏む人が多いようです。

一方、今回の臓器提供の意思登録は自分が亡くなった後の事案だから(参加への)ハードルは低いだろうと思ったのですが、どうやら骨髄バンクとは逆に宣伝不足のようです。言われてみると、広告とかロゴマークとか著名人による対談形式のPRなど全く記憶にないですね。
記事内の青色のリンクをクリックすると日本臓器移植ネットワークのサイトへ行けますので、是非一度。

こんにゃく入りゼリーで相次ぐ窒息事故

こんにゃく入りゼリーをのどに詰まらせて窒息死する事故がなくならない。
国民生活センターは1995年から7回、注意喚起をしてきたが、今年に入ってからも7歳の男児2人が亡くなった。
消費者団体などからは「行政による具体的な対策が必要」との声も上がっている。

主婦連合会(東京)は、政府に対し、こんにゃく入りゼリーの販売停止などを要望した。
同会事務局長の佐野真理子さんは「欧州連合(EU)では、ゼリー菓子にこんにゃくを使用することを禁じているが、日本には規制はなく、いわば野放しの状態」と指摘する。

今回の事故を受け、農水省は、業界団体に、事故防止に努めるよう求めた文書を送ったが、「販売停止などにする予定はない」という。厚労省の担当者も「有害物質が入っているのではなく、食べ方の問題で事故が起きている。法に違反していなければ規制はできない」と話す。

ただ、メーカー側にも戸惑いが広がっている。死亡事故が相次いだ95年以降、メーカーによっては、注意表示を目立つようにしたり、大きさや硬さを変えるなどの対策をとってきたが、その後も事故が続いているからだ。業界団体幹部は「事故情報が詳しく公表されないので、どう対応をすればいいのか分からないことが多い」と打ち明ける。

こんにゃく入りゼリーなどをのどに詰まらせた場合、どうすればいいのか。東京救急協会(東京)指導課長の茂呂浩光さんは「大声で救急車を呼んでもらいながら、応急措置を行う。誰もいない場合は、まず応急措置をし、取れない場合はすぐに119番をしてほしい」と話す。

1歳未満の乳児の場合は、うつぶせにし、指で下あごを持ち上げる。上半身が低くなる姿勢にし、手のつけ根で肩甲骨の間を早くたたく。
それでも、取れないときは、あおむけにして乳頭を結ぶ線より指1本下を、2本の指で押す。

1歳以上は、背中をたたく方法と共に、腹部を突き上げる方法を行う。
後ろから上半身を抱くようにし、片方の手で握りこぶしを作り親指の方をへそとみぞおちの間に置く。
他方の手を添え、斜め上方に瞬時に引き上げる。
掃除機を使う人もいるが、同協会では勧めていない。ノズルなどで口の中をけがすることもあるからだ。(YOMIURI ONLINE)

メモ
こんにゃく入りゼリーがクローズアップされていますが、3〜7歳児の喉に詰まった事例はプチトマト、ピーナッツ、ぜんざいの餅などの方が多いです。共通するのは、一口サイズでそのまま食べられるものですね。
ピーナッツなどは小指の爪くらいの太さしかありませんが、小さいお子さんの場合、この大きさでもちゃんと噛まないと喉に詰まる可能性があります。

この年頃だと、じっとして食べずに周囲の動きや音に反応して常に顔を動かしているので、食べ物が気管支に入らないようにしている弁が上手く閉じなかったりするケースがあります。
また、喉に食べ物が詰まった場合に、それを吐き出そうとする力が弱いために今回のような事件が起こりやすいです。
小さく刻んで食卓に出すのがよいのですが、あんまり小さく刻むと噛む力を必要としないので、今度は顎の発達力に影響が出てきますので注意が必要です。

ネクサバールで肝がん生存期間が44%延長:バイエル薬品

バイエル薬品オニキス・ファーマシューティカルは、ネクサバール(一般名:ソラフェニブ)錠が、肝細胞がんでの生存期間を、プラセボ(偽薬)群に対して44%延長したという臨床試験結果を、米国臨床腫瘍学会(ASCO)にて発表した。

ネクサバール錠投与群とプラセボ投与群の間で、全生存期間を比較することを主目的に、北米、南米、欧州、オーストラリア、ニュージーランドにおいて、全身投与薬による治療歴のない肝癌の患者602人を対象とした臨床試験を行なった。

プラセボ群の患者では、全生存期間の中央値が7.9ヶ月であったのに対し、ネクサバールによる治療を受けた患者では10.7ヶ月だった。

肝細胞癌の患者は何十万人いるとされる中、その生存期間を有意に延長することが証明された治療法は、今まで存在していなかった。今回発表された治験結果は、ネクサバールが肝細胞癌に対する標準治療における第一選択薬に位置づけられるようになることを、明確に示しているとしている。

重篤な有害事象の発現について、ネクサバール投与群とプラセボ投与群の間で大きな差はなかった。ネクサバール投与群において、最も多く見られた有害事象は、下痢と手足皮膚反応だった。
これらの結果を踏まえ、両社は、米国食品医薬品庁(FDA)および欧州医薬品庁に対して、ネクサバールの肝細胞癌への適応拡大を申請準備中。

ネクサバールとは?
ネクサバールは腫瘍細胞と腫瘍血管の両方を標的とする経口マルチキナーゼ阻害剤です。
前臨床試験の段階で、腫瘍組織が成長するために重要な、がん細胞の増殖と血管新生の両方に関係する二つのクラスのキナーゼ(RAFキナーゼ、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、PDGFR-β、KIT、FLT-3、RETなど)をネクサバールが阻害していることがわかっています。

現時点で、ネクサバールは、米国、欧州諸国を初めとする 50ヶ国近くで、腎細胞癌の治療目的に承認されており、様々ながん治療(腎細胞癌のアジュバント治療、進行性肝細胞癌、進行性悪性黒色腫、非小細胞肺癌、乳癌などの治療)を目的とした、ネクサバールの単体使用または併用療法が引き続き研究されています。

訪問介護最大手「コムスン」:事業所の新規指定、更新を停止へ

厚生労働省は6日、グッドウィル・グループ(GWG)の訪問介護大手「コムスン」(東京都港区)の全国の事業所の新規指定と更新を、2011年12月まで行わないよう都道府県に通知した。

2006年4月施行の改正介護保険法により、不正な行為があった事業者による指定・更新を5年にわたり認めないとする規定を適用した。コムスンは、全国8か所の事業所で、雇用していない訪問介護員を勤務しているなどと偽り、介護事業所指定を不正に取得したことが問題とされた。この規定を全国規模で適用するのは初めて。

同省によると、5月末現在、同社の介護事業所は2081事業所(介護予防サービス事業所除く)あるが、同法では不正がなかった事業所も含めて更新が5年間禁じられるため、来年度には1424事業所に減少、最終的には、2011年度に426事業所にまで減る。
2081事業所には、訪問介護だけでなく、デイサービスやグループホームなどの事業所も含まれる。サービス利用者は、更新時期まではサービスを受けることができるが、事業所の更新が認められないと、事業所を変えなければならなくなる。

同省によると、不正があったのは、東京都内の4か所と青森、群馬、岡山、兵庫県の各事業所。都内では別の事業所のヘルパーを常勤扱いするなどして、介護保険法の基準を満たしたように装って申請していた。

このうち、不正があった兵庫県の事業所の指定申請が昨年12月だったため、この時点から起算して5年間、更新や新規指定を行わないこととした。改正法ではまた、事業所の指定更新制を新たに設け、事業所は、不正がなくても6年ごとに指定を更新しなければならないとしている。

厚生労働省介護保険指導室は、「来年4月の最初の更新時期まで時間があるので、コムスンはその間に、利用者に影響が及ばないよう、適切に対応してほしい」と話している。

コムスンは、1988年設立。97年にGWGが資本参加し、現在はGWGの100%子会社。訪問介護事業者最大手で、利用者は約6万5000人。訪問介護のほか、居宅介護支援などの事業所を全国に展開している。(asahi.com)

メモ
寝たきりの祖母(昨年亡くなりました)が、介護サービスを受けていましたが、コムスンは駄目でしたねぇ。ヘルパーさんの給料は、1)身体的なケアと2)買い物、掃除などの代行では大きな差があります。そこで、掃除などを頼んでも、実際の請求書には身体的なケアの方にチェックが入っていたり(これはコムスン以外のサービスでも日常茶飯事です)、引き継ぎなしに突然ヘルパーさんが辞めて、サービス当日に誰も来なかったり、マッサージしながら眠ってしまったり(笑)とか凄いですよ。
一番酷かったのは、掃除機がコードに絡まってひっくり返っているのに、そのまま引きずって作業を続けた人とシーツの交換ができなかった人。

とにかく人が足りないんですよね。だからこちらが苦情を言っても、「だったら業者をかえてもらってかまわない」と言われましたし。コムスンの場合は営業所に配属されて1年すれば無条件でマネージャーですから、その下で働く人たちに教育が行き届いていないのも無理ないなと思いました。

先端巨大症治療薬「ソマバート皮下注用」が発売:ファイザー

ファイザーは、先端巨大症治療薬、成長ホルモン受容体拮抗剤「ソマバート皮下注用」(一般名:ペグビソマント遺伝子組み換え)を発売した。
ソマバートは、成長ホルモン(GH)の過剰分泌を抑制することに目標をおいたこれまでの治療の主眼を根本的に変え、過剰に分泌された成長ホルモンの作用を抑制し、血中IGF-I値の正常化を目指す先端巨大症治療薬。
海外においては、SOMAVERTの製品名で先端巨大症治療薬として2003年に米国で承認を受けて以来、現在欧米24ヵ国において販売・使用されている。

ソマバート(SOMAVERT)

ソマバートの作用機序は、GHの作用部位であるGH受容体に直接作用し、過剰に分泌されているGHの作用に拮抗することで、IGF-I分泌のシグナル伝達を抑制する。
そのため、先端巨大症の診断や治療効果の指標として簡便に測定のできる血中IGF-I濃度を検査することで、ソマバートによる治療の効果が判定できるとしている。

長期投与臨床試験の結果、80%を越える先端巨大症患者の血中IGF-I濃度を正常範囲まで低減させるとともに、患者の多くに見られた関節の肥大も小さくなるなど、臨床症状の改善も認められた。

先端巨大症とは?
先端巨大症は希少疾患で、日本での有病患者数は約6,500人、治療を継続されている患者数は1,100人と推定されています。発症は30〜40歳代に多く、男女差はありません。進行が極めて遅いため、発症から診断・治療開始までに10年以上かかることがあります。

先端巨大症は、成長ホルモンの過剰分泌により、IGF-Iをはじめとするホルモン分泌や糖、脂質、タンパク質代謝に異常をきたす疾患で、主な症状としては顔貌の変化や発汗、関節痛、頭痛、視野障害などがあげられます。
糖尿病、高血圧、心血管疾患、睡眠中無呼吸などを合併することも多く、これらの疾患での死亡率は一般集団に比べ2〜3倍高くなっています。

ルテインで赤血球の老化防止:認知症の予防効果に期待

緑藻類のクロレラなどに多く含まれる成分「ルテイン」に、赤血球の老化を防ぐ効果があることが、東北大大学院農学研究科の宮沢陽夫教授(食品学)らの研究で明らかになった。

老化した赤血球は、アルツハイマー病患者の血中に多く存在し、脳組織に慢性的な酸素不足をもたらして症状を悪化させると考えられていることから、認知症の予防や進行防止への効果が期待される。

ルテインは天然化合物カロテノイドの一種。実験で、健康な男女計6人が、ルテインが約10ミリ・グラム含まれた錠剤を1日1粒ずつ、4週間飲んだところ、赤血球に含まれるルテイン量は平均2・8倍に増加した。逆に、赤血球の老化を示す過酸化リン脂質の量は3分の1以下に減っていた。

宮沢教授らはこれまでに、アルツハイマー病患者の赤血球には、健康な人の5〜6倍の過酸化リン脂質が蓄積されていることを研究で明らかにしている。

過酸化リン脂質が蓄積された状態では、赤血球から酸素が離れにくくなり、脳細胞に酸素を供給する能力が低下する。その結果、認知症の進行を早めている可能性もあるという。

宮沢教授は「認知症の発症や進行を予防できる可能性があり、今年中に認知症患者にルテインを投与する臨床試験を始めたい」と話している。(YOMIURI ONLINE)

アルツハイマー病とは?
認知症の一種で、次第に物忘れが激しくなり、時間や場所が分からなくなったり、食事や排泄などの障害に進行していく。脳内で異常にできたアミロイドβ タンパクが互いに長くつながり、糸状に伸びることで神経毒性が発生、脳細胞が死んで認知症を引き起こすという「アミロイド仮説」が有力視されている。

コンタクトレンズ保存液で角膜炎に:約60万本を自主回収へ

コンタクトレンズ輸入販売業「エイエムオー・ジャパン」(東京都)は1日、米国製の消毒・保存液「コンプリートアミノモイスト」約60万本を自主回収すると発表した。米疾病対策センター(CDC)が、重い角膜障害を引き起こす「アカントアメーバ角膜炎」の患者に同製品の使用者が多いと公表したため。国内の被害報告はないという。

コンプリートアミノモイスト

同社によると、この消毒・保存液は06年5月から14種類、約270万本が出荷された。まだ在庫などとして残ると推測される約60万本が回収対象になる。

CDCは5月25日、05年以降にこの角膜炎を発症した患者46人を調べたところ21人が同製品を使っていたと発表。因果関係は調査中だが、米の親会社は同日、自主回収を始めた。この角膜炎は不潔なコンタクトレンズなどがもとで発症する場合が多く、まれに失明することもあるという。(asahi.com)

アカントアメーバ角膜炎とは?
アカントアメーバは、水、土壌、下水システム、冷却塔、冷暖房/換気システムなどに生息するものです。アカントアメーバ角膜炎は、非常に稀ですが、重篤な角膜障害です。
アカントアメーバ角膜炎は、通常、例えば一般の水道水で洗ったり自家製の液で洗浄をしたりするなどコンタクトレンズの保管方法、取り扱い、また消毒を正しくおこなっていない方、レンズを装用中に水泳したり、温水の浴槽、シャワーを使用したり、汚染された水に接触した方、角膜に小さな傷があったりする方、角膜外傷を以前かかられた方、といった人に起こることがあります。
米疾病対策センター(CDC)によれば、米国でのアカントアメーバ角膜炎の発症率は、100万人のコンタクトレンズユーザーに対して、約1〜2例と推測されています。

エチゼンクラゲから、抗菌や保湿作用の新物質

日本海で大発生が問題になっているエチゼンクラゲから、抗菌や保湿作用を持つとみられる新物質を、理化学研究所などのグループが発見した。大量に抽出でき、医薬品や化粧品などの材料として実用化を目指す。
実現すれば、漁業被害や処理に苦労する沿岸各地にとっても朗報となりそう。成果は1日付の米化学会・薬学会の学術雑誌(電子版)に掲載される。

新物質は、人間の唾液(だえき)や鼻水、胃液などの主成分「ムチン」とよく似た構造を持つ化合物。ムチンには、ウイルスや細菌に吸着して感染力を弱め、体外に排出する作用がある。
牛の唾液などから抽出するムチンは既に、食品添加物や胃腸薬に使われている。グループは新物質にも同様の働きがあるとみており、「クニウムチン」と名付けた。

グループによると、エチゼンクラゲを刻んで遠心分離器にかけるだけで取り出すことができ、約10匹(3トン)から1キロの粉末のムチンが採れる。既に、食品会社と協力し、埼玉県内の工場で1日1トン程度を処理する試験を始めている。
理研の丑田公規ユニットリーダーは「処理にも役立つ一石二鳥の効果をもたらす可能性があり、実用化を急ぎたい」と話している。

エチゼンクラゲは毎年秋ごろ、日本海沿岸で数万〜数十万トンも発生。漁業用の網を破ったり魚を傷つけたりするほか、処理費用もかかって漁業者を悩ませている。(毎日新聞)

ムチンとは?
ムチンは納豆、オクラ、モロヘイヤ、つるむらさき、里芋、山芋、なめこなどに含まれるヌルヌル成分で、多糖類のガラクタンやマンナンなどが、タンパク質と結合したものです。

ムチンのはたらき
ムチンには、胃の粘膜をうるおし、保護する働きがあります。
肝臓や腎臓の機能を高める作用もあり、細胞を活性化し、老化の防止に役立ちます。
消化を促す作用もあり、便秘を改善します。また、タンパク質を無駄なく活用させる働きは、スタミナの増強に効果があります。

救急搬送トリアージの試験運用がスタート:東京消防庁

不必要な救急出動を減らし、救急車が本当に必要な重症患者らの搬送時間を短縮するため、東京消防庁は1日から、緊急性を判断して救急車を出動させるかどうか決める「救急搬送トリアージ」を全国に先駆けてスタートさせる。
電話で症状を相談できるよう、医師らを24時間配置する救急相談センターの開設が柱になる。救急出動は全国的に増加の一途をたどっており、同庁の試験的な運用が打開策となるか、注目を集めている。

東京消防庁管内の救急出動件数は、平成12年は57万5690件だったが、17年には69万9971件と過去最高を記録。これに伴い、通報から救急車が現場に到着するまでの時間も17年は平均6分半と、5年前に比べて1分も遅くなった。

一般的に、心肺停止から5分以上が経過すると生存率は20%まで低下するとされ、「現場到着まで6分半もかかるとなると、生存の可能性は極めて低くなる」(同庁)。

18年の救急出動を分析した結果、約6割は軽症と判明。出動を要請した理由の調査では、「交通手段がなかった」「救急車で病院に行った方が優先的に診てくれると思った」という回答があり、不要な出動をなくすため、緊急性や症状を見極める相談センターを設置、トリアージを試行することを決めた。

相談センターは、119番通報を補完する形で運用。相談者が携帯電話や加入電話などから「#7119」とダイヤルすると、センターの医師や看護師らにつながる。医療機関の案内や、応急手当てのアドバイスなどが受けられる。緊急性が高いと判断されれば、119番を受けつける総合司令室に転送され、すぐに救急車が出動する。

119番通報の場合は、これまで通り救急車は出動するが、外傷がない▽全身症状ではない▽意識は鮮明−といったチェック項目に照らして、緊急性が認められなければ、自力で通院するよう促す。(産経新聞)

トリアージとは
災害時の救急救命の現場では、限られた医療スタッフや医薬品等の医療機能を最大限に活用して、可能なかぎり多数の傷病者の治療にあたることが必要です。
トリアージ(triage)とは、医療機能が制約される中で、一人でも多くの傷病者に対して最善の治療を行うため、その緊急度や重傷度によって、治療や後方搬送の優先順位を決めることです。

「子供が熱を出した」の通報で駆け付けたが、熱を出したのはペットの犬だったり、「寒気がする」との通報だったが、ストーブの付け方が分からないだけだったとか、一発芸人なみのネタで通報してくる人がたくさんいるそうですから仕方ないですね。

先天性免疫不全症の男児に造血幹細胞移植

重症の「先天性免疫不全症」だった青森県在住の男児(4)が、弘前大付属病院小児科で造血幹細胞移植を受け、快復した。
免疫細胞の異常で生まれつき免疫力が低く、感染症を繰り返して幼児期に死亡する可能性が高い病気。症例が極めて少ないこともあり、移植の成功例は世界初という。

男児のような免疫不全症が細胞内物質の「NEMO」の異常で引き起こされることは01年に解明されたばかり。日本国内で確認されている患者は10人に満たないという。
弘前大医学部小児科学教室の伊藤悦朗教授は「過去にはこの病気であることがわからず、助からなかったケースもあっただろう。こういう病気があることと、移植で治ることが広く知られれば」と話している。

男児は生後2カ月で敗血症を起こして弘前大付属病院に入院。重症の免疫不全症と診断された。
2歳半ごろ、胃や腸の炎症で食事ができなくなるほど悪化。同病院の医師グループは血液を造るもとになる「造血幹細胞」を移植し、正常な免疫細胞をつくりだす効果を期待する以外、助かる方法はないと判断した。
昨年1月に移植した後、男児は4カ月ほどで退院。現在は外出もできる。同病院は「造血幹細胞の定着も確認でき、経過も順調だ」としている。

造血幹細胞は大人の骨髄中にあり、赤ん坊のへその緒や母体の胎盤から採った「臍帯血」にも多く含まれる。男児への移植では、臍帯血を点滴で静脈から注入。骨髄に造血幹細胞を定着させる方法をとった。
一連の経過は英国の骨髄移植専門雑誌「ボーン・マロウ・トランスプランテーション」(電子版)に発表された。(asahi.com)

先天性免疫不全症とは?
先天性免疫不全症とは、体内に侵入した病原体を排除する機構の欠損を主病態とする先天性あるいは遺伝性の疾患群です。障害される免疫担当細胞(たとえば、好中球、T細胞、B細胞)などの種類や部位により多数の疾患に分類されます。

症状
生後まもなくより反復する細菌、ウイルスによる気道感染、皮膚・粘膜のカンジダ症、肺炎、膿胸、敗血症、間質性肺炎などの易感染性を特徴とし、生後5カ月ころから難治性下痢症による体重増加不良が顕著になります。