水素水でパーキンソン病を予防・治療の可能性:九大

水素を含んだ水を飲むとパーキンソン病などの予防や治療につながる可能性があることを、九州大やパナソニック電工の研究グループが発見した。論文は米科学誌プロスワンに発表された。脳の細胞の破壊が抑えられ、細胞を壊す原因とされる活性酸素も減ったことがマウスを使った実験で確認されたという。

九大の野田百美・准教授らのグループは、マウスに薬を投与して、パーキンソン病患者に見られる症状と同様に脳の神経細胞を破壊させる一方、前もって水素をわずかに含んだ水を飲ませた。

その結果、水素を0.08ppm含んだ水を1週間飲ませたマウスでは、細胞死の進行が抑えられていたことを確認。薬の投与後から水を飲ませても同じ抑制効果が見られ、活性酸素の量も減っていたという。水素が細胞死を抑える仕組みはまだよくわかっていないが、今後、臨床試験も実施して実用化を目指すという。(Asahi.com)

パーキンソン病とは?
中脳にある黒質(黒い色素を含む細胞が集まっている場所です)の神経細胞が変性するために、手足のふるえ、筋肉のこわばり、動きの低下などの症状が現れてくる病気です。

不随意運動(無意識に行われる筋肉の動き)をコントロールしているのは大脳基底核で、大脳基底核へ情報を伝達するのは、中脳の黒質から放出されるドーパミンという神経伝達物質です。
その黒質が何らかの影響で損傷を受け、ドーパミンが不足して大脳基底核が正常に機能できなくなるために起こると考えられています。

日本における患者数は、平成17年度厚生労働省患者調査より約14万5000人と推計されていますが、50〜60歳代で発症することが多く、高齢化に伴って患者数は増加しています。



9月のトピックスのまとめ Vol.1

9月分のまとめ(その1)

経口避妊薬が発がんリスクを減少させる可能性
ピルの使用は発がんリスクの増大にはつながらず、大部分の女性については、発がんリスクを減少させる可能性がある。

特定健康診査に対応の血液分析装置「メタボライザー」
メタボリックの特定健康診査・保健指導が来年4月から始まるため、小規模な医療機関での検査需要が増えると予想。

うつ病治療薬「リタリン」の効能効果取り下げを申請へ
リタリンはうつ病治療薬として販売開始。現在は日中突然眠くなる睡眠障害「ナルコレプシー」の効能も承認されている。

植物性胃腸薬の百草丸にピロリ菌の除菌効果
長野県の御岳山ろくに古くから伝わる植物性胃腸薬の百草丸に、胃かいようや胃がんの原因となるピロリ菌を除菌する効果。

子宮頸がん予防ワクチンを承認申請へ:グラクソ・スミスクライン
グラクソ・スミスクラインは、子宮頸がん予防ワクチン(海外名:サーバリックス)を国内で初めて厚生労働省に承認申請した。

抗がん剤「アバスチン」が中皮腫の治療に有効
悪性胸膜中皮腫の治療に、大腸がん治療薬として今年承認された「アバスチン」(一般名ベバシズマブ)が有効。

飲酒で乳がんリスクが増大:米保険会社の調査結果
酒の種類を問わず、健康に良いとされる赤ワインでも乳がんの発生率が高まった。

神戸大学病院に美容外科を新設:脂肪吸引やフェイスリフト
新設の美容外科は、既存の形成外科の医師数人と、看護師、エステティシャン各1人を置き、外来初診を週3日受け付ける。

日本人はピロリ菌感染で胃がんリスクが上昇:遺伝子解析結果
日本人とブラジルに住む日系人約1500人の遺伝子を解析、96%が感染によって胃がん発症リスクが高まる遺伝子タイプだった。

飲酒で赤ら顔の人は膵臓がんリスクが1.5倍
飲酒後に体内でアルコールが分解されてできる有害物質アセトアルデヒドの代謝能力の差が、発がんリスクを左右する。

動脈瘤の手術を覚醒状態で実施:オーストラリア
手術中、医師は患者にカード上の文字や数字を読み上げるよう求め、意識を確認しながら作業を進めた。

ソーダ類がアメリカ人の肥満の元凶か:空腹感も促進で悪循環
20世紀半ばの米国人は、ソーダ類の4倍量の牛乳を飲んでいたという。しかし、現在ではその割合が完全に逆転。

「肝炎研究センター」を国府台病院に設置へ:厚生労働省
ウイルス性肝炎の治療・研究で全国の中核になる「肝炎研究センター」を、国立精神・神経センター「国府台病院」内に設置する。

薬剤耐性のサルモネラ菌が増加中
特効薬の抗生物質が効かない新型耐性菌が増えていることが、厚生労働省の研究班の調査で分かった。

心不全につながるタンパク質を発見:治療薬の開発に期待
心臓が正常に動くために必要で、不足すると心不全につながるタンパク質を国立循環器病センターと大阪大などの研究グループが発見。

TOTOが新たな遺伝子検査技術を開発:既存技術の1/10の価格
検査対象となる遺伝子に光を照射し、発生した電子を電流値として検出する。。

医療機器の近くで携帯電話の使用は危険:人工呼吸器にも影響か
人工呼吸器のスイッチが切れたりペースメーカーが誤作動を起こす可能性もあると、オランダ研究チーム。

外径1.4mmの世界最細ステントを開発:患者への負担が低下
テルモなどが開発。従来のものより断面積が半分以下のため、より細い血管まで治療できる。

メタボリック・シンドロームは脳にも悪影響
メタボリック症候群の人は、脳の老化などが原因とされる「白質病変」が見つかる割合が高い。

骨形成を抑制する脳内物質を発見:骨粗鬆症の治療薬に応用も
骨粗しょう症の画期的治療薬開発につながる成果として注目を集めそうだ。

9月のトピックスのまとめ Vol.2

9月の医学ニュースのスクラップ(その2)

勃起不全(ED)治療薬「シアリス錠」が発売
服用後36時間、効果が持続する男性の勃起不全(ED)治療薬「シアリス錠」(一般名タダラフィル)が、日本でも発売された。

乳酸菌「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株」でアトピー改善
継続摂取することで、アトピー性皮膚炎の症状が緩和されることを二重盲検試験で確認した。

前立腺がんのPSA検査:厚労省と学会が異なる見解
PSAは「前立腺特異抗原」と呼ばれる酵素。ある値以上の場合、がんなどの可能性が高くなるとして精密検査が勧められる。

予防医療で医療費増大の抑制目指す:厚生労働白書
高齢化の進展で2030年には75歳以上の後期高齢者が現在の約2倍の2266万人となり、医療費の大幅な増大も避けられないと分析。

禁煙法施行のアイルランドで心臓発作が減少
アイルランドでは、自宅を除くほとんどの室内での喫煙を禁じる法律を施行。全国一律の禁煙法は当時、世界でもまれだった。

大気汚染と呼吸器疾患の関係解明へ大規模調査:環境省
今年12月に対象の住民に質問票を郵送して健康状態を調べ、来年度からは肺機能などの検査も行う。10年度に結論を出す予定。

アルツハイマー病が進行するメカニズムを解明:熊大研究グループ
アルツハイマー病の国内患者は約200万人。炎症などが原因で引き起こされる場合が多い。

脳神経の送受信回路の一端を解明:統合失調症の治療へ期待
シナプスの複雑な送受信回路の一端が明らかになり、発症メカニズムの解明が進むと期待される。

熱中症による救急搬送:猛暑の影響で例年の3倍
記録的猛暑となった今年8月、熱中症で病院に運ばれた人が例年の3倍近くにのぼったことが7日、総務省消防庁のまとめでわかった。

閉経後の女性が骨粗鬆症になりやすいメカニズムを解明
加藤教授は「閉経してエストロゲンが減ると破骨細胞が増えすぎ、骨が減ってしまう」としている。

非配偶者間の体外受精:日本産科婦人科学会が見送り要請へ
生殖補助医療のルールづくりを検討している日本学術会議が来年1月に結論を出すまで、実施を見送るよう要請する方針を決めた。

C型肝炎のインターフェロン治療を全額助成へ
インターフェロンは他の薬と併用すれば肝炎ウイルスを除去する効果があり、B型肝炎の約4割、C型肝炎の約6割が完治するとされている。

前立腺がんの予防に赤ワインのリスベラトロールが有効か
マウスに投与した結果、前立腺がんの大半の種類で発症率が87%減少したとの研究結果を発表。

喫煙で認知症の発症リスクが増大:オランダ研究チーム
エラスムス・メディカル・センターのモニーク・ブレテラー博士が率いる研究チームによる追跡調査。

アメリカで子供の躁うつ病が急増:10年間で40倍に
躁うつ病だと診断される米国の子供の数が1994年からの10年間に40倍の80万人に急増中。

白血病患者の卵巣を冷凍保存:将来の妊娠に備える
不妊治療専門のクリニックが、都内に住む白血病の女性の卵巣の一部を、放射線治療などで傷つく前に採取して凍結保存。

糖尿病患者、予備軍はアルツハイマー病のリスクが4.6倍
九州大学の清原裕教授(環境医学)らによる追跡調査。アルツハイマー病のほか、がんや脳梗塞、心臓病も発病しやすい。

性機能不全治療薬に筋ジストロフィーの進行抑制効果
米ハーバード大シュライナー病院と東京大の研究チームが動物実験で突き止め、米科学誌で報告。

花粉症対策:無花粉スギの開発や植え替えを目指す
15都府県の計約9.5万ヘクタールのスギ林の半分について、今後10年間で花粉の少ない品種や広葉樹に植え替える方針。

エーザイの「アリセプト」が新効能・新用量追加の承認を取得
国内において高度アルツハイマー型認知症に係る効能・効果および用法・用量追加の承認を取得。

広がる「ピンクリボン運動」:乳がん検診を呼びかけ

10月は「乳がん月間」だが、乳がんを早期発見して治療しようと呼びかける「ピンクリボン運動」が各地で広がっている。患者や家族、医師らによるユニークな活動が生まれているほか、社会貢献として取り組む企業も増えてきていす。

ピンクリボン運動について

三重大学付属病院が中心となって2年前にできたNPO法人「三重乳がん検診ネットワーク」は、三重県内の主な医療機関が参加し、マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)を使った乳がん検診の情報を共有するシステムを作った。

同意した受診者には「登録カード」が配られ、どの医療機関で検診を受けてもカードに結果が蓄積される。「下手な診断はできないと医師も気を引き締め、早期発見や的確な診断につながる」としている。

花王グループは10月を「ピンクリボン100万人キャンペーン」期間とし、美容アドバイザーを通して啓発冊子100万部を配る。化粧品会社のエイボン・プロダクツは乳がん啓発のチャリティー商品を販売し、マンモグラフィー設置などを支援するほか、民間活動団体への助成を昨年から開始。9月に16団体への助成を決めた。

乳がんは早期に発見すれば治癒率が高いが、日本では検診率が10%と低く、毎年1万人が亡くなっている。NPO法人「乳房健康研究会」の副理事長で、聖マリアンナ医科大教授の福田護さんは、「死亡率を下げるためには早期発見が大事。乳房触診や自己検診では十分とは言えない。精度が高い検診のできる施設で受診を」と話す。(YOMIURI ONLINE)

乳がんについて
乳がんは、1.子供を生んだことのない人、2.30歳を過ぎてから初産を経験した人、3.初潮が早くて閉経が遅い人、4.脂肪摂取量の多い人、5.肥満傾向の人、6.親や姉妹など近親者に乳がんになった女性がいる人、などに発症が多く見られる傾向があります。
このことから、乳がんの発生・増殖にはホルモン(とくに妊娠・出産・授乳に関係する女性ホルモン)のバランスが多く関係していると考えられています。

現在、日本では、年間2万人の乳がん患者が発生しているますが、患者数は今後も増加が予測され、近い将来、乳がんは胃がんを抜いて女性の部位別がんの死因の1位になるとされています。

関連記事:乳がんリスクは飲酒で増大:米保険会社の調査結果

タミフルに脳細胞を興奮させる作用:ラット実験で確認

インフルエンザ治療薬タミフルに脳細胞を興奮させる作用があることを、米ワシントン大学の和泉幸俊教授(精神医学)らがラットを使った実験で初めて明らかにした。内容は10月9日発行の医学専門誌「ニューロサイエンス・レターズ」に掲載される。

タミフルについて

タミフル服用と異常行動の関係については、タミフルを飲んだ10代の子が自宅マンションから飛び降りて死亡するなどの問題が相次いだ。

和泉教授らは、ラットの脳から取り出した神経細胞を、タミフルと、タミフルが体の中で分解された時にできる薬効成分のOCBという化学物質の水溶液にそれぞれ浸した。
すると、どちらも約10分後に神経細胞の活動が過剰に盛んになった。各薬物を洗い流した後も、40分以上神経細胞の興奮は続いた。
タミフルそのものよりも、OCBの方が約30倍も作用は強かった。人間で未成年に異常行動が相次いでいるため、今回は思春期前の子どもに相当する生後1カ月の幼いラットの神経細胞を使った。

また、エフェドリンという風邪薬に含まれる成分や、アルコールを、タミフルと同時に幼いラットに摂取させると神経興奮作用が強まることもわかった。

脳には、血中の物質を脳内に通すかどうかを選別する血液脳関門という脳を守る特別な機能があるが、エフェドリンやアルコールは、血液脳関門のガードを緩めることがわかっている。

和泉教授は、思春期前の子では血液脳関門の機能が未熟であることや、ガードを緩める作用があるものと一緒に飲むことで、タミフルが関門をすり抜けて脳に到達し、神経細胞に作用するのではないか、と推測している。(asahi.com)

インフルエンザについて
約200種類もある風邪のウイルスの中の一種「インフルエンザウイルス」の感染で起こります。インフルエンザウイルスにはA・B・Cの3種類があり、A型はさらに5つのタイプに分かれています。
流行するのはA型とB型ですが、どちらかというとA型のほうが流行の範囲や規模が大きく、短い期間で流行を繰り返します。

インフルエンザはほかの風と違い全身の症状が強いのが特徴です。
突然、39度前後の高熱が出てから、寒気がして頭痛や関節痛などの痛みがあり、同時に手足や腰の筋肉痛やだるさなどの全身的な症状も出てきます。そしてほぼ同時にのどが痛み、咳が出て、声がれや鼻水が出るなどの呼吸器症状が強くなります。

このような症状が3、4日続くと熱が下がり始めて、苦しかった全身症状や呼吸症状も軽くなっていきます。順調なら1週間から10日ほどでよくなります。

関連記事:タミフルに続いてリレンザ、シンメトレルでも副作用報告

子宮頸がん予防ワクチンを承認申請へ:グラクソ・スミスクライン

グラクソ・スミスクラインは、子宮頸がん予防ワクチン(海外名:サーバリックス)を国内で初めて厚生労働省に承認申請したと発表した。
子宮頸がんの原因とされるヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、検出頻度が高い16型と18型などに感染するのを予防する。

子宮頸がん予防ワクチンについて

このワクチンはこれまで海外において4万人以上を対象とした臨床試験で効果が検証されてきた。それらの試験からHPV16型と18型によりおこる前がん病変に対して、5年半までの間100%の予防効果を示し、高い安全性のあることが確認されたとしている。

子宮頸がんについて
初期には自覚症状はありませんが、そのうち月経が不順になったり、性交後の出血や、さまざまなおりものが現れてきます。
さらに進行すると普段でも出血がみられるようになり、下腹部の痛みや発熱、やがては排尿困難、排便困難が起きてきます。全身に転移すると貧血、食欲不振、体重減少などが現れます。

子宮頸がんの治療は進行の程度によって異なります。初期のものは子宮さらにはリンパ節を摘出する手術を行うのが一般的です。きわめて初期のものには、子宮を摘出しないですむレーザー治療を施すことも多くなっています。

ほかに重大な病気があって手術が無理な場合は、放射線療法を行います。進行したものには放射線療法、化学療法、免疫療法、温熱療法などを組み合わせて行います。

関連記事:急増する子宮頸がん:相次ぐ予防ワクチンの開発

乳がんリスクは飲酒で増大:米保険会社の調査結果

米保険大手カイザー・パーマネンテが発表した調査結果によると、女性が毎日飲酒した場合、乳がんになるリスクが拡大する傾向が確認された。酒の種類を問わず、健康に良いとされる赤ワインでも発生率が高まった。

乳がんについて

調査は約7万人(うち2829人が乳がん発病)を対象に実施。ワインなどを毎日3杯以上飲む女性の乳がん発生率は、ほとんど飲まない女性より30%高かった。
同社研究員は「毎日3杯以上の飲酒が乳がん発生率拡大につながるのは、毎日1箱以上の喫煙が肺がん発生率拡大につながるのと似た関係にある」と警告した。

毎日1、2杯飲酒する女性の乳がん発生率も10%高かったため、家族に乳がん患者がいる場合などは飲酒習慣に注意が必要だと助言した。

飲酒と乳がんリスクの関連性は指摘されてきたが、血圧低下などの効果がある赤ワインは例外との意見もあった。しかし、今回の大規模調査で、赤ワインやビール、ウイスキーの間に違いはなく、アルコール摂取量が発がん率を左右する傾向が分かった。ただ、リスクを高める原因は未解明という。(時事通信)

乳がんについて
日本人女性の乳がんにかかる割合は、欧米諸国に比べると低率です。しかし、社会環境の欧米化にともなって最近は急速に増加しています。乳がんで最も多いのは40代後半で、次いで50代前半、40代前半の順で、25歳以下はまれです。

乳腺に触れると、硬いしこりを感じます。しこりは表面が凹凸で、進行すると周囲の組織と癒着して、動かなくなります。流産を繰り返した人や高齢出産、出産しなかった人などに多いですが、動物性脂肪のとりすぎなど食生活とも関連があると考えられています。

乳がんの手術には大きく分けて、温存術と全摘術があります。生存率は変わりませんが、外見的なことや運動機能に違いが出てきます。また、温存する場合は、局所再発率が高くなるので、放射線療法が欠かせません。
どの場合でも温存療法が選択できるわけではなく、がんが広範囲に及んでいる場合や放射線療法治療ができない妊娠中などは、全摘術が選ばれることになります。

最近では、皮下乳腺全摘術という方法もあります。従来の全摘術より乳房再建がしやすいうえ、根治性や局所再発率も全摘術と変わらないので注目されています。

関連記事:乳がんの遺伝子検査:有効性を確認、国内で開始へ

神戸大学病院に美容外科を新設:脂肪吸引やフェイスリフト

神戸大学病院は、新たな診療科となる「美容外科」を10月1日に設置すると発表した。同病院によると、国立大学付属病院が独立した専用外来施設を持つ美容外科を設置するのは初めて。

神戸大学病院の美容外科について

新設の美容外科は、既存の形成外科の医師数人と、看護師、エステティシャン各1人を置き、外来初診を週3日受け付ける。しわやたるみの除去(フェイスリフト)、脂肪吸引、レーザー治療などを利用したアンチエイジング(抗加齢)を施す。完全予約制で費用はすべて保険診療外。

新診療科開設に取り組んだ田原真也教授(形成外科長)は「美容外科は、診療技術に対する客観審査もなく、一部に質の悪い診療もある」と指摘。「社会には美容整形に対する偏見もあるが、大学に診療科ができることで啓発ができるのではないか」と期待している。(産経新聞)

脂肪吸引とは?
脂肪を減らしたい部位の皮膚を小さく切開して、カニューレという細い管を挿入して、脂肪を吸引します。傷口は小さいものの、出血や組織の損傷が大きい手術です。
手術前には、レントゲン検査、血液検査、肝機能検査などが不可欠です。術後のケアも慎重に行う必要があるので、最低2〜3日の入院が必要です。

脂肪吸引で皮下脂肪は取れますが、内臓脂肪は取れません。また、心臓病や糖尿病の人、貧血の程度の重い人などは、脂肪吸引術は受けられません。

フェイスリフトとは?
顔のたるみや大きなしわを取るフェイスリフトには「ミニ・フェイスリフト」と「トータル・フェイスリフト」があります。ミニ・フェイスリフトは、皮膚だけを引き上げ、余った皮膚を切除・縫合するものです。トータル・フェイスリフト、皮膚の下にある筋膜まではがして引き上げる方法で、効果が高く、一般的にフェイスリフトといえば、こちらの方法を言います。

手術方法は、耳前部を切開し皮膚と筋膜を剥離させます。次に筋膜と筋肉を剥離させます。こうして1枚の膜状になった筋膜を最も効果的にたるみが取れる方向に引っ張ります。顔だけでなく首のたるみも解消できます。

局所麻酔で行えますが、術後の出血や腫れをチェックするために、1〜3日の入院が必要です。また、切開部の傷が治るまでは、UVクリームを使用して紫外線による色素沈着を防ぎます。

日本人はピロリ菌感染で胃がんリスクが上昇:遺伝子解析結果

日本人はヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると胃がんになりやすい体質であることが、名古屋大学の浜島信之教授(予防医学)らの研究でわかった。
調査によると、日本人とブラジルに住む日系人約1500人の遺伝子を解析、96%が感染によって胃がん発症リスクが高まる遺伝子タイプだった。10月3日から横浜市で開かれる日本癌学会で発表する。

ピロリ菌

塩分の取り過ぎや喫煙などでも胃がんになりやすくなるとされている。胃がん予防に対するピロリ菌の除菌効果について医師の間でも意見が分かれているが、浜島教授は「日本人は積極的に除菌した方がよい」と話している。(NIKKEI NET)

胃がんについて
胃がんは日本人に発症するがんのなかで、最も多いがんです。40歳代から増え始め、60歳代が最も多くなります。男女比は、ほぼ2:1と男性に多くみられます。
以前は、死亡率もトップでしたが、近年は低下しています。これは健康診断などで、胃がんの約60%が早期のうちに発見されるようになったためです。早期胃がんは、適切な治療をすることで、90%程度は完治します。

しかし、スキルス胃がんというタイプは、早期発見しにくいのが現状です。これは、胃の表面にはあまり出ずに、胃壁の中を広がって大きくなるタイプで、若い女性に多く見られます。スキルス胃がんは、胃がん全体の約10%を占めています

がんが進行すると、病変部に潰瘍をつくるため、胃の痛みや出血といった症状が現れます。激痛ではなく、みぞおちに焼けるような痛みを感じます。
胃炎や胃潰瘍の痛みとの区別は難しいのですが、胃がんの場合は食後に痛むことが多いとされています。また、食事がのどを通りにくくなる、胃が重いなどの症状が出てきます。ただ、がんが進行しても症状が出ないこともあります。

関連記事:ピロリ菌の増殖抑制物質を人工合成:理化学研究所

飲酒で赤ら顔の人は膵臓がんリスクが1.5倍:愛知県がんセンター

酒を飲むと顔がすぐに赤くなる体質の遺伝子を持つ人は、そうでない人より膵臓がんになるリスクが約1.5倍高いことが、愛知県がんセンター研究所の松尾恵太郎主任研究員らの調査で分かった。10月3日から横浜市で開かれる日本癌学会で発表する。

この顔は膵臓がんに注意!

松尾研究員らは、飲酒後に体内でアルコールが分解されてできる有害物質アセトアルデヒドの代謝能力が、3タイプある遺伝子型によって(1)正常 (2)低い (3)ほとんどない−と違うことに注目。2001〜05年に膵臓がん患者138人と、がんでない690人を対象に、遺伝子型や飲酒量を比較調査し、年齢や生活習慣を加味して膵臓がんのリスクを計算した。

その結果、日本人の約5割を占めるとされるアセトアルデヒドを正常に代謝できる人に比べ、約4割の人は代謝に時間がかかるため、飲酒で顔が赤くなりやすく、このリスクが1.5倍だった(shikoku.news)。

膵臓がんについて
膵臓がんは50〜70歳の男性に多くみられます。全体の9割は、外分泌(消化液の分泌)に関連した細胞にでき、特に膵液が運ばれる膵管に発生します。
早期がんでは目立った症状は現れず、進行とともに上腹部痛や背中の痛み、食欲不振、体重減少などの症状が出てきます。

がんが十二指腸に近い膵頭部に起こると、胆管を圧迫するために胆汁の通過障害が起き、閉塞性黄疸が現れます。

膵臓がんの治療は、がんを切除する手術が基本です。膵頭部のがんでは、胃や十二指腸、総胆管や胆嚢をいっしょに切除します。脾臓に近い膵尾部のがんでは、膵体部と脾臓を切除します。
浸潤が進み、切除できないケースでは、黄疸を改善するために総胆管にチューブを留め置き、胆汁の排出を促す対症療法が行われることもあります。

関連記事:超音波検査で膵臓がんの予備軍を判別:早期発見・治療に期待

動脈瘤の手術を覚醒状態で実施:オーストラリア

重症の動脈瘤の患者が、意識を覚醒したままの状態で手術を受けるという、世界初の画期的な試みがオーストラリアで行われた。手術中、医師は患者にカード上の文字や数字を読み上げるよう求め、意識を確認しながら作業を進めたという。

動脈瘤について

視力の低下とめまいを訴え、キャンベラ病院で診察を受けたこの患者(78)は、動脈瘤が右目の後部にあたる部分に確認された。手術により失明にいたる可能性もあるため、手術中に意識を覚醒しておく今回の新方式が採用された。

意識のある患者の頭部に開けたわずか直径1.5センチの穴から、最新技術を駆使して行われたこの手術について、キャンベラ病院の脳外科医師は、「さまざまな文献に当たったが先例はない」と述べている。

手術に先立ち医師は、患者の脳内イメージを3D化するソフトウエアを使用し、動脈瘤から血液を取り除くリハーサルを行って万全の準備を整えた。
実際の手術では、医師は片目にアイピースをはめて3次元脳内イメージを、もう片方の目で顕微鏡で拡大された本物の脳を、それぞれ確認しながら作業を進めた。

ソーダ類がアメリカ人の肥満の元凶か:空腹感も促進で悪循環

アメリカ人の肥満が増えた主原因に清涼飲料水のソーダ類が挙げられるとして、米国の消費者団体公益科学センター(CSPI)が、清涼飲料水の容器に警告を記載するよう、ロビー活動を続けている。
同団体は、「ソーダはジャンクフードそのもの」として、学校現場からのソーダ追放運動なども展開している。

ソーダと肥満について

米農務省の統計によると、20世紀半ばの米国人は、ソーダ類の4倍量の牛乳を飲んでいたという。しかし、現在ではその割合が完全に逆転。これと呼応するかのように、米疾病対策センター(CDC)の統計によれば、肥満の割合は30年前から倍増し、10代の若者に限れば3倍になっている。

ハーバード大学の内分泌学者デイビッド・ルドウィッグ博士も、ソーダ類が肥満の元凶だと唱える。同博士は2001年に米医学誌ランセットで、甘い飲料水が体重の増加と密接に関連しているとの研究報告を発表し、多くの肥満研究者に引用されている。

研究者や医師らがソーダ類を問題視する理由として、飲み物と食べ物では体の反応の仕方が違うことが挙げられる。熱量が同じ量だとしても、飲み物を摂取した場合は咀嚼が必要な食べ物よりも、糖分の吸収速度が速く、血糖値が急上昇する。

その結果、血糖量を下げる働きのあるインスリンなどが大量に放出され、この影響で血糖値が急降下し、さらに空腹感が増してしまう。このことから分かる様に、同じ熱量のハンバーガーとソーダ類を食べたとしても、摂取熱量は同じであるにもかかわらず、ソーダ類の場合は満腹感が得られにくいばかりか、空腹感が促進される可能性がある。(CNN)

肥満について
肥満は、消費するエネルギー以上のエネルギーを、毎日、長期にわたって摂取し続けることによって起こります。いいかえると、食べすぎ・飲みすぎが長い間続き、また運動量が減少することが原因です。

こういった過飲食は、多くの場合、食習慣や精神的な不満に原因しているといわれています。ただ、まれに、脳の視床下部や前頭葉の病変によって、食欲が異常に亢進することもあります。

内臓脂肪型肥満では、皮下脂肪型肥満に比べて、糖・脂肪代謝異常が著名であることがわかりました。この両者はCTスキャンで鑑別することができます。
肥満の大部分は単純性肥満で、ホルモンの異常が原因で太ることがわかっているのは、副腎皮質ホルモンの過剰分泌によるクッシング症候群が主なものです。

メモ
アメリカのバーガーキングでLサイズのセットを頼むと飲み物は1.2リットルのカップ(!)で出てきますからね。一昔前のLサイズは今のMサイズというステルス増量もしっかり施されています。
スーパーでは、日本の灯油のケースを髣髴とさせる巨大な容器でソーダを売ってましたし、あれでは肥満が急増するのも無理ないです。病院の中にもファーストフード店が進出してますからね。

1日3食のマクドナルド生活を1ヶ月続ける(栄養士が適当とした摂取量の8年分)とどうなるかを記録したドキュメンタリー映画「スーパーサイズミー」で、このあたりは詳しく解説されていますが、1日8リットル(!)のソーダを1年近く飲み続けた初老の男性とか、アメリカの肥満事情はもういくところまでいった感があります。

関連記事:友人や兄弟が肥満だと本人も肥満の傾向:ハーバード大研究班

「肝炎研究センター」を国府台病院に設置へ:厚生労働省

厚生労働省は来年度、ウイルス性肝炎の治療・研究で全国の中核になる「肝炎研究センター」を、千葉県市川市の国立精神・神経センター「国府台病院」内に設置することを決めた。
同病院を国立国際医療センターの分院にしたうえで、新たな施設を整備する。

肝炎研究センターについて

ウイルス性肝炎は、インターフェロンを使った治療法の進歩で完治率が高まっているが、治療のレベルは地域間で格差もある。このため国は2006年以降、各都道府県に1カ所ずつ、地域を統括する「肝疾患診療連携拠点病院」の選定を進めるとともに、拠点病院を指導・助言する中核施設の設置を検討していた。

一方、肝炎対策については、厚労省の有識者懇談会が1月、感染症医療の中核施設、国立国際医療センターでの対応が望ましいとの報告書をまとめた。しかし同センターは病棟建て替えで手狭になる問題があり、センターの組織に編入する形で、国府台病院が肝炎対策の主導的役割を担うことになった。

厚労省は来年度予算の概算要求で、肝炎対策費として79億円を計上し、新規事業として肝炎研究センターの整備費を盛り込んだ。これとは別に、インターフェロン治療の自己負担を軽減する医療費助成も政府・与党が検討している。(毎日新聞)

肝炎について
肝臓の細胞が大幅に破壊される病気を肝炎といいますが、そのなかでも6ヶ月以内に治ってしまうものが急性肝炎です。代表的なものとしてA・B・C型があります。
この急性肝炎が治らないまま6ヵ月以上経過し、肝臓の機能に異常がみられたり、肝臓に炎症が持続しているのが慢性肝炎です。B・C型がその代表で、A型は慢性化しません。

急性肝炎の症状としては、全身の倦怠感、食欲不振、吐き気などが現れ、とくにA型では38度程度の高熱がみられます。下痢や腹痛、皮膚の発疹なども見られることがあります。
やがて黄疸が現れてきて、この時点ではじめて肝臓が悪いと気づく場合が多いとされています。

慢性肝炎の症状は、急性肝炎ほど強くなく、疲れやすいとか食欲がない程度です。
患者の多くは急性肝炎の時期に気がつかないままやり過ごし、その後、風邪だと思って受診したり、健康診断の肝機能検査などで偶然発見されることが多いようです。
慢性肝炎が怖いのは放置すると肝硬変に進行する危険性があるからです。

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薬剤耐性のサルモネラ菌が増加中

サルモネラ菌による食中毒患者が年間に約5000人にも達しているなか、特効薬の抗生物質が効かない新型耐性菌が増えていることが、厚生労働省の研究班の調査で分かった。
日本で01年に初めて1件報告されて以降、これまでに少なくとも33件が確認された。乳幼児の患者が多く、薬が効かないため重症化する例が目立っている。

サルモネラ菌の画像です

サルモネラ菌は、動物の便に汚染された食品を食べるなど主に口から感染する。細菌性食中毒の原因の1、2位を争う細菌だ。治療の切り札(特効薬)はニューキノロン系の抗生物質だ。
だが、00年に大阪で食中毒になった乳児の便から、このニューキノロン系を含む大半の抗生物質が効かない耐性菌が見つかり、01年に初めて報告された。

厚労省研究班(班長、渡辺治雄・国立感染症研究所副所長)は、全国の衛生研究所などの協力を得て調査を開始。01年の報告後、ニューキノロンが効かない新型耐性菌が毎年確認され、06年は10件に上った。新型耐性菌は同年までに計33件確認され、そのうち16件は10歳以下の乳幼児か子供で、ニューキノロン系のほか7〜10種類の別の抗生物質も効かなかった。

ニューキノロンの基礎になった抗生物質に対する耐性を獲得した菌も増えていた。この抗生物質は、腸炎や膀胱炎などの治療に現在も使われている。人から検出されたサルモネラ菌に対する耐性菌の割合は99年に0.5%だったが、06年は4.5%だった。
この耐性菌は遺伝子のわずかな変異でニューキノロン耐性になってしまう。すでに「予備軍」が広がり始めていることになる。(asahi.com)

食中毒について
急性腸炎のひとつです。食品中で増殖した最近が体内に入ってさらに増加し、胃腸に直接作用するタイプ(サルモネラ菌などの感染型)と食品中で増殖した細菌が毒素を生産して胃腸に作用するタイプ(黄色ブドウ球菌などの毒素型)があります。

感染型が潜伏期間が12時間から2、3日と長く、主な症状は38度以上の発熱、腹痛、嘔吐、下痢などです。一方、毒素型は潜伏期間が数時間から1日と短く、主な症状はほぼ同じですが、発熱はありません。

家庭での手当てで自然に回復することもありますが、症状が出るまで時間の短い毒素型は、重症化しやすく、受診が必要です。感染型でも、下痢などの症状がひどい場合には受診します。
血便や強い倦怠感をともなう腸管出血性大腸菌(O-157)によるものでは、生命にかかわることもあるので、緊急に受診が必要です。

病院での治療は、原因や症状にもよりますが、脱水を防ぐための補液、抗生剤の使用が基本です。

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心不全につながるタンパク質を発見:治療薬の開発に期待

心臓が正常に動くために必要で、不足すると心不全につながるタンパク質を国立循環器病センターと大阪大などの研究グループが発見した。心臓への負担が少ない心不全治療薬の開発につながる可能性がある。米医学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」の電子版に発表した。

心不全について

発見されたたんぱく質はミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)と呼ばれる酵素の心臓特異型。12人の重症心不全患者から治療のために切り取った心筋を使い、そこで働く遺伝子を調べた。
すると、心不全の症状の重さと関連の深い遺伝子が特定され、その遺伝子が作りだすMLCKが少ないと、心不全になる傾向が強いことがわかった。

心筋内のMLCKが足りない熱帯魚を遺伝子操作でつくったところ、心臓収縮の原動力となる筋細胞内の配列が乱れ、心臓が大きくなって拍動に異常が現れ、心不全と同じ症状になった。
ラットの実験でも、MLCKが心筋細胞内の規則的な配列を維持し、心臓が正常に収縮するために必要なことがわかったという。

循環器病センターの北風政史・心臓血管内科部長は「弱った心筋を酷使する従来の強心剤は心臓への負担が大きい。心臓のMLCKの働きを活性化することで壊れた心筋を修復し、副作用も少ない心不全治療薬の開発につながる」と話す。(asahi.com)

心不全について
心臓の左右の心室は収縮することで流れ込んできた血液を心臓の外へ送り出します。
右心室なら全身をめぐってきた血液をガス交換のために肺に送り込み、左心室なら肺から来た新鮮な血液を全身に送ります。

心室の収縮力が低下すると、このようなポンプとしての役割が果たせなくなって、身体に必要なだけの血液が送り出せなくなります。右心室の力が低下すると、静脈から入ってきた血液が使えて静脈系がうっ血するため右心不全となります。
一方、左心室の力が低下すると全身に血液が遅れなくなり、肺静脈からの血液が停滞して肺静脈がうっ血するため、左心不全となります。

心不全の症状ですが、右心不全の場合は、静脈からのうっ血から静脈が膨れ上がり、肝臓が腫れて身体全体がむくんできます。左心不全の場合、軽いうちはじっとしていれば症状は出ませんが、身体を動かすと血液が不足して、動悸や息切れが起きてきます。
さらに症状が進行してくると、就寝中に咳が出て呼吸困難になり、ヒューヒュー、ゼーゼーというようになります(心臓喘息)。

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経口避妊薬が発がんリスクを減少させる可能性:英国研究グループ

「ピルの使用は発がんリスクの増大にはつながらず、大部分の女性については、発がんリスクを減少させる可能性がある」との研究結果が、英医学誌「British Medical Journal(BMJ)」インターネット版に掲載された。

ピルと発がんリスクの関係について

この研究は、アバディーン大学のチームが、イギリス国内の女性4万6000人(平均年齢29歳)を対象に、1968年に開始された。このうち約半数の女性が経口避妊薬を摂取しており、残りは、一度も経口避妊薬を摂取したことのない女性。

同研究チームは、ピル使用者に全体的な発がんリスクの増大は見られず、データ群によって異なるが3〜12%の発がんリスク減少が確認されたと述べている。

研究結果によると、「経口避妊薬と全体的な発がんリスクの増大に関連性は見られず、経口避妊薬が公衆衛生上の利益をもたらしている可能性もある」という。

2005年には、別の研究者により、乳がんを患う可能性が高い若い女性が経口避妊薬を摂取することで、乳がんの発がんリスクを減らすことができる、との調査結果が示されていた。

経口避妊薬(ピル)について
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を配合した薬を飲むことにより、排卵を起こさせないようにして避妊します。飲み忘れなければ避妊効果はほぼ100%といわれています。

世界的には、ホルモンの量が多い中用量ピルが使われていましたが、改良を重ね、少ないホルモン量で副作用が少なく、確実に避妊できる低用量ピルが開発されました。

日本では何種類かの低用量ピルが承認されています。飲み方は月経開始初日から1日1錠を服用し、21日間つづけます。その後7日間は服用を中止し、8日目から再服用します。
ただ、ピルの種類によって多少違うので、飲み方を医師に確認しましょう。

なお、ピルを飲んでいるときは妊娠しているときと似たホルモンの状態になっているため、吐き気やおりものの増加、乳房が張るなどの副作用が現れることもあります。
一方、ピルを飲むことにより、月経痛がやわらぐ、月経に伴う腰痛が軽くなる、月経の日数が短くなるなどの効用もあります。

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うつ病治療薬「リタリン」の効能効果取り下げを申請へ

うつ病などの治療薬として承認されている向精神薬「リタリン」による薬物依存が多数発生しているとして、製造販売元のノバルティスファーマは、うつ病についての効能効果を取り下げる方針を固めた。近く薬事法に基づき厚生労働省に取り下げ申請する。
不適切使用を理由に製薬会社が薬の効能を狭める申し出をするのは、極めて異例。

リタリンについて

取り下げが認められれば、うつ病患者への処方は医療保険が適用されなくなる。
その後も保険外診療での処方は医師の裁量で可能だが、効能を外すことで安易な処方を食い止める狙いがある。

リタリンはうつ病治療薬として販売開始。現在は「難治性うつ病」「遷延性うつ病」のほか、日中突然眠くなる睡眠障害「ナルコレプシー」の効能が承認されている。同社はこのうちうつ病についての効能を外す方向で、準備を進めている。

背景には、脳波検査などできちんと診断できるナルコレプシーに比べ、自覚症状に基づき診断されるうつ病に対しては、不適正な処方がされやすいなどの事情がある。
またリタリンが使えなくてもうつ病治療には多様な新薬が登場しており、患者の不利益は限定的という。

同社は90年代半ばから厳密な診断や処方を求める文書を医師に配布、注意を促している。(asahi.com)

ナルコレプシーとは?
睡眠障害の一種で、原因ははっきりとわかっていませんが、遺伝的な体質によるものという説もあります。まれな病気ですが、青年期の男性に多く起きます。

ナルコレプシーの症状は、ほとんど毎日、昼間に突然強い眠気を感じて居眠りしてしまうのが特徴で、大体の場合が20〜30分以内にすっきりと目が覚めます。
眠気は本人の意思と関係なく、試験やスポーツの試合あるいは重要な会議でも眠ってしまうほど強力です。この症状に伴って、笑ったり怒ったりすると急に体の力が抜けたりする脱力症状も現れることもあります。

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TOTOが新たな遺伝子検査技術を開発:既存技術の1/10の価格

TOTOは20日、新たな遺伝子検査技術を開発したと発表した。既存技術に比べて検査装置の価格を10分の1に抑えられる。検査対象となる遺伝子に光を照射し、発生した電子を電流値として検出する。
従来装置に使われてきた光学系検出器などの高価な部品が不要になる。尿の成分を分析するセンサーの技術を応用した。

遺伝子検査について

臨床検査機器メーカーなどと連携して、2010年の実用化を目指す。今後、ウイルスや微生物の遺伝子検査にも活用、感染症対策などにも役立てる。(NIKKEI NET)

遺伝子検査について
患者のDNAに存在する遺伝子情報に基づいて治療したり投薬したりする医療行為はテーラーメード医療と呼ばれています。遺伝子の配列に基づく診断によって、各個人が生活習慣病にかかりやすい体質かどうかの診断ができ、生活習慣病の効果的な予防が可能です。

また、様々な薬の効きやすさ、副作用の有無などを予測し投薬することが可能となります。例えば効き目が強くても副作用のない体質に合った抗がん剤を選択することや、薬を多量に投与したが実はあまり効き目がなかったというような、医療費のムダを防ぐことができます。

植物性胃腸薬の百草丸にピロリ菌の除菌効果

長野県の御岳山ろくに古くから伝わる植物性胃腸薬の百草丸に、胃かいようや胃がんの原因となるピロリ菌を除菌する効果があることが、星薬科大学応用微生物学教室と長野県製薬の共同研究で分かった。10月6日の日本薬学会関東支部大会で発表する。

ピロリ菌

実験には、同社製品の「御岳百草丸」のほか、成分として含まれる生薬のオウバク、コウボク、ゲンノショウコエキスを使用。それぞれを溶かした液体に浸したろ紙を、ピロリ菌の培地に置き、菌が増殖していく状況を見た。すべての培地で、増殖を阻止したことを示すピロリ菌の空白部分ができた。

ピロリ菌の代わりに、腸内の状態を整える働きのある大腸菌の培地でも調べた。いずれも増殖に影響せず、ピロリ菌だけに除菌力を発揮することが分かった。

研究チームによると、ピロリ菌除菌治療は通常、抗生物質を含む複数の薬を服用して行う。抗生物質による味覚障害や、アレルギー、腸内細菌の働きを乱すことによる下痢といった副作用が起きる場合がある。(中日新聞)

ピロリ菌について
正式名称をヘリコバクター・ピロリといいます。螺旋状の形をしていて、胃の粘膜に住みついています。胃の中に入ってきた細菌は通常、胃酸によって殺されますが、ピロリ菌は持っている酵素によって、胃の中にある尿素をアンモニアに変え、アルカリ性のアンモニアで胃酸を中和して、胃酸の殺菌作用を逃れているのです。

ピロリ菌は胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がんの原因になるのではないかといわれています。ただし、ピロリ菌が陽性でも潰瘍が起こらない人、陰性でも潰瘍を起こす人がいて、ピロリ菌だけが原因とはいえません。他の因子(ストレス、食生活、体質、喫煙など)も関係していると考えられています。

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特定健康診査に対応の血液分析装置「メタボライザー」

日立製作所は、メタボリックシンドローム特定健康診査に必要な8項目の血液検査ができる卓上型自動血液分析装置「メタボライザー 日立クリニカルアナライザーM40」を2発売する。
昨年発売した機種と比べ、新たにHbA1c、LDL-C(いわゆる悪玉コレステロール)、NH3を加え、生化学項目+CRPの23項目が測定可能となった。また、処理能力も4倍になった。

メタボライザー

分析にウエットケミストリー方式を採用し信頼性の高い検査の結果が得られる。
診療の場で検査結果が得られるので、外来迅速検体検査加算も可能としている。

メタボリックの特定健康診査・保健指導が40〜74歳の健康保険加入者を対象に来年4月から始まるため、小規模な医療機関での検査需要が増えると予想。2008年度は国内で200台の販売を目指す。(asahi.com)

特定健康診査に必要な8項目の血液検査

  • 血糖検査…空腹時血糖またはHbA1c
  • 脂質検査…TG(中性脂肪)、HDL-C、LDL-C
  • 肝機能検査…GOT(AST)、GPT(ALT)、γ-GTP

メタボリック症候群
生活習慣病には高血圧、糖尿病、高脂血症などがあります。これらの疾患は内臓に脂肪が蓄積した肥満が原因であるとされ、内臓脂肪によりさまざまな病気が引きおこされる状態をメタボリック症候群といいます。

高血圧、高脂血症、糖尿病などひとつひとつの症状は軽くても、複合すると心筋梗塞や脳梗塞のリスクが急激に増大することから注目されています。

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