友人や兄弟が肥満だと本人も肥満の傾向:ハーバード大研究班

友人や兄弟姉妹が肥満になると、本人も肥満になりやすいという研究結果を米ハーバード大の研究チームが米医学誌に発表した。研究チームは「肥満が社会的な結びつきの中で広がることを示している」とみている。

つま先立ちしても体重は減りません(笑)

チームは、ボストン近郊に住む1万2000人を32年間追跡し、体格指数(BMI)が30以上の「肥満者」の人間関係や、家族・知り合いらのBMIを調べた。

その結果、肥満の友人がいる人は、肥満の友人がいない人に比べて57%も肥満になりやすいことがわかった。また兄弟姉妹が肥満だと40%、配偶者が肥満だと37%、肥満になりやすかった。

食生活や生活習慣が似ると考えられる兄弟姉妹や配偶者の影響が、友人の影響より小さいことや、影響を与える人が必ずしも近くに住んでいなかったことなどから、チームは、親しい人が太っていることで肥満への抵抗感が薄れ、今回のような傾向が出たとみている。(asahi.com)

BMI(体格指数)について
BMIという指数を計算すると、自分が太っているか、太っているとすれば肥満度はどれくらいなのかを知ることができます。BMIは次のような計算式で求めることができます。

BMI=体重(kg)÷身長(m)の2乗

その結果18.5以上25未満であれば普通体重の範囲となり、25以上なら肥満と判定します。
BMIを割り出して、カリニ肥満の範囲に入る結果が出たとしても、本当に肥満といえるのか、危険な太り方なのかどうかは、体重に占める脂肪の割合や、脂肪のつき方によって違ってきます。

肥満は、体に脂肪がたまりすぎた状態のことですから、筋肉量の多く、いわゆる固太りは、肥満とはいえません。BMIが25以上の場合は、医師の診察を受け、肥満とかかわりのある病気の検査をしてもらうようにしましょう。

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がん専門多職種レジデント(研修)制度を始動:静岡がんセンター

質の高いがん治療を実現するため、静岡県立静岡がんセンター(山口建総長)は2008年度から、作業療法士や心理療法士など医師以外の11職種について、がん専門家の養成を始める。
がん治療に詳しい薬剤師の養成は国立がんセンターが06年度から始めたが、11職種に及ぶ専門家の養成は全国で初めて。

がん専門家の養成へ

高度多様化するがん治療では、患者のリハビリを指導したり、精神面の支援をしたりする専門家が加わったチーム医療が不可欠とされており、静岡がんセンターの取り組みは注目を集めそうだ。

同センターが始めるのは「がん専門多職種レジデント(研修)制度」。
作業療法士や心理療法士のほかに、薬剤師や診療放射線技師、理学療法士、言語聴覚士など11職種について、8月中旬から公募し、約20人を採用する。採用後は原則2年間、同センターでがんのチーム医療の技術や知識を磨くとともに、それぞれの専門性を深める。

特徴的なのは、がん患者や家族の精神的な支援を行う専門家の養成に力を入れている点で、カウンセリングなどで患者の悩みをやわらげる心理療法士や退院後の生活の相談にのる医療社会福祉士などのがん専門家を育てる。さらに、国内にまだ20人弱しかいない「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」も養成したい考えだ。(YOMIURI ONLINE)

チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)について
チャイルド・ライフ・スペシャリストは、アメリカで生まれた医療の専門職です。
子どもの発達や心理についての専門家であり、医療の一環としての「遊び」の援助や、治療を受ける子どもの恐怖心を取り除くなどの心理的なサポートを行います。また、親の相談相手として、家族の不安や悩みを和らげる役目も果たしています。

日本では、医師や看護婦のように公的な資格としては認められていませんが、「藤井あけみ」さんという方が、アメリカの大学院教育研究科で学び「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」の資格を取得し、現在、名古屋第一赤十字病院で活躍しています。

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慢性腎臓病(CKD)の病名を知っている医師は6割:ネット調査

「人工透析予備群」と呼ばれ、国内に400万人以上の患者がいるとみられる「慢性腎臓病」の名前を知っている医師が6割にとどまることが、日本慢性腎臓病対策協議会の調査で27日分かった。
治療法を知っている医師も3割に満たず、同協議会は「比較的新しい病気の概念だが、早期治療を実現するため、一層の普及啓発が必要」と話している。

調査は今年5月、インターネットで、国内の医師205人を対象に実施。内科、泌尿器科など慢性腎臓病患者と接する機会が多い診療科の医師が99人、その他の診療科の医師が106人だった。

その結果、慢性腎臓病を知っている医師は全体の58.6%で、内科、泌尿器科などの医師でも69.7%だった。接する機会が少ない診療科の医師は48.1%と半数以下だった。「治療法を知っている」と答えた医師も全体の28.3%だった。

慢性腎臓病は腎機能が低下するさまざまな腎臓病の総称。心筋梗塞など心血管系の病気の危険性が健康な人より2倍以上になるという。自覚症状がないため、悪化させて人工透析を始める患者が毎年約1万人に達する。日本腎臓学会は今年5月、かかりつけ医向けの診療指針を発表した。(毎日新聞)

慢性腎臓病(CKD)について
腎不全や糖尿病性腎症など腎機能が慢性的に低下した状態を指す概念です。
日本慢性腎臓病対策協議会が公表した診療指針では、腎機能の指標である糸球体(腎臓の中で血液を濾過する血管の塊)の濾過量が1分あたり90ミリリットル以上を健康な人と位置づけ、60ミリリットル未満の状態や尿タンパクが陽性の状態がいずれも3カ月以上続いている人を慢性腎臓病と定義しています。

このうち、50ミリリットル未満の人は、専門医の治療を必要とし、成人で約420万人いると推計されていますが、多くの人が治療を受けていないとみられています。

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健康評価施設査定機構が始動:健診の信頼性を第三者評価

2008年からメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)予防を目的にした特定健康診査がスタートするのを前に、健診の信頼性を第三者として評価する有限責任中間法人「健康評価施設査定機構」(理事長、開原成允・国際医療福祉大大学院長)が、審査・認定事業を開始すると発表した。
申請のあった健診機関の健診や指導の能力などを評価、認定証を発行する。

機構の最高顧問として記者会見した日野原重明・聖路加国際病院理事長は「認定を受けた健診機関が広がることで、安心して健診を受けてもらえると思う」としている。

審査では、画像診断や血液検査など各種検査の精度のほか、保健指導に関する理念や指導内容なども評価。認定施設には認定証を発行し、ホームページに掲載する。認定期間は3年間。(goo news)

メタボリックシンドロームとは?
生活習慣病の代表格に肥満症、高血圧、糖尿病、高脂血症があります。これらの疾患は肥満、特に内臓に脂肪が蓄積した肥満が原因であるとされ、内臓脂肪によりさまざまな病気が引きおこされる状態をメタボリックシンドロームといいます。

高血圧、高脂血症、糖尿病などひとつひとつの症状は軽くても、複合すると心筋梗塞や脳梗塞のリスクが急激に増大することから注目されています。
診断基準の必須項目としてウエスト径があり、男性85センチ以上、女性90センチ以上がメタボリックシンドローム診断のポイントとなります。

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メタボリック症候群で心筋梗塞などのリスクが2.5倍に

メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)の人はそうでない人に比べて、心筋梗塞など心臓血管系の病気になる危険性が男性で約2・5倍、女性で約1・8倍になるとの研究結果を、島袋充生・琉球大医学部講師(循環器病学)らがまとめた。

ウエスト90cm以上の女性は要注意です

沖縄県の約7000人を対象にした疫学調査で、島袋講師は「同症候群と心臓血管の病気との関連が裏付けられた」としている。

島袋講師らは、2003年5月から04年3月までの間に、沖縄県豊見城市の病院で人間ドックを受けた30歳以上の男女から、腹部の肥満に加え血圧、血糖値、中性脂肪のうち2つ以上が高く、同症候群の基準を満たす男性1069人、女性153人を選んだ。

この人たちに今年2月以降、聞き取りやアンケートを実施。心筋梗塞や大動脈瘤などを発症した確率(累積発症率)を調べたところ、男性では約28%で、同症候群でなかった男性に比べ約2・5倍危険だった。

女性では発症率は約9%で、危険性は同症候群でない人の約1・8倍だった。(四国新聞)

心筋梗塞とは?
狭心症は冠状動脈の血管が細くなって血流量が少なくなることで起きるものですが、血管が詰まってしまってそこから先にほとんど血液が送られなくなって心筋が壊死してしまうのが心筋梗塞です。

心筋梗塞の原因の多くは冠状動脈の動脈硬化です。動脈硬化の部分が破れて、血栓という血のかたまりが付着したりして血管閉塞の原因となります。
また、冠状動脈が収縮して血管内径が閉塞し、それが長く続くと心筋梗塞の原因となります。
さらに、喫煙、高血圧症、高脂血症、糖尿病あるいは肥満などが危険因子となります。

発作が起きるきっかけは、狭心症と違って運動ではなく、突然起きますし、狭心症の発作を繰り返すうちに起きる場合もあります。

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中越沖地震:ストレスによる「たこつぼ心筋症」に要注意

新潟県中越沖地震の被災地で、精神的ストレスで発症しやすい心臓病「たこつぼ心筋症」の患者が3人発生したことが25日、相沢義房・新潟大医学部教授(循環器内科)の調べでわかった。

たこつぼ型心筋症

2004年の中越地震直後にも多数の患者が発生しており、相沢教授は「息苦しさや鈍痛など胸に異常を感じたら、すぐ循環器専門医の診断を受けてほしい」と注意を呼びかけている。

たこつぼ心筋症は、心臓から血液を送り出す際、左心室の下部がふくらんだまま収縮しない病気で、左心室がたこつぼのような形にみえる。血流不足で胸の痛みや圧迫感が続く。
約1か月ほど入院して安静にしていれば治るのが普通だが、原因がわからない突然死の中に、たこつぼ心筋症が含まれる可能性も指摘されている。

心筋梗塞と違って血管に異常はなく、発症原因は不明だが、様々な精神的ストレスで発症しやすく、患者は高齢女性に多い。1990年に日本で最初に報告された。中越地震発生後3週間で、被災地で25人(うち女性24人)の患者が発生したことが相沢教授らの調査でわかり、広く注目されるようになった。

相沢教授によると、今回の地震では、発生から1週間以内に柏崎市内の病院で3人の患者が確認された。全員が高齢女性で、入院して安静状態にある。
今のところ、中越地震後ほど患者は多くないものの、相沢教授は「避難した住民同士で口論などして、ストレスをためないでほしい」と話している。(YOMIURI ONLINE)

たこつぼ心筋症について
たこつぼ心筋症は、胸痛や心不全などの急性心筋梗塞症様の臨床所見が見られますが、心臓カテーテル検査では冠動脈に狭窄や閉塞などの異常所見がありません。
左室造影で心尖部に一過性の高度な収縮不全を認める症例があり、その収縮異常の形態的特徴から「たこつぼ型心筋症」と呼ばれています。1990年に佐藤光氏らが世界で初めて報告しました。
最近では、新潟大医学部の調査により、2004年の新潟県中越地震の直後、被災地の女性に、たこつぼ心筋症が多発していたことが明らかになっています。

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インターフェロンベータで多発性硬化症が急激に悪化

手足が不自由になるなどの症状が現れる神経難病「多発性硬化症」に対し、進行を抑える治療薬として唯一認可されているインターフェロンベータの注射後、急激に悪化した例が相次いでいることがわかり、厚生労働省研究班(主任研究者=吉良潤一・九州大神経内科教授)は緊急の全国実態調査に乗り出した。

インターフェロンベータ(IFNβ)

多発性硬化症は、中枢神経が侵される原因不明の難病で、手足のまひなど運動、認知障害が起きる。国内の患者数は約1万人と推定され、治療薬インターフェロンベータは、2000年に発売され、現在2種類ある。

日本人患者の約4分の1には、失明などに至る「視神経脊髄型」と呼ばれる障害が現れる。このタイプでは、薬が効かなかったり、悪化したりしたとの報告が数年前からあった。(Yahoo news)

多発性硬化症とは?
脳や脊髄など中枢神経に脱髄変化(神経線維を保護している髄鞘が破壊されること)が生じて、運動障害や知覚障害が起きる病気です。ウイルスかアレルギーあるいは免疫反応異常が原因とされていますが、はっきりわかっていません。厚生労働省の難病の指定(特定疾患)を受けています。

「多発性」と名がつくように、数々の神経障害がみられます。典型的な症状は視力障害で、ものが二重に見えてたり、視力低下、痛みなどが起こります。手足の力が抜ける、動きがぎこちなくなるなどの運動障害もよくみられます。
そのほか、体の一部が刺されるような異常感覚、しびれ、痛みをともなうことがあります。

多発性硬化症は30歳前後に発症しやすく、寛解(症状が消失すること)と再発を繰り返していくうちに重症化していきます。

微粒子「PM2.5」と呼吸器疾患による病死の関連性:環境省調査

直径が2・5マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)以下の小さな微粒子「PM2.5」の大気中濃度が高くなると、呼吸器疾患で死ぬ危険が高まる可能性があることが環境省の疫学調査で24日、明らかになった。

PM2.5

日本人を対象にした疫学研究で、健康影響が指摘されたのは初めてという。海外の研究に比べて影響は小さなものとなっているが、同省は今後、海外の研究も参考にして規制を検討する。

PM2.5は自動車や工場から排出され、大気中を漂う浮遊粒子状物質(SPM)の一種で、環境基準値は設定されていない。1990年代から肺や気管に付着するなどして、呼吸器や循環器などに悪影響を及ぼすとの研究が相次いで報告され、懸念が高まっている。(Shikoku news)

PM2.5について
直径が2.5μm以下の超微粒子のことで、微小粒子状物質という呼び方もあります。
大気汚染の原因物質とされている浮遊粒子状物質(SPM)は、環境基準として「大気中に浮遊する粒子状物質であってその粒径が 10μm以下のものをいう」と定められているが、それよりもはるかに小さい粒子です。

PM2.5はぜんそくや気管支炎などの呼吸器系疾患を引き起こすとされています。
大きな粒子より小さな粒子の方が気管を通過しやすく、肺胞など気道より奥に付着するため、人体への影響が大きいと考えられているためです。代表的な微小粒子状物質であるディーゼル排気微粒子は(ディーゼル車からモクモク出てる黒煙がこれです)、大部分が粒径0.1〜0.3μmの範囲内にあり、発がん性や気管支ぜんそく、花粉症などの健康影響との関連が懸念されています。

PM2.5は、石原都知事が就任直後に行なったディーゼル車規制に関する会見で空のペットボトルに黒い粉を入れ、その危険性を訴えていたのですでにご存知の方も多いと思います。
年間のPM排出量は東京都だけで1万tを下らないとされています。

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毛包炎(もうほうえん)とは?:赤城農水大臣の病名が判明

赤城徳彦農林水産相は24日の閣議後の会見に、ほおと額に張っていた絆創膏を取り外して1週間ぶりに「素顔」で登場。これまでは「吹き出もの」と説明していたが、医師によると病名は「毛包炎」だったことを明らかにした。

泣きっ面に蜂ならぬ毛包炎

農水相の説明によると、17日から顔面の2カ所に張っていた絆創膏は24日朝に取ったといい、跡もほとんど目立たないほどに完治。会見後は「絆創膏がトレードマークになっていたので、はずすタイミングが難しくて」などと笑いを誘っていた。(産経新聞)

毛包炎(もうほうえん)とは?
ブドウ球菌が毛穴から毛包(毛嚢)に入り感染して化膿する、いわゆるおできのうち、米粒くらいの大きさで、化膿が狭い部分に止まっているものを毛包炎といいます。
毛包炎は全身のどこにでもできますが、手のひらなどの毛の生えないところにはできません。

炎症が進むにつれて毛包とその周囲に膿がたまり、腫れて赤く盛り上がり、その部分が熱っぽく、圧痛があり、触れるとしこりがあります。化膿してから数日間は痛みも増してきます。
やがて、口が開き、海が出てしまえば自然に治ります。この間、1〜2週間くらいで、あとに瘢痕が残ります。

治療には抗生物質と軟膏を使用します。かつては、鼻や口の周囲にできるものは、髄膜炎などを起こしやすく危険とされてきましたが、現代では抗生物質両方が進んで、このような合併症の心配はなくなりました。

肝炎検査の委託事業:実施はわずか2県のみ

国内に300万人以上いるとされるウイルス性肝炎患者の早期発見をめざし、厚生労働省が今年度始めた肝炎検査の委託事業が、東京と福岡の2都県でしか実施されていないことがわかった。
一般の医療機関に委託する検査費を国と都道府県が折半する仕組みだが、新たな負担増などを嫌って見送る自治体が相次いでいる。このままだと今年度計上された12億円の予算のうち、3億円弱しか使われない計算だ。

肝炎

厚労省は02年度から、40歳以上を対象に市町村が行う住民健診などでの肝炎検査(HBs抗原検査HCV抗体検査)に補助を導入。さらに保健所でも肝炎検査を受けられるようにし、昨年4月からは年齢制限も撤廃した。

保健所の検査費用は半分を国が負担。多くの都道府県は残りの半分を補助し、受診者負担をゼロにしているが、受診者は年間3500人前後にとどまっている。

そこで厚労省は受診率の大幅アップを狙い、医療機関への検査の委託事業を導入。60万人の受診を見込み、保健所検査への補助金の4倍にあたる12億円を計上した。

だが今年度中に事業を実施するのは東京と福岡だけ。ほかに9府県が検討しているが、実施の見通しは立っていない。保健所の検査費用は2000〜3000円だが、医療機関だと初診料などを含め4000〜5000円かかるため、都道府県の負担が増えることなどが大きな理由だ。

大阪府は「保健所の検査にも補助を出せず、利用者負担を無料化できていないのに、新たな助成は難しい」という。「保健所で検査を受ける人があふれているならわかるが、保健所で間に合っている」(青森県)などと、委託事業の必要性を疑問視する声もある。

一方、いち早く導入した東京都は「受診者の利便性が高まるし、早期発見は医療費の抑制にもつながる」と期待を寄せる。今年度の予算は約2億6000万円。10月から実施予定の福岡県は1900万円を計上している。(asahi.com)

ウイルス性肝炎について
ウイルス性肝炎は日本でもっとも多い肝臓の病気です。ウイルス性肝炎を引き起こす肝炎ウイルスには、A型・B型・C型・E型などの種類があり、主に問題になるのはB型とC型によるものです。

肝臓は「沈黙の臓器(by スティーブン・セガール)」とも言われ、ウイルスに感染しても、自覚症状が現れにくいという特徴があります。また、肝炎ウイルスの中でも、B型・C型は肝硬変や肝がんなどに移行する可能性があります。そのため、早期に感染を発見し、適切な処置を受けることが重要となります。

現在、日本で肝炎ウイルスに持続感染している人は、200〜300万人以と推定されていますが、感染者の発見は、B型・C型のどちらも、年間約3万人にすぎません。早期に感染を発見し、治療を開始するには、積極的に検査を受けることが何よりも大切です。

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飲酒運転者の半数はアルコール依存症の疑い

飲酒運転の違反歴がある男性ドライバーのうち、ほぼ2人に1人はアルコール依存症の疑いがあることが、国立病院機構久里浜アルコール症センターの樋口進医師が神奈川県内で実施した調査でわかった。

アルコール依存症

一般男性の場合、依存症が疑われる人は20人に1人と推計されており、自分の行動を抑制できなくなるアルコール依存症と飲酒運転との相関関係が初めてデータで裏付けられた。
調査を受け、政府は依存症のドライバーに対する治療の方策などについて本格的な検討に入る。

今回の調査は、樋口医師が神奈川県警と共同で実施した。今年1〜6月の間に免許取り消し処分者講習を受けた人のうち、飲酒運転の違反歴がある約200人を対象に、医療機関で採用されている複数の検査方法で依存症の疑いがあるかどうかを探った。
検査は、主に飲酒習慣や自己抑制力の低下具合を調べるもので、国際的に信用性が高い検査方法の場合、男性で「疑いあり」の該当者は48・7%だった。この検査方法によるサンプル調査(約1200人)から、一般男性の中で依存症が疑われる人の割合は約5%と推計されている。

飲酒運転を巡っては、改正道路交通法で罰則が引き上げられるなど厳罰化が進んだ。
一方、アルコール依存症は、酒を飲まないと震えが止まらないなど自己抑制力が低下する病気のため、「厳罰化だけで飲酒運転は減らせない」として、民間団体や専門家からは、常習者に対する治療などの対策を求める声が出ていた。だが、依存症との因果関係を示すデータはこれまで警察庁にもなかった。

米国では多くの州が、すべての違反者に依存症検査を義務付けている。裁判所が専門的な治療プログラムの履修や、アルコールを検知するとエンジンがかからなくなる装置の搭載などを命じる州もある。(YOMIURI ONLINE)

アルコール依存症とは?
飲酒をコントロールできなくなり、飲酒が他の何よりも価値あるものになり、アルコールに対して身体的、心理的に依存しきっている状態です。仕事の能率は大幅に低下し、意欲は衰え、職務怠慢になりますが、本人はアルコールのせいだとは認めません。
中毒が進むにつれ、精神機能全般が衰え、理解力、判断力が低下して、日常の生活にも支障をきたすようになります。

身体的には、肝機能障害が生じ、アルコール性肝炎から肝硬変に進行することがあります。
また、脳萎縮が生じ、アルコール性の認知症に移行する場合もあります。

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リンゴポリフェノールに寿命を延ばす効果:マウス実験で確認

リンゴから抽出される「リンゴポリフェノール」に寿命を延ばす効果があるとの研究結果を、アサヒビール東京都老人総合研究所の白沢卓二研究部長らがまとめた。

動物実験で確認したという。京都で始まった日本抗加齢医学会(会長=米井嘉一・同志社大教授)で20日報告したほか、英科学誌ネイチャーなどで発表する。

実験は、遺伝子組み換えにより老化の速度を速めたマウス55匹を使った。このうち32匹に、リンゴポリフェノールを0・1%配合した飲料水を飲ませ、残り23匹のマウスにはただの水を飲ませて寿命を比べた。

その結果、ポリフェノール入りの飲料水を飲んだマウスの寿命はメスが平均37・90週、オスが平均28・84週で、ただの水を飲んだマウスよりメスで平均72%、オスで29%寿命が長くなった。マウスが摂取したリンゴポリフェノールは1日リンゴ0・02個〜0・04個分にあたり、人間の摂取量に換算すると1日リンゴ5〜10個分程度になる。(YOMIURI ONLINE)

ポリフェノールについて
ポリフェノールは、植物が光合成でつくる糖分の一部が変化したものです。
ポリフェノールの種類は約300種におよび、複数の水酸基(OH基)が結合したベンゼン環をもっているのが特徴です。このOH基は活性酸素やフリーラジカルといった有害物質を捕らえて、安定した無害な物質に変える作用があります。このため、ポリフェノールは強力な抗酸化作用があります。

また、脂肪燃焼を促進する効果、血栓を予防して血液をサラサラにする効果、血管を守る作用、血流を改善する作用など、さまざまな健康効果があることがわかっています。

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脳梗塞を抗体で治療:一定時間経過後も効果を確認

脳梗塞発症後、時間がたってからでも効く治療薬の候補を見つけ、ラットの実験で効果を確かめたとの研究結果を西堀正洋岡山大教授(薬理学)と森秀治就実大教授(薬理学)らが19日までにまとめた。
この物質は、脳に炎症を起こすタンパク質を中和する抗体。注射することで、梗塞部分の範囲が縮小、運動まひが抑えられたという。

脳梗塞は脳の血管が詰まり、酸素やブドウ糖が供給されなくなる。従来は血管を詰まらせている血栓を溶かす薬などを使い、発症後一定時間内に治療を始める必要があった。

西堀教授らは、炎症を促進させる「ヌクレオカイン」というタンパク質のグループに着目。
脳細胞が壊死すると細胞からこのグループの一種「HMGB1」というタンパク質が排出され、炎症が悪化し、脳梗塞が進むとの仮説を立て実験した。(四国新聞)

脳梗塞について
脳梗塞は脳の血管が詰まって血液が流れなくなり、脳の組織が死んでしまうものです。
血管の詰まりかたには2つあります。高血圧や動脈硬化によって脳血管に血栓ができて詰まるのが脳血栓で、心臓など脳以外でできた血栓や脂肪のかたまりが血液に運ばれて脳の動脈で引っ掛かって詰まるのが脳塞栓です。
ただし最近は、アステローム血栓性梗塞症、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症の3つに分類する考え方が一般的になっています。

  • アステローム血栓性梗塞症…頚動脈や脳の太い血管が詰まり、血流が途絶えてできた大きめの梗塞です。
  • ラクナ梗塞…脳動脈は太い血管から細い血管へと枝分かれしていますが、その最先端のごく細い血管が詰まってできた小さめの梗塞です。
  • 心原性脳塞栓症…心臓でできた大きな血栓が脳動脈に流れ込み、比較的太い血栓を詰まらせるために起こります。突発的に起こるので、症状も急激に現れ、重くなりがちです。

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脳脊髄液減少症の診断基準を策定へ:厚生労働省

交通事故やスポーツでのけがなどをきっかけに、頭痛やめまいなどの症状を引き起こす「脳脊髄液減少症」の診断基準などを策定するため、厚生労働省は、日本脳神経外科学会など7学会で構成する研究班を発足させた。

診断基準などを巡り意見が割れていた、この病気の本格的な研究が、国の支援で始まることで早期の治療法確立などが期待される。研究班長の嘉山孝正・山形大医学部長が19日記者会見し、明らかにした。

脳脊髄液減少症は、交通事故などの衝撃により、脳を保護している硬膜が破れ、脳や脊髄の周囲を循環している脳脊髄液が漏れることによって発症するとされる。患者団体のNPO法人「脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」によると、国内には20万〜30万人の患者が潜在的にいるという。

しかし、これまで統一的な診断基準がなく、症状を訴えても、適切な治療が受けられないまま、苦しんでいる患者も少なくない。このため46都道府県議会が研究推進を求める意見書を採択している。

研究班には、整形外科や神経外傷などの学会代表のほか、画像診断や統計学の専門家らも加わる。研究は9月からスタートし、3年間で、発症の原因調査、診断基準の策定のほか、有効な治療法を探り、治療指針もまとめる。(YOMIURI ONLINE)

脳脊髄液減少症について
交通事故やスポーツなどによる衝撃で脳をおおう硬膜に穴があくと、脳と脊髄の周囲を循環している脳脊髄液が漏れて脳の位置が下がり、頭痛やめまい、倦怠感、吐き気、思考力・集中力の低下、睡眠障害などの症状が現れます。
立位や座位で症状が悪化し、横になると軽快することがあると言われていますが、全ての人に当てはまるわけではなく、症状が長期化すると体位による変動は少なくなるようです。

患者本人の血液を注射し、血液凝固で髄液が漏れた場所をふさぐ「ブラッドパッチ療法」が有効とされています。現在のところ厚生労働省は保険適用を認めていませんが、交通事故などの被害者らによって、むち打ちや転倒時の衝撃でも髄液が漏出することがあると主張され始めています。

脳脊髄液減少症の診療をしている主な医療機関

  • 仙台医療センター(宮城県仙台市)
  • 山形県立中央病院(山形県山形市)
  • 高木病院(群馬県桐生市)
  • きし整形外科内科(茨城県土浦市)
  • 日本医大(東京都文京区)
  • 山王病院(東京都港区)
  • 瀬口脳神経外科(長野県飯田市)
  • 国際医療福祉大熱海病院(静岡県熱海市)
  • 奈良県立医大(橿原市)
  • 福山医療センター(広島県福山市)
  • 九州労災病院(北九州市)

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中越沖地震の被災者にエコノミークラス症候群の兆候

新潟県中越沖地震の発生から3日目を迎え、避難所生活をおくる被災者の間にストレスや疲労の影響が出始めている。長時間同じ姿勢で血栓ができ死亡に至ることもある「エコノミークラス症候群」の兆候とみられる足の静脈血栓を発症した70歳代の女性もいる。専門医が避難所の回診を始め、「心のケア」の専門医療チームも被災地に入った。

新潟大医学部などによる「エコノミークラス症候群対策合同医療チーム」が18日、柏崎市内の小中学校など4カ所の避難所を回り、検診を始めた。5人の静脈血栓を見つけたが、そのうち3人の血栓は地震発生以前のもので、1人は時期が不明だった。

残る1人、柏崎第一中学校で避難生活をしている70歳代の女性が「静脈の血栓は避難生活が始まって以降にできたもの。症候群のなりかけと言ってもよい」と榛沢和彦・新潟大助教に診断された。

榛沢医師は3年前の中越地震でも現地入りし、エコノミー症候群の患者を診察した。当時の経験を元に、特徴的な症状や発症の要因などを調べ、「喫煙者、足の動きが悪い人、妊婦、心不全や不整脈がある人は注意が必要」といった「診断・治療ガイドライン」にまとめている。

県は避難生活や車中泊をしている被災者に「かかとの上げ下ろし運動」「定期的な水分補給」などを呼びかけるチラシを計2万2000枚配った。(asahi.com)

エコノミークラス症候群(急性肺動脈血栓塞栓症)
心臓から血液を肺に送り届ける肺動脈に、血液のかたまり(血栓)や脂肪、腫瘍細胞のかたまり(塞栓)が詰まった状態を肺動脈血栓塞栓症といい、その結果、血流が滞って肺組織が壊死していく状態を肺梗塞といいます。

脚の静脈にできた血栓が肺に運ばれて発症するケースが最も多くみられます。
長時間動かずにいることと脱水が重なって、脚の静脈の血流が滞り、血栓ができてしまうものです。
一般的には、飛行機内で長時間着席したままでいるために起こる、エコノミークラス症候群として知られています。
足を動かさない状態から急に立ち上がったとき、血栓がはがれて血流に乗り、肺まで到達して、血管を詰まらせて症状を引き起こします。

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新型インフルエンザ対策:感染症専門医を在外公館に派遣へ

政府は、新型インフルエンザなどの感染症対策を強化するため、外国の日本大使館に勤務する医務官に、感染症を専門とする医師を派遣する方針だ。

新型感染症の発生が懸念されているベトナム、インドネシア、バングラデシュなどのアジア諸国を中心に、来年度から国立国際医療センターの医師、数人を派遣し、現地での医療活動と、日本との情報交換を行う。

在外公館に駐在する医務官は、先進国と比べて医療体制が整っていないアジア・アフリカ諸国を中心に、77か国に80人(今年7月現在)が配置されている。
感染症専門の医師派遣は、現在の医務官との交代や追加の形で行う。医務官の本来の任務は大使館員と家族の健康管理だが、発展途上国では現地に暮らす日本人の医療相談のほか、日本に上陸するおそれのある感染症の情報収集など、幅広い役割を担っている。

厚生労働省は、国立国際医療センターを日本の新型感染症対策の中心と位置づけており、派遣医師を通じて、海外の関係機関との連携を強化したい考えだ。(YOMIURI ONLINE)

新型インフルエンザについて
新型インフルエンザとは、今までヒトが感染したことのない新しいタイプのインフルエンザのことです。現在、アジアを中心にトリの間で流行しているのは鳥インフルエンザであり、新型インフルエンザとは異なります。
鳥インフルエンザは、まれにヒトに感染することがありますが、通常ヒトからヒトには感染しません。
これが変化してヒトからヒトに感染する力を持った場合が新型インフルエンザとなります。

新型インフルエンザに対しては、全ての人が抵抗力(免疫)を持っていないため、世界中で同時大流行(パンデミック)し、人命や社会経済活動に多くの被害をもたらすことが心配されています。

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カレー粉のスパイス成分がアルツハイマー病に効く?

米研究者が16日、カレーに含まる成分が、脳の働きを阻害しアルツハイマー病を特徴付けるタンパク質を吸収する免疫細胞を、活性化する可能性があると発表した。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校のミラン・フィアラ博士の研究チームが全米科学アカデミー会報で発表した。

これが本場のインドカレー

これによると、インドカレーに独特の色を出す黄色い香辛料のターメリックに含まれている化合物が、アルツハイマー病の症状に対抗する特異な反応を誘発するとみられている。
同チームではこれを応用し、その化合物を患者に注入することでアルツハイマーという致命的で不治の脳の病を治療できる可能性を指摘している。

また別の研究では、ターメリックに含まれる抗酸化物質のクルクミンが腫瘍の形成を妨げることが、実験室レベルとネズミを使った実験で示されている。(ロイター)

ターメリックとは?
ターメリックとはカレー粉の主要なスパイスで、日本名はウン・・・じゃなかった、ウコンです。
ウコンはインドや中国で古くから、黄疸など効く生薬として重宝され、日本でも肝臓や胃腸の薬、強心薬として使われていました。

現在もウコンの薬効には定評があります。肝臓障害を改善・予防し、肝臓の機能強化にはたらくとされていますが、これは、ウコンの主成分であるクルクミンの強い解毒作用と胆汁の分泌を著しく促進する作用によるものと考えられています。

また、近年の研究では、クルクミンは大腸がんを抑制することが明らかになり、クルクミンを経口摂取すると腸管でテトラヒドロクルクミンというさらに強力な抗酸化物質に変化することもわかっています。
このテトラヒドロクルクミンは腎臓がんを予防することがわかっており、肺がん予防に関する研究も行なわれています。

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ピロリ菌の増殖抑制物質を人工合成:理化学研究所

胃潰瘍や胃がんの原因とされる細菌「ヘリコバクター・ピロリ」の増殖を抑制するヒトの体内物質を、理化学研究所の研究チームが人工合成することに成功した。
大量生産が可能となったことで、ピロリ菌を除去する薬剤の開発や、増殖を抑制するメカニズムの解明につながるという。米化学会誌「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー」(電子版)に近く掲載される。

ヘリコバクター・ピロリ

ピロリ菌はヒトの胃の粘膜表面にすみ着くが、粘膜の深部にはいない。深部粘膜から、たんぱく質と結合した形で分泌される糖鎖と呼ばれる化合物に、ピロリ菌の増殖を抑制する作用があるためとされている。

研究チームは、糖鎖の原料となる新たな化合物を独自に開発した。この化合物を使って化学反応を起こしたところ、目的とした糖鎖を効率よく合成することに成功した。(MSN NEWS)

胃潰瘍について
胃の粘膜に起こった欠損が、粘膜下の筋層にまで達する病気です。主に食後にみぞおちのあたりに痛みを覚えますが、食事と関係なく痛んだり、夜間に痛むこともあります。
痛みの症状と併せて、胸焼けやげっぷ、胃もたれ、むかつき、黒色便などがみられることもあります。

胃の中では、食物を消化するために胃酸やペプシンという消化酵素を分泌していますが、酸度の強いこれらの物質は粘膜を傷つけやすいので、同時に粘膜を保護する粘液やプロスタグランジンと呼ばれる物質が分泌されています。

通常は、この両者がバランスよく分泌されるため、胃の粘膜が傷つくことはありませんが、バランスが崩れて粘膜を攻撃する物質が過剰になると、粘膜の障害が進みます。
バランスを崩す原因としては、ストレス、飲酒、香辛料などがあげられます。また、患者の7割以上に今回の記事でとりあげたヘリコバクター・ピロリ菌の感染がみられることから、その関与も指摘されています。

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肺動脈性肺高血圧症の治療薬「リモジュリン」:国内で治験へ

持田製薬は今年度中をめどに、肺動脈の高血圧の治療薬について、人を対象に安全性や有効性を確認する臨床試験(治験)を国内で始める。呼吸困難や疲れ、めまいなどを引き起こし、心不全の恐れもある病気で、現在は外科手術を施したうえで薬を投与している。
新薬は皮下注射で薬を投与できるため、在宅や長期の治療が必要な患者の負担を軽減できる。

治験を始めるのは「リモジュリン」と呼ぶ新薬候補で、2012年の発売を目指す。
血管の内側を広げる効き目があり、肺動脈の血圧を下げる。小型ポンプを使って静脈や皮膚の下に薬を持続的に投与して治療をする。(NIKKEI NET)

「リモジュリン」は、肺動脈性肺高血圧症治療薬として2002年に米国で上市されて以来、30か国以上で販売または承認されているプロスタグランジンI2製剤です。
携帯用小型ポンプを用いた持続投与型の注射剤で、静脈内注射だけでなく皮下注射も可能であり、短時間で薬剤調整ができるなど、在宅を含め長期に薬物治療が必要となる患者さんの負担を軽減できる新しい薬剤です。

肺動脈性肺高血圧症(PAH)について
血液は、肺動脈と呼ばれる大きな血管を通って心臓から肺に運ばれます。
PAHを発症している患者は、肺動脈および分岐して細くなった血管(毛細管)が収縮・肥厚しています。

健康な人の肺動脈では、血管への弛緩作用(血管拡張物質)と収縮作用(血管収縮物質)のバランスが維持されています。PAHでは、血管収縮物質であるエンドセリン-1(ET-1)が正常レベルより多く生産され、血管壁にあるエンドセリン受容体に結合します。
これが肺動脈を過度に収縮させる原因であり、また肺血管の線維化にも関与しています。

血液は、肺で酸素を取り込み、心臓に戻り、全身に流れ出ます。肺への血液が少なくなることは、全身や筋肉を正常に機能させるための酸素が不足することを意味します。
PAHの患者さんは呼吸数が多く、疲れ易いため、疾患が進行すると簡単な動作さえ苦労することになります。国内の患者数は数千人と推定されています。

蛍光物質を利用してがんの転移場所を推定:米国立衛生研究所

がんの組織を体内から採取しなくても、どの抗がん剤が効くかを確認したり、転移場所を推定できる画像診断技術を、小林久隆・米国立衛生研究所主任研究員らの研究チームが開発した。
特定のがんと結びつく性質のある抗体に蛍光物質を載せて注射し、近赤外線をあてて光らせる方法。一度の画像診断で、複数のがんについて同時に適切な抗がん剤を選ぶことを可能にする技術で、9月の米国分子イメージング学会で発表する。

研究チームは、肺がん、乳がん、大腸がん、甲状腺がんの4種類のがんを対象に実験した。
各がんごとに、抗がん剤が効くタイプなら結合する抗体を用意し、蛍光物質を載せた注射剤を作成。タイプごとに蛍光物質の種類を変えた。
同時に4種類のがんを発症させたマウスに静脈注射し、近赤外線をあてると、それぞれのがんの場所を異なる色で光らせることができた。

また、直径約9ナノメートル(ナノは10億分の1)の人工の分子に、蛍光物質を載せた分子を作成。マウスに注射すると、この分子はリンパ液に乗って流れ、近赤外線をあてると光るため、どこのリンパ節に到達したかが分かった。この分子をがんのそばに注射すれば、転移のルートや転移先の推定が可能になる。

小林研究員は「痛い思いをしなくても、複数のがんを1回で確認でき、患者の負担が軽くなるはずだ。5年程度で実用化できるとみられ、PET(陽電子放射断層撮影)など従来の画像診断より、個々の患者に適した治療を選択する診断が可能になるだろう」と話している。(MSN ニュース)

PET(陽電子放射断層撮影)とは?
RI(ラジオアイソトープ=放射性同位元素)を体内に投与し、RIが体外に発する放射線を検出器で測定し、コンピュータ処理して断層画像を得られるようにした検査です。
さまざまなRIを用いて、糖代謝、タンパク代謝、酸素消費量などを調べることができます。

人体組織内の糖代謝を調べる「FDG-PET」が最もよく行なわれています。多くの腫瘍で糖の代謝が亢進することを利用した検査で、非常に小さい段階での腫瘍発見に有用な場合があります。
しかし、RIが高価で半減期が短いため一部の医療機関でしか受けることができないのが難点となっています。

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