全国民に肝炎検査の実施へ:厚生労働省が新指針

厚生労働省は、国内に患者が300万人以上いるとされる国内最大の感染症「ウイルス性肝炎」の検査について、全国民が少なくとも1回は受けるように働きかける基本指針を大筋でまとめました。

指針では、国や地方自治体が、検査や情報提供を行なう整備体制の必要性を強調しており、また感染者が治療を受けながら働くことができるよう企業に協力を求めることも定められています。

ウイルス性肝炎は感染経路がさまざまなうえ、感染しても自覚症状が現われにくいため放置している方も少なくありません。治療を受けずにいると慢性肝炎、肝硬変、そして肝がんへと進行し、年間約4万3000人が亡くなっていると推定されています。しかし、ウイルス検査の実施主体が、市町村、事業主などに分かれているため、どれくらいの人が検査を受けているか実態が把握できていませんでした。

そのため、厚生労働省は全国民が少なくとも1度はウイルスの有無を調べる検査を受けられるように態勢を整える方針を決定。肝炎対策基本法に基づく指針として、患者団体や専門医らが参加する協議会において了承されました。 来年度から市町村が実施する出張検診の支援や、患者の治療相談に応じるコーディネーターの育成といった事業が開始されることになっています。

2月のトピックスのまとめ

レンコンと乳酸菌の配合物(ALLESTO-U)で花粉症が緩和
レンコンの成分が、体内のアレルギー反応を増幅させるリンパ球の発生を抑え、結果として花粉症の原因となる抗体の発生を抑えるという。

献血時の無料検査で糖尿病判定:日本赤十字
糖尿病が予備軍も含めると約1600万人に上るとされ、今や国民病となったことを受けた対応。関心の高い検査項目の追加で、深刻化する献血者の減少傾向に歯止めをかける狙いだ。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の悪化原因となる細胞を特定
ALSの進行に、神経細胞のネットワーク作りに重要とされるグリア細胞のうちの2種類が関係していることを、理化学研究所などのチームが突き止めた。

あごの骨を骨髄細胞で再生:重度の歯周病対策に
重い歯周病でひどくやせたあごの骨に骨髄の細胞を入れ、骨を再生させる治療が成果をあげている。東京大医科学研究所の臨床試験で、インプラントを入れられる状態まで骨が厚くなった。

脱毛・抜け毛に真皮の再生医療:国立循環器病センター
美容外科手術などであまった他人の健全な頭皮で毛の生えやすい基盤をつくり、髪の毛が少ない人の頭髪をよみがえらせる再生医療の研究を、国立循環器病センターなどのグループが始める。

脳脊髄液減少症の「ブラッドパッチ治療」:保険適用求め署名提出
交通事故やスポーツなどの衝撃をきっかけに、激しい頭痛やめまいに襲われる「脳脊髄液減少症」の患者団体が、治療法の保険適用などを求めて舛添厚生労働相に35万人分の署名を提出。

新タイプのアルツハイマー病を発見:大阪市立大教授ら
このタイプは、これまでと異なる遺伝子配列の変異が原因で、老人斑を標的にした診断法や治療薬の開発だけでは十分でない可能性が出てきた。

カテキンの血中濃度が高いと胃がんリスクが減少か
緑茶に含まれるカテキン「エピカテキン3ガレート(ECG)」の血中濃度が高いと、女性では胃がんにかかるリスクが最大で7割抑制できることを、大規模疫学調査で突き止めた。

子宮に戻す受精卵を原則1個:日本産科婦人科学会
体外受精して子宮に戻す受精卵を原則1個にする見解案を承認した。35歳以上か、2回以上続けて妊娠しなかった患者は、2個まで戻すことを容認する。

内視鏡による大腸がんの集団検診:秋田県仙北市で全国初
内視鏡は直接目で確認できるため、異常を発見しやすいとされる。しかし、健康保険が適用されず、費用が1回1万5500円と高額で、集団検診には導入されていない。

リンパ浮腫の治療用装具に保険適用
乳がんや婦人科領域の手術などの後に起こる「リンパ浮腫」の治療用装具となる弾性スリーブや弾性ストッキングの購入費用が、今年4月から保険適用されることになった。

iPS細胞で先天性水疱症の治療法を研究:順天堂大医学部
患者の皮膚細胞からつくったiPS細胞に遺伝子を入れて異常が起こらないようにしてから体内に戻し、正常な皮膚を再生させることを目指す。

新型PET開発でがんの診断と治療を同時に:放射線医学総合研究所
筒形の装置を輪切りに2分割した形で、空間部分から治療ビームの照射ができ、治療の精度向上につながるという。

聴覚細胞の再生で突発性難聴を治療
突然耳が聞こえにくくなる突発性難聴に対し、聴覚細胞を再生する世界初の治療を、京都大病院耳鼻咽喉科の伊藤壽一教授らのグループが始めた。

自己細胞で椎間板再生:東海大チームが臨床試験を開始
手術で取り出した椎間板の細胞を、骨髄中の幹細胞を使い体外で活性化させてから患者に戻す方法で、世界初の試みという。

ES細胞から効率よく視細胞を作成:再生医療実現に一歩
網膜で光を感じる視細胞を、人間の胚性幹細胞(ES細胞)から効率よく作り出すことに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターが成功した。

脳脊髄液減少症の「ブラッドパッチ治療」:保険適用求め署名提出

交通事故やスポーツなどの衝撃をきっかけに、激しい頭痛やめまいに襲われる「脳脊髄液減少症」の患者団体が、治療法の保険適用などを求めて舛添厚生労働相に35万人分の署名を提出した。

脳脊髄液減少症は、衝撃で脳を保護する硬膜が破れ、脳脊髄液が漏れることによって起きるとされ、自分の血液を注入し、漏れている個所をふさぐ「ブラッドパッチ治療」が有効という。だが30万〜50万円かかる同治療法は保険適用されておらず、患者に大きな負担となっている。(YOMIURI ONLINE)

脳脊髄液減少症について
交通事故やスポーツなどによる衝撃で脳をおおう硬膜に穴があくと、脳と脊髄の周囲を循環している脳脊髄液が漏れて脳の位置が下がり、頭痛やめまい、倦怠感、吐き気、思考力・集中力の低下、睡眠障害などの症状が現れます。
立位や座位で症状が悪化し、横になると軽快することがあると言われていますが、全ての人に当てはまるわけではなく、症状が長期化すると体位による変動は少なくなるようです。

新タイプのアルツハイマー病を発見:大阪市立大教授ら

アルツハイマー病は、ベータアミロイドと呼ばれるたんぱく質がたまって脳に老人斑(シミ)、発病すると考えられていたが、シミを作らずに発病するタイプがあることがわかった。
大阪市立大の富山貴美准教授、森啓教授らが、米専門誌に発表した。このタイプは、これまでと異なる遺伝子配列の変異が原因で、老人斑を標的にした診断法や治療薬の開発だけでは十分でない可能性が出てきた。

アルツハイマー病は、ベータアミロイドがたまって線維になることで神経細胞が死に、発病すると考えられてきた。ところが最近、老人斑ができる前のベータアミロイドがいくつかくっついた段階で、神経細胞の働きをじゃますることで病気になることが、動物実験でわかってきた。

同グループは、ある患者でベータアミロイドをつくる遺伝子に変異を見つけた。その変異があると、老人斑はまったくできないのに発病することがわかった。

これらの結果から、アルツハイマー病の原因は、たまって線維になる前のベータアミロイドが関係している可能性が強いことがわかった。アルツハイマー病に詳しい井原康夫・同志社大教授は「見えないものが真犯人である可能性を提示した点で、非常に興味深い結果だ」と話している。(asahi.com)

アルツハイマー病について
脳の神経細胞が急激に破壊される認知症です。ついさっきのことを忘れるなどの記憶障害から始まり、症状は緩やかに進行します。初期には運動麻痺などの神経症状を伴わないのが特徴ですが、妄想などの症状は、比較的早く現れます。運動機能が保たれている分、徘徊などの行動が問題となります。

脳の神経細胞の病的な破壊が進み、神経が萎縮していくことが原因です。
アルツハイマー病になると、アミロイドベータという異常たんぱく質がたまることが突き止められてから、これを標的とする治療法の開発が進んでいます。

カテキンの血中濃度が高いと胃がんリスクが減少か

厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)は、緑茶に含まれるカテキン「エピカテキン3ガレート(ECG)」の血中濃度が高いと、女性では胃がんにかかるリスクが最大で7割抑制できることを、大規模疫学調査で突き止めた。

井上真奈美・国立がんセンター室長が全国に住む男女約3万7000人を12年間にわたり追跡。期間中に胃がんにかかった494人に、同数の胃がんにならなかった人を加えた988人を分析対象とした。血中に含まれるカテキンの濃度の高い順に3グループに分け、胃がん発症リスクとの関係を調べた。(NIKKEI NET)

胃がんについて
胃がんは日本人に発症するがんのなかで、最も多いがんです。40歳代から増え始め、60歳代が最も多くなります。以前は、死亡率もトップでしたが、近年は低下しています。
これは健康診断などで、胃がんの約60%が早期のうちに発見されるようになったためです。早期胃がんは、適切な治療をすることで、90%程度は完治します。

がんが進行すると、病変部に潰瘍をつくるため、胃の痛みや出血といった症状が現れます。激痛ではなく、みぞおちに焼けるような痛みを感じます。

胃炎や胃潰瘍の痛みとの区別は難しいのですが、胃がんの場合は食後に痛むことが多いとされています。また、食事がのどを通りにくくなる、胃が重いなどの症状が出てきます。

子宮に戻す受精卵を原則1個:日本産科婦人科学会

日本産科婦人科学会は、東京都内で理事会を開き、体外受精して子宮に戻す受精卵を原則1個にする見解案を承認した。35歳以上か、2回以上続けて妊娠しなかった患者は、2個まで戻すことを容認する。

体外受精では妊娠率を高めるため、複数の受精卵を子宮に戻す治療が行われている。当初の学会指針は「3個以内」だったが、昨年12月の理事会で「2個以内とし、可能な限り1個を目指す」とする見解案が承認された。今回、会員の意見を聞いた上で「原則1個」を決定。4月の総会で正式に決定される予定。

一方で、35歳からは妊娠率が低下するため「2個」を容認する選択肢も残した。受精卵は子宮に戻しても必ず妊娠に成功するとはかぎらないことから、今回の見解案によって不妊治療の経済的負担が増す可能性もあるが、学会は母体の安全を重視した。(産経新聞)

多胎妊娠とは?
多胎妊娠とは2人以上の胎児が同時に子宮内に存在する状態をいいます。
双胎妊娠には一卵性双胎と二卵性双胎とがあります。二卵性双胎は2個の受精卵から発生したもので、2個の胎盤があり、二絨毛膜二羊膜となります。
一卵性双胎は1個の受精卵が分裂することにより発生し、分裂の時期により二絨毛膜二羊膜、一絨毛膜二羊膜、一絨毛膜一羊膜のいずれかとなります。

多胎妊娠は、早産、妊娠中毒症、胎児発育や羊水の異常が合併しやすく、このような異常の早期発見、早期治療が非常に重要です。慎重な管理を行えば、このような合併症の発症を抑えることができますが、異常に気づくのが遅いと、赤ちゃんに重大な後遺症を残すことにつながる可能性があります。

内視鏡による大腸がんの集団検診:秋田県仙北市で全国初

秋田県仙北市が昭和大横浜市北部病院と連携し、40歳以上の仙北市民を対象に、内視鏡による大腸がんの集団検診を定期的に実施することが分かった。
同病院の工藤進英教授によると、内視鏡を使った大腸がんの集団検診は全国初めて。秋田県の同がん死亡率ワースト1を返上しようという試みで、内視鏡検診の有効性についても研究する。4月以降、同市立角館総合病院で実施する。

大腸がん検診は排せつ物を調べる「便潜血検査」が主流。内視鏡を使った検診は便潜血検査と併用する。内視鏡は直接目で確認できるため、異常を発見しやすいとされる。しかし、健康保険が適用されず、費用が1回1万5500円と高額で、集団検診には導入されていないという。

昭和大横浜市北部病院は、人工肛門を設けるしかないと診断された患者の大腸ポリープを内視鏡的粘膜切除で取り除くなど、大腸がんの診断と治療では国内トップレベルの技術を持つ。集団検診では、工藤教授ら同病院の医師グループが内視鏡を使って検査する。

内視鏡を併用した検診の有効性を研究するため、従来の便潜血検査と、大腸内視鏡検査でデータを10年間取り、運動、遺伝子なども調べ、死亡率減少効果を比較する。(YOMIURI ONLINE)

大腸がん
その形態によって腺がんと表在性のがんに分けられます。大腸がんの90〜95%を占めるのは、粘膜層の腸腺に発生する腺がんです。これは、大腸の内側にできるポリープ(良性腫瘍)の一部ががん化し、腸壁の内部まで浸潤していくものです。

このタイプの大腸がんは比較的発見が容易です。またポリープががんに変化するまでには何年もかかるため、ポリープのうちに切除すれば、がんを予防することができます。

これに対し、もう一方の表在性のがんは、初めから粘膜表面にそってがん病巣が広がります。そして、腸壁の内部に広がったり腸の外側へ飛び出したりしないため、通常の造影剤を用いたエックス線撮影などでは発見しにくく、進展するまで気づかないこともあります。しかし近年、大腸がんの検査技術は急速に進歩しており、初期がんでも発見率が上昇しています。

リンパ浮腫の治療用装具に保険適用

乳がんや婦人科領域の手術などの後に起こる「リンパ浮腫」の治療用装具となる弾性スリーブや弾性ストッキングの購入費用が、今年4月から保険適用されることになった。
中央社会保険医療協議会(中医協)がまとめた2008年度診療報酬改定案に盛り込まれた。リンパ浮腫の治療用装具をめぐっては、患者を支援する団体が保険適用を求める請願書を国に提出しており、地道な活動が実った形だ。

リンパ浮腫は、乳がんや子宮がんなどの手術時にリンパ節を切除した場合、リンパ液の流れが悪くなって起きる。手や足がむくみ、重症化すると、炎症が起きやすくなったり、歩行困難になるなど日常生活に支障をきたすこともある。

全国で患者は10万人以上といわれる中、がん患者の増加と生存率の向上に伴い、発症数は今後も増えると見られている。(介護情報CBニュース)

リンパ浮腫とは
リンパ管は静脈に沿ってほぼ全身に張り巡らされており、その中をリンパ液が流れています。リンパ液は、免疫細胞のリンパ球のほか、古い細胞や血球のかけら、腸から吸収された脂肪などを運ぶはたらきをしています。リンパ浮腫は、四肢のリンパ管が詰まってしまい、リンパ液が外に染み出したために腕や脚にむくみが生じる病気です。

生まれつきリンパ管の数が少なく、全身のリンパ液を処理しきれないために発症するケースと、がん治療のために、リンパ管やリンパ節を切除したり、放射線を照射したために、機能が低下して発症するケースがあります。

iPS細胞で先天性水疱症の治療法を研究:順天堂大医学部

順天堂大医学部の池田志斈教授(皮膚科)らのチームがヒトの万能細胞(iPS細胞)を使い、皮膚の難病である先天性水疱症の治療に向けた研究に乗り出した。患者の皮膚細胞からつくったiPS細胞に遺伝子を入れて異常が起こらないようにしてから体内に戻し、正常な皮膚を再生させることを目指す。

池田教授が想定する治療法は、患者の皮膚細胞からつくったiPS細胞の遺伝子を操作して患者の血液中に戻し、正常な皮膚を再生させるというもの。想定通りに正常な皮膚が再生するのか、京都大の山中伸弥教授のチームのiPS細胞を使って基礎研究をする。

培養皮膚を移植して先天性水疱症を治療しようとしても、拒絶反応などの問題があって難しい。iPS細胞を使えば免疫を制御する細胞もできるので、再生皮膚への拒絶反応を抑えられる可能性があるという。(asahi.com)

iPS細胞について
ES細胞と同じように、さまざまな細胞への分化が可能で、脊髄損傷や心不全などの患者体細胞から、iPS 細胞を誘導し、さらに神経細胞や心筋細胞を分化させることにより、倫理的問題や拒絶反応のない細胞移植療法の実現が期待されています。

受精卵を用いて作るES細胞には倫理上の問題がありましたが、iPS細胞は患者自身の細胞から作り出すのでその心配もなく、世界的に注目されています。京都大学の山中伸弥教授のグループらがヒトの皮膚細胞からの作成に成功しています。

レンコンと乳酸菌の配合物(ALLESTO-U)で花粉症が緩和

医薬品メーカーの日本アレルギー応用研究所埼玉医科大の和合治久教授が、花粉症の緩和につながるという新配合物を開発した。レンコンの成分と乳酸菌との配合物(ALLESTO-U)で、27日から東京ビッグサイトで開催される「健康博覧会2008」で発表する。

レンコンは漢方医学の分野でも止血作用や抗炎症作用などの効用があることが知られていた。レンコンに含まれるムチン、タンニン、ポリフェノールなどが大きな役割を果すという。
和合教授らは、5年以上にわたって研究を進めてきた。動物実験などから、レンコンの成分に抗アレルギー性効果と免疫活性化効果があることを突き止めた。

レンコンの成分が、体内のアレルギー反応を増幅させるリンパ球の発生を抑え、結果として花粉症の原因となる抗体の発生を抑えるという。さらに、アレルギーを抑えることで知られる乳酸菌を加えることで、原因となる抗体を約1・2倍減らすことができ、相乗効果も期待できる。

和合教授らは「これまでの治療法は一時的に特定の症状を緩和させる『対症療法』だったが、今回は体質改善治療で、副作用も全くない」と説明している。(産経ニュース)

花粉症について
スギやヒノキなどの花粉をアレルゲンとする季節性のアレルギー症状です。
からだが花粉を「自己ではないもの」として認知すると、これに対して抗体をつくります。
ここに花粉が再び入ってくると、抗原抗体反応が起き、この反応が刺激となってヒスタミンなどの化学物質が放出されます。その結果、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといったアレルギー症状がもたらされるのです。

初めて花粉症になった年は、抗ヒスタミン薬などの対処療法しかありませんが、次の年からは、花粉が飛び始める2週間前ごろから、抗アレルギー薬を飲んで、症状を軽くするという方法があります。

また、時間はかかりますが、原因となる抗体に対する過敏性を低下させて、アレルギー反応を起こさないような体に作り変える、減感作療法という方法もあります。

献血時の無料検査で糖尿病判定:日本赤十字

日本赤十字は、献血者の健康増進を図るため献血の際に無料で実施している血液検査に、糖尿病の疑いがあるかどうかが分かる項目を新たに加える方針を決めた。早ければ今夏から実施する。

糖尿病が予備軍も含めると約1600万人に上るとされ、今や国民病となったことを受けた対応。関心の高い検査項目の追加で、深刻化する献血者の減少傾向に歯止めをかける狙いだ。

日赤によると、献血時の無料検査は1982年から実施。コレステロールや、肝機能障害の指標となるGPTなど7項目の値をチェックし、約2週間後に結果を本人に通知している。今回は、糖尿病の判定に使う検査項目を追加するとともに、既存の項目も見直す。費用は日赤が負担する。(Shikoku.news)

糖尿病について
膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが不足したり、インスリンの作用が低下する病気です。インスリンには、血液中のブドウ糖を細胞に取り込み、エネルギー源として筋肉に蓄えたり、脂肪として長期的に貯蔵するのを促進するはたらきがあります。

インスリンの作用が低下すると、血液中のブドウ糖が細胞で利用されないため、血液中の濃度が上昇し(血糖値が上がり)、尿中にも糖が混じるようになります。

糖尿病が進行すると、細小血管がおかされ、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害などの合併症が現れます。また、メタボリック症候群と呼ばれる病態に加え、禁煙などの危険因子が重なると、動脈硬化を基盤とした大血管障害を合併し、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こします。

新型PET開発でがんの診断と治療を同時に:放射線医学総合研究所

がんの早期診断などに有効な陽電子放射断層撮影(PET)で、診断と治療が同時にできる新型装置を放射線医学総合研究所が開発した。筒形の装置を輪切りに2分割した形で、空間部分から治療ビームの照射ができ、治療の精度向上につながるという。7日の英物理学会の専門誌に発表した。

従来のPET

PETは、感度を高めるため、患者を取り囲むように多数の検出器を配置しているため、診断と治療は同時にはできなかった。放医研の山谷泰賀研究員らは、中央部分の検出器を取り除いても、残りの検出器で欠けたデータを補えることに着目。画質への影響が小さくなるように検出器を配置した。
さらに、同研究所が開発した解像度と感度を向上させた新型の検出器を用いることで、従来型と同様の画像を得られるようにした。

開放型の装置を使えば、画像で患部の位置を確かめながら治療ビームを照射したり、薬剤を使わずに照射で発生する放射線を使って画像化したりできるという。(asahi.com)

陽電子放射断層撮影(PET)装置について
RI(ラジオアイソトープ=放射性同位元素)を体内に投与し、RIが体外に発する放射線を検出器で測定し、コンピュータ処理して断層画像を得られるようにした検査です。
さまざまなRIを用いて、糖代謝、タンパク代謝、酸素消費量などを調べることができます。

人体組織内の糖代謝を調べる「FDG-PET」が最もよく行なわれています。多くの腫瘍で糖の代謝が亢進することを利用した検査で、非常に小さい段階での腫瘍発見に有用な場合があります。
しかし、RIが高価で半減期が短いため一部の医療機関でしか受けることができないのが難点となっています。

聴覚細胞の再生で突発性難聴を治療

突然耳が聞こえにくくなる突発性難聴に対し、聴覚細胞を再生する世界初の治療を、京都大病院耳鼻咽喉科の伊藤壽一教授らのグループが始めた。従来のステロイドの大量投与に代わる、安全で効果が高い治療法として期待される。

突発性難聴のはっきりとした原因はわかっていない。歌手の浜崎あゆみさんが今年1月、突発性難聴で左耳が聞こえなくなったことを告白した。

治療は、聴覚細胞が集まる内耳の蝸牛の膜に、細胞の成長にかかわるたんぱく質「IGF−1」を含ませたゼリー状のゲルを塗る。約2週間かけて吸収され、傷ついた聴覚細胞の死滅を防ぎ、再生させる。発症後1か月未満で、ステロイド治療で効果が出ていない20人程度に実施する予定。(YOMIURI ONLINE)

突発性難聴とは?
何のきっかけもなしに突発的に耳の聞こえが悪くなるもので、片側の耳の起こることが多いとされています。耳鳴りや耳がふさがった感じをともない、患者さんの約4割にぐるぐる回る回転性のめまいを感じる症状がみられます。
内耳の循環障害やウイルス感染などが原因ではないかといわれていますが、まだはっきりしていません。

確立された治療法はまだありませんが、副腎皮質ホルモン薬や循環・血流改善薬、ビタミン製剤などが用いられます。発症後、早く治療しないと聴力の回復が難しくなるので、早急に受診します。

自己細胞で椎間板再生:東海大チームが臨床試験を開始

東海大の研究チームは、椎間板の再生を目指す腰痛の新治療法の臨床試験研究を今春から開始すると発表した。手術で取り出した椎間板の細胞を、骨髄中の幹細胞を使い体外で活性化させてから患者に戻す方法で、世界初の試みという。

研究チームは東海大医学部倫理委員会の承認を得たうえ、厚生労働省からの了承も受けている。

臨床試験では、椎間板の患部を切除する従来の手術で摘出した椎間板から、髄核の細胞を分離。同時に骨盤から骨髄液も採取し、幹細胞を分離して、髄核細胞と一緒に培養する。
活性化した髄核細胞を、摘出手術から1週間後、ある程度変形が進んだ椎間板内に移植する。対象患者は腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離症、腰椎椎間板症に苦しむ10人で、実施後3年間経過観察するという。(毎日新聞)

腰椎分離症
腰椎は、丸い椎体と背中側に突き出た椎弓でできていて、上下のつながりは前方の椎間板で、後方は一対の骨の関節突起で動くようになっています。この関節突起の間に疲労骨折が生じたものを腰椎分離症といいます。

骨の成長が著しい小児期に、激しいスポーツをして腰に過度の負荷をかけることが原因と考えられています。症状としては、慢性的に腰のこわばり感があり、下肢の痛みやしびれが起こることもあります。

関連記事:患者の体性幹細胞移植で骨を再生:京都大学が臨床試験

ES細胞から効率よく視細胞を作成:再生医療実現に一歩

網膜で光を感じる視細胞を、人間の胚性幹細胞(ES細胞)から効率よく作り出すことに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの高橋政代チームリーダーらが成功した。
病原体に感染する恐れのある動物の細胞を作製に使う必要がなく、新型万能細胞(iPS細胞)にも応用できる可能性が高い。再生医療の実現に近づく成果で、米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー電子版で発表した。

目に入った光は視細胞で感知され電気信号に変えられ、視覚情報として視神経を通じて脳に伝えられる。研究チームは、マウスやサルのES細胞と同じ方法で人間の網膜の大本となる前駆細胞を作製。2種類の化学物質を加え、培養期間を延ばしたところ、20〜30%が視細胞になった。培養法を変えることで、視細胞に栄養を供給する網膜色素上皮細胞も高い効率で作ることができた。

研究チームは、マウスなどのES細胞から視細胞を作り出していたが、マウスの胎児の網膜細胞と一緒に培養するため、未知の病原体に感染する危険性があるうえ、作製効率も数%と悪かった。
視細胞や色素上皮細胞が徐々に損傷し、失明の恐れがある網膜色素変性症や加齢黄斑変性は、今のところ完治の方法はない。(YOMIURI ONLINE)

ES細胞とは?
生体の組織や臓器の元となる細胞のことで、幹細胞、または胚性幹細胞とも呼ばれます。受精卵が細胞分裂を繰り返し、ある程度の細胞塊になった頃に取り出して培養することで、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力を持ったES細胞を得ることができます。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の悪化原因となる細胞を特定

全身の運動神経が侵される難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の進行に、神経細胞のネットワーク作りに重要とされるグリア細胞のうちの2種類が関係していることを、理化学研究所などのチームが突き止めた。治療法の開発につながる可能性がある。3日付の米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス電子版に発表する。

理研脳科学総合研究センターの山中宏二・ユニットリーダーらは、特定の細胞から遺伝型のALSに関係する遺伝子変異を取り除けるモデルマウスを作った。このマウスを使い、グリア細胞のうち、神経細胞を支え養う働きがあるアストロサイトから、変異型遺伝子を取り除いた。すると病気の進行が大幅に遅れた。

また、傷んだ神経細胞を修復する働きがあるというミクログリアが病巣で神経細胞に障害を与えていることもわかった。ALSの進行を遅らせる有効な治療法として、この二つのグリア細胞を標的とした幹細胞治療法や薬剤の開発が考えられる。(asahi.com)

筋委縮性側索硬化症(ALS)とは?
運動神経細胞の死滅や損傷によって起こる病気(運動ニューロン病)の一つです。主に40〜50歳以降にみられ、手足やのど、舌などの筋肉が次第にやせて、力が出なくなります。

最初は手指が動かしにくく、ひじから先の筋肉がやせてきます。筋肉が衰えると、不規則にピクピク動く症状(筋線維束攣縮)がみられるようになります。のどの筋肉がやせると、話しにくい、飲み込みにくいといった症状が現れます。
症状は進行し、平均2〜3年で呼吸障害に至り、人工呼吸器が必要になります。ただ、感覚や知能は末期まで保たれるのが普通です。

現在、治療法は確立されていません。病気の進行を遅らせるリルゾールの服用で、生存期間を延長させることが可能な場合があります。対症療法としては、痛みには鎮痛薬や適度なリハビリテーションが、不安や不眠には抗うつ薬や睡眠薬が用いられます。

あごの骨を骨髄細胞で再生:重度の歯周病対策に

重い歯周病でひどくやせたあごの骨に骨髄の細胞を入れ、骨を再生させる治療が成果をあげている。東京大医科学研究所の各務秀明客員准教授らの臨床試験で、10人中8人でインプラントを入れられる状態まで骨が厚くなった。有力な治療法の一つになりそうだ。

重い歯周病では歯が抜けるだけでなく、歯を支えていたあごの骨もやせ細っていくことが多い。骨の厚さが5ミリ以下になると、義歯が入れられなくなる。義歯を入れるには、これまでは腰や、あごの別の部分の骨を移植するか、人工骨を使う治療しかなかった。

チームは東京医科歯科大などと協力、2年半前から臨床試験を始め、10人の患者から骨髄を採って培養した。このうち8人に、骨が欠けたときの治療などで使う補填材と一緒に、薄くなったあごの骨に盛った。半年後に8人とも義歯を埋め込めるまで再生。1年経過した5人ではもとの骨との境目が見えなくなるほどに回復した。(asahi.com)

歯周病菌について
歯周病菌には、組織を破壊する「たんぱく質分解酵素」ももっているものや、白血球などを破壊する毒素を持っているものがいます。歯周病菌が口の中に住み着くと、歯肉などに炎症をお引き起こします。

炎症がひどくなると、歯と歯肉の間の隙間に歯周ポケットができ、その部分にプラーク(歯垢)がたまりやすくなります。プラークがたまると、歯周病菌が増え、毒素が強くなり、歯槽骨を溶かすため、歯が抜けやすくなります。これが歯周病です。

また、歯周病菌は、歯だけではなく、全身にも影響を及ぼすことがわかってきました。組織や白血球などを破壊する歯周病菌の毒素や、炎症によってできる物質などが、全身に広がる危険性があるのです。具体的には動脈硬化の促進、誤嚥性肺炎、糖尿病の悪化、低体重児出産・早産などのリスクが生じます。

脱毛・抜け毛に真皮の再生医療:国立循環器病センター

美容外科手術などであまった他人の健全な頭皮で毛の生えやすい基盤をつくり、髪の毛が少ない人の頭髪をよみがえらせる再生医療の研究を、国立循環器病センター神戸大学病院、大阪工業大のグループが始める。まず人の頭皮を利用した基盤づくりの共同研究をする。

他人の細胞は、拒絶反応を引き起こす。拒絶反応を避けるため、国循センターがブタの心臓弁の再生で成功している脱細胞化処理法を用いる。これは、薬品を使わずに高い水圧をかけて組織の中にある細胞を壊し、真皮を移植するもの。新たにできる組織や臓器には患者自身の細胞が入り込み、拒絶反応を起こさないという。

研究は、他人の頭皮をとりだし、1万気圧の水圧を約15分間かけて細胞を壊し、除去する。残ったコラーゲンなどによる1センチ四方の基盤の性質を確認する。
その後、臨床研究を検討し、基盤の上に毛根を包んでいる患者の毛包をつけ、患者に移植。毛根づくりの指令を出す毛乳頭細胞を患者からとりだして新たな頭皮に育った基盤に注射し、頭髪の再生を促す。(asahi.com)

抜け毛・薄毛
毛根のも毛母細胞が栄養不足になると、抜け毛の原因となります。無理なダイエット、ストレス、タバコの吸いすぎは要注意です。熱すぎるドライヤーや肌に合わない整髪量、パーマ、毛染めなども抜け毛を誘います。
年齢による頭頂の薄毛はケアが大事です。強い日光や洗浄力の強いシャンプーは避けましょう。

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