多型膠芽腫(GBM)の患者の寿命を延長させるワクチンを開発

アメリカのデューク大学のープレストン・ロバート・ティッシュ脳腫瘍センタの研究チームは、臨床段階にある新型ワクチンが、脳腫瘍のなかでも最も悪性度の高い多形性膠芽腫(GBM)の患者の寿命を大幅に伸ばす可能性があるとの研究結果を「ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー」に発表しました。

ワクチンは、多形性膠芽腫を悪化させる「EGFRvIII」と呼ばれる遺伝子をターゲットにしたもので、同研究チームが18人の患者に対してワクチンの接種を行ったところ、平均生存期間は26か月と、予想の15か月を大幅に上回る結果となりました。

また、18人の無進行生存期間は14.2か月と、ワクチン接種を行わなかった17人のグループの6.3か月の2倍以上となりました。さらに、ワクチンを接種したグループの約半数で免疫反応が活性化され、1人をのぞくすべての患者で腫瘍マーカーを持ったがん細胞がなくなったとの結果も出ています。

実験のデータはワクチン接種を行うことにより余命が大幅に延長されたことを示唆していますが、研究グループは「サンプル数が少なすぎるため、確信を持って結論することはできない」と、さらなる研究の必要性を説いています。



がん検診、重要性を認識しつつも低い受診率:内閣府調査

内閣府が発表した「がん対策に関する世論調査」によると、ほぼ100%に人ががん検診の重要性を認識しているものの、未受診率は依然として高い傾向にあり、認識との間に大きな差があることが明らかになった。厚生労働省は「がん検診の有効性をもっとアピールする必要がある」としている。

調査は8月27日から9月6日まで、全国の成人男女3000人を対象に個別面接方式で実施。有効回収率は64.5%だった。胃がん肺がん大腸がんの検診を「受けたことはない」と答えた人は、それぞれ44.0%、46.5%、51.1%で、前回調査より2〜5ポイント改善した。女性特有のがんである子宮がんと乳がんの未受診率は35.6%、47.7%で、前回比ではそれぞれ約2ポイントの低下にとどまった。

受診率低迷の原因の一つには、08年4月に特定健診の実施が自治体に義務付けられ、受診率が低いと財政負担が加算されるペナルティーがある。一方、がん検診は「努力義務」にとどまっていることから、限られた予算ではPR活動が特定健診に傾きがちなのではとしている。

重大な医療事故をすべて公表は約2割:大学病院調査

全国医学部長病院長会議「大学病院の医療事故対策に関する委員会」(委員長・嘉山孝正山形大医学部長)は、全国80の大学病院のうち、重大な医療事故をすべて公表しているのは約2割の17校にとどまるとのアンケート調査の結果を明らかにした。同会議の指針は、記者会見やHPで公表するとしているが、残る63校は事例ごとに判断していた。

大学病院の医療事故調査体制に関する初の調査で、4〜5月に実施。指針は、過失の有無や障害の程度で公表のレベルを3段階に分け、患者に障害が残るような事故が起きた場合は速やかに公表するとしている。だが、調査に「必ず公表」としたのは国立大10病院、公立大2病院、私立大5病院にとどまった。(毎日新聞)

医療事故の開示について
少し古いデータですが、平成14年に朝日新聞が行った「医療機関の事故発生の報告に対する意識調査」では、「十分公開している」「ある程度公開している」「あまり公開していない」「全く公開していない」の順に、3%、21%、59%、12%となっており、国民は事故の報告の開示を不十分と感じていることが分かります。特に20歳代後半から40歳代の約80%は、情報公開が不十分だと感じているとの結果が出ています。

関連リンク
(財)日本医療機能評価機構 (医療事故・ヒヤリハットの報告・PDFファイルで閲覧可能)
診療科目別で見る医療過誤訴訟の件数 (内科・外科・整形・形成外科がトップ3)

カテキンがインフルエンザウイルスの増殖を抑制

徳島文理大学薬学部の葛原隆教授の研究グループが、緑茶の渋み成分のカテキンに、インフルエンザウイルスが増殖するために不可欠なタンパク質の働きを抑える効果があることを突き止めた。新型インフルエンザウイルスの治療薬開発につながると期待される。

葛原教授らは、インフルエンザウイルスから増殖のカギとなる酵素「RNAポリメラーゼ」を抽出。これに代表的な5種類のカテキンを加えて反応を調べたところ、2種類でウイルスの増殖が止まった。この結果を受け、ウイルスの酵素分子と2種類のカテキンの立体構造をコンピューターで解析したところ、カテキンがウイルスの酵素と結合し、人の遺伝子との結合を阻む働きをしていることが明らかになった。

カテキンは腸で分解されるため、緑茶を飲むだけでは効果は期待できない。葛原教授は「カテキンの構造を変え、腸内で分解されないようにすれば効果的な治療薬ができる」と話している。(徳島新聞)

カテキン
お茶の渋みの主成分となっているポリフェノールの一種です。カテキンには現在注目されている抗菌作用のほかにも、食事の際に脂肪の吸収を穏やかにする体脂肪低下作用や、血中コレステロール値の抑制する作用があることが確認されていることから、メタボ世代をターゲットとした健康飲料(ex:ヘルシア緑茶)などに使用されています。

お茶の名産地である静岡県の小学校では、風邪の予防効果も期待できるとして、緑茶を使ったうがいを推奨するところもあります。児童にはお茶を入れた水筒を持参させるだけでなく、蛇口から緑茶が出る給茶機を設置している学校もあります。

肺炎球菌ワクチンの再接種を容認へ:厚生労働省

厚生労働省は18日、肺炎の重症化を予防する肺炎球菌ワクチンについて、1回目の接種から5年程度経ていれば再接種を認めることを決めた。新型インフルエンザに感染した65歳以上の高齢者が重篤な肺炎を併発することを防ぐ効果も期待される。

同ワクチンは従来、再接種すると強い副作用が出るとして、接種は一生に1度とされていた。だが、同ワクチンの効果は5年以上たつと低下する。海外などで4年以上の間隔を置けば、再接種は問題ないとの報告が出され、現在では多くの国で再接種が認められている。(YOMIURI ONLINE)

肺炎を防ぐために
肺炎を防ぐには、引き金となるインフルエンザにならないことも大切です。予防のためには、インフルエンザワクチンを接種することをオススメします。

アメリカで65才以上の慢性的な肺の病気を持つ人、約2000人を対象に行った調査では、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの両方を摂取したほうが、インフルエンザワクチンだけを接種した場合よりも、肺炎の死亡率が低いという結果が得られています。

男性社会人の20%が睡眠時無呼吸症候群:京大

男性社会人の約20%が治療を必要とするレベルの睡眠時無呼吸症候群だったことが、京都大学の陳和夫教授(呼吸管理睡眠制御学)らの調査でわかった。なかでもメタボリック症候群の人ほどより重症化する傾向にあった。研究結果は25日、大阪市で開かれる日本睡眠学会で発表される。

睡眠時無呼吸症候群

研究チームは、事務職の男性275人(平均年齢44歳)を対象に、体重や腹囲、血圧、睡眠時に呼吸がとまる回数などを調べた。その結果、58人が無呼吸、もしくは低呼吸が1時間あたり15回以上で、米学会の基準で治療が必要とされる睡眠時無呼吸症候群と判定された。このうち23人が、国の基準でメタボリック症候群に分類された。

メタボリック症候群の17%が、無呼吸と低呼吸が合わせて30回以上の重症患者で、メタボリック症候群でない人(3%)より、かなり高率だった。メタボリック症候群の人に重症患者が多いことについて、陳教授らは、内臓脂肪が腹部にたまることで呼吸が浅くなり、睡眠時無呼吸の症状を悪化させているのではないかとみている。(asahi.com)

睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠中に呼吸が止まり、呼吸が再開しても、また止まるというのを何度も繰り返す病気です。
診断基準は、一晩(7時間以上)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上起こるか、睡眠1時間当たりの無呼吸が5回以上の場合です。

症状としては、いびきや起床時の頭痛、日中の眠気、倦怠感などがみられます。
原因は、軌道が閉鎖して空気の通りが悪くなるためで、鼻やのどの病気を持つ人、肥満の人に起こりやすいものです。肥満体では気道が狭く、睡眠中は、咽頭の筋肉や下が緩んでさらに狭くなるのです。

治療は、生活習慣を変えるだけでも効果がありますが、眠っている間の空気の出入りをよくするシーパップ(CPAP)という専用器具を鼻に装着したり、また気道を広げる手術を行なうこともあります。

子宮頸がんワクチン「サーバリックス」を承認

厚生労働省はグラクソ・スミスクラインの子宮頸がんワクチン「サーバリックス」を承認することを決めた。子宮頸がんワクチンは米メルク子会社の万有製薬も厚労省に承認申請中だが、実際に国内で承認が決まったのはサーバリックスが初めて。早ければ年内にも発売される見込み。

女性の間で広がっている子宮頸がんは、ヒト・パピローマウイルス(HPV)への感染が発症の原因となる。同ワクチンはHPVへの感染を予防する。サーバリックスはこれまでに世界98カ国で承認を受けており、日本へも早期の導入を求める声があがっていた。

同分科会は米系ワイスの乳幼児用の肺炎球菌ワクチン「プレベナー」の承認も決めた。肺炎球菌への感染による髄膜炎などを予防できる。(nikkei.net)

子宮頸がんについて
子宮の頚部にできるもので、子宮がん全体の約65%を占めるほど発生率の高いがんです。
初期は無症状のこともありますが、不正性器出血、おりものがみられます。進行すると出血が持続的になり、おりものも膿性になり悪臭を伴います。さらに進行すると、骨盤の神経が置かされて腰痛が起こったり、膀胱や直腸に広がって排尿困難が生じるようになります。

子宮頸がんの診断は、まず細胞診を行ないます。面貌などで子宮頚部の細胞を擦り取って、がん細胞の有無を調べます。異常があれば、コルポスコープ(膣拡大鏡)で観察し、頚部の一部を採取して組織を調べます。この段階で、どの程度進行しているかなどがわかります。

出産を希望する人、妊娠中で早期がんの人には、子宮頚部だけを円錐状に切り取って子宮を保存する方法(円錐切除術)が用いられます。

タミフル耐性のインフルエンザを発見

治療薬タミフルが効かないインフルエンザが昨冬、9県で見つかったことが国立感染症研究所の調査で判明した。中でも鳥取県は32%と飛び抜けていた。岡山市で開かれている日本ウイルス学会で28日に発表する。

タミフル

最も高率だったのは鳥取県で、68株のうち22株(32.4%)が耐性。隣の島根県では1.2%、ほとんどの県で数%以下だった。鳥取県が突出している理由は不明という。

感染研の小田切孝人室長によると、耐性の44株はいずれもタミフルを使わなかった患者から採取された。タミフルを使ったための変異ではなく、自然発生的に、遺伝子の一部が変異して耐性になったとみられる。

今回、耐性が見つかったのは昨年流行したAソ連型インフルエンザウイルス(H1N1)。「ほかの型でも耐性ウイルスが出てくるかどうか、継続した監視が必要」と注意を呼びかけている。(asahi.com)

インフルエンザ
約200種類もある風邪のウイルスの中の一種「インフルエンザウイルス」の感染で起こります。インフルエンザウイルスにはA・B・Cの3種類があり、A型はさらに5つのタイプに分かれています。
流行するのはA型とB型ですが、どちらかというとA型のほうが流行の範囲や規模が大きく、短い期間で流行を繰り返します。

インフルエンザはほかの風邪と違い全身の症状が強いのが特徴です。
突然、39度前後の高熱が出てから、寒気がして頭痛や関節痛などの痛みがあり、同時に手足や腰の筋肉痛やだるさなどの全身的な症状も出てきます。そしてほぼ同時にのどが痛み、咳が出て、声がれや鼻水が出るなどの呼吸器症状が強くなります。

このような症状が3、4日続くと熱が下がり始めて、苦しかった全身症状や呼吸症状も軽くなっていきます。順調なら1週間から10日ほどでよくなります。

梅毒の感染者が2年連続で増加:国立感染症研究所

一時は年間500人程度まで減った梅毒の患者報告が、2006年以降は2年連続で前年より約100人も増えたことが、国立感染症研究所のまとめで、明らかになった。妊婦から胎児に母子感染し、重症化や後遺症の恐れがある先天梅毒も、今後増加が心配されるという。

患者の約4分の3は男性。年齢は、男性が20−40代前半、女性では10代後半−30代が多い。先天梅毒は2000年以降、年間3−10人で推移してきたが、今年は8月下旬までに既に7人が報告されたという。

感染研感染症情報センターの多田有希室長は、特に先天梅毒の増加を警戒。「妊婦が感染していても、早くから薬で治療を始めれば赤ちゃんへの影響は防げる上、先天梅毒も早期診断で根治できる。妊婦は必ず健診を受け、妊娠中もコンドームの着用など感染予防に努めてほしい」と話している。(Sikoku.news)

梅毒
トレポネーマ・パリドムという細菌の感染によって起こる性感染症です。適切な治療を受けないで放置すると、10年から数十年かけて進行し、全身の臓器が侵されていきます。

第1期は感染後約3ヶ月まで出、3週間ほどの潜伏期間を経た後、性器、唇、指先などに小さなしこりができ、潰瘍となりますが、次第に治っていきます。
第2期(感染後約3ヶ月から3年まで)に進むと、微熱や倦怠感、関節痛などが起こります。そして、全身のリンパ節の腫れと皮膚の発疹が、現れたり消えたりを繰り返します。

第3期(感染後約3年から10年まで)になると、唇や鼻、骨、内臓など、からだの一部にかたいしこりができる梅毒性ゴム腫などが現れます。第4期(感染後10年以降)になると、脳や神経が侵されて進行性マヒなどが現れます。

粒子線治療の最先端施設、資金難で着工できず:愛知県

がんを痛みなく治す「粒子線治療」を目指し、民間事業者として全国で初めて愛知県大府市に建設を計画している最先端医療施設の資金集めが難航、着工のめどが立っていないことが分かった。

がん細胞に直接放射線を照射し手術せずに治す重粒子線がん治療施設で、名古屋大名誉教授らが役員を務める「名古屋先進量子医療研究所(アイナック)」が大府市の「あいち健康の森」の西側2万平方メートルに、治療病棟や先進画像診断棟などを建設する計画。10年の完成を目指してきた。

民間では例のない施設のうえ、健康保険が適用されないため治療費が1人約300万円と高額。名古屋市が別の粒子線治療施設を計画しているため、採算性を危惧する金融機関や企業が貸し付けや出資に慎重になっている背景もある。(中日新聞)

粒子線治療
陽子や重粒子などの粒子放射線を照射することによってがんを治療する放射線治療法の総称です。陽子や重粒子線はサイクロトロンやシンクロトロンなどの加速器から得られ、がん組織に照射されます。

粒子線のうち電荷を持つもの(荷電重粒子線)の特徴は、一定の深さ以上には進まないということと、ある深さにおいて最も強く作用するということです。そのため、陽子線や重粒子線でがん組織周囲への副作用を軽減し、がん組織のみに十分な線量を照射することができます。

神経芽腫の原因遺伝子を発見:東大研究グループ

小児がんの一種で、患者の約3割は治療が難しいとされる神経芽腫の原因遺伝子を東大医学部の研究グループが発見した。この遺伝子がつくる酵素の働きを抑えることで、新たな治療法の開発が期待できるという。16日付の英科学誌「ネイチャー」(電子版)に発表した。

研究グループは患者215人のゲノム(全遺伝情報)を分析。そのうち18人で、細胞の増殖にかかわる遺伝子が変異したり、通常の数十倍にコピーされて増えたりして、神経のもとになる細胞をがん化させ、神経芽腫を引き起こしたことを突き止めた。

詳しく調べたところ、この遺伝子がつくる酵素が異常に活性化していることが判明。酵素の働きを阻害すれば、治療が難しい患者の約3割で症状の改善が期待できるという。(Sankei.web)

神経芽腫
子供特有のがんで白血病についで多い病気です。神経芽細胞とは発達途中の未熟な神経細胞のことで、交感神経の未熟な細胞ががん化するもので、がん化する遺伝子が増え続けるときに発生すると言われてきました。

初期のうちから転移しやすく、骨、肝臓、リンパ節、皮膚など、転移した部分から発見されることもあります。二歳までに発見されると治癒率が高く、特に一歳以前に発見されると予後が良好で完治も可能とされています。

てんかん発作が起きる実験用ラットの作成に成功

遺伝子を組み換えることで、ヒトと同様のてんかん発作が起きる実験用ラットの作製に世界で初めて成功したと、弘前大大学院医学研究科の兼子直教授らの研究グループが発表した。
てんかんの発症メカニズムを解明し、根本的な治療法につながることが期待される。研究は、弘前大と福岡大医学部などの共同で1992年から進められた。

発表によると、従来の実験用ラットは、てんかんを薬物などで誘発させていたため、ヒトと同様の症状や薬の効き方をみるには限界があった。新たなラットは、ヒトから見つかったてんかんの遺伝子と同じ構造の遺伝子変異を、受精卵に注入して作った。

兼子教授は「てんかんは、これまで症状を緩和する対症療法しかなかったが、発症を抑える薬品開発などに道が開けた」としている。米科学誌「ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に近く掲載される。(YOMIURI ONLINE)

てんかん
脳内の神経細胞の異常興奮によって、ひきつけやけいれんが現れるなど多様な発作症状を起こす病気です。子供にも大人にもあり、原因が明らかでないものを一次性てんかん、特定の病気が原因で起こるものを二次性てんかんと呼びます。
成人になって発症するものは、脳卒中、脳腫瘍、頭部外傷など脳の病気の原因となる二次性がほとんどです。

網膜色素変性症の遺伝子治療計画を承認:九大

九州大医学研究院等倫理委員会は、失明する恐れのある遺伝性の難病「網膜色素変性症」の患者に遺伝子治療を行う同大病院の石橋達朗教授らの計画を承認したと発表した。
本年度中に厚生労働省厚生科学審議会に実施申請し、承認されれば臨床研究を始める。

石橋教授らによると、同変性症は光を感じる網膜の視細胞が徐々に失われていく病気で、遺伝子治療が実施されれば世界初という。計画では、視細胞を保護するタンパク質の遺伝子を組み込んだ国産のウイルスベクター(遺伝子の運び役)溶液を患者の網膜に注射する。病気の進行や視力低下を遅らせるのが狙い。

アフリカミドリザルのサル免疫不全ウイルス(SIV)から病原性をなくしたディナベック社(茨城県つくば市)製のベクターを使用。マウスやサルの実験では、視細胞の脱落を効果的に防ぐことや安全性が確認されたという。(sikoku.news)

網膜色素変性症
遺伝性の病気で、思春期の頃からだんだん視野が狭くなっていき、夜盲症をともないます。厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されており、治療費の一部は公費によってまかなわれます。

治療には血液循環の改善薬やビタミン剤などが使用されます。網膜を保護するためサングラスを用い、強い光は避けるようにします。

カテキンの錠剤で大腸ポリープの再発予防効果

緑茶成分のカテキンを含む錠剤を飲み続けると大腸ポリープの再発が抑えられることを、岐阜大医学部の清水雅仁助教や森脇久隆教授らが臨床試験で確かめた。名古屋市で28日から開かれる日本癌学会で発表する。

大腸がんのもとになるポリープの再発予防が緑茶錠剤の臨床試験で実証されたのは初めてという。手軽な緑茶錠剤によるがん予防の可能性をうかがわせる成果といえる。

臨床試験には、岐阜大病院など岐阜県内の4病院が参加した。大腸ポリープを内視鏡で切除した125人のうち60人に緑茶錠剤3錠(計1.5グラム、6杯分)を毎日飲んでもらい、飲まない65人と、1年後に大腸を内視鏡で検査して、ポリープ再発率を比べた。(NIKKEI NET)

大腸ポリープ
大腸の粘膜にできた隆起で、内視鏡検査で組織を採取して検査します。大腸ポリープは良性ですが、大腸がんになる可能性のある線種がポリープの80%を占めています。
ほとんど無症状ですが、便に血がついていたり、下血がみられることもあります。健診の便潜血反応で発見されることが多くあります。

境界型糖尿病には緑茶が効果的:静岡県立大

緑茶を1日に7杯分ほど飲むことで、糖尿病になりかかっている人たちの血糖値が改善することが、静岡県立大などの研究でわかった。血糖値が高めで、糖尿病と診断される手前の「境界型」などに該当する会社員ら60人に協力してもらった。

緑茶に含まれる渋み成分のカテキンの摂取量を一定にするため、いったんいれたお茶を乾燥させるなどして実験用の粉末を作製。これを毎日、湯に溶かして飲むグループと、飲まないグループに無作為に分け、2カ月後の血糖値を比べた。

平均的な血糖値の変化を、「Hb(ヘモグロビン)A1c」という指標でみると、緑茶粉末を飲んだ人たちは当初の6.2%が、2カ月後に5.9%に下がった。飲まなかった人たちは変わらなかった。飲まなかった人たちに改めて飲んでもらうと、同じように2カ月間で6.1%から5.9%に下がった。

一般にHbA1cが6.1%以上だと糖尿病の疑いがあるとされ、6.5%以上だと糖尿病と即断される。逆に患者の血糖値を5.8%未満に維持できれば優れた管理とされる。今回の成果は、糖尿病一歩手前の人が緑茶をたくさん飲むことで、糖尿病にならずに済んだり、発症を遅らせたりできる可能性を示した。(asahi.com)

糖尿病について
膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが不足したり、インスリンの作用が低下する病気です。インスリンには、血液中のブドウ糖を細胞に取り込み、エネルギー源として筋肉に蓄えたり、脂肪として長期的に貯蔵するのを促進するはたらきがあります。

インスリンの作用が低下すると、血液中のブドウ糖が細胞で利用されないため、血液中の濃度が上昇し(血糖値が上がり)、尿中にも糖が混じるようになります。

糖尿病が進行すると、細小血管がおかされ、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害などの合併症が現れます。また、メタボリック症候群と呼ばれる病態に加え、禁煙などの危険因子が重なると、動脈硬化を基盤とした大血管障害を合併し、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こします。

HIV増殖を妨げる仕組みを解明:エイズ治療開発へつながる成果

京都大学の高折晃史講師とエイズ予防財団の白川康太郎研究員らは、エイズウイルス(HIV)の増殖を妨げる新たな仕組みを突き止めた。抗ウイルス作用を持つたんぱく質の構造を特定の酵素で変え、HIVへの防御力をより高める。

エイズ治療薬開発の手掛かりになる成果といい、米科学誌ネイチャー・ストラクチュラル・アンド・モレキュラー・バイオロジー(電子版)に6日掲載される。

人間が持つAPOBEC3Gというたんぱく質はもともとHIVの遺伝子を変異させて増殖を妨げる働きを持つ。しかし通常はHIVの「Vif」というたんぱく質の働きで分解されてしまう。研究チームはAキナーゼというリン酸化酵素の作用でAPOBEC3Gの構造が一部変わると、分解されにくくなるのを解明した。(NIKKEI NET)

エイズ / HIV感染症
エイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染によって起こり、慢性的に経過する病気です。HIVに感染するとリンパ球の機能が障害され、免疫力が低下・崩壊するため、さまざまな感染症や悪性腫瘍など治りにくい病気が起こってきます。

かつては非加熱製剤の輸血も原因の一つでしたが、現在、感染源は患者やキャリアの血液、精液、唾液、膣分泌物、母乳です。しかし、大多数は性行為による感染であり、それ以外の日常生活では感染することはありません。

無過失補償制度:医療機関の加入率が9割にとどまる

患者救済のため来年から始まる産科の「無過失補償制度」に加入した医療機関の割合が、申込期限の9月末現在で88・2%にとどまり、目標の100%に届かなかったことが1日、制度を運営する財団法人「日本医療機能評価機構」のまとめで分かった。

脳性まひの赤ちゃんが生まれた場合、医師の過失の有無にかかわらず患者側に補償金が支払われる仕組みだが、全医療機関の加入が実現しない場合、救済されない妊婦が出るなど、混乱も予想される。

制度への加入は任意で、同機構は「保険料負担を敬遠する医療機関がある」とみている。10月以降の加入は来年1月から運用される分には間に合わない見通しだが、今後も加入を呼びかける。(47news)

無過失補償制度とは?
無過失補償制度とは、医療事故で障害を負った場合、医師に過失がなくても、患者に補償金が支払われる制度です。長期の訴訟を避け、医師・患者双方の救済を図るのが目的で、日本医師会は2006年8月、分娩による脳性まひを「最も緊急度の高い事例」と位置づけ独自の制度案を公表、公的資金の投入を唱えてきました。北欧やニュージーランドでは社会補償制度の一環として取り入れられています。

医療事故では、医師に過失があれば医賠責で補償されますが、分娩事故では原因がはっきりしないケースが多いとされています。2004年の医師1000人当たりの訴訟件数は産婦人科が11.8件(最高裁調べ)と最多で、産婦人科医のなり手が少ない一因となっているとの指摘がなされています。

悪性リンパ腫を労災対象疾患に:厚生労働省検討会

厚生労働省の検討会は、原子力発電所や使用済み核燃料再処理工場での業務に従事し悪性リンパ腫を発症した労働者について、肺がんや白血病などと同様に放射線業務の労災対象疾患とする方針を固めた。近く正式に報告書をまとめる。

放射線医学の専門家らでつくる検討会は、放射線業務に従事し、3年半前に悪性リンパ腫で亡くなった沖縄県うるま市の患者の遺族や支援者らの訴えを機に、昨年秋から検討を重ねていた。

遺族は大阪市の淀川労働基準監督署に労災申請したが、同労基署は2006年9月、「対象疾患ではない」として労災補償を不支給とする決定をした。
大阪労働局はこの件についてあらためて判断する。労災と認められれば、原発労働者が悪性リンパ腫で労災認定される初のケースとなる。(shikoku.news)

悪性リンパ腫
リンパ球は、からだを守る免疫の働きを担っていますが、これが産生されたり活動したりする組織(リンパ節、骨髄、脾臓など)とリンパ球自体が悪性に増殖し、がん化する病気が悪性リンパ腫です。

悪性リンパ腫は、ホジキン病と非ホジキンリンパ腫の二つに大きく分けられており、前者は若者と高齢者に多く、非ホジキンリンパ腫は中年から初老に翔けて多い病気です。

カルシウムとビタミンDの同時摂取で大腸がんリスクが減少

カルシウムとビタミンDをともに多く摂取すると、大腸がんにかかるリスクを下げる可能性があることが、九州大などの調査でわかった。近く米国のがん予防専門誌で報告する。

古野純典・九大教授らのグループが、福岡市とその近郊に住み、大腸がんと診断された836人と、同じ年代で大腸がんではない861人から食事や生活習慣を詳しくたずね、関連を調べた。

1日あたりのカルシウム摂取量が平均約700ミリグラムと最多の人たちが大腸がんになるリスクは、同400ミリグラムで最も少ない人たちと比べ、3割ほど低かった。しかし、カルシウムを多くとっても、ビタミンDをあまりとらない人では、違いははっきりしなかった。

そこで、カルシウムを平均約700ミリグラムとり、かつビタミンDを多くとる人(1日10マイクログラムかそれ以上)で比べると、大腸がんリスクは、カルシウム摂取が少なくビタミンDをあまりとらない人より、6割低かった。

ビタミンDはサンマやサケといった魚類やキノコ類に多い。日本人のカルシウム摂取量は1日あたり平均540ミリグラム余で不足ぎみ。ビタミンDは8マイクログラムほど。大腸がんは肥満や飲酒でリスクが高まることがわかっている。(asahil.com)

大腸がん
その形態によって腺がんと表在性のがんに分けられます。大腸がんの90〜95%を占めるのは、粘膜層の腸腺に発生する腺がんです。これは、大腸の内側にできるポリープ(良性腫瘍)の一部ががん化し、腸壁の内部まで浸潤していくものです。

このタイプの大腸がんは比較的発見が容易です。またポリープががんに変化するまでには何年もかかるため、ポリープのうちに切除すれば、がんを予防することができます。

これに対し、もう一方の表在性のがんは、初めから粘膜表面にそってがん病巣が広がります。そして、腸壁の内部に広がったり腸の外側へ飛び出したりしないため、通常の造影剤を用いたエックス線撮影などでは発見しにくく、進展するまで気づかないこともあります。しかし近年、大腸がんの検査技術は急速に進歩しており、初期がんでも発見率が上昇しています。