手術ができない非小細胞肺がんの患者に肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)を投与すると、従来の抗がん剤より効果が高く、生存期間がおよそ2倍になるという研究成果を、東北大大学院医学系研究科の貫和敏博教授(呼吸器病態学)を中心とする研究グループが発表しました。成果は24日発行の医学誌「NEJM(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)」に掲載される予定です。

イレッサは、日本人の肺がんの8割を占める「非小細胞がん」、なかでも「上皮成長因子受容体(EGFR)」の遺伝子変異で悪化したがんに有効とされてきましたが、遺伝子診断に基づき、投与する患者を限定した場合の有効性を裏付ける十分な研究がありませんでした。
そこで、東北大のほか、埼玉医科大学、日本医科大学などの全国50の医療機関が参加して大規模な臨床試験を実施。該当する遺伝子変異のある患者230人を、イレッサを投与するグループと従来の抗がん剤を使うグループにわけ、5か月後に病状を調べました。
その結果、がんの進行が抑えられ状態が安定していた患者は、イレッサのグループで80%と、従来の抗がん剤のグループを30ポイントほど上回っていました。平均生存期間も、従来の抗がん剤投与のみでは1年程度だったのに対し、イレッサを投与した患者は2年半とおよそ2倍の延命効果が確認されました。また、最初に抗がん剤を投与し、その後にイレッサに切り替えたケースでも2年近くの生存が認められました。
承認当初、イレッサは間質性肺炎など重い副作用などで患者が死亡する事例が相次いで報告され大きな問題となりました。しかし、今回の臨床試験では、イレッサ投与のグループの方が副作用の頻度は低かったため、研究グループは「遺伝子検査してから投与すれば、イレッサが有効かつ副作用も少ないことがあらためて確認できた」としています。今回の結果を受けて、日本肺癌学会はイレッサに関する治療の指針を見直す方針です。